悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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ダークロプスゼロ編もようやく終盤。


第八十一話【戻る因果】

『ヨハネニウム爆弾の爆発マデ、残り2分』

「よし、波動砲発射の最終シークエンスに入る」

 

爆発までの猶予が2分を切った所で、俺は波動砲へのエネルギー回路を開く。

ここから、ようやくエネルギー充填に入る、もう後には戻れない。

まあ、ここでやめても爆弾の餌食になるだけだし、もうやるしかないのだが。

 

『非常弁、全閉鎖、強制注入器作動』

「最終セーフティ解除を確認」

 

正面のスクリーンにクローズアップされたニセウルトラマンタロウの首へと、照準がセットされる。

それと同時に、俺の目の前にあるコンソールの蓋が開き、波動砲の発射トリガーがせり上がって来る。

本来のアンドロメダには必要無いこの装備だが、形に拘りたい俺の趣味である。

 

『ダークロプスゼロ、ディメンジョンコア、スタンバイ』

 

ディメンジョンコアを展開したダークロプスゼロが、アンドロメダとヨハネニウム爆弾の中間地点へと向かう。

素早く宇宙空間を移動し、波動砲の射線から少しズレた場所に陣取り静止した。

 

そして位置取りが完了し、本格的にエネルギーを充填しようとした時だった。

《ズンッ!!》という音と共に、艦体がブルリと震える。

と、同時に艦橋に警告音が鳴り響く。

 

「何事だ!?」

『エネルギー弾と思シキ物を確認、左舷後部ニ被弾、損害軽微』

 

エネルギー弾……光線か何かか?

 

「攻撃だと!?何処からだ!!」

 

もうチェイニーの研究所は潰れ、マトモな兵器は稼働していない筈。

ウルトラマンゼロやレイ達がこのような不意打ち攻撃を行うとも思えない。

そうだとしたら誰が?

 

『接近シテ来る物体ヲ検知、正体不明、コンソールのモニターに映しマス』

 

メインモニターは照準器に使用されている為、コンソール側のモニターに外部の映像が映し出される。

そこには半壊したニセウルトラ兄弟の大群が、大挙して押し寄せて来る光景が有った。

 

「悪あがきをっ!!」

 

湧き上がってくる怒りに、俺は思わずコンソールを《バン!》と叩く。

だが、そうしているだけではこの事態は解決しない。

 

「敵を排除する、砲を実弾へ切り替えろ!!」

『後部副砲、実弾へト切り替え、対空ミサイル、並びに魚雷、発射準備』

「撃て!!」

 

今現在、波動砲発射の為にエネルギー充填の最中であり、ビーム砲や波動防壁は使えない。

そしてダークロプスゼロも、今は戦闘できる状態ではない。

事実上、アンドロメダ単艦で対処するしかない。

 

ヘロディア最後の悪あがきに心中でありったけの罵倒を飛ばしつつ、実弾への切り替えを行う。

しかし、アンドロメダはどちらかといえばビーム砲メインの艦であり、実弾兵装に関しては充実しているとは言い難い。

その上、半壊しているとはいえ敵のニセウルトラ兄弟は戦闘機サイズで小回りが利く為に、艦砲での対処は難しいだろう。

 

幸い、自動照準装置ぐらいは非常電源で作動出来るが、この数を捌ききれるかどうか……

 

《ドンドンドォンッ!!》

 

後部の三連装砲が火を噴き、ミサイル発射管や魚雷発射管からも次々と兵器が発射される。

この第一波で数十体のニセウルトラ兄弟を破壊できたが、敵も学習したのか散開してコチラへと向かって来る。

 

《ドカンッ!!》

「ぐっ……」

『第二副砲ヘ被弾、機能停止』

 

一体のニセウルトラセブンが発射したエメリウム光線が、副砲の一基に直撃し、その機能を奪う。

前方へと回って来た敵勢に対して、今度は主砲の一斉射をお見舞いするものの、一向にその数は減らない。

 

《ガンッ!!》

 

と、そうしている内に艦体に衝撃が走る。

また被弾したか、と思ったがどうにもおかしい。

小さな衝撃が、断続的に続いている。

 

一体何が起こっているのか、と思ったが、その衝撃の原因はすぐに判明する。

艦橋の強化ガラスの外、艦体の横から這いあがって来る、上半身だけのニセウルトラマンジャック。

ホラー映画顔負けのその光景に、俺は思わず固まってしまう。

 

そうして固まっている間にも、ニセウルトラマンジャックは両腕だけでズルリズルリと艦橋へと迫って来る。

ハッとしてどうにか対処しようとするが、艦表面に張り付いた敵を排除するような兵装は流石に搭載していない。

手をこまねいている間にも、どんどんと迫り来るニセウルトラマンジャック、ついには艦橋の窓を挟んでジッと覗き込んで来る。

 

万事休すか、と思ったその時、まるで掻き消えるようにニセウルトラマンジャックの姿が消えた、いや、吹き飛んだと言った方が正しい。

 

「大丈夫か!?」

「助かったよ、ありがとう」

 

艦橋の外に突如として現れたウルトラマンゼロ。

どうやらニセウルトラ兄弟の襲撃に気づいたらしく、助けに来てくれたらしい。

横の方へと目を向ければ、体にクッキリとゼロの足型を付けたニセウルトラマンジャックが痙攣しており、数秒後に爆発を起こす。

 

「お前はこのまま波動砲を発射しろ、俺達はこいつ等の相手をする」

 

「ジェアッ!!」と一言掛け声を残し、流星のようにゼロは飛び立って行った。

少し離れた場所では、スペースペンドラゴンがニセウルトラ兄弟の一団に向かってペダニウムランチャーを発射して掃討している。

「よし」と意気込んで、俺はコンソールへと向かい、発射準備を整える事にした。

 

もう爆発まで一分を切っている。

急ピッチで進めなければいけない。

 

『誤差修正、プラス6度』

 

ニセウルトラマンジャックが追いすがった事によって多少ズレが大きくなっていたが、修正は容易だ。

閃光から目を保護する為のゴーグルを着用する。

 

『30……60……90……エネルギー充填120パーセント』

 

エネルギー充填が完了し、後は発射するだけとなる。

ヨハネニウム爆弾の起爆までは後30秒ほど、爆発と同時に着弾をさせる為、時刻を合わせる。

そして、とうとうその時は来た。

 

「10……9……8……7……」

 

カウントを聞きながら、俺は発射トリガーのグリップをグッと握る。

タイミングがズレれば終わりだ。

センサーからの情報を信じ、俺は……

 

「3……2……1……波動砲、発射ぁっ!!」

 

トリガーを、引いた。

 

瞬間、爆発的な閃光が波動砲口から発せられる。

その衝撃は宇宙空間を震わせ、戦っていたウルトラマンゼロとスペースペンドラゴンへと達する。

 

「うおっ!?」

「うわぁっ!?」

「機体を安定させろ!!」

 

その衝撃と閃光に、ウルトラマンゼロは思わず目を背け、その場で吹き飛ばされないように耐える。

スペースペンドラゴンの内部ではレイが突然の事態に叫ぶ中、ヒュウガが必死になって機体の姿勢を安定させようと試みる。

 

その間にも、波動砲から発射された膨大なエネルギーの射線が、宇宙を切り裂くように飛んで行く。

ダークロプスゼロの横を飛び、着弾するという所で、ヨハネニウム爆弾が起爆した。

 

ヨハネニウム爆弾と波動エネルギーが合わさり、事前の計算通り、莫大なエネルギーが発生する。

それを確認し、ダークロプスゼロがディメンジョンコアを作動させ、エネルギーを吸収していく。

 

『ぐっ、ううっ……』

 

一つの小宇宙に相当する程の凄まじいエネルギーがダークロプスゼロの内部に流れ込み、体内を暴れ回る。

体中に亀裂が走り、エネルギーに耐えられなくなった機体が崩壊し始めた。

だが、それでもダークロプスゼロは耐える。ここで耐えて、創造主の命令を遂行しなければならない。

 

だが……

 

『死にたくない』

 

思わず口に出してしまった言葉を、ダークロプスゼロは噛み殺す。

マスターは約束してくれた、俺を復活させてくれると。

だから心配する必要は無いはずだ。

 

それに……俺はマスターには死んでほしくない。

この感情すら、マスターが俺にインプットしたコマンドなのかもしれないが、それでも、マスターが俺に向けてくれる感情が良い物だと信じたい。

 

ああ、人間は凄いな、こんな非合理な感情を内包して生きているのだから。

そう思いながら苦笑する。命というものを軽んじていた過去の自分が嘘のようだ。

 

だが、悪い気分ではなかった。

むしろ満たされた気分になっている事を不思議に感じる。

もう苦痛は感じなかった。

 

『ディメンジョンコア、起動』

 

十分なエネルギーを蓄えたディメンジョンコアが起動した。

ダークロプスゼロを中心に発生した時空の揺らぎが、宇宙中へと広がる。

ヘロディアによって狂わされた全ての因果が元に戻っていく。

 

反対に、ダークロプスゼロの機体はどんどん崩壊していった。

まるでその役目を終えたというかのように。

 

そして……コスモリバースシステムから閃光が走った。

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