悪の帝国のテクノクラート   作:トラクシオン

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少々短いながらも、キリが良い場所まで書けたので投稿します。


第九十五話【自動惑星】

「艦隊直上だと!?」

 

その報告に、思わず司令官は叫ぶ。

 

エスメラルダ軍の艦隊には、一隻一隻に民生用とは比べ物にならない程に強力な軍用高性能レーダーが搭載されている。

普通なら、気づかれずに艦隊に接近されるなどという事はまずあり得ない。

 

「レーダーを見落としていたのか!!」

「そんな事は有り得ません!!レーダーの監視は継続していました!!」

「ならばどこから現れた!?」

「不明です、ただ宇宙空間に突如として現れたとしか……」

「ううむ……」

 

「突如として現れた」などという事が有り得るのか。

 

一応、レーダー波を阻害するステルス技術も有るには有るが、まだ開発初期段階の上、エスメラルダが独占管理している技術だ。

……が、ベリアル銀河帝国側がその技術を持っていてもおかしくはない。ニュークシアを傘下に収めた奴らは、今でさえ想像を絶するほどの兵器を戦線に投入しているのだ。

そのせいでどれ程の命が散っていった事か。

 

だから奴らが何を持って来ても不思議な事ではないのだ。

 

「敵の勢力は?」

 

絶望的な戦いであっても、エスメラルダを守護する事が自分達の義務だ。

例えこの身が滅びようとも、せめて市民達が避難する時間だけでも稼がねばならない。

『エスメラルダ国民の生命と財産を守る』それが自分達のするべき事である。

 

自分のすべき事を脳内で再確認し、司令官は深呼吸してどうにか気を落ち着けた後、レーダー手に問う。

『どのような敵がやって来ようと、絶対に引かない』という決意を込めながら。

 

「敵艦と思しき勢力は、一隻です」

「一隻?たった一隻だと?」

 

が、レーダー手からの返答は、司令官からすればあまりにも予想外れで、思わず拍子抜けしてしまう。

『たった一隻?増援かと思ったが違うのか?』と考えていた司令官の耳に、レーダー手はある情報を付け加えようとする。

 

「ただ、大きさが……」

「大きさが何だというんだ?」

 

司令官がそう問い返した瞬間だった。

 

≪カタカタカタカタ……≫

 

艦橋内に、微振動が走る。

咄嗟に地震かと思った司令官だったが、そんな事は有り得ないと思い直した。

ここは宇宙空間に浮かぶ宇宙船だ。惑星に停泊しているならともかく、ここには地震を起こすような物など存在しない。

 

じゃあこの振動は何なんだ?と思った瞬間、更なる異変が起こる。

 

艦橋正面、進行方向に存在する強化ガラス製の窓から射しこんで来る光に、陰りが見えた。

窓の外を見て呆然とするクルー達、奥まった艦長席に居た為に気付かなかった司令官も、恐る恐る窓へと近づいて行く。

 

「何だ?」

 

最初に見えたのは、艦の上部に有る漆黒の巨大な壁であった。

 

「壁だと?いや、あれは!?」

 

壁の表面には模様のようなラインが走っており、隙間からは様々な色に光る発行体が顔を覗かせている。

そしてその光は、まるで川が流れて行くかのように、手前から奥へと移動していた。

 

……いや、光が移動しているのではない、この目の前に広がる()()()()()()()()()()()()のだ。

 

「何なんだ?アレは……」

 

誰が言ったのかは分からないものの、その場に居た全員の心を代弁する台詞が静まり返った艦橋に響く。

その壁は艦隊を追い越し、少し離れて行ったかと思えば、ゆっくりと縦回転して直立姿勢になる。

 

ようやく把握できたその壁の全景は、実に奇妙な物だった。

 

例えるなら、まるで古代民族が製作した壺のような形。

緩いカーブを描く細い下半分、その上に鎮座する球根のような上半分、そしてその上半分から生えた二本の巨大なツノのような部分。

それが全体から、まるで都市の夜景の如く光を発しながら宇宙空間を浮かんでいる。

 

何が何だか全く分からず、ただ『異形の物体』としか言えなかった。

 

「敵と思しき艦を計測……全長、約10キロメートル」

「10キロ、なんという巨大な……」

 

キングエメラルダスの10倍を超える大きさの艦に、司令官は呆然と言葉を呟くと、ただ窓の外を見続ける。

正しくは、『窓の外の物体』を。

 

エスメラルダの住人、いや、この世界の全ての人々はまだ知らない。

この艦が、()()()()()()()()()()()()()()()であるという事を。

その()()()()では、この艦はこう呼ばれていた。

 

【自動惑星ゴルバ】と。

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