悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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先週末が忙しくて更新遅れました。
申し訳ない。


第七十六話【あと十分】

《悪ぃ、逃げられた》

 

一分もしない内に脳内に届いたウルトラマンゼロのテレパシーに、俺は溜息を吐く。

やはり間に合わなかったか……まあ間に合ったところで、作成者であるヘロディア本人にも既にどうしようもなかっただろうが。

作成目的を考えれば、あのニセウルトラマンタロウの首はウルトラ戦士の光線に十分耐えうる強度を持っているはず。

その上で外部からのアクセスを物理的に遮断しているのだ。既にこの命令は不可逆だと考えるべきだろう。

 

「どうするんだ!?」

「ヘロディアは後十分と言っていたが、正確な時間はいつなんだ!!」

 

慌て始めるレイとヒュウガを横目に、俺は携帯端末でアナライザーへと連絡を入れる。

 

「アナライザー、応答しろ」

『ハイ、ご主人様』

「今からサロメ星人の基地で入手したデータを送る、その中から《ヨハネニウム爆弾》の情報を取り出し、対策を練ってくれ」

『了解しマシた』

「起爆まで約10分だからあまり時間が無い、今から3分以内に答えを出してくれ」

 

通信を切り、俺は腕を組んで考える。

サロメの基地へとハッキングした際、念の為にデータを抜き出しておいたのは正解だったかもしれない。

目の前で騒ぐレイとヒュウガ、関心無さそうに明後日の方を見るダークロプスゼロ、スタンバイ状態で微動だにしないメカゴモラ、何故だかとてもカオスな光景だ。

 

「クソッ、ヘロディアの奴……」

 

そうこうしている内に、ウルトラマンゼロが悪態を吐きながら地上へと降り立つ。

引き締まったアスリート体系の細身で歩く姿は、鋭利な容姿も相まって実にスマートだが、一歩踏み出すごとに響く《ズシンズシン》という重々しい音にギャップを感じて面白い。

というか……なんだかコッチに近づいて来てる?

 

「おい」

「何だい?ウルトラマンゼロ」

 

どこか苛立っている様子のウルトラマンゼロが、俺に向かって話しかけて来た。

唐突な出来事に内心で戸惑っていながらも、平静を装って対応すれば、何故だか無言でじっとこちらを見て来る。

……何だ?見てたって何か出てくるわけじゃないぞ?

 

「アンタ科学者なんだろ、どうにかできないのか?」

 

そのゼロの言葉にハッとしたようにヒュウガとレイが此方の方へと振り向く。

……何だか嫌な予感がする。

 

「そうだ!!パルデスさん、あなたなら何かあるんじゃないのか!?」

「ギガバトルナイザーを開発する技術があるんなら、どうにかなるんじゃないのか!?」

 

おいレイ、余計な事を言うな!!

案の定というべきか、その言葉を聞いたゼロが「何だと!?」と声を上げて俺へと詰め寄って来る。

ヤバいと思いながら後ずさるが、ゼロの巨体からすれば俺の一歩なんてミリほどにもならない。

あっという間に至近距離まで詰められ、その手が延ばされるが……寸での所でダークロプスゼロがウルトラマンゼロの手を掴んだことで止められる。

 

「離しやがれ!!俺はコイツに用が有るんだ!!」

「マスターに対する敵意を感知、接触させるわけにはいかない」

 

そのまま口論を始める二体のゼロ。

他人事のようにボーっとその様子を眺めていた俺だったが、端末から電子音が鳴った事で我に返り、通信を繋いだ。

時間にして2分30秒、まあ合格というべきか。

 

「対処法は浮かんだか?アナライザー」

『サロメのデータを解析シタ結果、この短時間デ実行可能な案は一つデス』

「よし、そのデータを送ってくれ」

『了解』

 

アナライザーからの通信を切った瞬間、俺の端末にデータが送られて来る。

それをホログラムディスプレイに出して、俺は顎に手を当て考え込んだ。

 

確かにこの手を用いれば全員が脱出可能だろうし、原作みたく『もう一人のレイ』達も生存出来るだろう。だが……

 

チラリと目の前の光景を見て溜息を吐く。

多少の犠牲は仕方ないか、命あっての物種だしな。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「どうすれば良いんだ……」

 

唐突にサロメから宣告された10分というタイムリミットに、俺は焦りを隠せないでいた。

せっかくニセウルトラマンタロウを倒したというのに、コレでは……

 

「あまり焦るなレイ、きっと助かる道は有る」

 

そう言って俺を安心させようと、背をポンポンと(いや、力を入れ過ぎてバンバンと言うべきか)叩いて来るボスことヒュウガ。

だがその顔は隠しようも無いぐらい強張っており、事態の深刻さが分かってしまった。

 

「俺は死ぬわけにはいかない、アイツの為にも……」

 

『もう一人のレイ』の顔が浮かび、俺は歯噛みする。

消えて行ったアイツの為にも、俺はここで死ぬわけにはいかない。

 

だが、現状で良い案が有る訳も無く、ただ無為に時間だけが経過していく。

俺達はこのまま、何も出来ないままで死ぬ事になるのか?

そんな暗い気分が心の中に広がっていった時だった。

 

「聞いてくれ、一つだけ現状を打破する手が有る」

 

突如として発せられた声にそちらの方へ振り向けば、そこには端末を片手に此方を見るパルデスさんの姿が有った。

俺達とは違い、いたって冷静な態度を取っているように見えるが、やはり焦っているのか手元の端末を操作する手は忙しなく、額には薄らと汗が滲んでいる。

 

「あの爆弾を止められるのか!?」

「そうであるし、そうでないとも言える、まずは話を聞いて欲しい」

「……言ってみろ」

 

ボスの言葉に何とも曖昧な返事をするパルデスさん。

先程からダークロプスと言い争いをしていたゼロも、今は一旦中断をして続きを言うように促す。

 

静かになった場を見渡し、一つ咳払いをしたパルデスさんは、真剣な表情でその言葉を口にした。

 

「我が艦……アンドロメダに搭載された波動砲を使用する」




ちなみに「ヨハネニウム」という言葉の由来は、聖書のサロメの話から来ていたりします。
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