悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第六十八話【現れし深紅】

蹲っていたレイが、突如として俺に掴み掛って来る。

吃驚した俺は、咄嗟に反応できずに、思わず後ろへとひっくり返りかけた。

実際には二三歩後ろへとよろめいただけで済んだが。

 

「何の真似だ?」

 

満身創痍でボロボロになったその見た目からは想像も出来ない力強さに顔を顰めながらも、俺はレイに行動の真意を問う。

多少のイラつきが声に出たのは仕方のない事だろう。

消耗し、限界が近いのか、肩で息をしながらも必死で俺へと訴えかけて来る。

 

「レイブラッドが復活すれば、きっと様々な星の人々が悲惨な目に遭う!!」

 

レイのその言葉に、俺は一つ溜息を吐く。

あまりにも非合理的だ。

 

「だから止めろと?何故そんなに他人の事を気にするのだね?」

 

レイブラッドが蘇り、支配に乗り出したとして、名前も顔も知らない赤の他人の被害を気にかける必要が有るのか?

自分の身の回りを守っていればそれで良いではないか?

俺が必死になってニュークシアを守っているように。

 

「確かに俺の考えはおかしいかもしれない、けど……」

 

そこまで言って一瞬視線を彷徨わせた後、レイは再び此方を見据える。

その眼光の強さに、俺は思わず後ずさりしそうになるが、何とか目を見開くぐらいで耐えた。

 

「ここで見逃して、もし誰かが傷ついたとしたら、きっと後悔してもしきれない!!」

 

断固とした言葉で、俺の行動を止めようとレイは必死だ。

それにしても、なんて強い意志を秘めているんだ、これが光の者か。

ここまで、ここまで他人に対して愛を向ける事が出来るとは……

 

「……蛮勇だな」

 

呆然とする俺の後ろで、ここまで俺とレイの話を聞いていたレイブラッドが会話に割り込んで来る。

表情に出てはいないが、明らかに呆れたような様子だという事が分かった。

 

「もしもパルデスの案を聞き入れるなら、この別次元のレイの肉体は解放されるのだぞ?」

 

両手を肩の所まで上げ、自らの肉体を誇示するような仕草を取るレイブラッド。

その声には、隠しきれない嘲笑が滲み出ている。

 

「その機会を、みすみす逃すつもりか?」

 

現実的に見れば、確かに俺が提示した案は魅力的に思うだろう。

人質となっている『もう一人のレイ』は解放され、この星を無事に出て行く事が可能だ。

 

だが、ここはやはり光の者なだけあって『自分だけ良ければいい』なんて考えには至らないのだ。

 

「それでも……それでも俺はっ!!」

 

ヨロヨロと立ち上がり、バトルナイザーを構えるレイ。

眩い閃光と共に再びレイモンの姿となり、レイブラッドと相対する。

 

やはり妥協はしないか……『妥協』は光の者にとっての『諦め』に他ならないからな。

愚かだとは思うが、だからこそヒーローたり得るのだ。

 

「下らん」

 

しかし、そんなレイの決意を一言で切り捨て、レイブラッドは再び、その手にエネルギーを収束させていく。

これでトドメをさすつもりなのだろう。

 

「貴様が何故、こ奴らに入れ込むのかは分からないが、残念だったな」

「……」

 

俺は無言でその様子を見ながら、どうにかレイを救う手段を考えるが、どうにも思いつかない。

全く、この場では素直に提案を受けていればよかったものを。どうせレイブラッド一人では宇宙警備隊には敵わないというのに。

それにもし宇宙警備隊が止められなかったとしても、キングやノアが居る事を考えれば、コイツが一人で出来る事などタカが知れている。

 

「レイ、逃げろ!!」

「ダメだ、ボス!!」

 

叫びながら射線に体を滑り込ませて、両腕を通せんぼするかのように広げるヒュウガ。

レイは必死になって止めようとするが、ヒュウガは動かない。

ヒュウガの仲間を守ろうという強固な意志が、消耗しているレイモンの力を上回っているのだろう。

 

「麗しき絆だなぁ、共に終わらせてやろうではないか?」

 

仕方ない、出来ればこんな事はしたくは無かったが……レイには申し訳ないが、『もう一人のレイ』にはココで消えてもらおう。

そもそも『もう一人のレイ』は今後物語に登場する事は無く、今ココで殺したとしても今後の影響は最小限だろうし。

俺はコスモドラグーンをレイブラッドへと向けようとした。

 

だが……

 

《ドンッ!!》

 

突如としてサロメの基地の方向から響いた轟音。

あまりにも突然の事で、俺は思わず腰のホルスターに手をやったまま固まる。

一体何なんだ?

 

「チッ、何事だ?」

 

流石に無視出来ないと思ったのか、舌打ちをしながらレイブラッドはエネルギー収束を中断させ、サロメの基地を見る。

レイとヒュウガもそちらへと視線を移し、そして俺も釣られて視線をそちらにやった瞬間、固まった。

 

何だ?アレは……

 

濛々と立ち上る煙の中、サロメの基地上空に浮かぶ巨大な人型。

 

深紅のカラーとシルバーのラインに彩られた体色、

スレンダーながらも鍛え上げられ引き締まった肉体、

胸を守るように装着されたプロテクターに、銀の頭部に生えた二本のツノ。

 

それはあまりにも見覚えの有る、しかしココには存在しないはずの存在。

 

「ウルトラマン……タロウ?」

 

そこには、ウルトラ兄弟の一角を占める深紅の巨人――ウルトラマンタロウの姿があった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

歪んだ異空間の中、ウルトラマンゼロは足場にしていた岩から飛び立ち、まだら模様に染まった虚空を睨む。

 

早く、早くここから脱出しないと。

 

「脱出だ、ゼロ」

 

そんなゼロの内心を読んだかのような言葉を発しながら、横に並ぶ深紅の戦士。そう、ウルトラマンゼロの師匠であるウルトラマンレオだ。

宇宙空間にてゼロの危機を察知したレオは、助太刀の為にこうして異空間へと侵入したのだ。

結果、どうにかニセウルトラ兄弟を下す事が出来たのである。

 

ただ、それでもゼロの不安が消える事は無かった。

むしろ、増していくばかりの闇の気配に、焦燥感は高まるばかりだ。

 

「俺達のエネルギーを合わせる、ダブルフラッシャーだ」

「分かった!!」

 

ゼロとレオはフォーメーションを組み、練り上げたエネルギーを合わせる。

合計二人分の光のエネルギーは、二人の意思が重なり合う事で何乗倍もの莫大なエネルギーとなる。

 

「おりゃぁぁぁっ!!」

「デリャァァァァッ!!」

 

発射されたエネルギー光線――レオゼロダブルフラッシャーは、邪魔をしようとしたニセウルトラ兄弟――ニセウルトラマンとニセウルトラセブンを貫き、虚空を矢のように進んで行く。

そして、遥か先で見えなくなった瞬間、虚空の終わりに一点の光が射した。

 

出口だ。

 

「今だ、行け、ゼロ!!」

 

レオがその光へと指をさしながら叫ぶと、ゼロは全速力で飛んで行こうとする。

だが、飛び立とうとした瞬間、ゼロは一瞬だけ立ち止まり、真剣な面持ちでレオの方へと顔を向けた。

 

「嫌な予感がする、この事を宇宙警備隊本部に知らせてくれ」

「分かった、死ぬなよ、ゼロ」

「俺を誰だと思ってるんだよ、アンタの愛弟子なんだぜ?」

 

「そうか」と薄く笑みを浮かべるレオの顔を見て、ゼロの抱える不安感が少し和らぐ。

そうだ、俺には心強い仲間が、親父や師匠が居る!!

 

「シェァァッ!!」

 

今度こそ振り返らず、ゼロは異空間の出口へと向かって飛んで行った。

一握の不安と、絆に裏打ちされた強い意志を、その黄金の目に宿して。

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