悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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最近残業で忙しくて、執筆が中々進みませんでした。
本当に申し訳ない。


第六十話【ミッション・イン……】

「何だ?ここは……」

 

呆然とその光景を見上げるレイを横目に、俺は磔状態のダークロプスゼロを見上げる。

 

ついにココまで来てしまったか。

本当ならこんなに深く関わるつもりは毛頭無かったんだがな。

 

《キュオォォォン……》

 

俺達がその部屋へ足を踏み込んで数瞬、鈍い機械音が鳴り響く。

周囲を見渡せば、壁面に取り付けられた巨大なカプセルが震え、その中心から真っ二つに開いて行く。

一つだけではない、壁面のカプセル全部がほぼ同時に動き出す。

 

「これは……」

 

開かれたカプセルの内部を見て、二人のレイは言葉を失った。

 

「ウルトラマン、だと?」

 

カプセルの内部に有ったのは、レイがかつて共に協力して巨悪へと立ち向かったウルトラマン達だ。それも、同じ顔の者が何十体も。

ゾフィー、マン、ジャックのようなタダのソックリさんという訳ではない。

複数種のウルトラマンが、まるでロット生産されたかのように数十体づつ壁面のカプセルから顔を覗かせている。

 

そう、コレがサロメ星人ご自慢のニセウルトラ兄弟だ。

 

「こんなに大量のウルトラマンを……」

「宇宙人は何を企んでいるんだ?」

 

二人のレイが言葉を失う中、ブラッド……もとい『レイブラッド』が、「ふむ」と言いながらこの光景を見上げている。

まあ、レイブラッドなら分かるだろう、『この光景が何を意味するか』など。

 

「侵略用ロボット兵器、といったところか」

 

こんなボイド空間の辺境の星に、これだけの設備を整えて、ウルトラマンを模した巨大ロボットを大量に作り上げる。

まず間違いなく、穏やかな目的ではないだろう。

 

「フフフ……アッハッハッハッ!!」

 

それを肯定するかのように、まるで他人を嘲るような笑い声が周囲に響いた。

視線を下へとやれば、そこにはいつの間にかカプセル型の椅子に座る、青い服の女が一人。

 

「驚いた?サロメ星の偉大な科学力に」

 

そう、この計画の首謀者であるサロメ星人へロディアである。

他者を見下したような悪意の籠る目を此方へと向けて、ニヤニヤと笑みを浮かべている。

 

「サロメの科学は万能よ?ウルトラ兄弟はおろか、あなたのバトルナイザーからメカゴモラを造る事もね」

「よくもっ!!」

 

その言葉に激昂した『もう一人のレイモン』がへロディアへと掴み掛ろうとする。

だが、一歩を踏み出す事も無いまま、その場で硬直した。

 

「っ!?」

「くっ……」

 

そう、へロディアの部下である二人の男がコチラに銃を向けて来た事によって。

 

それにしても、このへロディアの部下達(確か名前は「イラテ」と「ガナエス」と言うらしいが、それは置いておこう)動きのキレが凄い。

通常の人間の身体能力を遥かに凌駕するレイの動きに付いて行けるとは……

まあメタ的な事を言えば演者さんがスーツアクターだから、動きの良さも当然と言えば当然であるが。

 

「辺境の惑星へようこそ。サロメでは惑星チェイニーと呼んでいるわ」

「何の実験かは知らんが、お前達は宇宙を消滅させようとしているんだぞ!!」

 

暗にこの行為を止めるように促すレイの怒声に対して鼻で笑ったヘロディアは、天井を指すように人差し指を伸ばす。

 

「あれを見て。ダークロプスゼロのディメンジョンコア」

「ディメンジョンコア?」

「一歩間違えば宇宙を消滅させてしまう、禁断のエネルギーよ」

 

まるで自分に酔っているかのように、いや、実際に酔っているんだろう。

 

「だが我々は成功した……ディメンジョンコアの完全制御に!!」

 

ギラギラとした目でダークロプスゼロを見ながら、ヘロディアはこのディメンジョンコアがいかに素晴らしいか、そしてそれを制御したサロメ星人がいかに賢いかを語っていく。

 

その様子を横目に、俺は二人のレイの後ろでレイブラッドと横に並びながら、何とか欠伸を我慢しつつヘロディアの自分語りを聞く。

というか、この人よく他人の技術でこんなドヤ顔出来るな。

 

《『虎の威を借る女狐』といったところか》

《やらせておけば良い、何にせよウルトラ戦士にバレている以上、長くはないだろう》

 

同じく退屈したのか、テレパシーで皮肉を飛ばして来るレイブラッド。

俺はそれに返事をしつつ、運命の時を待つ。

そう、レイのバトルナイザーを持ったヒュウガが駆けつけて来るのを。

 

だが、それよりも前に予想外の出来事が起こった。

 

「次元をコントロールし、多次元宇宙を自由に行き来する事が可能になったの……あなたには出来なかった事よ、そこの軍人さん?」

「……は?」

 

急に話の矛先を向けられて、俺は思わず呆けた表情のまま固まってしまう。

え?どうしてダークロプスゼロの持ち主だってヘロディアにバレてるの?いや、マジで。

 

「どういう事だ?」

「あのロボットについて何か知っているのか?」

 

困惑した表情でコチラを見る二人のレイの姿を見て、俺はハッと我に返る。

いかんいかん、ここで動揺したら全てが終わる。

レイやヒュウガはともかく、ウルトラマンゼロとこの場で敵対してみろ、間違い無く死ぬ。

 

俺は咳払いして必死で平静を取り繕いつつ、そのまま知らぬ存ぜぬを貫き通す事にする。

 

「あの一つ目のロボットの事か?俺にはサッパリ……」

「あなたが撃った銃とダークロプスゼロのエネルギーが一致してるんだけど?」

「……」

 

ヘロディアによって空中に投影されたホログラムに、線グラフが表示される。

そこに表示されたエネルギー波長は間違い無く同一の軌跡を描いていて、俺は自分の迂闊さを呪った。

 

そうだ、試験機であるダークロプスゼロを製造するのに、波動エネルギーを参考にした機関を積んでいたのだった。

コスモドラグーンはいわば小型波動砲、そのエネルギー波長が一致するのは当たり前である。

 

「大方、あなたの技術レベルでは扱いきれなくなって宇宙に投棄したんでしょ?サロメに有効活用された事を誇りに思いなさい」

 

そう言って再び高笑いを上げるヘロディア。

勝手な推測をしているが、ダークロプスゼロを投棄するハメになったのは炎の海賊団のせいであり、別に制御出来ないワケではない。

ただ、その事実を今この場で言うのは避けたいところだ。

 

「お前がダークロプスゼロを造ったのか!?」

「何でだよ!!どうして……」

 

戸惑いと怒りが綯交ぜになった表情で、俺へと詰め寄って来る二人のレイ。

それに対して俺はどう弁解すべきか考える。下手な事を言ってしまえばどのような事になるか分からない。

とりあえずはこの場を乗り越える事が出来る方策を……と思ったところで、第三者の声が割って入る。

 

「よそ見してて良いの?これから最高のショーが始まるというのに」

 

愉悦が滲むヘロディアの声と共に、壁面に設置されていたカプセルの中から数体のニセウルトラ兄弟が、部屋の中央に設置された巨大な台の上へと転送されて来る。

先程まで俺へと詰め寄って来ていた二人のレイは、その光景を見てヘロディアが何をしようとしているのか予想出来たらしく「まさか……」と声を漏らしていた。

 

「あらゆる時空の全宇宙へ向けて、私達のウルトラ兄弟を送り込むの」

 

空中に浮き出たホログラムへとヘロディアが手をかざすと、壁面に磔にされていたダークロプスゼロの胸が光りはじめる。

それと同時に、ヘロディアは椅子ごと空中へと飛び上がった。

まるでドローンの如く安定した軌道でニセウルトラ兄弟達の前へと移動したヘロディアは、歓喜の笑みを浮かべつつ自らの造り上げたロボット達の鼻を撫でる。

 

「待て!!」

 

制止の声を上げるレイを見て嘲るように見下ろし、ヘロディアは宣言した。

 

「平和を守るウルトラ兄弟が、全宇宙を制圧する……サロメの手先としてね」

 

ヘロディアの目的、先程も言ったがそれは『自らの造り上げたロボットでの宇宙征服』である。

近世では誰も成し遂げられなかった偉業でもあり、後の闇の勢力の事を考えれば、ある意味自殺行為とも言える夢。

 

何も知らないヘロディアは、その未知なる一歩を踏み出そうとしたところで……

 

「宇宙を征服、だと?」

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