悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第七十五話【作動する罠】

怒りに満ちたレイの視線が、サロメの基地の方へと向く。

 

まあ、レイが怒るのも無理はない。

コイツが変な野望を持たなければ、別次元のペンドラゴンクルー達は犠牲にはならなかったのだ。

ヒュウガも同じく静かに怒りを湛えた視線を基地へと向ける。

 

「あのタロウモドキ以外に出て来ないって事はアレが最後だったんだろ、大人しく外へ出て来な」

 

ウルトラマンゼロも黄金の瞳を怒りに滾らせながら、油断なく構えを見せる。

挑発の言葉にも、軽薄さは無い。

 

そんな光景を眺めながら、俺は『もしあの視線を向けられたのが俺だったなら、生きた心地はしないだろうな』などと思いつつ、同じく基地の方へと視線を向けた。

最初に見た時は、その巨大さと未来感に威厳を感じた建造物も、今や激しい戦いの連続で廃墟同然の惨めさを晒している。

 

《ゴゴゴゴゴ……》

 

だが、地響きと共に、かろうじて建造物としての体裁を保っていた基地が、突如として崩落し始める。

壁面が崩れ落ちる破壊音や、金属素材が擦れあう事で生じる悲鳴のような軋み音、そして濛々と立つ土煙の向こうに、巨大なシルエットが現れた。

その巨大なシルエットはゆっくりと上昇していき、やがて土煙のベールを抜けて、その姿を露わにする。

 

「水中翼船?」

 

そう呟き、ポカンとした表情のままソレを眺めるヒュウガ。

細長く、艦首に行くほど跳ね上がるデザインに、両舷から生えて船底で一繋がりになった翼。

土煙の中から現れたのは地球で見られる船舶、それも水中翼船とよく似たシルエットを持つ物体だった。

 

だが、そんな物がこんな辺境の、しかも存在しないはずの宇宙に有る訳が無い。

その証拠であるかのように、その船からは甲高い高周波音と、勝ち誇ったような女の声が響き渡る。

 

『その通りよ。この基地に有るロボット兵器はアレが最後、もう手持ちは残っていないわ』

「ハッ、それならサッサとお縄につくんだな」

 

負けを認めるようなヘロディアの言葉に、ゼロは挑発するような言葉を発して腕を組む。

 

が、俺はそのヘロディアの声に違和感を感じていた。

何故、そんなに明るいのか、悲壮感を欠片も感じさせないような声音に、俺は密かに警戒を強める。

ひょっとしたら、あの飛んで行ったニセウルトラマンタロウの首に関係が有るのかもしれない。

 

そしてその考えは、最悪の形で当たる事となる。

 

『フフッ、そんなに得意気でいられるのも今の内よ』

「何だと?」

『あのニセウルトラマンタロウは、ウルトラ戦士と戦って勝つ事を目的として作られた物では無いわ』

 

ウルトラ戦士に勝つ事が目的ではない?それならヘロディアは一体何の目的であのロボットを作ったんだ?

俺が考えていたその疑問の答えは、ヘロディア本人の口から明かされた。

 

『あれは元々、侵略の邪魔となる宇宙警備隊……光の国そのものを破壊する為に作った兵器なの』

 

光の国を破壊する為だと?普通に考えれば、たった一体のロボットにそんなことは絶対に不可能だ。

というかそもそも、ヘロディアが用意して来たニセウルトラ兄弟は確かに強いが、宇宙警備隊を相手にするには明らかに力不足だ。

何日もの間、ウルトラマンゼロたった一人を仕留められなかったのである。例え数百体製造したとしても宇宙警備隊に勝つ事は不可能。

数百万体有ればワンチャン有るかもしれないが、この基地の設備だけではそんな数は作れない筈。

 

まあ、ヤマト世界のガトランティスの技術である【ガイゼンガン兵器群】としてなら、生体技術により数千万とか数億の単位での量産も可能ではあるが、サロメ星人がそんな技術を持っているとはとても思えない。

 

「光の国を破壊するだと!?」

 

ヘロディアの言葉に激昂し、ゼロは鋭い眼光でヘロディアの宇宙船を睨む。

ゼロとしては例え冗談でも許せない言葉なんだろうな。何せ光の国はベリアル様の手によって一度は壊滅してるわけだし。

 

まるで他人事かのように、ぼんやりとそんな事を思っていた俺だが、次にヘロディアが発した言葉で一気に現実に引き戻される事になった。

 

『あの強さは、あくまで強力なウルトラ戦士を集める為の囮に過ぎない……本命は、あの首に内蔵した爆弾よ!!』

「爆弾!?」

 

は?あの飛んで行ったニセウルトラマンタロウの首に爆弾が!?

衝撃的な事実に唖然としている俺を置いて行くかのように、ヘロディアは言葉を続ける。

 

『戦いで戦闘不能になった時、ニセウルトラマンタロウの首は本体と分離して惑星軌道上まで飛んで行く、そして軌道上に到達して10分後、首に内蔵された《ヨハネニウム爆弾》が爆発するわ』

『威力はウルトラの星を丸々吹き飛ばすのに十分、この星程度なら容易く粉々になるでしょうね』

 

そういう事か。そもそもあのバケモノ染みた強さは精強なウルトラ戦士を集める為の、所謂客寄せパンダに過ぎなかったという事だ。

【強いウルトラ戦士を集めるだけ集めて、後はウルトラの星諸共自爆する】それがニセウルトラマンタロウの真の製造目的。

言うなれば『汚いウルトラダイナマイト』だ。

 

「それなら直接破壊するだけだ!!」

「俺も手伝う!!」

 

そう言って飛び立とうとするゼロと、ネオバトルナイザーを構え、おそらくはリトラを召喚しようとするレイ。

だが、その様子を見ていたであろうヘロディアは、笑い交じりの声で言い放った。

 

『無駄よ、軌道上に到達したニセウルトラマンタロウの首は、惑星を覆う強力なバリアを発生する』

『その出力はこの基地の数百倍、例えウルトラ戦士が百体光線を発射してもまず破れないし、破った瞬間に首に内蔵されたセンサーが感知して起爆するわ』

 

ヘロディアが提示した事実は絶望的な物だった。

惑星チェイニーからの脱出を封じられた上に、刻一刻と迫る爆弾の起爆。

 

「てめぇ、さっさと解除しろ!!」

『無理ね、さっきも言ったけどニセウルトラマンタロウのAIは外部からの接触をシャットアウトしてるからアクセスは不可能、そしてバリアを超えるには、この船に搭載された特殊な中和装置が必要よ』

 

瞬間、眩い閃光が周囲に居た全員の視界を奪う。

光が収まり目を開けた頃には、サロメの船影は遥か彼方に遠ざかっていた。

 

『私の計画を台無しにした報いよ、精々最後まで足掻く事ね!!』

「待ちやがれ!!」

 

ゼロが追いかけようと飛んで行くが、もう既に手遅れだろう。

ヘロディアの言葉が正しいなら、遠からずゼロの行方をバリアが阻む事になる。

俺はかつてのクシアからの脱出を思い出し、顔を顰めた。

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