悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第六十五話【群青の絶望】

《ドォォォンッ!!》

 

静謐な惑星チェイニーの地表に、突如として轟音が響く。

その音の発信源はサロメ星人が築いた基地、その基地の壁の一部が崩壊した音だった。

 

そして、その崩壊した壁の巨大な穴から、地を揺るがす咆哮と共に二体の怪獣が縺れ合いながら飛び出して来る。

 

「怯むな、ゴモラっ!!」

 

ゴモラの足手まといになってはいけないと、再び地表へと飛び降り、声を張り上げて指示を出すレイ。

レイとゴモラは唯一無二の絆で結ばれた相棒であり、互いの存在は互いを高めあう。

 

「かつて絶対者と呼ばれし我が力、存分に見せてやろう」

 

だが、レイブラッドも怯まない、それどころか余裕さえ感じる態度でゴモラへと命令を行う。

レイブラッドが行う命令は『絶対』である。その効力は、対象になった怪獣が自らの身を顧みずに行動するほどだ。

「やれ」と言われれば逆らう事は出来ない上、命令だけで肉体のリミッターを容易に外す事も出来る。

かつてはゼットンの火球を限界を超えた出力で発射させ、使い捨ての如く扱っていたという。

 

「行くのだ、我が(しもべ)よ」

 

その一言と共に、ネローゴモラは迷わずゴモラへと突進して行く。

ゴモラは正面から受け止めるが、レイブラッドによって潜在能力を限界まで引き出されたその攻撃は凄まじく、ゴモラはズルズルと後ろへ押されて行ってしまう。

万事休すかと思われた時、再びレイからゴモラへと指示が飛んだ。

 

「耐えろゴモラ!!あれだけの力、ずっとは出し続ける事は出来ない!!」

 

一見ゴモラにとって不利に見えるこの状況。その中でも、レイは勝機を見逃していなかった。

 

肉体の限界を超えた力を発揮するネローゴモラは、着実に摩耗していっている。

ゴモラを押し出す為に力を入れるその力強い脚部からは、熱が籠っているのか湯気が立ち上っていた。

そしてその湯気に合間からは、表面に広がるアザ――内出血が見受けられる。

 

流石のレイブラッドも、深いシンクロによって繋がれているゴモラを、粗末に扱う事は無いだろうとレイは思っていた。

深く繋がった怪獣の死は、そのまま怪獣遣いの死に繋がるからだ。

 

「何!?」

 

だが、レイの目論見はレイブラッドによって潰される事になる。

ニヤリと笑ったレイブラッドが手を翳すと、ネローゴモラは左腕を振りかぶり、ゴモラの顔面へとパンチを食らわそうとした。

 

《ガブッ!!》

 

その腕を寸での所で避けたゴモラは、逆に顔面へと飛んで来た腕に噛みついた。

牙が食い込み、ネローゴモラの腕から血液が溢れ出す。

しかし、その傷を意に介する事無く、ネローゴモラは自らに噛みつくゴモラの鼻先のツノを無事だった右腕で掴み、無理矢理引き剥がした。

その行動によってネローゴモラは牙から逃れる事は出来たものの、左腕の傷は広がりズタボロの状態だ。

 

「中々やるではないか?我が息子よ」

「お前に息子と呼ばれる筋合いは無い!!」

「貴様が光の者になろうと、その体に流れる血は我の物だ」

 

挑発して来るレイブラッドに対して、レイは眼光鋭く睨みつけるが、ここでレイはふと、ある違和感に気付いた。

ゴモラとレイのシンクロはかなり高い物のはず、それはネオバトルナイザーを所有する『もう一人のレイ』も同じはずだ。

という事はネローゴモラへのダメージは、『もう一人のレイ』の肉体に憑依したレイブラッドへとフィードバックする筈。

それなのに、何故かレイブラッドはダメージを受けず、何事も無かったかのように振舞っている。

 

「今、貴様は『何故ゴモラを攻撃しているのに我にダメージが入らないのか』疑問に思っているだろう?」

「なっ!?何で……」

「貴様の考えている事ぐらい分かる。復活後のデモンストレーションに付き合ってくれた礼に教えてやろう」

 

レイブラッドは右腕を頭上へと掲げた。

そして力を籠めると、その掌に青い炎のようなものが現れる。

 

「コレはこの肉体の持ち主であるレイの魂だ」

「何だって!?」

 

レイが凝視する前で、レイブラッドは『もう一人のレイ』の魂を見せつける。

その魂は、ユラユラと揺らぎ、まるで苦しんでいるかのような……

 

「……まさか」

 

揺らぐ『もう一人のレイ』の魂を見て、レイはある恐ろしい考えに至る。

どうか外れていてくれと、願うレイの姿を嘲笑うかのように、レイブラッドは残酷な真実を告げた。

 

「そうだ、ネローゴモラはこのレイの魂を触媒にして我が操作している。故に、フィードバックを受けるのはレイの魂だけなのだ」

「レイブラッドォォォォっ!!」

 

あまりにも酷い仕打ちに、レイは怒りのあまり自ら殴り掛かろうとした。

しかし、レイブラッドは悠然とレイを見据え、残酷な言葉を吐く。

 

「良いのか?我の肉体にダメージを与えても」

「クッ……」

 

レイは爪が手に食い込むほどに拳を握り締め、踏みとどまった。

そうだ、今レイブラッドへダメージを入れるのは『もう一人のレイ』を傷付けるという事。

そんな事、絶対に出来ない。

 

「貴様がネローゴモラを倒せばレイの魂が消滅し、この肉体は完全に我の物。我が貴様を倒せば、邪魔者が居なくなるだけだ」

 

「どちらに転んでも、我が利を得る事は変わらないのだ」と言外に示すレイブラッドに、レイは悔しがるも手を出せない。

このままではゴモラは倒され、怪獣遣いである自分は死んでしまうだろう。

だからと言ってレイブラッドやネローゴモラを倒せば、必然的に『もう一人のレイ』の死へと繋がってしまう。

 

どうしようもなかった。

 

「ぐあっ!?」

 

ネローゴモラが尻尾を振り回し、ゴモラへと攻撃する。

衝撃で吹き飛ぶゴモラの体が地面へと打ちつけられ、シンクロしている自らの腕にも激痛が走る。

 

「どうした?もう仕舞いか?」

「グッ……ううっ……」

 

そのまま畳みかけるように攻撃して来るネローゴモラを必死に受け流そうとするゴモラ。しかしそれでもダメージは蓄積し、シンクロしているレイからも刻一刻と体力が奪われていく。

どうすれば良い?『もう一人のレイ』を救い、レイブラッドのみを倒すには、一体どうすれば……

 

「ネローゴモラ、メタ振動波」

 

考え込んでいたレイが、レイブラッドの声にハッとした頃にはもう遅かった。

ネローゴモラから発せられたメタ振動波がゴモラの胸へと直撃し、その巨体を吹き飛ばす。

 

「ぐあぁぁぁぁっ!!」

 

瞬間、レイの胸部にも、まるで赤熱したナイフで刺されたような衝撃と激痛が走る。

そしてゴモラが地面に叩きつけられると同時に、レイは地面へと倒れこんだ。

 

「これで終わりか?案外呆気ない物だな」

「ああっ……」

 

呻き声を上げながらも、どうにか立ち上がろうとするレイだが、あまりのダメージに立ち上がる事が出来ない。

一歩一歩、近づいて来るレイブラッド(死神)を前に、成すすべ無く地面に横たわるレイ。

 

もう、ここで終わりなのか?まだ、俺にはやりたい事が有るのに。

いつか地球へ行ってみたいという夢も、叶わないまま終わるのか?

 

「止めだ、貴様の姉に会えると良いな」

 

レイブラッドがレイへと手を翳すと、その手にエネルギーが溜まっていく。

先程パルデスへと繰り出した光線だろう。

だが、絶望したレイに、もう体を動かせるような余力は残っていなかった。

 

俯いたまま動かないレイへと、光線が発射される……その直前だった。

 

「やめろっ!!」

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