「うあああああああっ!?」
「レイっ!?クソッ!!」
レイブラッドが発する闇に飲み込まれ、苦悶の表情で悶え苦しむ『もう一人のレイモン』
それを助けようとレイが近寄るが、『もう一人のレイ』を覆う闇はまるで煙の如く、払い除けようとしても手は宙をかくばかりだ。
流石にキリが無い悟ったのか、レイは『もう一人のレイモン』を抱き起すと、朱が混じり始めた双眸と目を合わせる。
「ヤバッ!?」
そんな修羅場の中で、俺は糸が切れたように倒れようとしていたベリアル様の肉体を、間一髪の所で抱き留める。
おそらくは肉体の主導権を握るレイブラッドが出て行った事で、誰も操る物が居なくなったせいだろう。
首筋に手を当てれば脈拍は有り、昏睡状態のままではあるものの、ベリアル様は無事のようだ。
だが、ホッとする間も無く事態は推移していく。
「レイっ!!しっかりしろっ!!闇に負けるなっ!!」
「うっ、ぐううううっ……」
苦しみにのた打ち回りながらも、『もう一人のレイモン』は必死になってレイブラッドの闇に抗う。
そして俺は、ベリアル様の汗に濡れた額をハンカチで拭いながら、その様子を固唾を飲んで見守っていた。
レイブラッドの完全復活は原作には無かった要素であり、どれ程強大な力を持つのか想像がつかない。
最悪の事態を想定する必要が有るかもしれない。
「出て行け、この体も、この心も、俺の物だ……」
囁くような小さな声ではあるが、『もう一人のレイモン』はレイブラッドへと否定の言葉を紡ぐ。
今現在、『もう一人のレイモン』とレイブラッドの力は拮抗しているようで、苦し気に息をしながらも『もう一人のレイモン』はどうにか意思を保っているようだ。
「中々に耐えるではないか、我が究極の闇に」
「当たり前だ、俺は生きて仲間の下に戻るんだ」
「ほう、お前達がよく口にする『絆』とやらか?」
だが、レイブラッドに抜け目は無かった。
一緒に行動して来た事で、『もう一人のレイモン』は、暴走を克服したレイと比べると精神面が未熟だという事は既に分かっていた。
そしてそんな未熟な精神を突き崩す手段を、既に用意していたのである。
「哀れな。貴様の絆は既に消えて無くなったというのに、そこまで必死になる必要が有るのか?」
「絆……消えた?」
「っ!?奴の言葉を聞くな!!レイっ!!」
レイブラッドの意図を悟り、必死になって『もう一人のレイモン』へと呼びかけるレイ。
その背後で、俺もレイブラッドが何を言わんとしているか悟り、一気に血の気が引いて行った。
奴はアレを言う気だ。もしそうなれば、『もう一人のレイモン』の精神は耐えられないかもしれない。
だが、俺には止める手段は無かった。
見ているだけの俺の目の前で、レイブラッドが振り下ろす言葉の刃が『もう一人のレイモン』へと突き立てられる。
「貴様の仲間は全員死んだよ」
「嘘だっ……」
呆然とした声を絞り出す『もう一人のレイモン』
その耳に、既に自分を引き留めようとするレイの言葉は届いていないようだ。
「本当だ。貴様も既に知っているだろう?此方の時空に我らは長く居られない」
あまりにも残酷な現実を叩きつけられ、脱力してしまったのか『もう一人のレイモン』は崩れ落ちるように地面へと膝を付ける。
分かっていたのだ。この時空では自分達は異物であり、生き永らえる事は出来ない。
自分だって、レイモンとしての姿でなければ今頃消えていただろう。
普通の人間であるペンドラゴンのクルー達が、耐えられるハズなど無いのだ。
「ボス……クマさん……ハルナ……オキ……」
「綺麗だったよ。光となって散りゆく様は、まるで夜空に散らばる星屑のようだった」
「あっ、ああっ……」
呆けたように、意味を成さない言葉を発する『もう一人のレイモン』
もう限界だった。まるで木材を侵食する白蟻の如く心を染めていく絶望に、精神は疲弊し、感情は崩れ落ち、思考は分裂していく。
そして、とうとうレイブラッドにとって待ちに待った瞬間が訪れた。
「……」
「レイっ!!レイっ!!しっかりしろっ!!」
目の前でとうとう沈黙してしまった『もう一人のレイモン』に対して、レイは泣きそうな声で必死になって呼びかける。
だが、その声さえももう届かないようで、『もう一人のレイモン』はボンヤリと視点の定まらない目で床を見つめている。
それにしてもレイブラッドはまたえげつない真似を……
確かにヒュウガを含めて別次元のペンドラゴンメンバーは消えてしまったが、この時空が崩壊すれば『全てが無かった事』になり元に戻る。
ただ、あくまで俺が知るのは前世での記憶であり立証など不可能だ。なので今それを教えた所で根拠が無いのである。
お手上げだ。今はただ、見守っている事しか出来ない。
「さて、そろそろ仕上げに移ろう」
「やめろぉぉぉぉぉっ!!」
レイが叫ぶのを尻目に、精神体のレイブラッドは『もう一人のレイモン』へと融合すべく、その体内へと侵入していく。
空中でバタ足をするような姿はユーモラスにも思えるが、その実態は実に悍ましい物だ。
「うぐっ、ぐうううううっ……」
完全に精神体が体に入った瞬間、『もう一人のレイモン』は痙攣しながら地面へと倒れこむ。
そして数秒の後、苦しむその肉体に変化が現れた。
両腕と両足の赤色部分が群青色へと変化していき、頭部の二本のツノが長く鋭利に伸びていく。
そして……
―――――――――――――――
「っ!?」
時空の狭間でニセウルトラ兄弟と戦っていたウルトラマンゼロは、ワイドゼロショットでどうにかニセエースを倒した直後に、突如として流れ込んで来た妙な感覚に動揺する。
まるで体内に氷柱を差し込まれたかのような、冷たい感覚。
「何だ?」
嫌な予感がする。強大な闇の気配だ。
その感覚を、ゼロは過去に感じた事が有った。
「ベリアルか?いや、これは……」
ベリアルと同質の、いや、それよりも深く強大な闇。一体何が起こっているんだ?
早く確かめる必要が有るが、今はこの状況を切り抜ける事が先だ。
ゼロは目の前に降り立った敵を前に、宇宙拳法の型を構える。
ニセウルトラマン、そして、ニセウルトラセブン。
「タダのロボットが、親父の姿をマネるなんざ生意気にも程があるぜ」
アイスラッガーを構えるニセウルトラセブンに向かって、ゼロは啖呵を切る。
互いに警戒しながらジリジリと距離を詰める両者、薄氷の時間が流れ、そして……
「デュッ!!」
「ジュワッ!!」
「デリャァァァァァァァァッ!!」