惑星チェイニー前線基地。
ここはサロメ星人が建設した宇宙侵略用の前線基地であり、時空研究の最前線でもある。
搬出通路、工場、主動力室によって構成される地下、
研究区画と居住区画を兼ねた下層ドーム、
時空転移システムを制御する高層タワー三棟、
中央の次元転送光線を発射する超高層タワー一棟
という設備から成る大規模な建造物だ。
これ程の建造物を造り上げ、そして侵略用のロボット兵器であるニセウルトラ兄弟の増産にも成功させたという事を考えれば、この壮大な計画を立案・実行した張本人は誇っても良いぐらいの大事業である。
だが、今現在そうなってはいなかった。
「一体どういう事!?」
中央指令室で、お気に入りのホバーチェアから立ち上がり、目の前の巨大スクリーンを見上げる一人の女。
そう、この計画を主導したサロメ星人のへロディアである。
計画は順調なはずであったのだ。
地球人とウルトラマンゼロによる急襲を受けたものの、まるで化石のような骨董品である地球人の船は然程の脅威ではなかったし、ウルトラマンゼロはニセウルトラ兄弟達によって十分に抑えられている。
その上、地球人達に紛れてこの星へとやって来たレイオニクスからネオバトルナイザーを接収出来た事で、新たなるロボット兵器であるメカゴモラも完成した。
このまま進めば、予定通りに侵略計画を進める事が出来ただろう。
その後の
ニセウルトラ兄弟のカメラアイによって姿を捉えた男。
先に捕らえたレイオニクスと同じユニフォームを着ている奴は分かる。おそらくはあの骨董品の宇宙船に乗って来たクルーだろう。
そちらの方は特に問題は無い。
だが……
「あの男は誰よっ!!」
問題はもう一人の【黒い軍服の男】だ。
拳銃サイズなのに、たったの一発でサロメのロボット兵器を破壊できる武器。
何故かその男を守ろうとするダークロプスゼロ。
そしてその男を抹殺するよう指示を出したのに、勝手に中断してゼロへの攻撃に集中するニセウルトラ兄弟。
へロディアにとっては全てが想定外であり、自他共に認める天才と自負しているへロディアの自尊心はいたく傷つけられ、その苛立ちは頂点に達していた。
「正体は不明です。最初の侵入者のように、どこかの時空から紛れ込んだのでしょう」
「そんな事は分かっているわよ!!」
「ヒッ!?」
苛立ったへロディアが履いているブーツで思い切り床を踏み鳴らした事で、部下であるイラテは思わず引きつった声を出し後ずさる。
サロメ星人にも階級が有り、へロディアはその中でも上流階級に属する。
逆らえば本星でどのような目に遭うかも分からないため、部下であるイラテとガナエスは男らしい立派な体格を持ちながら、がなり立てる小娘を相手に明確にへりくだった態度を取っている。
「へロディア様、少々気になる事が」
「何!?」
そんな中でも、へロディアの後方で黙々とデータを確認していたガナエスは、収集したデータからある事実に気づく。
へロディアは明確に不機嫌そうに返事をするが、ガナエスは手元に開いていたホログラムデータをへロディアの前に展開した。
「あの男の武器に関してですが」
「これって……まさか!!」
そのデータを見たへロディアは、一瞬驚愕した後に、黒い服の男の正体に関してある仮説を立てる。
考えが正しいのなら、ひょっとしたらあの男によってこの計画が失敗に追い込まれるかもしれない。
そう考えたへロディアの判断は早かった。
「あの男を捕らえ、ここへ連行しなさい!!」
―――――――――――――――
「ゼロっ……」
ダークロプスゼロが発した赤色の光線――ダークロプスゼロチェンジャーを浴びた事によって操られたニセウルトラ兄弟は、
先ほどまで抹殺しようとしていた俺達には目もくれずウルトラマンゼロへと挑み続けた末に、ダークロプスゼロの発射したディメンションストームによってゼロと共に次元の狭間へと消えて行った。
その影響で出来た巨大クレーターを前に呆然とするヒュウガの後ろで、俺は悠々とサロメの基地へ帰還して行くダークロプスゼロを見送る。
ベリアル様を取り戻すという目的を達成するだけなら、この場でダークロプスゼロを取り戻して基地へとカチコミを掛けた方が確実で楽だろうなという考えが脳裏を過るが、頭を振ってその考えを振り払う。
それをやってしまうと、ウルトラマンゼロがクリアするべき試練が一つ減ってしまう。
この場で一旦ダークロプスゼロに敗退し、追放された次元の狭間でウルトラマンレオの激励を受け、ニセウルトラ兄弟を師弟のコンビネーションで倒し、ダークロプスゼロへのリベンジを果たす。
そうする事で、ウルトラマンゼロはまた一つ成長し、カイザーベリアル討伐の為の一助となるのだ。
もしもその機会を奪い、万が一にもウルトラマンゼロがカイザーベリアルに敗れてしまえば、待っているのは混沌だ。
だからこそ断腸の思いで、ダークロプスゼロへと命令を出したのだ。
一応、カイザーベリアルの勝利を想定した【プランB】も考えてはいるが、あまりにもリスクとヤバさが突き抜けているので出来れば使用したくはない。
まあ、その事は置いておいて、だ。
今優先すべき事は基地への潜入である。
俺は次の行動に移すべく、ヒュウガへと声をかけた。
「呆然としている暇は無い、今は墜落したレイを探すべきだ」
「……そうだな」
だが、肝心のヒュウガは魂が抜けたような状態だ。
まあ、自分が知る限り最強の戦友でもあるゼロがこんな事になっては、ショックを受ける気持ちも分かる。
しかし今はあまり時間が無い。
「君が知るウルトラマンゼロは、そんなに軟弱な存在なのかね?」
俺がヒュウガへ発破をかければ、それまで覇気の無い表情をしていたヒュウガがハッとした表情でコチラを見て来る。
そんなヒュウガとしっかり視線を合わせ、俺は言い聞かせるようにヒュウガへと語り掛けた。
「こんな逆境でも諦めずに戦って来たんだ。それ程の強さを持っているならきっと生き残っている」
「パルデスさん……」
「今は、彼の事を信じよう」
濁っていたヒュウガの瞳に、光が差し込む。
それを確認し、俺は思わず笑みが浮かぶのを感じた。
これで大丈夫だ。きっと原作通りの活躍を見せてくれるはず。
「俺とした事が、こんな事で立ち止まってちゃボスの名が廃るってもんだ!!」
「その意気だ。さあ行こう、レイを探しに」
「ああ!!」