悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第七十話【援軍は突然に】

「ガハッ!!」

 

空中に吹き飛ばされたダークロプスゼロは、きりもみ回転しながら地面へと叩きつけられた。

土煙を上げながら地面を転がり、ようやく止まった所で顔を上げれば、脚を上げ、ミドルキックを繰り出した体制で視線を向けて来るニセウルトラマンタロウ。

 

ニセウルトラマンタロウとの格闘戦を開始してしばらく、ダークロプスゼロは苦戦を強いられていた。

 

ダークロプスゼロ自身が戦いを通じて感じた事は、やはりその出鱈目な出力の高さだ。

おそらくは『全宇宙を制圧する』という最終目標の仕上げを担うロボット兵器だったのだろうこのニセウルトラマンタロウは、『サロメ史上最高』というヘロディアの言葉通り、今までのニセウルトラ兄弟とは格の違う強さである。

その細身の機体からは想像も出来ない程に拳や蹴りの一発一発が重く、その上に動きはネコ科の猛獣の如く、驚く程に素早くしなやかだ。

 

「計算上、攻略できる可能性は1.5%」

 

自身のAIが弾き出した確率に、もしも自分の表情が変える事が出来たとしたら、苦々し気に歪んでいただろうと思う。

良い情報は無く、代わりに視界を埋めるのは機体に生じた様々なエラーや故障の数々だ。

 

「タァァッ!!」

「チッ!!」

 

ニセウルトラマンタロウが動く。

腕を上げたかと思えば両手を頭上で重ね、かと思えば腕を下げて脇を締める。

 

この動きをした瞬間からニセウルトラマンタロウの体内に高エネルギーの発生を確認し、ダークロプスゼロは悟った、『来る』と。

ニセウルトラマンタロウの体が虹色に光り、右腕を横に、左腕を縦にして逆L字状に組んだ瞬間、ダークロプスゼロも自身の腕をL字状に組んだ。

 

「ストリウム光線!!」

 

瞬間、ニセウルトラマンタロウの腕から虹色の光線が発射された。

それに対抗するように、ダークロプスゼロも光線――ダークロプスゼロショットを発射し、丁度両者の中間地点で光線が交わる。

 

《バァンッ!!》

 

莫大なエネルギーが衝突し、鍔迫り合いの如く押し合いが続く。

ぶつかり合い、弾き出された余剰エネルギーが、まるで噴水の如く周辺へと降り注ぎ、無数のクレーターを地面に作っていく。

 

「ぐっ……」

 

体中に感じる重圧に、ダークロプスゼロはうめき声を上げる。

今までのニセウルトラマンタロウとの戦いで受けたダメージが、ここに来て首を絞める。

目の前にエラーを示すディスプレイが開き、モーターの温度上昇と、機関出力の低下を示すサインが表示された。

 

「ここまでか」

 

試験機としての役割を終え、本来なら改修されて量産機の一つとして収まる予定だった身としては上出来だろう。

せめて機関の暴走を抑える為に、ダークロプスゼロは強制シャットダウン用キルスイッチを作動させようとした。

 

《ガガンッ!!》

「タァッ!?」

 

だが、颯爽と現れた横やりによって、その作業を中断する。

 

突如として横から飛んで来た光線が脇腹に直撃し、体勢を崩したニセウルトラマンタロウが、もんどりうってその場へと倒れこむ。

光線を止め、熱を持ったモーターからトルクが抜けた事によって、立っていた状態から膝立ちに崩れ落ちるダークロプスゼロ。

各部の冷却装置をフル稼働させながら顔を上げると、自分とニセウルトラマンタロウの間を遮る山のような巨体。

 

「機械人形を助太刀するとは、奇妙な事も有るものだ」

「長く生きているのなら、その奇妙さを楽しむのも一考ではないかね?」

 

目の前に立つのは、先ほどまで戦っていた筈の二体の怪獣、ネローゴモラとメカゴモラ。

そしてそこから数百メートル離れた場所で、戦いの場にそぐわない会話を繰り広げるのは、先ほどまで敵対していた筈のレイブラッドと、己を造った造物主であるパルデス・ヴィータ博士。

 

「あまり荒事をするのは推奨出来ないという事は、一言言っておこう」

「分かっている、この肉体の限界も近いだろうからな」

「それなら良い、では……」

 

「始めようではないか?」とパルデスが言葉を結んだ瞬間、ネローゴモラとメカゴモラが雄叫びを上げて、猛然とニセウルトラマンタロウへと襲いかかった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「行け、メカゴモラ」

 

指示を出せば、メカゴモラは猛然とニセウルトラマンタロウへと向かって行く。

鳴き声と共にその鋭い爪で引っ掻き、凄まじい量の火花が散る。

 

「むんっ!!」

 

メカゴモラへと指示を出している俺の横では、レイブラッドがネオバトルナイザーを手に、まるでオーケストラの指揮者の如く身振りでネローゴモラへと指示を飛ばす。

無言での命令は、やはりレイオニクスだからこそ出来る芸当だろう。

ネローゴモラはレイブラッドの無言の指示を正しく受け取っているようで、その身を反転させ、勢いが乗った太い尾をニセウルトラマンタロウへと繰り出した。

 

「タァッ!!」

 

が、ニセウルトラマンタロウはその尾を脇腹で受け止め、その場で回転。

勢いがついてきた瞬間、ネローゴモラをの尾から手を離した。

いわゆるジャイアントスイングという奴である。

 

「中々にやるな」

「感心している場合か?」

 

吹き飛ばされ、メカゴモラに衝突するネローゴモラを見て他人事のように呟くレイブラッドに、俺は思わず呆れてしまう。

まあ、レイブラッドからすれば怪獣の一体が死ぬ事ぐらい物の数ではないのだろうが、今の状況で戦力が減ってしまうのは正直言って避けたい。

 

「ダークロプス、行けるか?」

「問題無い」

 

ネローゴモラとメカゴモラが身を起こそうと藻掻いている隙を、ニセウルトラマンタロウが突こうとする。

だが、ストリウム光線の二射目が発射されようとした直前、ダークロプスゼロの飛び蹴りによって阻止された。

 

「タァァッ!?」

 

ニセウルトラマンタロウへのダメージは微小だったようで、直撃した胸部のプロテクターに傷が入ったものの、少しよろめいた後に姿勢を立て直す。

しかし、そこへ間髪入れずに迫る一筋の光線。

 

「何だ!?」

 

その光線に反応したレイが声を上げると同時に、光線が直撃した派手な爆発音と共に、ニセウルトラマンタロウが吹き飛んで背中から地面に叩きつけられる。

 

「やっと来たか」

 

周囲が突然の横やりに動揺する中、俺はその光線を見て一人ほくそ笑む。

空を見上げれば、太陽を背に空中へと浮かぶ数十体の巨大な人型ロボットが、そしてその中心に、威風堂々と浮かぶ一隻の宇宙戦艦の姿が有った。

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