悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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脱出した宇宙船から、ブラン・サデルーナ視点でのお話です。

あくまでも個人的なものではありますが、序盤の宇宙船内のシーンでは『宇宙戦艦ヤマト2199 オリジナル・サウンドトラック Part1』から『哀しみのスカーフ』を脳内BGMとして設定しております。


番外編【故郷を捨てて】

少しの揺れと共に、宇宙船は空高くへと舞い上がっていく。

これまで10年近くを過ごした居住区がどんどんと小さくなっていき、ついには赤茶けた砂漠の点となって消えてしまった。

 

《間もなく、クシアの大気圏外に出ます。》

 

船内に機械音声が響く。

青みがかった大気圏を抜ければ、眼下には太陽光に照らされて宇宙の漆黒に浮かんでいる故郷の星が有った。

かつてこの星にも青い海と生い茂る緑が有ったと聞いて誰が信じるだろうか?

今や乾いた砂のみが星の地表を覆い、その光景は『死の星』という表現が似合っているような有様だ。

 

宇宙船に取り付けられた窓から見える光景。

静かにそれを見ていた乗組員たちの中から、嗚咽が漏れ始める。

 

「ごめんなさい、私達のせいで……」

「さようなら!!今までありがとう!!」

 

その声が段々と広がり、ついには泣き声が船内を満たす。

 

「これが、我々が求めた平和の結果か……」

 

私はその悲劇的な光景を見て、娘を部屋で休ませた判断は正解だったと思った。

 

『平和の実現』という目的を、機械に全て任せるという堕落した判断に対する罰だったのだろうか。

その結果がこの有様だ。我々は故郷を失い、愛する人も失い、流浪の民と化した。

平行宇宙へと飛び、手分けして居住可能な惑星を探す計画だが、そう簡単にはいかないだろう。

下手すれば何世代も掛けての探索になる事もあり得る。

 

だが、その話は今は置いておこう。

 

私はクシアに残して来た部下の事に思考を移した。

様々な発明と共にこの計画を立案し、クシア最後の生き残り達を送り出した男の事を……

 

「パルデス君、無事でいてくれよ」

 

遠ざかり、見えなくなったクシアの方向を見ながら、私は部下であるパルデス・ヴィータについて思い出していた。

 

 

 

 

 

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最初に出会ったのは、とある研究プロジェクトでの事だった。

大学を首席で卒業し、その後は大学院で当時としては画期的な研究論文を発表し博士号を獲得するという華々しい経歴を持って、彼はクシア最高峰の国立研究所へとやって来た。

 

「新しく配属されました、パルデス・ヴィータです。至らない点も多々有るかとは思いますが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします!」

 

当時、私は研究員の中では中堅どころで、そのプロジェクトの副リーダーを務めていたのだが、流石に若くして国立研究所に入るだけの事は有って、彼の頭の回転の速さは中々に見どころが有ると考えていたのを覚えている。

さらには精神面でも優れており、持ち前の明るく優しい性格ですぐに先輩研究員達と打ち解け、さらには同じく研究員を務めていた娘のアイルとも中々にいい関係を築いていた。

アイルは妻に似て性格も良く、聡明な頭脳を持った自慢の娘であったので、自他共に認める親バカの私には嫁ぐなどという事は想像も出来ない事ではあったが。もしも両者が付き合うというのなら、おそらくは私も認めていただろうと思う。

結局はそういった関係にはならず、親しい友人や家族のような間柄ではあったが……

 

彼に転機が訪れたのは研究所に勤め始めて幾年か経った後の事である。

最愛の両親の死、侵略宇宙人と防衛軍の交戦に巻き込まれた末の出来事だった。

 

その後の彼はどうにも痛々しくて見ていられなかった。

必死に普段通りの態度を繕おうとしてはいるが実にぎこちなく、ふとした時に暗く沈んだ表情をする事が多くなった。

私もどうにか彼に立ち直って欲しかったが、当時は新プロジェクトのリーダーに選ばれた事で立ち上げに忙しく、中々話す機会が無い。

 

そんな時期に彼に寄り添っていたは、娘のアイルだった。

 

きっと幼い頃に母を亡くした記憶がそうさせたのだろうと思う。

アイルの献身により彼は徐々に元気を取り戻していった。

公私共に親しくなり、私が彼の後見人となった事で、もはや家族同然の関係となった。

 

そして彼は言った、「より多くの人を救いたい」と。

両親を戦争で無くした事から、その想いを強くしたのだろう。

 

そして、あの「テラハーキス」の研究に繋がるのだ。

 

 

 

 

 

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テラハーキス……ギルバリスの暴走後、彼は変わってしまった。

 

暴走したロボットに吹き飛ばされて一時昏睡状態になった後に目覚めた彼は、それまでの笑みを絶やさない明るい性格から打って変わって、無言で研究に打ち込むようになった。

まるで別人のようだと思ったが、話してる限りはかつての彼だ。

きっとギルバリスを開発した罪悪感から変わってしまったのだろうと思ったが、それにしては不自然な点も有った。

次々と彼によって開発される武器兵器の数々だが、どれもクシアにはそれまで存在しなかった未知の技術だったのである。

 

それでも、誰も何も言わなかった。むしろギルバリスの脅威に対抗できる彼を尊ぶ程だった。

それだけギルバリスの脅威は鬼気迫るものだったのだ。

 

彼は研究を続けた。レイオニクス部隊、ギガバトルナイザー、ギガファイナライザー、全て彼が中心になって開発したものだ。

だが、クシアを救うまでには至らず、結局は『母星からの脱出』という選択は避けられなかった。

 

 

 

 

 

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《間もなく平行世界への転移を開始します》

 

その声で、回想していた私はハッとなった。

既に目的地のブラックホールまでわずかな距離となっていた。

平行世界間の転移も、元々理論自体は確立していたものの、具現化したのは彼の尽力が有ったからだった。

色々と疑問に思う事は有るが、彼がクシア人にとっての英雄であり、血は繋がっていないものの私たちにとってのかけがえの無い家族であるという事は変わらない。

 

「早く来ておくれよ、パルデス君」

 

宇宙船は、漆黒の宇宙を進む。




番外編、いかがだったでしょうか?
次回からはまた本編に戻ります。
今後も機会が有れば、こうした番外編を書くかも。
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