悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第六十七話【薄氷の交渉】

危ねぇぇぇぇぇぇっ!!

 

俺は内心で叫びつつ、表面上では冷や汗を流しながら、間一髪で救出に成功したヒュウガを見る。

どうやら何が起こったのか分かっていない様子で、へたり込んだまま呆然と固まっていたが、しばらくしてハッと我に返ると立ち上がって俺の方へと駆けて来る。

 

「パルデスさん?何故……」

「どうやら危険な状況だったようなのでね、くどいかもしれんが、本当に間に合ってよかった」

 

ホッと胸を撫で下ろす俺の前で、ヒュウガは状況を理解しようとしたのか、周囲をぐるりと見渡す。

が、ある一点に視線をやった途端《ピシリ》という効果音が似合うぐらいの勢いで固まった。

 

「うおぁぁぁぁっ!?」

 

ああ、やっぱり驚くよなと思いながら、俺は奇声を上げたヒュウガへと歩み寄り、安心させるように肩に手を置く。

まあ先ほどまで()として戦っていた存在が、目の前に居るのだから、その反応も仕方ないと言えば仕方ないとは思うが。

 

「落ち着きたまえ、彼は味方だ」

 

無駄かもしれないと思いつつも、俺は呆然と口を開けた状態でダークロプスゼロの頭部を見上げるヒュウガへと声をかけた。

 

そう、今俺達が立っているのは、空中で静止しているダークロプスゼロの掌の上だ。

メカゴモラの洗脳が済み、基地壁面に開いた大穴から出てみれば、そこにはレイブラッドの光線をモロに浴びようとするヒュウガの姿。

慌ててダークロプスゼロへと指示を出し、光線が直撃する直前で救い出したという訳である。

 

「運の良い奴だ」

「ボスっ!!良かった……」

 

眼下を見れば、忌々し気にこちらを睨むレイブラッドと、無事だったヒュウガを見て安心した様子のレイがコチラを見上げている。

だが、ベリアル様の姿が無い。

 

「ヒュウガ、私の連れは何処に?」

「あそこの岩陰に隠した、ひとまずは無事だと思う」

 

ヒュウガが指さす方向を見れば、一際大きな岩が地面から突き出すように聳えている。

怪獣に荒らされている形跡が無いところを見ると無事ではあるだろうが……

 

「意識の無い者を戦場に放置するのはいただけないな」

「すまない、レイがやられそうになっていたから思わず……」

 

両眉を下げて申し訳なさそうに謝罪して来るヒュウガに、俺は内心で溜息を吐く。

だが、仲間が目の前でやられそうになっているのを放ってはおけなかったのだろうという事は分かる。

厄介で愚かで、気高く美しい、それが光の者なのだから。

 

「まあ良い……来い、メカゴモラ!!」

 

そんなヒュウガに憧憬を抱きつつも、俺は今の状況を打開すべく動き出す。

俺が指示を出した瞬間、雄叫びと共に基地の壁を突き破って来たメカゴモラが、ネローゴモラへと突進して行く。

 

「応戦するのだ、ネローゴモラ」

 

対するレイブラッドも指示を出し、低く構えた後に凄まじい地響きと土埃を上げながらネローゴモラが駆けだす。

急速に近づいて行く二体の怪獣、そしてついに、轟音と共に交点で接触した。

 

《ドカァァァン!!》

 

鳴き声を上げながら押し合いを続けるネローゴモラとメカゴモラ。

まるで輪舞曲でも踊るかのように、取っ組み合いながらその場から離れていく。

 

「降ろしてくれ、ダークロプスゼロ」

『了解』

 

やがて、二体の怪獣が基地から数百メートルは離れたのを確認し、俺は地上へと降り立つべくダークロプスゼロへと指示を出す。

俺達に負担を与えない為ゆっくりと降下したダークロプスゼロは、軽い地響きと共に地上へと着地すると、かがんでその手を地上へと下ろした。

 

「話をしようじゃないか、レイブラッド」

「ふむ、先程貴様には用済みと言ったはずだが?」

 

交渉しようと歩み寄る俺を前に、レイブラッドはその掌を向ける。

それに対して。俺は再びコスモドラグーンを向けた。

 

ピタリと制止する俺とレイブラッド、その様子を固唾を飲んで見守っていたレイだったが、不意に我に返ると俺に向かって叫んで来る。

 

「やめてくれ!!今レイブラッドが宿っているのは別次元のレイの体だ!!」

 

ああ、確かにそうだな。俺も見ていたから分かるよ。

そう内心で返しながら、目の前のレイブラッドを見据える。

 

相手の表情はまるで能面のようで、見ただけでは内心を測り知る事は不可能だ。

まあ、それを言えばウルトラマンも同じではあるが……

 

「さて、交渉しようではないか?レイブラッド」

「今更何を話す必要が有る?我は肉体を手に入れた時点で目的を達しているのだぞ」

「ああ、確かにな、だが……その肉体、既に消滅しかけているのではないか?」

 

俺がそう言った途端、レイブラッドは不自然に動きを止めた。

推測はしていたものの、ほぼ当てずっぽうで言った事ではあったが、間違っていなかったようだ。

 

「どういう事だ!?まさか別次元のレイはもう……」

 

ショックを受けたであろうヒュウガの言葉を無言で聞き流し、俺は変わらず油断無くレイブラッドを睨み続ける。

 

レイブラッドが奪った『もう一人のレイ』の肉体は、この時空に適応出来なかった関係で、レイと出会った時点で既にレイモンの姿でないと維持が出来なかった。

とすると、レイモンの姿で居たとしても限界は有るはずだ。

それを盾に、俺はレイブラッドへと交渉を持ち掛ける。

 

「その肉体を手放すのなら、元の次元に戻った時により強い肉体を与えよう、無論、俺達を殺そうとした事も不問にする」

「む?」

 

その提案に、レイブラッドは僅かにだが反応する。

レイブラッドはベリアルの肉体に憑依し、その内側から外の様子を眺めていた。それ故、俺の科学力を熟知しているはずだ。

だからこそ、この提案を無視出来ないはず。

 

それに……

 

《周辺の宙域に、アンドロメダが待機している事を忘れるな》

《……ほう、脆弱な人間の癖に言うではないか》

《脆弱だからこそ、それを装備で補うのが人間なんだよ》

 

レイとヒュウガに聞かれないように、テレパシーでアンドロメダの波動砲の存在をちらつかせれば、レイブラッドは黙り込む。

一隻だけではあるものの、時空の不安定なこの場所で撃てば、惑星チェイニーを時空諸共崩壊させる事が出来る。

そうなれば惑星崩壊に巻き込まれて死ぬか、時空の巻き戻りでレイの肉体から引き剥がされて、再びベリアルとニコイチの肉体に戻る事になる。

 

そこまで考えて、俺はようやく気付いた。

どの道、今の時点ではレイブラッドが完全体に戻る事は不可能だという事実に。

 

これが歴史の修正力という奴であろうか?

まあ、それは置いておこう。

 

「貴方にとっても悪くは無い提案だと思うが?」

「むう……」

 

目の前でレイブラッドが腕を組んで考え込む。

どうやら悩んでいる様子だ。

後もう一押し……俺が内心でほくそ笑んでいた時であった。

 

「ダメだ!!」

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