突如としてスペースペンドラゴン内に響いた声、それはブリッジに搭載された通信機のスピーカーから聞こえていた。
まさかと思い、ヒュウガはコックピットに座ってヘッドセットを装着する。
「こちらスペースペンドラゴン、船長のヒュウガだ」
先程の『もう一つのペンドラゴン』の時と同じく、自らの乗艦と名前を名乗る。
緊張に流れる汗を拭うのも忘れつつ返答を待つと、しばしの間の後に雑音交じりの声が聞こえて来た。
《こちらは戦艦アンドロメダ、艦長のパルデス・ヴィータだ》
「生きていたのか!!」
その声が、脱出する時に逸れてしまったパルデスの声だと確認し、ヒュウガは歓喜の声を上げる。
自分達の脱出の為に、命がけで、身を挺して尽くしてくれたのだ。
その為、こうして無事に脱出できた今、一番気がかりだったのがパルデスが生存しているか否かの事であった。
《私も無事、例の別次元から脱出出来たよ》
「本当に良かった、こちらもパルデスさんの無事を確認出来て嬉しい」
《こちらこそ、君達の無事が確認出来てホッとしているよ》
通信をしながら和気藹々と盛り上がるヒュウガ。
釣られるようにレイの顔にも笑顔が戻るが、ゼロだけは腕を組んで顔を顰めていた。
そしてヒュウガの隣のパイロットシートにドカリと座ると、困惑した表情を浮かべるレイとヒュウガを尻目に、ヘッドセットを装着した。
「俺を騙したな、パルデス」
《その声……ゼロか》
一気に険悪な空気が漂い、その場が張り詰めたような雰囲気に包まれる。
しばし無言の時間が続いた後、通信越しに《ふう……》という溜息が漏れて来る。
《結果的に嘘をつく形になってしまった事に関しては、ここに謝罪しよう》
「じゃあ洗いざらい話せ」
《すまないが、やはりそれは出来ないな》
「何だと?」
ゼロが怒鳴るのとほぼ同時に、通信のノイズが酷くなりはじめる。
時空の穴が閉じ始めた影響だろう。
《どうやら……時間切れ……ようだ》
「おい!!」
突然の事に声を荒げるゼロ。
じかし、ノイズは更に酷くなり、まともに聞こえなくなる。
「パルデス、ちゃんと答えろ!!」
《ゼロ……》
だが、最後の言葉の意味だけはハッキリと分かった。
《君とは……また会える……我が主……君と会いたがっている》
「我が主?」
《その時……楽しみに……さらば……》
「おいっ!!」
《ブツリ》という音と共に、ブリッジに静寂が訪れた。
ヘッドセットを外し、無言でヒュウガに渡したゼロは、パルデスが発した言葉について反芻する。
「パルデスの主が、俺に会いたがっている?」
疑問だけが残ったが、既に通信は切れてしまっている。
納得はいかなかったものの、ゼロはレイとヒュウガに簡単な挨拶だけ済ませ、光の国へと帰還する事にした。
「俺、あの人が悪い奴だとは思えないな」
分かれる前、レイが発した言葉が、妙にゼロの頭に残る。
「俺も、出来る事なら信じたい」
ゼロが発した言葉が、漆黒の宇宙へと吸い込まれていった。
―――――――――――――――
「さて、と、これで『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ』は乗り越えたか」
通信を切った俺は、艦長席に浅く腰掛け、だらけた姿勢で溜息を吐く。
原作とはかなり乖離したものの、どうにかこうにか乗り越える事が出来た。
「ヘロディアの方は、まあ放っておいても大丈夫か」
サロメ星人達がどうなったのかは気になるところだが、
あの技術力ではインフレが進むだろうウルトラマンの世界では然程の影響を与える事は無いだろう。
それよりも、俺は今後の事を考える。
「ダークロプスゼロの事がバレたのは失敗だな」
この辺は、想定外としか言いようがない。
今後光の国にダークロプスゼロを送り付ける為に、一時的に敵対状態にはなるだろうが、まあその辺は、ベリアル崩御後に理由を話せばどうにかなるだろう。
ウルトラマン達の良心に付け込むのは気が引けるが……仕方ない。
「後はベリアル銀河帝国に備えないといけないな」
やる事は山積みだ。
表面上はベリアル様からのノルマをこなしつつ、人々の命を救う為に暗躍を続けなければならない。
それに、もしも原作から外れるような事が有れば、コッソリとウルトラマンゼロ達のフォローをする必要がある。
その上……直近でどうにかしないといけない事が一つ。
「アナライザー、ベリアル様の様子は?」
『現在、睡眠中デス、バイタルデータから、間もナク覚醒しマス』
「そう……」
アナライザーからの報告を聞き、俺は溜息を吐く。
時空が元に戻り、ベリアル様も元に戻るはずだ。
だが、記憶は残っているはず。
ウルトラマンゼロに負けた記憶が……
「大荒れになりそうだ」
はたしてベリアル様が起きた時、どんな反応をするか。
憂鬱過ぎて頭が痛い。
「これからが本番だな」
帰還するアンドロメダの艦橋から、俺は宇宙空間を眺める。
この宇宙に住む生きとし生ける者達を夢想しながら。
そして、クシアの人々の事を考えながら。
「……カモミールティーを頼む」
『畏まりマシた』
アナライザーの返事と共に、ティーポットを持ったロボットが艦長席に近づいて来る。
一先ずはティーブレイクの時間だ。ティーポットの茶こしに茶葉を入れ、しばし後にティーカップに注ぐ。
鼻を擽るかぐわしい香りに頬を緩め、ティーカップに注いだお茶を飲もうと口へと近づけた。
「ゼェェェェェェロォォォォォォォッ!!!!!!」
「熱っつうっ!?」
突如として響いたアンドロメダを揺るがす程の怒号に、俺はティーカップを落として膝に零す。
その熱さに悶えている所に聞こえて来る『ベリアル様が覚醒しマシた』というアナライザーの声。
そんな人間模様を無視するかのように、アンドロメダは宇宙空間をひたすらに進んで行くのであった。
『ウルトラマンゼロVSダークロプスゼロ編』はこれで最終回です。
去年の5月末に投稿した第四十二話から、本日投稿した第八十三話まで、実に長かった。
次回からはようやく本連載の本編とも言える『ベリアル銀河帝国編』の開始です。
主人公ははたしてどうなってしまうのか、乞うご期待。