徐々に波動砲の発射準備が整っていく。
ただ、その準備にかかっている時間はいつもよりも遅い。
別にトラブルがあるという訳ではなく、これは意図的な物だ。
「ヨハネニウム爆弾の方はどうなっている?」
『間もナク臨界に達しマス、爆発までノ時間は約4分程と思ワレます』
アナライザーが読み上げる情報を基に、俺は一つ一つプロセスを進めていく。
そう、今回は波動砲の発射タイミングがかなり重要だ。
ヨハネニウム爆弾の爆発と同時に、波動砲を発射する必要が有る。
「ダークロプスゼロ、ディメンションコアを開放しろ」
『了解』
ダークロプスゼロの胸部プロテクターが解放され、内部から迫り出してきたディメンションコアが露出する。
波動砲とヨハネニウム爆弾のエネルギーが交われば、時空が歪むほどの膨大なエネルギーが発生する。
そのエネルギーをディメンションコアに取り込む事で、この歪んだ時空を反転させ脱出するのだ。
そうやってプロセスを進めていくと、突如として艦橋に電子音が鳴り響く。
「何だ?」
『外部からノ通信を検知、繋ぎマスか?』
「繋いでみろ」
俺が指示を出すと、プツリという音と共に女の怒声が艦橋に鳴り響く。
《お前っ、一体何をしようとしているっ!?》
「……音量を下げてくれ、鼓膜に悪い」
『了解』
頭に響く程の大声に眉間を抑え、アナライザーにスピーカーの音量を下げるように指示を出す。
その間にも《聞いているのか!!》だの《馬鹿にしているのか!!》だのギャアギャア喚く声が響くが、
俺は然程慌てる事も無く、常識的な音量になった所で悠々と言葉を返した。
「耳の遠い老人でもあるまいし、そんなに怒鳴らなくても聞こえているよ、ヘロディア」
《その声……パルデス・ヴィータか、質問に答えろ!!》
どうやら、声から俺の正体を察したようだ。
まあだからと言って、あの女は自らの
完全に発狂している様子のヘロディアに、俺は「女のヒスって怖いな」と他人事のように考えつつ、言葉を返していく。
「君に話す必要が有るのかね?私達を死地に閉じ込めた君に?」
《何を!?》
狼狽えるヘロディアの声に、溜飲が下がるのを感じる。
何だかんだで、俺はあの女に怒りを感じていたらしい。
死の罠に嵌めてくれた高飛車な女の顔が歪むのを想像し、口の端が吊り上がるのを感じた。
「大方、莫大なエネルギーを検知してこの艦を見つけたのだろうが、もう手遅れだよ」
《手遅れ、だと?》
「これからこの時空そのものを破壊する、それだけは言っておこう」
それだけ言って、俺は《待て!!》だの何だの叫ぶヘロディアからの通信を無理矢理切断し、作業へと戻った。
―――――――――――――――
「クソッ、クソッ、クソッ!!」
悪態を吐きながら地団太を踏むヘロディア。
脳内を支配するのは、まるで噴火する火山のごとき怒り。
長年身を尽くしてきた計画の破綻もそうだが、何よりヘロディアを憤らせたのは、ある一人の科学者。
「許さない……許さないわ、パルデス・ヴィータッ!!」
ギリギリと歯を軋ましながら、ヘロディアはモニター上に映る
突如としてヘロディアの目の前に現れたパルデス・ヴィータという男。
サロメの科学に勝るとも劣らない優れたロボット兵器であるダークロプスゼロ、
平行宇宙を自由に行き来し、次元を操る事も可能なディメンションコア、
小型拳銃なのに、ニセウルトラ兄弟を破壊する程の強力さを誇るコスモドラグーン、
ヘロディアは悟った。パルデス・ヴィータという男の技術力は、母星で天才と持て囃された自分を大きく超えると。
どうにもならない劣等感に苛まれる中で、更に惑星破壊クラスの兵器を搭載した軍艦の所有と来て、とうとうヘロディアの怒りのゲージは振り切れた。
「基地に残っているロボット兵器を全て起動させろ!!」
「しかし、製造した物は全てレイブラッドの攻撃によって……」
「五体満足じゃなくても良い、やれっ!!」
「はっ、はいぃぃぃっ!!」
凄まじい憤怒の形相で、唾を飛ばしながら怒鳴りたてるヘロディアのあまりの剣幕に、イラテは怯え引き攣った表情で渋々と従う。
そして痛む腕でコンソールを操作し、コマンドを崩落している基地へと送信するのであった。
―――――――――――――――
「ダークロプスゼロは大丈夫なのか?」
「今はパルデスさんを信じるしかない」
上空約一万メートルの高度でホバリングするスペースペンドラゴンのコックピットで、レイとヒュウガはアンドロメダとダークロプスゼロが居るであろう空を見上げる。
「絶対に死ぬんじゃねぇぞ」
その機体の横を、同じく空中で静止しながらウルトラマンゼロも見上げている。
三人の心を占めるのは、決死の作戦を遂行しているであろう、パルデスとダークロプスゼロの事。
本当なら同行して事の推移を見守りたかったのだが、波動砲のエネルギー放射による衝撃の危険から、こうしてチェイニーでの待機を求められたのだった。
成功するかは五分五分……だが、今はこれに賭けるしかない。
そんな事を、三人が考えていた時だった。
「何だ?」
最初に気付いたのはウルトラマンゼロだった。
遠く地平線の方から登っていく複数の光。
あそこは確か、サロメの基地が有った方角のはずだ。
「あれは一体何なんだ?」
次に気付いたヒュウガが、ペンドラゴンに搭載された光学カメラを光の方へと向ける。
そして、ズームアップしたところで、レイと共にその顔を引き攣らせた。
「まさか、あれは!?」
モニターに映ったのは、無数のロボット……サロメが造ったニセウルトラ兄弟の成れの果てだった。
レイブラッドによるプラントへの攻撃によって破壊され、マトモな姿の者は一体も居ない。
ある者は腕が無く、ある者は足が欠け、中には上半身だけの者や、外装が壊れて中のメカがむき出しの者も居る。
そんな空飛ぶゾンビみたいなロボットの軍団が、一直線にある方向へと飛んで行っている。
確かあの方角は……
「まずい!!あっちにはアンドロメダが!!」