悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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年末のEXPO千秋楽のチケット、完敗しました(涙)


第六十四話【切り札】

俺は咄嗟にベリアル様を庇う様に覆い被さる。

背中越しに感じる濃密なエネルギー波の熱気。

 

《ドドォンッ!!》

 

轟音に顔を上げれば、壁面へとメタ振動波が激突するのが見えた。

壁面を舐めるようにスライドしていくと同時に、赤熱した壁面が、まるで赤い滝のように崩れ落ちていく。

それはサロメ謹製のニセウルトラ兄弟も例外ではなく、まるで炎に投げ込んだ人形の如く歪み、溶け落ちる。

 

「ひとまずはその程度で良いだろう」

 

一頻り破壊活動をして満足したのか、レイブラッドがネローゴモラに指示を出す。

そしてその指示を出した瞬間、メタ振動波が止まり、辺りに静寂が戻った。

 

「さて、サロメのお嬢さん、貴様は先程『アナタ程度が私を止められるのか』と言っていたな」

 

先程へロディアに言われた事を、レイブラッドは笑顔で言い聞かせるように言って、得意気に両腕を広げる。

 

「私程度でこれだけ出来たぞ?」

 

メタ振動波が止まった隙に、俺はベリアル様を担いで柱の影へと身を隠し、様子を窺う。

 

それにしても趣味の悪い意趣返しだ。

ヘロディアの発言が余程癇に障ったのだろうか?

 

「よくも……よくもっ!!」

 

先程、震え怯えていたのが嘘かのように、顔を赤くして凄まじい形相でレイブラッドを睨みつけるヘロディア。

どうやら恐怖を怒りが上回った様である。そのガッツは褒め称えたい。

 

「絶対に許さない、後悔させてやるわ!!」

「ほう、どうするというのかね?」

 

ギリリと歯を食いしばったヘロディアは、徐にチェアから立ち上がると脱兎のごとく駆け出した。

その様子をレイブラッドは無関心に見送り、その姿が通路の奥に消えていくまでジッと眺める。

 

「彼女が『私をどう後悔させるのか』は楽しみにしておく事にしよう。さて……」

「ハァ…ハァ…」

 

ヘロディアから視線を外したレイブラッドは、再びレイの方へと視線を移す。

自らへの悪意を感じ取り、レイは痛む体で無理矢理立ち上がるが、肩で息をしているその状態はどう見ても万全とは言えない。

しかも余程ダメージが酷かったのか、レイモンの姿から人間体へと戻ってしまっている。

 

「パルデスは殺し損ねたからな、貴様からにしよう」

 

レイブラッドがレイを指さし、ネローゴモラの視線がそちらの方へと向く。

 

どうする?助けに入るべきか?

だが、コスモドラグーンでレイブラッドを撃つわけにはいかない。何せレイブラッドの肉体は元々はレイの物だからだ。

それにレイオニクスとしての怪獣とのシンクロ率を考えた場合、ネローゴモラを撃つわけにもいかない。ネローゴモラの死は『もう一人のレイ』の死に繋がる。

 

万事休すか、と考えていたその時だった。

 

「むっ?」

 

《パァン、パァン》という破裂音と共に、レイブラッドの体が少しのけぞる。

まさかと思い上を見上げれば、天井付近の通路に立つ見覚えの有る人影が有った。

 

「レイっ!!」

「ボス!!」

 

銃を構え、こちらを見下ろしていたのは、先程レイを探すために基地内で分かれていたヒュウガだった。

ヒュウガは満面の笑みで懐からある物を取り出してレイへと見せる。

それは戦いの最中にレイが紛失し、基地に侵入する前に偶然にも見つけ出したネオバトルナイザーだ。

 

「受け取れっ!!」

 

思い切り腕を振りかぶり、ヒュウガはネオバトルナイザーを階下のレイへと放り投げた。

しかし、その投げられた方向はあまりにも見当違いで、真下のレイの頭を優に飛び越えてしまう軌道だ。

 

「ウォォォォォッ!!」

 

だが、レイの身体能力の前ではそんな事は関係無い。

脱兎のごとく走り出したレイは、グッと踏ん張ってその場から跳躍した。

その体は普通の人間ではあり得ないような高度まで飛び、空中を回転しながら飛んでいたネオバトルナイザーを、難無くその手に収める。

 

「ゴモラァァァァァァッ!!」

 

ネオバトルナイザーを手にし、自らの相棒の名を叫ぶレイ。

その瞬間、ネオバトルナイザーが発光し、大量の光の粒子が本体から飛び出して来る。

 

「よしっ、ナイスタイミング」

 

俺は思わずガッツポーズをしながら一連の光景を眺めていた。

これでどうにかネローゴモラに対抗できるかもしれない。

 

光が収まった頃には、その場に一匹の巨大怪獣――古代怪獣ゴモラが現れていた。

その手に飛び乗ったレイは、ネローゴモラを指差し、ゴモラへと指示を出す。

 

「別次元の俺を絶対に救い出す!!行けっ、ゴモラ!!」

 

ゴモラは目の前のネローゴモラを見据え、一つ雄叫びを上げると突進して行く。

怪獣の巨体同士がぶつかり合い、凄まじい轟音が地面を揺らす。

互いに一歩も譲る事無く殴り合い、蹴りあい、尾を振り回し、サロメの基地内は瞬く間に瓦礫が積もる廃墟と化していった。

 

「些か乱暴過ぎやしないか?」

 

激しくどつきあう二体のゴモラに文句を言いつつ、俺はベリアル様の肉体を引きずり、降り注ぐ瓦礫に注意しながら、どうにか瓦礫の少ない壁際へと避難していく。

 

「大丈夫か!?」

 

と、そこへ急いで階下へと降りて来たヒュウガがやって来た。

どうやら瓦礫を掻い潜って無理してこちらまでやって来たようで、傷は無いものの、汗ばんだ額には戦いの余波で立ったであろう砂埃が付着している。

 

「これがパルデスが探していた人か?」

「ああ、おかげさまで見つかったよ。今は気絶しているがね」

「そうか、それなら良かったよ、だが……」

 

無事だった探し人(ベリアル様)を見て我が事の如く喜ぶヒュウガは、やはり光の者だという事が察せられる。

そして一転、ゴモラの方を向くとヒュウガの顔は険しいものになった。

 

「どうやらレイは苦戦しているようだな」

 

見ている限り、やはり完全な復活を果たしたレイブラッドは強いようで、レイのゴモラに対してネローゴモラの方が優勢のようだ。

俺は細かい所を掻い摘んで今の状況――レイブラッドの復活や別次元のレイの事を説明すると、その額の皺が更に深くなっていく。

 

「何か助けになれる事は……」と逡巡するヒュウガを見て俺はある事を思いついた。上手くいけば、一気に戦力が増えるかもしれない。

目の前のヒュウガへの説明が面倒臭くなるかもしれないが、今は緊急事態、レイブラッドを止める事が先決である。

奴を放置すれば今後どうなるか、考えただけでも寒気がする。

 

「すまないが、その方を連れて、先に外へと脱出してはくれないか?」

「パルデスはどうするんだ?」

「私はレイを助ける為に、出来る事をしようと思う」

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

《ズゥン…ドォンッ…》

 

レイとレイブラッドが戦い始めていた頃、基地内が破壊されていく轟音が響く中、ヘロディアは脇目も振らずに通路を駆けていた。

その脳内を占める思考はただ一つ、自らの邪魔をし、野望を粉々に破壊した者共への怒りである。

 

「許さない、絶対に許さない!!」

 

通路の最奥にやって来たヘロディアは、目の前の扉の横に有る機器へとキーワードを打ち込む。

そして正しいキーワードを打ち込んだ瞬間、鈍い起動音と共に扉が横へスライドし、小部屋――エレベーターが姿を現した。

 

「私を舐めた事、後悔させてやるわ」

 

エレベーターが下降し始めて数十秒、体が少々重くなる感覚と共に停止し、扉が開いた。

そしてヘロディアが一歩外へと出た途端、パッと照明が灯り、部屋の内部を明るく照らし出す。

 

「本当は光の国を抑える為の切り札だけど……」

 

笑うヘロディアの前に、一体の()()()()()()()が立っていた。

 

「サロメの恐ろしさ、見せてあげる……【SR-06】起動!!」

『マスターヘロディアの音声を感知、対宇宙警備隊用殲滅兵器【SR-06】の起動準備に入ります』

 

電子音声と共に、【SR-06】と呼ばれたロボットの眼に光が灯った。




本編には関係無いですが、今現在『ルパン三世』の二次創作連載の案を温めたりしています。
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