《ドォォォン……》
レギオノイドの一体が数百メートル吹き飛び、崖に激突する。
所々が破損し、バチバチと火花を散らしながら起き上がろうとしたそのレギオノイドは、上体を起き上がらせようとしたその瞬間に、後から飛ばされて来たもう一体のレギオノイドと共に爆発四散した。
「やはり、レギオノイド程度ではこれで限界か……」
分かりきっていた展開に俺は冷めた目で溜息を吐く。
背後で再び轟音が鳴り響き、爆発の威力で目の前に転がって来た原形を留めないパーツから視線を外して振り返ると、三体のレギオノイドがニセウルトラマンタロウを囲むように攻撃を繰り出している。
今回の調査の為にブリガンテが搭載して来たレギオノイドは、地上戦主体のα型と宇宙戦主体のβ型が半数づつ、そして今現在ニセウルトラマンタロウと戦闘を繰り広げているのは、主にα型のレギオノイドだ。
そもそも宇宙戦主体のβ型は、宇宙空間での機動性を重視した関係でブースターの出力は高い反面、駆動用モーターのトルクが弱い為に地上戦にはあまり適さない。
ただ、α型は地上での機動力には優れるものの、β型に比べれば火力は貧弱だ。
その分、地上と宇宙の両方で戦闘を行う事が可能なダークロプスに比べれば大幅に安上がりに出来たのだが。
「派手にやられているな」
「時間稼ぎ程度にはなっているだろう、今のうちに少しでも回復しておけ」
嘲るようなその声に、俺は冷ややかに返しながらそちらの方を向く。
声の主であるレイブラッドは、ネローゴモラを一旦バトルナイザーへと戻し、岩にもたれかかりながら束の間の休息を謳歌している。
そしてその隣では、やはり同じくバトルナイザーへとゴモラを戻して休息を取りながらも、まるで猛獣が唸るかのような表情でレイブラッドを見るレイ。
両者の間に流れる空気は険悪そのもので、すぐに取っ組み合ってもおかしくはない程だ。
そうなっていないのは、ひとえに両者がそれなりに消耗しているからだと言える。
レイは激しい戦いでダメージを負っているし、そのダメージの大半を与えたレイブラッドも……
「グッ……」
呻き声と共に、一瞬だけレイブラッドの肉体が金色に光り、収束する。
そう、既にレイブラッドが間借りする『もう一人のレイ』の肉体は、レイモンの形態を取っていても、この時空での維持に限界が生じ始めていた。
「諦めてレイの肉体から出て行けばどうだ?」
「それなら、我の条件を飲むかね?」
「死んでも許さない」
互いに棘の付いた言葉のボールを投げあう二人に、俺は呆れの混じった視線を向けていると、背後から俺へと話しかけて来る声が。
「パルデスさん、あれは……」
そう言いながら、どことなく困惑したような表情で空を指さすヒュウガ。
その指の先に有ったのは、俺達を影に収め、宙に浮かぶ
「安心してくれ、私が乗って来た戦艦だよ」
「あんな巨大な物が宙を飛ぶなんてな……」
『ん?』と俺はヒュウガの言葉に疑問を覚える。
ウルトラシリーズにおけるメカニックって結構ヤバい科学力で空を飛んでる物が多かったような……と思ったが、よく考えてみれば、ZAPが存在するM78ワールドに限定すればそんなに巨大な飛行メカは無かったか。
確かウルトラマンエースに登場したタックファルコン(210メートル)が最大だったはず。それでもアンドロメダ(444メートル)に比べれば半分ほどの全長だ。
というか、ウルトラシリーズの飛行メカって基本的に戦闘機風の物が多く、ヤマトに登場しそうな宇宙戦艦的巨大飛行メカは少ないんだよな。
ウルトラマンガイアに登場するエリアルベース(600メートル)なら、一応サイズや形状を見ると航宙母艦に近いものの、全長で見ればガミラスのゼルグート級一等航宙戦闘艦(730メートル)や、ガトランティスのアポカリクス級航宙母艦(1240メートル)よりも小さいし。
そんな事を考えている内に、そろそろレギオノイドでの足止めも限界が近づいて来た。
残りは後十体ほど、十分持てば良い方だろう。
背後を見れば、いまだに座り込むレイとレイブラッド、搭載した自己修復機能による回復を試みるダークロプスゼロ、先程までのネローゴモラとの戦いで消耗したメカゴモラ。
……この中ではメカゴモラが一番マシか?
アンドロメダによる戦闘も視野に入れてはいるものの、流石にニセウルトラマンタロウに比べれば機動力に劣る。
なので基本的には回避よりも波動防壁による防御になるだろうが、波動防壁も無限ではない為、艦砲並みの威力を持つストリウム光線に対してどれだけ持つかは未知数だ。
『ならばブリガンテを盾にするのはどうか?』と思うかもしれないが、そもそも艦首部分のデザインがベリアルのウルトラサインになっている関係で、ウルトラマンゼロがこの場に戻って来る事を考えるとリスクが高過ぎる。
ちなみに、アンドロメダに描かれていたサインの方は、アナライザーへと通信を繋いだ際に消しておくように頼んだので心配は無い。
《ドカァン!!》
そんな事を考えている内に、そろそろ足止めも限界に差し掛かってきたようだ。
十分どころか、五分も持たないか……
正拳突きで三体のレギオノイドを沈黙させたニセウルトラマンタロウが、今度は回し蹴りを繰り出して1体のレギオノイドを弾き飛ばす。
凄まじい勢いで飛んで行ったそのレギオノイドは他の機体に接触して爆発。この一撃で四体のレギオノイドが破壊された。
残り二体のレギオノイドが飛び掛かるも、そんな少数で敵う筈も無く、両手で一体ずつアイアンクローを決めたニセウルトラマンタロウが、大きく腕を振りかぶって頭部同士を何度も思い切り叩きつける。
《ガンッ、ガンッ!!》と音がする度にレギオノイドの頭部は潰れていき、やがて動きが無くなった事を悟って放った瞬間、大爆発を起こした。
「まあ、こんなものか」
「ありがとう、パルデスさん」
俺の背後でレイが立ち上がる。
多少ふらついてはいたが、先程よりも顔色は大分マシになっている。
それでも、一歩踏み出した途端に岩に足を取られて転びそうになるが、地面に叩きつけられそうになったその瞬間、逞しい腕がレイの体を支えた。
「レイ、俺が付いてるからな!!」
「ボス、ありがとう……」
レイに肩を貸し、笑顔を向けるヒュウガ。
有効な打開策も無い今、浮かべているその笑顔が自分を励ます為の虚勢に近い物である事はレイも分かっている、が、そんな事はどうでも良い。
俺は戦う、大切な人を守る為に。そして自らの手で、未来を切り開くために。
「ゴモラァァァァァッ!!」
強い決心を心に秘めたレイが叫び、今再びゴモラが召喚された。
先程受けたダメージの深さはゴモラも同様だが、怯む様子も無くニセウルトラマンタロウへと向かって行った。
明らかに勝ち目の無い戦いだろう。だが、それでもレイの瞳からは希望の光は消えていない。
「何故だ」
やはり光の者だな、としみじみ感慨深くその光景を見ていた俺だが、不意に聞こえた声によって俺は現実へと引き戻された。
後ろを振り返り、上を見上げれば、そこには先程まで座り込んでいたはずのダークロプスゼロが立ち上がり、レイ、ゴモラ、ヒュウガの戦闘を凝視している。
その顔は、ロボットに向ける感想としては可笑しいと思われるかもしれないが、どことなく思いつめたような表情を浮かべているように見えた。
多少本文では触れたものの、詳しい紹介をしていなかったので、本作オリジナル形態のレイブラッド星人、並びにネローゴモラに関しての解説を。
究極完全体レイブラッド星人
身長:250cm
体重:240kg
平行宇宙からやって来たレイの『仲間を失った絶望』に付け込んで、肉体を乗っ取り完全復活を果たした姿。
復活を果たした際に姿形は大幅な変貌を遂げており(第六十三話参照)、まさに『帝王』という言葉を体現した姿となっている。
更に身体能力の大幅な向上や、元のレイには使用出来なかったバリア、光線技等も使用できるようになっており、その強さは並みの怪獣では歯が立たない程。
使役する怪獣はレイから引き継いでいるものの、レイの魂にダメージを肩代わりさせ、ダメージ度外視で怪獣を使役できるという凶悪な能力も持つ。
究極古代怪獣ネローゴモラ
身長:45m
体重:22500トン
元々は平行宇宙でのレイの相棒として活躍していた普通のゴモラだったのだが、レイがレイブラッドに乗っ取られた際に、レイとの強固な繋がりが仇となって同時に乗っ取られた。
そして召喚された際に、闇の因子を注ぎ込まれた事によって変貌し、レイブラッドによりネローゴモラの名前を授かる。
身体能力の向上や凶暴性の上昇に加え、超振動波を上回る必殺技『メタ振動波』を繰り出す事が可能。
更に完全体レイブラッドの強力なレイオニクス能力によって、痛みや死を恐れない究極の怪獣兵器と化している。