悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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今更ですが、誤字の報告ありがとうございます。


第八十二話【ある野望の終焉】

「……一体、何が起こったというの?」

 

キャプテンシートに腰を掛けたヘロディアは、ただ茫然と周囲を見渡す。

視界に映るのは、先程から自分が乗っている宇宙船のブリッジ……のはずだ。

 

が、明らかにおかしい所がいくつも有った。

 

「痛くない!!」

「傷が、治っている!?」

 

同じく異常を感じ、戸惑った様子で自分の体を確かめたイラテとガナエスは、先程までとは違う『ある異常』に気付く。

つい数時間前にパルデスの銃で撃たれた衝撃で負った傷が、体中から消えていたのだ。

 

それだけではない、あまりにも自然に流してしまったが、時計を見た時に更なる異常に気付く。

 

「時計が動いている……」

 

コンソールに設置された時計が、当たり前のように時を刻んでいる。

あの異次元空間では時は完全に止まってしまっていたはず。

と、言う事は、だ。

 

「ここは元の世界なの?」

 

怒りのままに壊れたニセウルトラ兄弟をパルデスの戦艦へと嗾けたところまでは覚えている。

その後に、パルデスの戦艦から巨大なエネルギーが発射されると同時にヨハネニウム爆弾が爆発し、発生した閃光に逃げる間も無く飲み込まれ……

 

「へロディア様!!」

「何?」

 

状況を分析する為に頭脳をフル回転させていた所に、水を差すように話しかけられ、へロディアは不機嫌そうに声を発した部下の一人――ガナエスを睨む。

そんなヘロディアの様子に「申し訳ありません」と一言謝罪を入れた後、ガナエスはあるデータをヘロディアへと見せた。

 

「装備が、元に戻っているんです」

「元に戻っている?どういう事?」

「そのままの意味です、カーゴルームに、母星から持って来た物資がそのまま搭載されています」

 

ガナエスが艦橋のスクリーンに投影させたデータは、確かに今回の計画を始めるにあたって最初に用意した物資、ニセウルトラ兄弟を量産する為のパーツ類が搭載されている事を示している。

だが、コレは本来ならあり得ない事だ。何せこれらの物資はニセウルトラ兄弟の生産の為に消費し、既に存在していないはずなのだ。

そこでハッとある考えに思い至ったヘロディアは、再び時計へと視線を移す。

 

「時を遡った、という事ね」

 

時刻表示の左横、そこに表示されていた日付は、自分達がダークロプスゼロのディメンションコアを作動させ、あの宇宙(チェイニー)を作りだした日である。

おそらくは時の止まった別次元から無理矢理弾き出された事で、こうして元の、全ての始まりの日に戻って来たという事だろう。

 

ただ、一つだけ異なる事が有った。

 

「ただ、ダークロプスゼロを搭載していたカーゴルームは空っぽで……」

「ダークロプスゼロが無い?」

 

ほとんど全てが作戦前に戻っているのに、ただ一つ、ダークロプスゼロの存在だけが消えている。

あの次元の消滅の中で、ディメンションコアが何らかの影響をもたらしたのだろうか?

 

「まあ良いわ」

 

そこでヘロディアは考える事を放棄した。

というか、これ以上考えても意味は無い。

どのような作用が発生したのか、もう検証しようがないからだ。

 

それに、全ての行為が白紙に戻ったとはいえ、この状況は悪い事ばかりではない。

 

「計画が振り出しに戻ったという事は、失敗も無くなったという事、一からやり直せばいい」

 

そうだ、一世一代の計画も全てが始まる前なのだ。

全てを注ぎ込んで失敗したあの時とは違い、まだ取り返しがつく。

 

「本星に戻るわよ、イラテ、ガナエス」

「「了解」」

 

ヘロディアが部下へと指示を出す。

宇宙船の船首がゆっくりと回頭し、本星への最短ルートへと向いた。

ひとまずはサロメ星に戻り態勢を立て直そう、そう思いながらヘロディアがほくそ笑んだ時だった。

 

《ガンガンッ!!》

 

突如として、船体を揺るがす轟音と共に、ブリッジの電灯が非常時を示す赤いランプに変わった。

「キャッ」と短い悲鳴を上げながら、思わず肘掛けにしがみ付いたヘロディアは、苛立たしさと焦りを綯交ぜにした表情で部下へと怒鳴る。

 

「どうなっているの!!」

「これは……メインエンジン破損、自力航行不可能です!!」

「何ですって!?」

 

イラテからもたらされた情報に、ヘロディアの顔が青くなる。

何らかのエンジントラブルだろうか?今ここで治せなければ、自分達は宇宙の放浪者となってしまう。

 

「二人とも、すぐにエンジンルームへ向かいなさい!!」

 

指示を出した後、ヘロディアはコンソールを操作しながらモニターを凝視する。

一刻も早く原因を探らなければならない、そう思いながら集中した時、ブリッジ内に野太い悲鳴が響いた。

今度は何だと思いヘロディアが顔を上げた瞬間、信じられない物を目にする事になる。

 

「あっ……」

 

ブリッジと宇宙空間を隔てる強化ガラス越し、宇宙船の船首部分に堂々と仁王立ちする巨大な人影。

まるで深紅の炎の如く真っ赤な体色に、彫の深い銀色の顔、その頭部から両側に張り出したツノのような独特の形状が、ヘロディアの脳内でとある人物の名前と結びつく。

 

「ウルトラマン……レオ……」

 

突然現れたその存在に、ヘロディアは顔を引き攣らせて目を見開く。

宇宙警備隊の幹部であるウルトラ兄弟7番目の戦士にして、宇宙拳法の達人、そんな戦士が自分達に鋭い眼光を向けて来ているのだ。

 

「そんな……」

 

ここでヘロディアは悟った。自分達に抵抗の(すべ)は残されていないと。

絶望のあまり力が抜け、膝から床に崩れ落ちるのだった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「了解、俺も用事が済み次第、光の国に戻る」

 

ウルトラマンレオからのテレパシーで、今回の事件の主犯であるサロメ星人の捕縛、及び光の国へ連行するという旨を聞き、ウルトラマンゼロは自らも後に帰還すると伝えた後にテレパシーを切る。

これで今回の事件は大団円で終わり……と言いたいところだが、ゼロにはまだやる事が残されていた。

 

目の前には一機の宇宙船――スペースペンドラゴンが、その機体を宇宙空間に浮かべている。

そのブリッジの窓から、レイとヒュウガが此方に向けて手を振っているのを見て、その元気な様子にゼロは人知れず胸を撫で下ろした。

 

「デリャッ!!」

 

掛け声と共に、ゼロの体は光に包まれ、一直線にスペースペンドラゴンへと向かって行く。

そして機体の外壁をすり抜けるように船内へと侵入すると、そのまま呆然とするレイとヒュウガの前で、再び元の姿を形作った。

 

「ゼロ!?」

「よお、ちょっと聞きたい事が有ってな」

 

突如として、自分達と変わらない等身大の背丈となって登場したゼロに、レイとヒュウガはしばし呆然と固まるが、数瞬の後に我に返る。

わざわざこんな手間をかけてまで、自分達と話す必要が有るという事だろう。

 

「どうしたんだ?」

「パルデスの行方は分からないか?」

「そういえば、『脱出できたら話す』みたいなことを言っていたな」

 

そう言いながら、レイは考え込む。

 

先程『もう一人のレイ』と『もう一人のヒュウガ』から、自分達が無事だという事を示す通信が入って来た。

次元の穴を通じて来たその通信に、レイとヒュウガはまるで我が事のように(別次元の自分達の事なのである意味我が事なのかもしれないが)喜んでいたのだ。

 

その事で、すっかりパルデスの事が頭から抜け落ちていた。

 

「いや、パルデスの事も、アンドロメダの事も分からない、逸れたみたいだな」

「クソッ、あいつトンズラこきやがって……」

 

ゼロは忌々し気に舌打ちをする。

ウルトラマンの表情は面を付けているように変わらないが、この時ばかりは「苦々し気な表情をしているんだろうな」と、レイとヒュウガにも想像できた。

 

「わざわざ悪かったな、それと今回の協力には礼を言う、アンタらがいなければ俺も危なかった」

「そんな!!俺達こそゼロには助けられてばかりで……」

 

そんなやりとりをしていた時である。

 

《……聞こえているかね、ペンドラゴンの諸君》




次回でようやく『ウルトラマンゼロvsダークロプスゼロ編』は終了の予定です。
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