悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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クシア編も、あと1話か2話で終了かな?


第六話【クシアのいちばん長い日】

俺は最後までこの居住区に残るつもりだ。

ク号作戦を発案したのは俺である以上、犠牲に対する責任を負わねばならない。

撤退して来るであろうク号作戦の実行部隊を収容してからクシアを脱出する予定だ。

 

「パルデスさん!!」

 

そんな感じで談笑していた時、俺たちの間に割って入る声。

いったん話を止めてそちらの方を振り向くと、こちらへと駆け寄って来る一人の女性の姿が有った。

慌てて走って来たのか、肩で息をしていたその女性は、息が整うと俺の事を困惑したような表情で見つめてくる。

 

「本当にここに残るのですか?」

「ああ、俺が作戦の発案者である以上は見届ける義務がある」

「でも……」

 

戸惑っている一人の女性。

そう、俺の目の前に居るのは劇場版ジードのヒロインである『比嘉愛琉』こと『アイル・サデルーナ』その人だ。

俺の上司であるブラン・サデルーナの一人娘であり、彼女自身も研究者の一人でもある。

そして俺やブラン博士らと同じくテラハーキスの研究者であり、つまりはギルバリスの生みの親の一人だ。

 

「分かって欲しい、アイル君」

「でも、パルデスさんお一人だけを残していくなんて……」

「大丈夫だ、都市機能はまだ生きてるし、迎撃システムも作動する、よほどの事が無い限りは無事に脱出できるさ」

 

安心させるように、俺は彼女の肩に手を置いてポンポンと優しく叩く。

 

原作では、アイルは全てのクシア人の犠牲と引き換えにどうにかクシアを脱出し、平行宇宙であるサイドスペースの沖縄で、ハッキリとした年数は分からないものの数千年、下手すれば一万年以上をグクルシーサーと共に過ごす。

そして現代になり、ウルトラマンジードこと朝倉リクと出会って、最強フォームであるウルティメイトファイナル覚醒のキッカケとなる。

 

その命と引き換えに……

 

最初は俺もリスクを最小限にする為に原作通りに行こうとした。

ウルトラマンの世界は綱渡りのようなもので、一つ間違えれば星どころか宇宙すら消えてしまう可能性があり、怖かったのだ。

だが、一緒に日々を過ごし、彼らの優しさに触れている内に、情が湧いて見捨てられなくなってしまった。

彼らは創作の中の存在ではない。俺の目の前で生きている一つの命なのだ。

だからこそ、俺は必死になって作戦を考え、前世の知識をも活かしてギガファイナライザーの開発へと全力で挑み、一人でも多くの人が生き残れるようにと手を尽くしてきた。

 

それに、最初の人生での記憶から、皮肉にも悪役であるアブソリュート・タルタロスの存在が俺に希望をくれた。

タルタロスがレベル3マルチバース(IFの世界)の存在を確定させてくれた事で、もしも俺が原作を逸脱しても、『原作通りの宇宙』の存在が有るだろうという事が分かったのだ。

だからこそ、こうして開き直って原作改変をしようという意欲が湧いた。

そういう意味ではタルタロスには深く感謝しているし、「タルタルソースなんて言ってゴメンね」という気持ちもある。

 

「ギガバトルナイザーの方は?」

 

そんな事を考えていると、ブラン博士からも話が飛んで来る。

 

「居住区の地下に移送しました、これで誰も触れる事は出来ないでしょう」

 

ギガバトルナイザー、ここから先の未来ではウルトラマンベリアルも使用していた武器で、闇の力を極限まで高める兵器だ。

ギガファイナライザーを生み出した副産物として出来たものの、あまりにも危険な為に処分しようという話になったが、頑丈に作った故に全く破壊できず、最終的にはクシアに置いて行く事になった。

ギルバリスはコンピュータであるためにギガバトルナイザーが使えず、なおかつ生命の存在を許さないギルバリスの本拠地に隠しておけば、誰かに悪用される事は無いだろうという判断だ。

 

()()()()()

 

実際には、ギガバトルナイザーには最後の仕事が有る。

責任がどうとか偉そうな事を言ったが、実はクシアに残る目的の大部分はそれが理由だったりする。

 

「そろそろ時間だな」

 

話している内に時計の針が発進予定時刻へと近づく。

名残惜しいが、そろそろ乗組員を全員搭乗させなければならない。

 

「ブラン博士、アイル君、しばらくのお別れです」

「君も、無事の脱出を祈っているよ」

「絶対に来てくださいね!!」

 

これでしばらくは会えないだろうが、全ては計画を無事に遂行するためだ。

宇宙船に乗りこむブランとアイルの背を見送り、俺は格納庫から出て管制室へと歩みを進める。

とは言っても管制は自動化されている為、俺以外には誰一人おらず、ただ見ているだけなのだが。

 

ガラス張りの管制室は遮音されてはいるものの、盛大に唸りを上げるエンジン音がガラスを震わせる。天井の隔壁が徐々に開いて行き、地下格納庫を上昇していく宇宙船たち。

飛び立った後は、いわゆる『ジードの世界』である平行宇宙のサイドスペースへと飛び、それぞれの宇宙船が手分けして居住するのに適した星を探索する予定となっている。

それにしても、限定的とはいえマルチバース間を渡る事が可能だとは、実はクシアってウルトラマンシリーズの中でも一二を争う高度文明なのでは?と今更ながら思う。

 

《聞こえているか?パルデス君》

「感度良好です、ブラン博士」

 

ボーっと宇宙船を眺めていた俺の耳に届いた声に、俺は設置されていた無線機のマイクを手に取って返信する。

管制室の計器にも特に異常は無く、そのまま発進しても問題無さそうだ。

 

「そのまま自動管制に従って離陸して下さい、軌道はコンピュータの方に入力してあります」

《了解》

「クシア星脱出後はブラックホール『TBR Y1963-412』へと向かい、高重力下の空間歪曲を利用して平行宇宙へと通じる人工ワームホールを開く事になります」

《了解》

 

外部に設置されたカメラから、管制室へと映像が流れて来る。

宇宙船は合計6隻、ブランとアイルが乗っている物以外は、いずれも大型の部類に入る。ただ、それでも搭乗人員は一隻につき1000人程度の上、全ての船の搭乗人員はそれに満たない。

全盛期には45億を数えた人口も、今やこの人数しか残っていなかった。

 

それでも、原作に比べれば多くを救えた。

これからも辛い事や苦しい事はいっぱいあるだろうが、それでもアイルを一人ぼっちにしてしまうような事だけは避ける事が出来た。

 

《予定航路異常無し、これより大気圏外へと出る》

「どうか気をつけて……」

 

通信が切れ、遠ざかる宇宙船から発せられるエネルギーの光も青空に紛れて見えなくなる。

それを見送った俺は、ようやくこの星での最後の仕事へと取り掛かった。




登場人物やアイテム設定もまとめて投稿する予定です。
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