悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第六十六話【間に合って良かったよ】

ベリアル様を担いだヒュウガを見送り、俺は磔にされたダークロプスゼロの真下まで歩み寄る。

サロメの基地内は所々壁が崩壊し、メタ振動波が当たった場所は溶け崩れ、先程までの無機質で清潔な空間が嘘だったかのように廃墟同然ではあるものの、

戦っていたゴモラ二体が外へと場所を移したことによって、既に瓦礫の落下は収まっていた。

 

「どうやら目立った損傷は無いようだな」

 

ネローゴモラが発射したメタ振動波によって、サロメが創り出したニセウルトラ兄弟の多くが破損し物言わぬガラクタと化した中、幸いにもダークロプスゼロは無傷だった。

 

俺は懐からダークロプスゼロのコントローラーを取り出す。

物自体はアイルが持っていたペンダントとほぼ同じ物だ。違いといえば、アイルのペンダントが花をモチーフにしたデザインだったのに対して、此方は星をモチーフとしたデザインになっている事ぐらいだ。

 

「ダークロプスゼロ、起動せよ」

 

掌に乗せて思念をを送れば、星のモチーフの中央に嵌め込まれた特殊な石が輝きを発する。

この石は人の意思をエネルギーに変換する事が可能な、言わば『簡易版ギガファイナライザー』とも言える人工宝石だ。

勿論、ギガファイナライザーに比べればエネルギーの変換量も総量も微々たるものではあるが、様々な用途に応用出来る。

 

『……アクチュエーター、人工骨格、AI、オールグリーン』

 

例えばアイルはグクルシーサーとの意思疎通や、簡易的なエネルギーシールド発生装置として使用していた。

そして俺の場合はというと、先程も言った通りに【ダークロプスゼロのコントローラー】として、機能をその一点に絞り、この装置を作り出している。

 

そうする事で、多用途性は捨てる事になったものの、その機能は強力。

人格が芽生える程の高度なAIを、強力な思念で縛り付け不可逆なコマンドを実行させる事も可能だ。

 

……ギルバリスにも、こういう縛りを付けるべきだったなと思ったが、過ぎた事を悔やんでも仕方が無い。

 

「目覚めの気分はどうかな?ダークロプスゼロ」

『特に異常は見られない、それと《目覚めの気分》とは何だ?マスター』

「ほう、どうやら大丈夫のようだな……お前には高度なAIが搭載されている、学習を重ねれば自ずと意味も分かるだろう」

 

どうやらダークロプスゼロには問題は無いようだ。

ジョークのつもりで投げかけた言葉に返された、いかにもAIらしい質問をはぐらかしつつ、俺はダークロプスゼロへと指示を出した。

 

「まずはそこから抜け出せ」

『了解……フンッ!!』

 

《バキッ》という音と共に、自らの体を戒める拘束具を壊しながら、ダークロプスゼロは右腕を振り上げる。

次に左腕、その次に左足、さらに右足と順に拘束を解いていき、自由になったその体でフワリと宙に浮きあがる。

 

『次はどうすれば?』

「基地内の見取り図によれば、この扉の向こうにメカゴモラが待機しているはず、ダークロプスゼロチェンジャーで掌握しろ」

『了解』

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

パルデスの指示によりサロメの基地から脱出したヒュウガは、怪獣同士が壮絶な戦いを繰り広げているのを横目に岩陰へとその身を隠し、自らのジャケットを地面に敷くと、担いで来た『パルデスの探し人』を地面へと横たえさせる。

顔色は悪くなく、穏やかに呼吸をしているその姿は普通に睡眠を取っているかのようだが、ここまで担いで来た振動を受けても全く起きる気配を見せず、何らかの異常が有るという事が分かる。

 

「やはりレイブラッドが憑依していた影響か……」

 

先程のパルデスによる説明を思い出し、ヒュウガは唸りながら、その穏やかな寝顔を眺める。

 

パルデスの話によれば、この人物は『大切な友人』だそうで、どうにかレイブラッドを肉体から引き剥がす為に、側近として近づき行動していたのだとか。

そして今日、偶然にも条件が整った結果、レイブラッドはこの肉体から抜け出し、別の次元のレイの肉体を乗っ取って復活したという事らしい。

 

勿論、これらは全てパルデスが適当にでっち上げた話なのだが、それは置いておこう。

 

岩にもたれるようにして地面に腰を下ろすと、ヒュウガはしばしの休息を取る。

本当ならレイブラッドと戦っているであろうレイのもとへと駆け付けたいところではあるが、こうして負傷者を連れている以上そうもいかない。

 

「まずはパルデスを待つか」

 

切羽詰まった状況だった為に説明は聞けなかったが、ひとまずはパルデスを信じて待とう。

ヒュウガがそう考え、少しでも疲れを取ろうと目を瞑った時だった。

 

「ぐあぁぁぁぁっ!!」

「レイっ!?」

 

突如として聞こえて来た仲間の悲鳴に、ヒュウガはトライガンナーを取り出した。

そして少しでも見つからないようにと『パルデスの探し人』を岩陰の奥の方へと移動させ、コッソリと慎重に物陰から身を乗り出す。

 

「これで終わりか?案外呆気ない物だな」

 

声の方向へと視線を向けたヒュウガの目に映ったのは、俯くレイと、それを見下ろすレイブラッドの姿だった。

レイは攻撃のダメージによるものなのか、胸を抑えて苦しそうに肩で呼吸をしている。

対するレイブラッドは実に涼し気に、冷酷な目でレイを見下ろしながら、その手を翳した。

 

「止めだ、貴様の姉に会えると良いな」

 

レイブラッドの掌に赤黒いエネルギーが溜まっていく。

このままではレイが……と思った途端、ヒュウガは後先考えずに駆け出していた。

 

「やめろっ!!」

 

走りながら、レイブラッドへと向かってトライガンナーを何度も撃っていく。

その弾丸はレイブラッドの硬い表皮を貫く事は出来なかったものの、レイから気を逸らさせる事には成功した。

 

「虫けら風情が邪魔をするな」

「っ!?」

 

気分を害されたレイブラッドが、レイへと向けていた手を駆け寄って来るヒュウガへと向ける。

恐怖は有る、だがヒュウガの足は止まらない。レイを……仲間を助ける為に。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

何度弾丸を打ち込まれても、レイブラッドの体は小動もしない。

それどころか、レイブラッドの掌に溜まった莫大なエネルギーが、飛んで来た弾丸を一瞬で溶かしつくしてしまう。

 

それでもヒュウガは足を止めず、果敢にレイブラッドへと立ち向かって行く。

 

「愚か者めが」

「逃げろっ!!ボスっ!!」

 

レイがヒュウガへ逃げるように叫ぶ。

しかし、遅かった。

 

「死ぬがいい」

 

レイブラッドの一言と共に、その掌から光線が放たれた。

周囲の岩を破壊しながら直線状に飛んで行くその光線は、ヒュウガが居る場所に着弾し、大爆発を起こす。

 

《ドォォォン!!》

 

着弾点からキノコ雲が立ち上り、周囲は煙によって視界が悪くなる。

だが、その煙を突き抜けるかのように、大きな叫び声がこだました。

 

「ボスゥゥゥゥッ!!」

 

苦悶の表情で、ヒュウガが居た場所へと手を伸ばすレイ。

目の前で仲間を失う悲劇。

 

あんな攻撃を受けては、鍛えているとはいえ普通の人間であるヒュウガにはとても耐えられないだろう。

あまりの絶望に、レイは先程の『もう一人のレイ』と同じく俯いたまま動かなくなる。

 

「心配するな、すぐに奴のもとへ送ってやろう」

 

そんなレイへと、レイブラッドは再び掌を翳した。

先程と同じく、赤黒いエネルギーがどんどんと溜まって行き、空気が振動する。

 

そして、ピクリとも動かなくなったレイへと、光線が放たれようと……

 

「間に合って良かったよ」

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