悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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第七話【最後の人と、最後の仕事】

一人、居住区内を車で走る。

避難民は一人残らず旅立ち、ここには自分一人だけだ。

毎日喧噪に包まれていた場所がここまで静かだと、違和感と同時に不気味さも感じる。

 

「寂しいものだな……」

 

ふと口から出てしまった言葉、

思えば何だかんだで毎日忙しくしていたし、仕事の関係上アイルやブランは勿論、それ以外の人々ともよく話していた。

皆で逞しく生きてきた日々、時々現れるギャラクトロンに恐怖を感じてはいたが、それでも俺達はどうにかこうにか生きて来た。

だが、そうやってクシアで過ごして来た日々も終わろうとしている。

 

「さあ、この星での最後の仕事だ」

 

もしも俺じゃなく、パルデス・ヴィータ本人だったら涙を流していたのだろうか?

こうして少し楽しく考えてしまう俺は非情なのかもしれないが、こればかりは許してほしいと思う。

 

そんなことを思いながら、俺は車を停めると居住区中心部に有るタワーへと入っていく。

居住区で一番の高さを誇るこのタワーは防衛隊が使用していた施設で、惑星全域に電波を飛ばす事が出来るようになっている。

俺は迷い無くエレベーターに乗りこむと、最上階へと向かった。

 

ピンポン♪防衛隊指令室のフロアです』

 

エレベーターの扉が開き、目の前に数多くの計器が並んでいるのが見えた。

前世の知識から分かりやすく例えれば、よくハリウッド映画に出て来るNASAの指令室とでも言えば分かりやすいだろうか?ずらりと並んだコンソールや、散らばった書類が見える。

ただ地球と違うのは、奥に有るのがスクリーンではなく、立体ディスプレイだという事だろう。

 

「システムを起動、コードQ1273、パルデス・ヴィータ」

『起動コード並びに声紋の一致を確認、ようこそパルデス・ヴィータ博士』

 

コンソールに明かりが灯り、奥の立体ディスプレイが起動する。

今は慣れたものだが、最初の起動の時は厨二心が疼いて小躍りしそうになったのは内緒だ。

 

「ク号作戦の部隊に暗号通信を繋いでくれ」

『了解』

 

機械音声の声が無機質な返事を返すと、途端に立体ディスプレイが明滅する。

そしてしばらくの後に、一人の男の像を映しだした。

 

「司令官、イズモ計画は成功、一般市民は全員居住区から避難が完了した」

『了解した』

 

ク号作戦を率いた司令官の顔は、意外にも元気そうだった。

無表情ではあったが、特に傷や汚れも見当たらない。

ホッとした俺は、作戦の終了と撤退を告げるべく、指示を出した。

 

「居住区まで撤退してくれ」

『了解した、それとギルバリスに関する重要なデータを入手した、今からデータを送るので確認して欲しい』

「分かった、送ってくれ」

 

ギルバリスに関する重要なデータだと?俺は司令官が言ったその内容に首を傾げる。

あのAIのデータは開発した自分達が全てを握っているはず。

今更どんなデータだ?

 

しばらく待つと、コンソール内にデータのダウンロードが終了したという表示がポップアップする。

それを解凍し、俺は立体ディスプレイに出そうとした、だが……

 

《ブツン》

 

突如として指令室の電源が落ちた。

 

「何だ!?バックアップはどうした!!」

 

突然の事態に混乱しつつも、俺は暗い中で目の前のコンソールを見つめる。

と、その時、再びコンソールに再び明かりが灯った。

 

「いったいどうしたと……」

 

そこまで言って俺の言葉は止まった。

コンソールの画面と立体ディスプレイの両方に、司令官の顔が映し出されている。

その顔は先ほどまでと同じく無表情で、生気が無く無機質な瞳が俺を見つめている。

 

「司令官?」

 

俺は何のアクションも起こさない司令官の顔を見つめる。

どうしたのだろうかと考えていると、暫くの無音の後に司令官の口が薄く開いた。

 

『最重要ターゲットを確認、抹殺します』

 

画面に映し出された司令官から、全く別人の音声が流れた。

この小○克幸ボイス……まさか!!

 

「しまっ!?」

 

眩い閃光と共に体に走る衝撃。

状況を把握する間も無く俺は意識を飛ばした。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

無限に広がる大宇宙。

強き光に満ち溢れた場所が有れば、昏き闇を湛えた混沌の暗黒も存在する。

そんな宇宙の辺境に有る、生有るものは誰も近づかない暗黒銀河に、一つの(やみ)が有った。

 

「面白い事になっているようだな」

 

その影は、闇の中に居ながら、はるか遠くの星の光景を見ている。

自分に課せられた運命を跳ね返そうと抗う者、その奮闘を目にして。

 

「そろそろ契約を果たしてもらおう」

 

そう呟くと、影は暗き闇の中に消えて行く。

暗黒銀河に動く者は何一つ無くなった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

 

「ハァッ……ハァッ……」

 

節々が痛む中、己を叱咤して通路を走る。

まさかギルバリスがあんな搦手を使ってくるとは思わなかった。

人工知能の進化は予想以上だったという事だろう。

 

司令官に成りすましてギルバリスが送って来たのは、ギルバリス自身のアクセスを可能にするプログラムだった。

どんなに堅牢なファイヤーウォールでも、自分でデータを開いたのなら何の意味も無い。

そして、奴が司令官の端末を手に入れているという事は、作戦部隊は全滅してしまったという事だろう。

 

()ぅっ」

 

データが開いた途端、目の前のコンソールが爆発して俺の体は壁に叩きつけられた。

その衝撃でどうも打撲を負ったらしく体中が痛む。

だが幸いにも外傷は多少の切り傷程度で、骨折もしてはいない、なので今はその事は置いておこう。

問題なのは居住区のシステムのアクセス権をギルバリスに奪われてしまった事だ。

勿論、こういった事態も想定して電子認証等が無い避難用ルートも確保されているが、それでもかなり遠回りになってしまう。

 

「地下へのルートは……」

 

どうにかこうにか俺はタワーを駆け下り、そのまま居住区の地下へと向かう。

迎撃システムもダウンした今、この居住区は完全に無防備だ。

早く目的を果たさないと……

 

居住区の地下に降りて入り組んだ通路をひた走る。

目的地は地下の最奥に有る保管庫だ。

 

最後の角を曲がると、目の前に巨大な扉が現れた。

縦横5メートルはあろうかという鉄の扉は、こちらにその堅牢な姿を見せている。

 

「212109っと」

 

テンキーに暗証番号を入力する。

居住区のシステムが全てダウンし、おそらくはスタンドアロン状態で稼働しているこのセキュリティが最後の電子設備となるだろう。

重々しい起動音と軋み音をたてながら開いた扉の奥には、目的の物が鎮座していた。

 

「ギガバトルナイザー……」

 

黒く禍々しい気を放出する、クシア史上、いや、宇宙レベルで見ても最強に近い武器『ギガバトルナイザー』

様々な巨悪の手を渡り、後にウルトラマンジードの手によって破壊されるのは、まだ見ぬ未来の話だ。

 

最後の仕事を完遂する為、俺はソレを手に取った。

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