炎を纏った蹴り――ウルトラマンレオ直伝の『ウルトラゼロキック』が頭部に炸裂し、その威力に耐えられなかったメカゴモラは薙ぎ倒される。
流石にダメージが大きかったのか、すぐには起き上がれずに硬直するメカゴモラ。
「オマエの相手は……」
その背後で、技を決めたウルトラマンゼロは、着地を決めた姿勢からすっくと立ちあがり、敵であるメカゴモラを睨みつけて言い放った。
「この俺だ!!」
よっ!!千両役者!!
何てカッコいいんだ!!
この外連味がたまらん!!
内心でウルトラマンゼロを賛美しつつ、俺はゼロとメカゴモラの戦いを眺める。
重量級で、どちらかと言えばパワーと重火器で押すタイプのメカゴモラは、身軽に動けるゼロとは相性が悪いという事も有るのだろう。
先ほどのゴモラとの対決とは打って変わって、完全にゼロが押している状態となっていた。
「戻れ、ゴモラ」
レイが敵の隙をついて、消耗したゴモラをバトルナイザーへと回収する。
そうこうしている内に、ゼロとメカゴモラの戦いは、いつの間にか先程のゴモラと同じく取っ組み合いの様相となっていた。
流石に直球のパワー勝負ではメカゴモラに軍配が上がるらしく、ゼロはじりじりと後退を余儀なくされている。
しかし、そんな余裕が無い中でもゼロは俺達へとアイコンタクトを送った。
「ここは任せろ」という意味を込めて。
その意味を正しく理解した俺達は行動を開始した。
「レイ、宇宙人の基地を攻撃だ!!」
「私はヒュウガと共に地上から行く」
ヒュウガはレイを敵の基地へと送り出すべく指示を出し、俺はホルスターから取り出したコスモドラグーンを再び手に構える。
俺達へと振り返ったレイは「分かった」と言いながら、バトルナイザーを再び天へと掲げた。
「リトラァァァッ!!」
レイの叫びと共に、再びバトルナイザーから光が飛び出す。
その光は弧を描く様に空を飛びながら、一体の巨大な鳥を形作った。
コレが【原始怪鳥リトラ】か。
『ゴモラと違ってフルCGの怪獣だからイマイチ活躍に恵まれない怪獣なんだよな~』なんてしょうもないネタはさておき……
リトラの背に乗って基地へと接近するレイ、メカゴモラに対して優勢を崩さないゼロ。
そろそろだろう、へロディアが痺れを切らして
ゼロスラッガーの一撃でナックルチェーンを両断し、もんどりうって倒れたメカゴモラへとワイドゼロショットを撃とうとした瞬間、ゼロの動きがピタリと止まった。
「……何だ、お前は」
それにしても、誰に似たのだろうか?
「テクターギアだと?」
あんな行動をするようなプログラムは組んでないはずだけれども……
「フフッ……力をセーブしてても、俺に勝てるってワケか!!」
ゼロが怒鳴りながら自分の真上を見ると、そこには鎧――テクターギアを装着した人型のロボットが、仁王立ちの姿勢で浮遊している。
ええそうです。この私、パルデス・ヴィータ謹製の侵略ロボット兵器、ダークロプスゼロさんですね。
今はテクターギアを装着してるから、正確には『テクターギアブラック』と言うべきなのだけれども、面倒くさいのでダークロプスゼロのままで行こう。
というか、行方不明になるまではあんな厨二じみた行動をするような素振りを見せてなかったんだけれどもね。
アレか?サロメ星人の毒電波に感染でもしたのか?
まあ、へロディアって「ウルトラ兄弟のニセモノを作って全宇宙を支配してやるわ!!オーッホッホッホッ!!」って感じの無茶な事を考える人だし、さもありなん。
そんな事を考えている内に、ゼロとダークロプスは互いにキックを交わしながら宇宙へと旅立って行きましたとさ。
視聴者視点では違和感を感じなかったけれども、こうしてみると結構シュールな光景ね。
あっ、帰って来た。
真っ赤な火の玉が地上へと落下し、その衝撃で高々と地表の砂を巻き上げる。
まあゼロはあの程度でくたばるようなタマではないし、ここは放っておこう。
空へと視線を移せば、リトラに乗ったレイがサロメ星人の基地へと向かう。
そして、リトラの口から吐き出された火球が、基地へと直撃した。
……ように見えたが、その攻撃は基地の周囲に展開されたバリアによって防がれる。
レイは諦めずに何度も攻撃を繰り返すが、基地に展開されたバリアは強固で破れる気配は無い。
あの規模の基地を覆うバリアだ、正面突破でブチ破るにはゼットンの火球レベルの威力でないと厳しいだろうな。
あっ。
「危ないっ!!」
「っ!?」
ある事に気づいて、俺はレイへと声を張り上げる。
俺の声が聞こえたのか、ハッとした表情で一瞬こちらの様子を窺った後、レイは回避行動を取った。
瞬間、先ほどまでリトラが飛んでいた場所を突き抜けていく一筋の光線。
その発生源であろう場所を見れば、いつの間に再起動したのかメカゴモラが立ち上がっており、威嚇するかのように鳴き声を上げながら何度もメガ超振動波を発射する。
リトラは器用に避けながら火球をメカゴモラに向かって発射していたが、流石に限界が来たようで、メガ超振動波の一発がモロに被弾してしまった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
炎を纏いながら墜ちていくリトラとレイ。
そのまま崖へと衝突したリトラは、力尽きてバトルナイザーへと戻ってしまった。
「レイ!!」
「こちらの方角に落ちて行ったな」
ヒュウガと俺は、レイが墜ちて行った地点へと走り出した。
あと少しで落下地点へと到着する。その時、ふと横を見た俺は、前方を走っていたヒュウガの襟を掴んで引き倒した。
「待てっ!!」
「うわぁっ!?」
そのまま地面へと伏せた瞬間、地面を揺るがすような衝撃と爆風が俺達へと襲い掛かる。
飛び散る瓦礫が無くなったのを見て顔を上げれば、先ほどまで遠くで戦っていたはずのダークロプスゼロが、ウルトラマンゼロを地面へと押さえつけている光景が有った。
今のところはダークロプスゼロが優勢だ。マウントポジションを取ってゼロをタコ殴りにしている。
だが、不意にゼロの手がダークロプスの手を押さえた。
「ヘヘッ、結構やるじゃねえか……」
前から思っていた事だけれども、この時のゼロのボイス、色気が有り過ぎじゃありませんか?
聞いた瞬間、背筋がゾワゾワなりましたよ。
そのままゼロはダークロプスを投げ飛ばすが、ダークロプスは苦も無く着地を決める。
後はしばらく、この二体のタイマンが繰り広げられた。
交差する拳と拳、蹴りと蹴り、血沸き肉躍る戦いとはこういう物かと思わせる泥臭い熱戦が繰り広げられる。
こうして見ると、ほぼ互角。
けれどもダークロプスゼロには
不意に、ゼロと距離を取ったダークロプスゼロが右手の拳を振り上げる。
エネルギーが集中しているのだろう。あまりの熱に周囲の光景が揺らいで陽炎を起こしている。
そして。
「フンッ!!」
莫大なエネルギーを纏ったその拳は、ウルトラマンゼロへと向けられる事は無く、自らの胸――正確には胸部を覆い隠すテクターギアへと炸裂した。