悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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ちょっと作品冒頭の設定がヤマト本編と違っていたので、後に少々修正する予定です。


第五十四話【ダークロプスのコマンド】

オレは誰だ?

 

自らの似姿を前に、オレは拳を繰り出し、蹴りを繰り出し、光線を繰り出す。

 

マスターであるへロディア様によって『ダークロプス・ゼロ』という名前を与えられたオレは、

マスターの命令に従って、ウルトラマンゼロの迎撃へと繰り出した。

 

まるで鏡写しのようにソックリな敵、ウルトラマンゼロ。

この似姿を倒せばオレの存在理由を見つける事が出来るのだろうか?

 

空中で静止したオレは、眼下でへロディア様が作り出したニセウルトラ兄弟と戦う似姿を、ただただジッと見つめる。

必死で戦う似姿を見ても、AIには何ら浮かぶ事は無く、ただただ空虚だ。

 

サッサと処分して基地へと戻るか。

 

オレは『ディメンションストーム』で似姿を次元の彼方へと追放するべく、コアを開放しようとした。

 

《ドカァァァァァァン!!》

 

その時、突如としてゼロに攻撃を仕掛けていたニセゾフィーが弾け飛ぶ。

 

一体何が起こった?

 

フラフラと数歩歩いて倒れ伏したニセゾフィーの下半身を前に、その場で戦っていた全員の動きが止まる。

そして、ある一点へと視線を合わせた。

 

オレもそれを追って視線を送れば、そこに居たのは小さな二人の人間だった。

 

一人はただ唖然とした表情で爆発したニセゾフィーを見ている。

そしてもう一人は、銃をこちらに構えた状態で静止している。

 

あいつが撃ったのか?

 

カメラアイをズームし、銃を持った男の方へピントを合わせる。

それとほぼ同時に、男が銃を下ろしてその顔が露わになった。

 

《ジジッ……》

 

!?

 

突然の意味の分からない感覚に、オレのAIが乱れる。

何が起こった?あの男は何か知っている?いや、むしろオレがあの男を()()()()()()()

忘れてはいけない何かを忘れているような感覚。

 

あの男は俺を知っているのか?

 

「やめろっ!!」

 

似姿の声にハッとして眼下へと視線を戻せば、あの男の事を敵と判断したのだろうニセウルトラセブンが光線の構えを取っている。

そしてそれを止めようとする似姿を、ニセウルトラマンとニセエースが妨害していた。

 

このままでは、あの男は消し炭になってしまう。

人間という脆弱な生命。本来なら消えてしまったところでどうでも良い。

 

だが、オレのAIが警報を鳴らす。

 

【**** ****を守れ】と。

 

名前は出てこない。ただ【守れ】という言葉に従わないといけないという漠然とした考えが、俺の体を突き動かした。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

消し飛んだニセゾフィーを見て、俺は「ふむ」と手に持ったコスモドラグーンを見る。

 

どうやら、銃はキチンと作動したようだ。

いやあ、想像以上の能力で誇らしいよ、ハッハッハッ!!

 

……なんて心の中で思う事で、突き刺さる周囲の視線から気を逸らす。

 

いや、まあ設計者の自分からすれば理論上は怪獣を一撃で倒す程の威力だという事を分かってはいたが、実際にやってみると、どちらかと言えば戸惑いの方が強い。

ウルトラシリーズにおける『怪獣を撃破できる携行火器』といえばマルス133が代表的だが、開発したイデ隊員は初めて撃った時何を思ったのだろうか。

 

「おい、逃げろ!!」

 

そんな事を考えて上の空になっていた俺の肩をヒュウガが強い握力でガッと掴んで来た事で、痛みにハッと我に返る。

前方へと視線をやれば、此方へとL字型に組んだ腕を向けるニセセブン。

それを止めようと奮闘するゼロと、妨害するニセエース、ニセウルトラマン。

 

その構えがワイドショットの物だと気付いた時には、もう遅かった。

 

「クッ!!」

 

甲高い音と共にニセセブンの腕から放たれた白金の閃光。

無駄だと分かりながらも、俺は思わず腕で顔を庇う。

 

《バァァァァン!!》

 

ワイドショットが炸裂する音が周囲に響く。

 

死んだ、絶対死んだ。

だが、痛みは無い。痛みを感じる前に消し炭になったのか?

 

いや、違う。

 

空気が肌を撫でる触覚も、しっかりと地面を踏みしめる感覚も、緊張感から来る喉の渇きも、全てが変わらない。

恐る恐る顔を上げてみれば、壁のような巨大な背中が、まるで俺達を庇うかのようにその場に有った。

 

「ダークロプス、何故だ?」

 

自分達を庇うような行動を取る事が理解できないのだろう。驚きに目を見開きながらダークロプスゼロへと語り掛けるヒュウガ。

その声に反応したのか、ゆっくりと振り返り、その無機質な単眼でこちらをジッと見つめるダークロプスゼロ。

突然のダークロプスゼロの行動に、目の前の敵への警戒は怠らずも困惑した表情で睨みを飛ばして来るゼロ。

 

こちらへと向けられる三者三様の視線に困惑しながらも、俺はただ一人、この状況を正しく理解する事が出来る。

 

おそらく、へロディアはダークロプスゼロのAIを制御しきれていないのだろう。

だからこそ、()()()()()()である俺を守護する行動を取った。

 

『貴様は誰だ?』

 

……まあ、オリジナルのデータも完全には戻っていないようだが。

 

俺は懐に手を伸ばし、他の誰にも見られないようにコッソリと、()()()を手に忍ばせる。

掌に収まる程度の丸い物体、見た目は母星に居た頃からアイルが持っていて、劇場版ウルトラマンジードではグクルシーサーの召喚に使用したペンダントとソックリの物だ。

 

《聞こえるか、ダークロプスゼロ》

 

その物体に思念を送り、ダークロプスゼロへと飛ばす。

そう、コレはダークロプスゼロを操作する為のコントローラーだ。

 

クシアの文明はギガバトルナイザーやギガファイナライザーを生み出した事から知っての通り、思念を物理エネルギーに変換する技術を持っている。

それを応用したのがこのコントローラーで、思念を直接送り込む事でダークロプスゼロへと命令を与える事が出来るという代物だ。

 

ちなみに、ギルバリスの件での反省から、このコントローラーで下される命令は絶対の優先度を持つようにプログラムされており、これに関しては基幹システムに組み込まれた不可逆のコマンドとなっている。

 

《今しばらくへロディアの命令を聞け、必ず再び会えるだろう》

《……了解》

 

返事を受信し、命令が受理された事を確認してコントローラーから手を放せば、ダークロプスゼロはゆっくりとした動作で再びゼロの方を向く。

そしてその手を前方へとかざした瞬間、その掌から赤色の光線が放たれた。

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