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渦巻いていた闇が、徐々に晴れていく。
だが、そこに有るのは希望ではない。
一塊に凝縮した
「ああ、何万年ぶりの受肉か」
ゆらり、と立ち上がったのは『もう一人のレイモン』だったモノ。
夕日が沈んだ後の水平線のような群青と紺青の入り交じった体色。
巨大な肩章の如く発達した肩の突起からは、まるで王侯貴族かの如くベロアのようなマントが下がり、
頭部の二本のツノは、二倍ほどに伸びて二股に割れ、まるで王冠のようだ。
「空気が肌を撫でる感触、光が当たる熱、そして鼻孔を擽る芳香、全てが懐かしい」
自らの両手をじっくりと両眼で見て、感極まり震える声で呟く
『ギャラクシークライシス』や『レイオニクスバトル』を引き起こし、宇宙中を混乱に陥れ、幾千幾億もの命を奪って来た末の結実。
その悍ましくも遠大な旅路の終着点。
「今再び、我は復活せり、今再び、我は君臨せり……フッフッフッ、ハッハッハッハッハッ!!」
そう宣言し、笑うレイブラッド。
今再び、宇宙は絶対的な闇の手に落ちてしまうのか?
「レイブラッドォォォォォッ!!」
だが、それを許さない者がここに居た。
怒号を上げたレイは一瞬の後にレイモンへと変身し、笑い続けるレイブラッドへと飛び掛かって行く。
人知を超えた怪力が拳の一点に込められ、《ヒュッ!!》という空気を裂く音と共にレイブラッドへと向かって振るわれる。
「落ち着け、我が息子よ」
《バチィッ!!》という破裂音と共に、レイの拳はレイブラッドの目前で停止した。
宙に広がる波紋を見て、どうやらバリアの類を使用したらしいことは分かる。
レイモンは渾身の力でそれを破ろうとするものの、バリアどころかレイブラッドの余裕の態度すら崩す事は出来ない。
「今すぐその体から出て行け!!」
「不毛な要求だな、私がこのために暗躍して来た事は知っているだろう?」
「黙れっ!!」
激怒して自らに楯突いて来るレイモンを一瞥し、レイブラッドは「ふう」と溜息を吐く。
そして胡乱気に片手をレイモンへと向けて一言、
「邪魔だな」
「ガッ!?」
その片手を、まるで羽虫でも払う様にヒラリと動かした瞬間、レイモンは明後日の方向へと物凄い勢いで飛んで行き、轟音と共に壁面へと衝突した。
―――――――――――――――
「レイっ!!」
思わず叫びながら、俺は飛んで行ったレイの方を凝視する。
だが、濛々と立つ土煙によって様子は全く分からなかった。
それにしても……
俺は悠然と立つ完全体のレイブラッドへと視線を向ける。
何て強さだ。コレが全盛期の頃のレイブラッドの力なのか?
思えば精神体の状態で初代マンを
「何なのよ……何なのよコレ……」
その力を見て怯えたヘロディアが、恐怖のあまりパニックになりながら、震える声で嘆き呟いている。
気持ちは分かる。俺だって人目が無ければピーピー泣いていたかもしれない。
緊張に唾を飲み込みつつ、俺は相変わらず恍惚とした様子のレイブラッドへと歩み寄る。
「復活おめでとう、とでも言えば良いのか?」
「ああ、パルデス・ヴィータ、君にも礼を言わねばな」
そう言ってレイブラッドは此方へと手を翳す。
……何だか嫌な予感がする。
「さらばだ」
「っ!?」
俺が咄嗟にコスモドラグーンを取り出して発砲すると同時に、レイブラッドの掌から光線が発射される。
衝突する強大なエネルギーに震える体、あまりの眩しさに目を細めつつ、俺は必死になってコスモドラグーンの反動に耐える。
《一体どういうつもりだ!?》
《復活が叶った今、貴様に生きていられると都合が悪いのだ》
突然の凶行をテレパシーで糾弾すれば、レイブラッドは事も無げに放言した。
《その科学技術、もしもベリアルに渡ってしまえば厄介な事になるだろうからな》
《……究極生命体ともあろう者が、脆弱な一人の人間を恐れるか》
《勘違いするな。『物事を慢心せずに進めていく』これまでの数々の失敗から学んだ事だ》
レイブラッドのエネルギーとコスモドラグーンのエネルギーが鍔迫り合いを繰り広げる。
一進一退の攻防。肉体を手に入れた事で絶対者としての力を再び手に入れたレイブラッドと、小宇宙と比類する強大無限の波動エネルギーを用いたコスモドラグーン。
「ぬおっ!!」
「うあっ!!」
そのエネルギーのぶつかり合いは、エネルギーの衝突点が臨界を迎えた事によって終わりを告げた。
あまりの高エネルギーに大爆発が起き、俺とレイブラッドを爆風が襲う。
地面を数回転がり、節々を打ちつけた痛みに顔を顰めながらどうにか立ち上がると、レイブラッドは地面に大の字になって転がっていた。
「『完全』とは言ったが、まだこの肉体に馴染んでいないようだな」
「ふう」と溜息を吐きながら起き上がったレイブラッドは、ネオバトルナイザーを手に取ると天高くかざす。そして……
「モンスロードッ!!」
レイブラッドの一言と共に、ネオバトルナイザーから『漆黒の稲妻』が放たれた。
その稲妻は、ドーム状の高い天井へと舞い上がった後、床へと堕ちて行って一体の怪獣を形作る。
長く太い尻尾、岩山のように盛り上がった体、頭部に生えた太い三本のツノ。
それは、あまりにも見慣れて、それでいて異質な怪獣。
「ゴモラ……?」
背後から聞こえた声に振り返れば、意識を取り戻したのか呆けた表情でコチラを、いや、正確にはレイブラッドによって顕現したゴモラを見上げるレイ。
しかし、その姿はここに居る誰もが見慣れていた物とは、まるで違っていた。
漆黒の体に、まるで血のように赤黒く染まった双眸、そして上顎から顎下まで長く伸びた二本の牙。
それは元のゴモラとは全く異なる物であった。
「我が力によって強化したゴモラだ。名付けて『ネローゴモラ』とでも言っておこうか?」
ゴモラ、いや、レイブラッドによって強化された『ネローゴモラ』は、天に向かって雄叫びを上げる。
そんなネローゴモラを満足気眺めた後、レイブラッドは無慈悲に指示を出した。
「ネロ―ゴモラ、『メタ振動波』だ」
指示を受けたネローゴモラは再び雄叫びを上げながら、鼻先のツノへとエネルギーを貯めていく。
周囲を震わせる漆黒の稲妻が空気を震わせ、そして、莫大なエネルギーが掃射された。