悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第五十一話【希望は流星のように】

ヒュウガは『もう一人のヒュウガ』へ、『もう一人のレイ』の存在を確認した。

確かに、ペンドラゴンがこちらに来ているという事は、『もう一人のレイ』もこの惑星にやって来ているかもしれない。

正義のレイオニクスが新たに仲間に加われば、これ程心強い事は無いだろう。

 

まあ、俺はその存在も知っている訳だが……

 

「勿論、レイはバトルナイザーを宇宙人に奪われ……」

「バトルナイザーを!?」

 

レイが『もう一人のヒュウガ』の言葉を遮った丁度その時だった。

突如として胸を掻き毟りながら、『もう一人のヒュウガ』が苦しみ始める。

 

「一人で、基地に潜入すると言って……」

 

もうタイムリミットだな……

胸を押さえて脂汗を流す『もう一人のヒュウガ』の姿を見て、俺は至って冷静に考える。

 

そもそも原作通りに進めば、時間の止まったこの時空での出来事は無かった事になり、助かる命なのだ。

心が痛まないと言えばウソにはなるが、心配する必要はあまり無いだろう。

 

「お前たちも見ただろう、ウルトラマンゼロでさえ攻めあぐねている、あのウルトラ兄弟を……」

 

黄金色に光りはじめた『もう一人のヒュウガ』が、襲い来る苦しみと恐怖に耐えながらヒュウガとレイへと言葉を続けた。

 

「アレは、宇宙人の作った恐るべきロボット兵器だ!!」

 

倒れそうになりながらも一歩一歩ヒュウガへと近づいた『もう一人のヒュウガ』は、ヒュウガへと想いを託すかのように肩に手を置く。

 

「ボス、ゼロと協力して奴らの実験を阻止してくれ!!」

「さもないと、多次元宇宙のバランスが崩壊して、全ての宇宙が消滅してしまうっ!!」

 

まるで遺言のような言葉を残し……いや、現時点では正真正銘の遺言と言えるだろう。

『もう一人のヒュウガ』は悲鳴と共に、光の粒子となって消えて行った。

 

突然の死。

 

あまりに衝撃的な光景を目の当たりにして呆然とした表情で固まったヒュウガとレイは、まだ気づいていなかった。

自分達へと敵の魔手が迫っているという事に。

 

いや、ぶっちゃけ俺もこの後の展開を微妙に忘れていたんだけれども。

 

《ドォォォォォンッ!!》

 

「うおっ!?」

 

突如として風切り音と共に飛んで来たミサイルが、崖の上へと突き刺さる。

あまりの衝撃と爆風に、俺達は吹き飛ばされて地面を転がった。

 

何が起こっているのかと状況を把握しようとするが、その暇さえ与えてくれない。

休む間も無く数十発のミサイルが俺達の上へと降り注いで来る。

 

その瞬間、流石の俺も恐怖のあまり思わず叫んでしまった。

 

「レイ!!バトルナイザーを!!」

「っ!?ゴモラァァァァッ!!」

 

レイが懐からバトルナイザーを取り出して、自らのパートナーの名前を叫ぶ。

その瞬間、眩い光と共に、敵のミサイルの雨を遮るかのように、巨大な怪獣が姿を現した。

 

レイの唯一無二の相棒である【古代怪獣ゴモラ】だ。

その雄々しい姿を見た瞬間、俺は初めてその姿と活躍を見た時の心のときめきを思い出していた。

 

ああ、レイのゴモラだ。

 

ベリアル銀河帝国を映画館で見てウルトラマンにハマってから、俺はウルトラマンゼロシリーズに連なる作品である『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』に関しても勿論視聴した。

ウルトラシリーズなのにウルトラマンがほぼ登場しない作品ではあるが、その面白さは他のウルトラマン作品に勝るとも劣らない。

 

「いい……」

 

しばらく恍惚としてゴモラを眺めていた俺だが、突如として前方の崖が爆発と共に崩れ落ちた事で我に返る。

いかん、ここは一先ず退避しなければ……

 

ゴモラの鳴き声によく似た、しかしどこか無機質な鳴き声が響き渡る。

 

「何だ?」

「あれは……」

 

崖が崩れた事で発生した砂埃の向こう、そこに見えるそのシルエットは紛れも無くゴモラの物であった。

 

「ゴモラがもう一体!?」

 

それを見たヒュウガは、突如として現れた二体目のゴモラを見て動揺する。

 

「いや、違う!!」

 

だが、レイはすぐに見抜いた。ソレがゴモラとは似て非なるモノだと。

鈍く日光を反射する金属質の体表、胸に輝く青い光。

 

そう、サロメ星人が捕らえた『もう一人のレイ』のデータを参考に造り上げたロボット兵器、メカゴモラだ。

無数のミサイルと強力なビーム砲で武装したメカゴモラは、その強力な火器でレイのゴモラを追い詰める。

 

「ゴモラッ!!」

 

あまりの猛攻に、ゴモラはもんどりうって地面へと倒れこむ。

心配そうにゴモラの名を叫ぶレイ。

俺達3人は巻き込まれないように必死になって瓦礫を避ける。

 

……すいません、正直言ってナメていました。

原作を知っているという安心感は実際の鉄火場では全く役に立たない。生きた心地がしない。

 

「立てっ、ゴモラッ!!」

 

レイの指示に奮起して、起き上がったゴモラはそのままメカゴモラへと突進して行く。

そんなゴモラに対して、メカゴモラは悠然と突っ立っているだけだ。

 

《ドォンッ!!》

 

そして、ゴモラとメカゴモラは衝突した。

取っ組み合って膠着する二体の怪獣。

 

そのままでは埒が明かないと思ったのか、ゴモラは一旦距離を取って、今度はメカゴモラに対して格闘戦を仕掛ける。

キック、引っ掻き攻撃、巨大な尻尾による打撃を繰り出すが、メカゴモラに対しては有効打ではないようで、その様子は変わらない。

 

今度はメカゴモラ側の猛攻が始まる。

 

右胸から発射するビーム砲『クラッシャーメガ』が炸裂し、ゴモラは再び地面に倒れこむ。

 

「超振動波だ!!」

 

それでも諦めずに立ちあがったゴモラは超振動波をお見舞いするが、メカゴモラは小動もしない。

 

まあ、それは仕方ないだろう。

スペック的に、メカゴモラはEXゴモラのデータも参考に製作されたメカ怪獣という事も有るし、

メタ的に言えば、今のメカゴモラは『初登場の新規怪獣』『主人公の打ち倒すべき最大の敵』というバフが掛かっている。

 

初見では倒せない敵だ、そう、()()()()()()()()()()()

 

メカゴモラのナックルチェーンによって、ゴモラの体がいとも簡単に投げ飛ばされる。

そのまま背中から地面に叩きつけられ、さらに『メガ超振動波』による波状攻撃で動けなくなるゴモラ。

 

万事休す。メカゴモラが止めを刺そうとした、その時だった。

 

「……来たか」

 

彼方の空が一瞬キラリと光り輝き、何かが空から降って来る。

炎を纏ったソレは、まるで光り輝く流星のようで……

 

「テリャァァァァァァッ!!」

 

ああ、初めまして。

 

俺は表に出さないように必死に自制しつつ、湧き上がる歓喜に酔った。

ベリアルを倒し、俺を救い出してくれる唯一の希望。

 

「ウルトラマンゼロ」

 

鮮やかな若き最強戦士が、今、この場に降り立つ。

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