【募】こんな小説を書けこの野郎【リクエスト】 作:hasegawa&friends
――――エキシビション! その2。
今回のお題はこちら↓
◆ ◆ ◆
もうタイトルの時点で落ちがついてしまってる気がしなくもないのですが。
hasegawa様のコメディーパワーと相性が良さそうなものを用意させていただきました。
大前提として、幽遊白書をご存じ出なかったら本気で申訳ないです。
色々と書いてしまったのですが、内容は自由に変えて貰って、hasegawa様の気の向くままに書いて頂ければなと。
(※頂いたメッセージから抜粋)
「兄者、起きてちょうだい兄者――――」
「……んあ?」
おっす! 俺は
八百屋なんだか雑貨屋なんだかよく分からん店“剛田商店”、そこの長男に生まれた男だ! 小学5年生だぞ!
「おはよう兄者。突然で悪いんだけど、話を聞いて欲しいの」
「おっ……」
だがそんな俺が、こんな見知らぬ長身の……しかも厳ついグラサンをかけた男に起こされる謂れは無いハズだ。
ここは野球のグローブだのバットだの、スネ夫からパクッてきたラジコンだのがそこら中に転がる、まごう事なき俺さまの部屋。
なのに何故こんな朝っぱらから、見たことも無いような凄く強面のオッサン(変質者)が、俺の枕元に立っているんだろう?
たった今起きたばかりの寝ぼけ頭じゃ、とてもこの状況を理解する事が出来ない。俺はただただ目をパシパシしながら、オッサンの顔と天井を見つめるばかり。
というか……目が冷めて一発目に見たのが、このグラサンの見知らぬオッサンの顔だったもんで、あまりの驚愕に心臓が止まりそうになったぞ。
ほげー! とかぎゃー! とか叫び声を上げなかったのは、我ながら大したモンだと思う。流石は俺さまだ。
「い、命ばかりは……。
まだ俺、10年ちょいしか生きてないんだ」
「なんで私が殺すの? そんな事しないわ」
とりあえず、まっさきに頭に浮かんだのは、「やられる!」という直感だった。
一見しただけで分かる、生物としての
俺は勉強は苦手だけど、前に先生が言ってた“弱肉強食”という言葉が、ふと思い出される。俺がウサギとかだとしたら、コイツは虎なんだと思う。
そして、今この男が放っている、
よく漫画とかで見るような、黒い煙みたいなヤツを、コイツはリアルにシューシュー音を立てながら、身体中から噴き出してやがるんだ。
いくら俺さまがガキ大将だからって、大人にはとても敵わない。
しかもこんなゴッツくて、一目で「あ、コイツ人外だ」と分かるようなヤツなど、もう戦う気すら起きないってモンだ。身の程はわきまえてるぞ。
「金なら下の階だ。レジとか金庫の中に入ってるハズだぞ」
「盗らない盗らない。あれウチのお金じゃないの」
「だから、頼むよオッサン……妹には手を出さないでくれ。
俺のことはいい。人質でもサンドバッグでも、何にもでもなるから。
妹だけは、助けてやってくれよッ……!」
今すぐにどうこうされる、という雰囲気は無いように思う。
だから俺はのそっと布団から起き出し、すぐさま土下座を敢行。
こういう土壇場になった時に、一番最初に考えるのは、どうやら俺の場合“自分の一番大切な物”の事のようだった。
確かにこのオッサンを見た瞬間は、生き物としての危機感とか恐怖感とかを強く感じたんだが、今はそういうモンよりも、妹の事ばかりが頭に浮かんでいる。
こんな化け物を目の前にしたら、もう多くは望めない。
のび太とかドラえもんならいざ知らず、俺にこれをどうにか出来る力は無い。それを情けないけど痛感してる。
だからもう……俺に出来るのは、このオッサンに頼み込む事だけ。
俺の愛する妹――――そんな誰よりも大切なアイツを助けてくれるんなら、もう後は全部どうだっていい。
自分の命なんていらん、俺はアイツの兄貴なんだからって、心の底から思った。
コイツは人の家に勝手に上がり込んでくるような変質者なんだから、あんなに可愛くて幼くて可憐で花の妖精みたいな女の子を見たら、きっとすぐメロメロになっちまうに違いない。
この国に住んでるヤツは、全員ロリコンだ。日本人はみんな変態なんだ。
本当に救いようが無い、度し難い民族なんだ! 俺は知ってるんだぞ!
だからこそ、兄貴である俺が守ってやんなくちゃいけない。みんなが涎を垂らして狙うくらい、まるでアニメの世界から飛び出して来たかのような絶世の美少女であるアイツを救えるのは、この世で俺だけなんだ!
妹には指一本触れさせないぞ! このHENTAIどもめ!
そんな俺の懇願を聞いて、オッサンが何を思ったのかは知らない。俺はいま土下座の真っ最中だし、そっちの顔なんて見れないから。
けど、今オッサンがなんか黙り込んでいる事、そんでどこか戸惑っているような雰囲気を感じる事が出来た。
煙が出るくらいの勢いで、グリグリ畳に額を擦り付けながら、だけども。
しかし、そんな俺の必死さも、懸命な思いも、次にオッサンが放った言葉で、ぜんぶ消し飛んじまう事になる。
「なに言ってるの、妹って私でしょ?
気持ちは嬉しいけれど、聞いてちょうだい兄者――――
◆ ◆ ◆
『うん、すごく面白いよ。
なにより、本当に上手になった。きっとたくさん練習したんだね』
これは、つい昨日の晩。
俺たち兄妹が、スネ夫ん家のクリスマスパーティに行ってきた時の事だ。
綺麗に飾り付けられた広い部屋。テーブルには豪勢な料理が並び、陽気で心地よい音楽が流れてる。
そんな中で、パーティの参加者であるのび太が、ニッコリ微笑みながらジャイ子に声を掛けてた。
『ぼくもそう思う! 凄いよジャイ子ちゃん! こんな立派な漫画が描けるなんて!』
『ええ、まるでプロの人みたい。とっても面白かったわ♪』
横から原稿を覗き込んでるドラえもんとしずかちゃんも、同じく絶賛。
三人ともキラキラした目でジャイ子の漫画を読み、心から喜んでくれてるのが分かって、俺も誇らしかった。
ちなみにだけど、本来のび太に関しては、「悪いねのび太!」とばかりにパーティからハブられる可能性があった。いつもの意地悪ってやつで。
けれど今日この日に限っては、俺の妹たっての希望で、パーティへの参加を許されてたんだ。
これはクリスマスとはあまり関係がないんだが、ジャイ子が頑張って描いていた漫画原稿が、最近になってようやく完成したんだ。
そして、これをみんなに読んで貰って、感想を聞きたい。特にすげぇ漫画に詳しくて、いつも的確なアドバイスをしてくれるのび太には、ぜひ読んで欲しい。
このクリスマス会の場を借りて、みんなに自分の漫画をお披露目したい――――
そんなジャイ子の願いから、俺はのび太が参加出来るようにしてくれと頼まれ、それをそのままスネ夫に伝えた~というワケだ。
俺たちが馬鹿な小学生だってのがデカイんだが……、スネ夫が「悪いねのび太!」をすんのは、単に“いつものノリ”ってだけで、別にアイツのことを嫌ってるワケじゃない。
そしてぶっちゃけた話……、俺ものび太のことは嫌いじゃない。
むしろ「こいつ男気あんな」って認めてる部分すらあったりする。
コイツは腕っぷしが弱いし、情けない部分も目立つんだが、でも時々しんじられない位の勇気を見せる。ビックリするくらいに優しい所がある。
この俺さまをしても、すげぇって言わざるを得ないくらい、のび太は大したヤツなんだ。
きっとこれを知ってるのは、スネ夫とかしずかちゃんとかの、いつもつるんでる三人だけなんじゃねーかな?
どんだけ周りのヤツらが小馬鹿にしようとも、関係無い。俺たちだけはのび太が凄いことを知ってるし、それを信じてるんだ。
普段は意地悪なんかもしたりするが、でもなんかあった時には、絶対にコイツを守ってやろうっていう気でいるぞ?
のび太は大事な仲間だし、なにより俺さまはガキ大将だ! コイツらのボスなんだからな!
『タイトルは“虹のビオレッタ”か……。
とても綺麗な響きだし、この漫画にピッタリだと思う。
うん! 完璧だよジャイ子! ……いやクリスチーネ剛田先生って呼んだ方がいいかな?』
『や、やだもうのび太さん! 私なんてまだまだよ!
……でもありがとう、アドバイスしてくれて。
いつものび太さんには、助けて貰ってるわ。これも貴方のお蔭よ』
『ねえ、また賞に応募するんでしょ? これならきっと良い結果が出るよ。
すごく面白いし、もしかしたらこの町から、小学生作家が誕生するかもしれない!
これって凄いことだよ!』
ジャイ子はこれまで、のび太にアドバイスを受けたり協力して貰ったりしながら、漫画を描いてきた。
何か困った時や、迷った時、掛け値なしに手を貸してくれたのがコイツだ。
本当は俺が手伝えたら良かったんだが、ジャンプとかの少年漫画ならともかく、流石に少女漫画の事は専門外。ぜんぜん分からない世界だ。
けれどのび太は、色々な漫画を読み込んでいて、少女漫画についても明るかった。
いつも的確な意見くれるらしく、ジャイ子いわく「とても頼りになる」
まぁ妹が俺以外のヤツを信頼してる~ってのは、兄貴としては複雑な心境だったりもするが……、コイツだったら仕方ないって思うし、別にいいんだ。
直接言ったりはしないけど、俺はのび太のこと“心の友”だと思ってるんだから。
もし仮に、コイツが「ジャイ子と結婚したい」って言っても、たぶん俺は反対しないんじゃないか? 安心して任せられる気がする。
まぁ愛する妹を取ってくんだし、5、6発は殴らせてもらうかもしんねぇけど……。そこだけはスマンが覚悟しといて欲しいぞ。これも男の試練ってヤツだ。
『ん? これは何だろう? また別の絵柄のヤツがあるけど』
『ッ!?!?』
そんな風に、ジャイ子と仲間達の姿を、俺さまはウンウン頷きながら、遠くから眺めてたんだ。
けれど、突然あっちの雰囲気がおかしくなった。
ジャイ子の漫画を読み終わったのび太が、机に置いてあった“もう一つの原稿”に手を伸ばし、何気なくペラペラと読み始めやがったんだ。
『えっ……なにこれ!?
『チューしてるよ!?
この人たち男同士なのに、なんでチューしてるの!? しかも素っ裸で!!』
『ちょま?! いけないわドラちゃん! こんなの読んじゃダメよ!!』チラッ! チラッ!
それは、ジャイ子が描いていた、いわゆる“同人誌”という物だった。
うっかり鞄に入れっぱなしにしていたのを、応募用原稿と一緒に机に置いてしまい、それをのび太に見つかっちまった~という事らしい。
これは後で聞いた話なんだが……、どうやらこの“同人誌”というのは、裸の男がたくさん出てくる本らしい。
いわば、
歓談ムードだった聖夜のパーティ会場は、一転して阿鼻叫喚の地獄になった。
驚いたドラえもんが後ろにひっくり返り、椅子だのクリスマスツリーだのを巻き込みながら倒れる。
そんで思わず放りなげちまった原稿をキャッチすべく、のび太が果敢にジャンプしたんだけど、ミスってテーブルにガッシャーンと突っ込んでしまい、料理とかジュースとかを全部ぶちまける。
床に散乱するガラス片、甲高い破砕音、料理や飲み物をひっ被る人たち、そして沢山の「ぎゃー!」という叫び声。
まさかそのキッカケが、ジャイ子の描いた“一冊のエロ本”だとは――――
流石の俺さまも、これにはグウの音も出なかった。
……………………
…………
……
「あれは蔵馬×飛影本で、“幽遊白書”っていう作品の同人誌なの」
昨晩の惨状にぼんやり想いを馳せていた俺の意識を、ジャイ子の声が呼び戻す。
いま俺たちは、向かい合うようにして床に座ってて、俺はドシッって感じの胡坐、ジャイ子はチョコンって感じの女の子座りだ。
まぁコイツのガタイを考えれば、チョコンなんて擬音は似つかわしくないんだろうが……でも実際そうなのだから仕方ない。
こんなオッサンの姿になろうと、ジャイ子はジャイ子。中身は女の子なんだ。
「それで私……朝起きたら
きっとこれは、まだ小学生なのにあんなモノを描いた、私への罰なのね」
ウンウンなるほど、……と一瞬頷きそうになるけど、すぐ「そんなワケあるか」みたいな気持ちが湧く。
「蔵馬や飛影ならともかく、まさか戸愚呂にされるだなんて……。
しかもクリスマスの朝に、プレゼントをするんじゃなく、戸愚呂にするだなんて……。
漫画の神様やサンタさんは、よほど私に怒っていらしゃるのね」
俺よくカーチャンに怒られてるし、悪さだってする方だけど、今まで一回も戸愚呂にされた事ないし、そんなの聞いた事もない。
ジャイ子の言う神様やサンタってのは、俺の知ってるヤツとはだいぶ違うようだ。
関係ないけど、戸愚呂って罰ゲームなのか?
俺が知ってる戸愚呂ってのは、敵キャラだけどすんごいカリスマ性があって、めちゃめちゃカッコいいヤツなんだが……。
少なくともナマハゲみたく、悪い子のお仕置きに使われるような化け物じゃない。
まぁたとえどんなにカッコ良くても、“女なのに男にされる”というのは、罰と言えなくもないかもしれんが。
「そんなワケで、つい魔が差して蔵馬×飛影本を描いてしまったばかりに、戸愚呂にされてしまったんだけど……。どうしたら良いと思う?」
そんなこと言われても分からん。こんな事態に遭遇した事ないんだから。
そしてこの先、誰かに「戸愚呂になってしまったんだけど……」という相談を受ける事は、もう二度と無いと思う。ある意味で貴重な経験してんのかもしれねぇ。
俺もドラえもんと関わるようになって、もう結構たつんだけど……まだまだ世界は驚きに溢れてるんだな。世の中は不思議な事でいっぱいだ。
今も俺は、なんとか平静を装いながらも、ガクガク震えてくる身体を抑えつけるのに必死。
いま目の前にいる男……いや戸愚呂から放たれる威圧感に、おしっこ漏れそうになってる。
けれど、兄貴である俺には、この暗黒武術会でブッチギリの優勝をしそうなオッサンが、間違いなくジャイ子その人である事が、もうヒシヒシと分かった。
たとえ筋骨隆々で、見上げんばかりの長身で、しかも厳ついグラサンをかけていようとも、コイツは俺の妹なんだと。
その声は違っても、喋り方はいつものまんまだし、このオドオドした儚げな雰囲気も、可憐な乙女であるコイツその物。
というか……いま戸愚呂が着ているのって、まんま
漫画家っぽいベレー帽を被ったおかっぱ頭に、クリーム色のセーターと、赤い吊りスカート姿だったりするし。
その分厚い筋肉のせいで、服ははち切れんばかりにピッチピチだし、その長身のせいでスカートの丈が足りず、某ワカメちゃんみたく豪快にパンチラしてはいるが、これは確かにジャイ子の服だ。
あんなにカッコ良かった戸愚呂が、女の子の服を着ている――――しかもジャイ子の服。
思えばこれって、物凄い事なのかもしれないが……、でも俺は今それどころじゃない。
戸愚呂(妹)が爆誕してるんだ。
聞く所によると、世の中には“妹モノ”という一大ジャンルがあるらしいし、古今東西あらゆるタイプの妹が存在するんだろう。
でも、いくら俺が自他共に認めるシスコンだからって、正直これは勘弁して欲しい。
「こんな姿じゃ、お外に出られないし、友達にも会えないよ……。
だから頼れるのは兄者だけなの。
おねがい兄者、私を助けて」
戸愚呂(妹)が、めそめそと泣く。
こんな大きな身体なのに、それはとても儚げで、弱々しかった。縋るような声で、俺に助けを求めてる。
確かに、思う所はあるさ。
特に、性格はいつものままなのに、呼び方だけが「おにいちゃん」ではなく「兄者」になってる所とか。なんでそこだけ戸愚呂を踏襲してやがんだ~とかさ?
だがそんな風に言われて――――妹を助けないヤツがどこにいる!!
さっきまでの恐怖や動揺はどこへやら。いま俺の胸に、燃えるような使命感と兄妹愛が湧き出した。まるで火山の噴火みたく、天高くドゴーンと!
「――――泣くなジャイ子! 俺にまかせとけッ!!
ぜったい兄ちゃんが何とかしてやっかんな!」
強く言い放つ! 兄貴の矜持にかけて!
俺はジャイアン、ガキ大将。天下無敵のシスコn……いや男だぜ!
まあその後すぐ、ジャイ子が「兄者! 私うれしい!」とか言ってショルダータックルして(抱き着いて)きた事により、窓を突き破って外に放り出されるハメになったが……、そんくらいでは挫けない。
普段ドラえもんの秘密道具とかで、冷静に考えたら「普通死ぬぞオイ!?」みたいな目に合わされたりしてるが、“回を跨げば元通り”というこの世界のルールによって復活してるし。意外と大丈夫なもんだ。
砲弾めいた勢いで窓を突き破り、ついでに近所の家も3,4軒ほど突き破って、軽く60メートルばかり跳ね飛ばされるという空中遊泳をしばらく味わった後、とんでもねぇスピードで地面に激突し、ソニックみたいな勢いで〈ゴロゴロゴロー!〉っと転がってって、最後は空地の土管と衝突する事によって、ようやく止まったんだが……こんなのは大抵、一晩寝たら治る。俺さま達はそういう風にできてるんだ。
身体中に突き刺さった大量のガラス片だの、木片だの、コンクリの破片だの、鉄パイプだののせいで血まみれとなり、打撲・骨折・裂傷etc.あらゆる負傷と臓器損傷と筋断裂と脳挫傷と出血過多によってドンドン薄れていく意識の中……。
俺は「兄者大丈夫!? ごめんなさい兄者っ!」と泣きながらこちらに駆けて来る戸愚呂(妹)の声を聞きながら、これからどうすっかな~と考えるのだった。
◆ ◆ ◆
「あ~アンタ達、表に行ってたのかい。
二人ともおはよう」
ウチのかあちゃんは、スゲェって思う。
グッタリしてる俺を肩に担いで帰宅したジャイ子を見ても、眉ひとつ動かさなかった。
ホントにいつも通り、何気なく朝の挨拶をしやがったんだ。
「朝ご飯できてるからね。冷める前に、とっとと食べちゃいな。
あんた今日、野球しに行くんだろ?」
「えっ、いやあの……かあちゃん?」
腰のエプロンで手を拭いながら、そんじゃねとばかりに「♪~」と立ち去ろうとするかあちゃんを、思わず呼び止める。
怪我してる俺の事はともかく、あんた“コレ”を見て、何とも思わねぇのかよ。戸愚呂だぞ? あんたの娘が戸愚呂(妹)になってんだぞオイと。
「ん? 多少は背が伸びてるみたいだけど、それがどうしたって言うんだいこの子は。
いいかい? 成長期の子供ってのはね、一日で結構デカくなるモンなのさ。
あんた達は今、食べ盛り伸び盛りなんだからね。
こんなのでいちいち驚いてたら、母親なんてやれないよ!」
「ッ!?!?」
改めて説明しとくと、“戸愚呂”ってのは幽遊白書という漫画に出てくるキャラだ。
ドラゴンボールで言えばフリーザみたいなポジションのヤツで、その存在感やカリスマ性は作中屈指。とんでもなく強い敵だったワケだ。
そのオーラや威圧感は、言わずもがな。ガタイは凄ぇし、身長も2メートルくらいあるしな。
けど今かあちゃんは、そんな化け物めいた戸愚呂を見ても、のほほんとしてやがるんだ。
自分の娘がこんな風になっちまったってのに、別に気にした様子も無い。
それどころか、突然玄関から入って来た戸愚呂を、一目でジャイ子だと分かったみたいで、普通に「おはよう」って声をかけてたし。
それどういう事なんだよ、なんで分かるんだよかあちゃんって、思わずそう聞いてみたんだが……。
「――――自分の子が分からない親がいるもんかね!!
こーんな可愛い娘が、他のどこにいるってのさ! かあちゃんを馬鹿にしてんのかい!?」
と普通に一喝されちまって、俺はもう放心するばかり。
マジでかあちゃんってすげぇ。
これにはジャイ子も大喜びし、泣きながら「おかあさーん!」ってショルダータッk……いや抱き着きに行った。
それをかあちゃんは、〈ドンッッ!!!!〉って力士みたいにガッシリ受け止めた後、「おやおや、一体どうしたんだねこの子は。甘えんぼだねぇ」と、よしよし頭を撫でてた。
ぶっちゃけ俺、さっきこのタックルで半死半生になったばかりから、ジャイ子が駆け出した瞬間「やべえっ! 危ない!」って思ったんだが……、でもかあちゃんは全然平気みてぇだった。
今ダンプカーが突っ込んだような轟音がして、地面と空気が思いっきり揺れてたのに、まったくの無傷。
流石はかあちゃんだーって、そう言いたいトコだけど、一体どうなってんだよアンタ。なんでそんな事できんだよ母ちゃん。
「とはいえ、こんだけ背が伸びちまうのも困りモンだねぇ。
ジャイ子や? 後でかあちゃんと一緒に、デパートに行くよ。
あんたに合う服を、たくさん買ったげるよ♪」
「ホント!? ありがとうおかあさんっ!
おかあさん大好きっ!」
自分より遥かにデカい大男が「えーん!」と腰にしがみ付いてても、母ちゃんはまるで仏さまみたいに優しい顔。
こういうのを“慈愛”っていうらしいが、ホントに戸愚呂とかそんなの関係なく、子供を安心させてやる母親そのものの仕草だった。
実は俺、前に“相手の本音を聞き出す”ことが出来る道具を、ドラえもんから借りた事があって、それを試しに、かあちゃんに使ってみた事がある。
いつも殴られてるし、悪さばかりしてる馬鹿息子な俺は、どうせかあちゃんは俺のこと嫌いなんだって思い、それを面と向かって問いただしてやったんだ。
そうならそうとハッキリ言ってくれ、そっちの方がせいせいするって。
いま思えば、あん時は本当ヤケになってた気がする。
これまでずっと心にあった悲しみを、叩きつけるように吐き出したんだ。
でも……ひみつ道具で催眠状態みたくなってたハズのかあちゃんは、俺がボロボロ泣きながら叫んだ途端、即座にこう返した。
『 自分の子を嫌う親が、どこにいるんだい!!
馬鹿でも乱暴でも、
……というか、さっき「ぜったい俺が助けてやる!」ってジャイ子に約束したけどさ?
でもぶっちゃけ俺が駄目でも、かあちゃんが居れば、
元に戻れようが戻れまいが、かあちゃんの愛は変わらない。
かあちゃんはジャイ子を守る――――
俺さっきまで、すげぇオロオロしちまってたけど……、でもあんまり気負うことは無いのかもしれん。
これからの事は確かに不安だが、でもかあちゃんがいる限り、「何があっても大丈夫」
その大きな安心を胸に、俺なりに精一杯やろうと思った。
俺はジャイ子の兄ちゃんであり、かあちゃんの息子だ。
◆ ◆ ◆
「戸愚呂って、幽遊白書のヤツだろう?
そりゃあ僕も知ってはいるけど……」
お日様がだいぶ高くなり、いい感じの青空になった頃。
俺はいつもの空地で打順がまわって来るのを待ちながら、隣に座るのび太に相談をしていた。
うちのジャイ子が戸愚呂(妹)になったんだが――――と。
「うん。正直いって、僕には見当も付かないや。
どうすれば良いのかなんて……」
「心配すんな、俺だってそうだ。
こんなのをホイホ~イって解決できるヤツがいるなら、顔が見てみたいもんだぜ」
「一応、ドラえもんに頼めば、見た目はなんとか出来るだろうけど……。
女の子の姿に変えるとか、あとタイム風呂敷を使って、一時的にだけど元に戻すとかさ?
でも何でジャイ子がそうなったのか、その原因を調べないとだね」
「それが分かんねぇうちは、どうにもなんねぇもんな……。
まぁジャイ子本人は、幽白のエロ同人を描いたからバチが当たった~、とか言ってたけど。
そんなワケねーじゃんよ。どんだけ神は残酷なんだって話だよ」
いまジャイ子は、かあちゃんと一緒にデパートに行ってる。
ホントは俺もついて行きたかったんだが、買うのは女の服という事で、俺がいてもしょうがないと言われた事。かあちゃんが一緒だから大丈夫な事。そんでこの野球自体が、俺がみんなに声をかけて主催してるヤツなので、責任ってヤツがあった事。
そんなこんなの理由があり、断腸の思い? ではあるが、俺は一旦ジャイ子と別れる事になった。
なにより、今日の野球にはのび太にも声をかけてたので、ここに来ればコイツと話が出来る。相談に乗って貰える。
あれからウンウン考えたけど、きっと俺一人の力じゃ、コレは解決できない。
寄り添ったり、守ったりする事は出来ても、ジャイ子を元に戻してやる為には、みんなに協力してもらう事が必要だと思う。
事情が事情だし、コレあんまり人に喋るのは駄目だけどな。ジャイ子も嫌がるだろうし。
けどいつもの三人とドラえもんにだけは、ちゃんと事情を話し、助けて貰わなくちゃいけない。
どんだけコイツらが頼りになるかってのは、もう言わずもがなってヤツだろう。これまで俺達でやってきた数々の冒険が、それを証明してる。
それにコイツらなら、のび太なら……もう掛け値なしに信用できるから。
「とにかく、野球おわったら、いっぺんドラえもんに会いに行ってもいいか?
お前のかあちゃんビックリするだろうけど、ジャイ子も連れてよぉ?」
「う、うん……それはもちろんだよ。
戸愚呂がピンポン鳴らして入って来たら、きっとママは腰を抜かすだろうけど、今はそんなこと言ってらんないもの。
――――なんで戸愚呂が、ウチの息子を訪ねて来るの?! のびちゃん何やったの!?!? とか思うだろうけど」
「あれかなぁ? 菓子折りとか持ってった方がいいか?
見た目としては、大人の男が行くんだし、コレならちょっとは印象ちがうだろ。
なんなら用意してくぞ?」
「いやいや、
妖怪的なオーラを出しながら、『つまらねェもんですが……』とか言われてもさ?
きっと大差ないし、そんな気を使わなくても大丈夫だから。普通に遊びにおいでよ」
その後、9番ののび太が打席に立ち、そんですぐ三振して帰って来るが、これはいつもの事なので気にしない。
というか……コイツ本当は、“やればけっこう出来る”ってタイプなんだけどなぁ。
きっと野球とかに関しては、自分に自信が無いせいで打てないんだろう。心のどこかで、「僕には無理だ」とか思っちまってるっぽい。
射撃だの、あやとりだの、コイツには色んな特技があって、長所だって沢山あるヤツなのに。
こういうのって、意外と自分では分かんねぇモンなのか?
まぁ多分、この先なんかキッカケさえあれば、ドカーンと化けるんじゃねぇかな? きっと将来、凄いヤツになるよコイツは。
俺はただ、その時をのんびり待てばいい。
こんだけ散々つるんで来たんだ。もう間違いなく一生付き合ってくんだろうし、焦る事もねぇと思う。
まぁ一応はチームのキャプテンとして、軽くポカッとゲンコツを入れておく。
のび太は一瞬だけ目から星を散らしたが、その後すぐに「えへへ」と笑った。
確かにヘタッピではあるけど、こいつはこいつなりに、野球を楽しんでくれてんだな。それがなんか嬉しい。
さぁて、スリーアウトチェンジだ。急いで行かねぇと。
俺もピッチャー頑張るから、しっかり守ってくれよのび太?
◆ ◆ ◆
「兄者ぁぁぁあああ~~ッッ!!!!」ドドドド
きっと脳内では「おにいちゃーん!」って感じで、可愛らしく手を振りながら走ってるつもりなんだろう。
少女漫画のヒロインが、「うふふ♪」とか言いながらお花畑を走るような感じで。
だが今のジャイ子は、なぜか二足歩行をしてる羆が、猪並のスピードで全力走りをしてるような感じだ。
その顔だけは満面の笑みで(まぁ戸愚呂がニヤッとしてるだけだが)、野球をしている俺の方に駆けてきた。
その踏み込みは一歩ごとに大地を震動させ、まるで工事現場にある重機みたくドドドっと音を立てる。土煙を舞い上げながら時速100キロくらいで走ってる。
それはまさに人ならざる者……、人外そのものの姿。
これが俺の妹じゃなきゃ、逃げ出してる所だ。
「あれっ!? どーしたんだジャイ子!
かあちゃんとデパート行ったんじゃないのか?」
「うん! 行ってきたわ!
でも兄者といっしょに居たくて、すぐに戻って来たの! ダッシュで!」
ホントなら、もう泣いて喜びたい。俺の妹は世界一カワイイって、そうマイクで町内に知らせてやりたい気持ちだ。
でも今のジャイ子は戸愚呂(妹)なんで、なんというか威圧感がスゲェ。
身体はガクガク震えて来るし、そのオーラだか瘴気だかで、肌がピリピリしやがるぜ。
「私こんな姿になっちゃったし、一人じゃ不安なの。
だから、兄者と一緒がいい……。ダメかな?」
「バカ! 駄目なワケがあるか!
兄ちゃんは嬉しいぞぉジャイ子ぉー!」
筋骨隆々で、馬鹿でかいオッサンが、くねくねモジモジしている姿は、正直すげぇ気持ち悪い。
だが俺は兄貴なので、脳内フィルターを駆使し、その姿をジャイ子のものに変換して見る事が出来る。可憐な乙女として捉えることが出来るのだ!
俺は「うおー! 妹よ~!」とか言いながら、ガバッとジャイ子を抱きしめる。
本当はそのまま頭を撫でてやりたかったんだが……、でも今はコイツの方が圧倒的に身長がデカイので、俺がジャイ子の腹に抱き着く格好になった。
まぁそんな事も気にせず、嬉しそうにしてくれてるからいいけど。
「うわぁ戸愚呂だ! スゲェ!!」
「おじさん、マジで戸愚呂みたいじゃんっ!
服はちょっと変だけど、メッチャそっくりだよ!」
そんな
キョトンとしてるジャイ子の周りを、ワーワー喜びながら取り囲んでる。
きっとデパートで買ったんだろうが、今のジャイ子はビジネスウーマンちっくな、カッコいい女性用スーツを着てる。膝上のミニスカートに、黒い網タイツも穿いてる。
髪型こそいつものおかっぱ頭だが、ちゃんとあの黒いグラサンはしてるし、顔付きだってメチャメチャ堀が深い。しかもcv玄田哲〇だ。
だから今のジャイ子は、もうまんま女版戸愚呂。
いやむしろ“女装した戸愚呂”って感じだった。
たしか玄田〇章さんは、オカマキャラとかもよく演じてたし、これで口紅でも引いたらマジでえらい事になりそう。妙に似合っちまうかもしれない。
そりゃー、アニメから飛び出して来たような人が、いま目の前にいるんだ。みんなもキャッキャ喜ぶってもんだ。
戸愚呂を見てテンション上がらないヤツなんて、この世にいるワケないもんな。(※個人の印象)
ちなみに、さっき「おじさん」と呼ばれてたが、ジャイ子はそれを否定するんじゃなく、これ幸いって感じで話を合わせている。普通におじさんとして振舞っていた。
どうやら、この勘違いに便乗して、自分がジャイ子である事を隠す作戦らしい。こいつも乙女なんで、きっとみんなに知られるのが恥ずかしいんだろう。
「わぁ! 筋肉もムキムキだ! リアル戸愚呂だよ!」
「ねぇねぇ、おじさんも野球やろーよぉ! おれ戸愚呂と野球してみたい!
ピッチャーやったら、すごい球なげれるんじゃないの?」
「ん~、野球かい?
俺ァあまりやった事がなくてねェ」
便乗するのはいいが、何故か喋り方まで戸愚呂になるジャイ子。無駄に完コピしてる。
幽白ファンの面目躍如か。
(ど、どうしよう兄者……? なんか圧が凄くて、断り切れないよ。困ったわ……)
(何球か投げるしかねぇな。そうしねぇと収まり付かねぇよコレ。
大丈夫だジャイ子、俺がキャッチャーやるから)
顔を寄せ合い、ボソボソと小声で相談。ジャイ子は不安気な顔だ(戸愚呂フェイスだが)
とにかく俺は持っていたグローブを手渡し、ピッチャーマウンドまで案内してやった。
「野球なんて初めてだろうけど、心配いらねぇぞ!
兄ちゃんを信じて、おもいっきって投げろ!」
「うん!」
俺の方もキャッチャーマスクを装着して、ジャイ子と遠く向かい合った位置で座る。
ミットをバンバン叩いて気合を入れ、プレイボールを宣言。
眼前にいるジャイ子に対して、「ここに投げろ」と示すように構えをとった。
けれど……なんか様子がおかしい。
ふと気付けば、ジャイ子の身体から黒いオーラみたいなのが、モクモクと上がってるのが見えた。
ついでに言えば、ただでさえピッチピチだったジャイ子のスーツが、その筋肉のパンプアップによって、はち切れんばかりにミチミチいってる。ボタンもいくつかポーンと弾け飛んでるし。
「――――ふ゛う゛ん゛ッッ!!!!!」
ゴッッ!! という音が鳴った。
ジャイ子が“女の子投げ”って感じの投球フォームをとった途端、アイツの身体が残像でブレて、次の瞬間まるでジェット機みたいな勢いのボールが、俺の頭上すれすれを通過してく。
風圧、それに追従してババババーという衝撃波。後に辺りに響くすさまじい轟音。
俺は映画とかでしか見た事ないが、きっと戦車の砲撃ってこんな感じなんだろうな~、と思う。
「ふむ。真っすぐ投げるってのは、案外難しいねェ。
だいぶ逸れちまったなァ」
ジャイ子はのほほんとした様子。「うーん」なんて言いつつ、どことなく残念そうな顔。
だが俺は今、それどころじゃない。風圧だけで吹っ飛ばされ、ゴロゴロと地面を転がったんだから。
もし仮に、ジャイ子の球が真っすぐ投げられてたら、今ごろ俺は生死の境を彷徨ってた事だろう。
何故ならば、あの球はカミナリさん家の窓ガラスを割るどころか、そのまま屋根を貫通して天高くキラーン☆ と消えてったんだから。
カミナリさんの家、衝撃波で半壊しちまったんだから。
もう考えるだけで恐ろしい。
「た、タイム!!
ジャイk……じゃなかった戸愚呂のおっさん、ちょっとこっちに来な?」
「?」
うおーすげぇー! 流石は戸愚呂だぜぇー! とキャッキャ騒いでる馬鹿共を尻目に、妹を手招き。
戸愚呂(妹)はキョトンと小首を傾げながら、ドスドスこちらに駆け寄って来る。
せっかくのカワイイ仕草なんだし、本当は“トテトテ”とか書いてやりたいんだが……、でもマジでドスドス地面が揺れてたんで、これはもうしゃーない。
「ジャイ子よ? 俺はお前のためなら死ねる。命なんか惜しくねぇよ。
けど……流石に兄ちゃんも、野球とかで死んじまうのは、結構キツイもんがあってな?」
「あ、私ったら! ごめんなさい兄者!
……ちょっと強すぎたかなぁ?」
ちょっとどころじゃねーよ。あれ
ジャイ子は今、戸愚呂になっちまったばかりで混乱の最中で、なんにも分からない状態なんだし。そもそもこれは、俺が「おもいきって投げろ」って言ったせいなんだ。
俺の妹は悪くない。カミナリさん家がえらい事になっちまったけど、悪くないぞ。
「さっきのは、とりあえず“戸愚呂50%”で投げてみたよ?」
「50%!? あれでもそんくらいなのかよ!?」
「うん。あまり力一杯だと、ちゃんと投げれないかな~と思って、セーブしたの。
でも今の私じゃ、50%でも上手に扱えないみたい。
野球って難しいんだねぇ兄者♪」
カワイイわぁ~。「えへ♪」ってはにかむ仕草、最高だわ。
まぁ、顔が戸愚呂じゃなかったら、の話だけどな。残念でならないぜ。
それはともかく、どうやらジャイ子は原作通り、例の“爆肉鋼体”が使えるみたいだ。
さっきコイツが言ったみたく、戸愚呂ってのは50%とか80%とかいう感じで、その肉体の筋肉量を調整し、力を増減することが出来る能力を持ってるんだ。
普段の戸愚呂は10%くらいの状態でいて、見た目的には長身のおっさんって感じ。
だがそれが80%とかになると、もうエゲツナイくらいのムキムキになる。
もう一見しただけで「化け物だ」って分かる、人知を超越した姿になるからな。ものすごく厳ついぞ。
さっきのジャイ子は、フォームもクソもないような女の子投げで、ドドン波レベルの剛速球を繰り出した。
もしジャイ子が真っすぐミットに向かって投げてたら、兄貴である俺を吹っ飛ばすどころか、もう2,30軒くらいは民家を貫いてたに違いない。町に甚大な被害を出してた事だろう。
そんで、これがジャイ子にとっての50%。ようは全然本気じゃないって事だ。
原作を見る限りだが、たぶん戸愚呂の力って、単純な足し算じゃないっぽいんだよな……。
100%の状態なら、50の時に比べて倍の力が出る~とかじゃなく、それどころか数十倍の強さになるっていう、雪だるま式の増減の仕方なんだと思う。
だから、もしこの戸愚呂(妹)が全力全開になったら……なんて事は、想像もしたくない。
いったいどんな球を投げるのかなんて、もう知りたくも無いってモンだ。
「すげぇじゃんオッサン! 今のって50%くらいのヤツ?」
「なら次は戸愚呂100%でやってよ! ぼく見てみたいっ!」
――――嘘だろお前ら。イカれてんのかオイ。
馬鹿な小学生たちがジャイ子を取り囲み、「やってやって♪」と騒ぎ立てる。無邪気な笑顔が眩しい。
「100%かい? いやァ、あれはどうだろうねェ。
こんなちっぽけな町、消し飛んじまうかもしれんぞォ」
「うおーかっけぇ! 流石は戸愚呂だぜ!」
「憧れるぅ~!!」
ジャイ子が戸愚呂の口調で窘めるが、ガキ共はもうテンション上がり切ってる。
おねがいだよ戸愚呂さん! かっこいい所を見せて! とばかりに、やんややんやと誉め立てる。
しまいには「はい! はい! はい!」と手拍子までしだす始末。
ジャイ子……分かってんな? ぜったい駄目だぞ。
お前が本気なんて出したら、マジでえらい事になる。もっと言うとキャッチャーの俺は死ぬ。
あるだろ、「浦飯との戦いで消耗してる~」とか、なんかあんだろ。
お前が優しいヤツで、ちょっと引っ込み思案な女の子だってのは分かってる。だがなんとか頑張ってくれ。ハッキリ断るんだ。兄ちゃんの為に。
「それじゃあ、一回だけだよォ?
これが俺の100%だぁぁぁあああッッ!!!!」ゴゴゴゴ
――――神様はいねぇんだな。ジャイ子ノリノリだよ。
俺は無言でミットをはめ直し、黙って捕手の定位置についた。全てを諦めた顔で。
「うおー! めっちゃ筋張ってるよ! 岩みたいな筋肉だ!」
「オーラがすごい! 威圧感すごいよ! これが100%の戸愚呂なんだね!」
辺りの空気の色が変わり、天候すらも変えてしまうほどの妖気。
その場にいるだけで地面がひび割れ、周囲の建物が崩壊しだす位の力。比喩抜きで岩のように隆起した筋肉。戸愚呂(妹)の100%――――
あ、今から俺、こいつの球を受けるのね。
そんな絶望で白目になってる俺を他所に、仲間達は「キャッキャ☆」と喜び、ピーピー口笛を吹く。こっちの気も知らずにチキショウ。
「あの……ジャイアン?
生きてさえいれば、ドラえもんがなんとかしてくれるから……」
「がんばってね、たけしさん……。わたし応援してるから……」
のび太としずかちゃんが、顔面蒼白になりながらもエールをくれる。「死なないでね」と。
スネ夫の方も、なんとかこれを止めさせようと、必死になってみんなを諫めてくれてるが、もうこの状況はどうにもならんだろう。
俺達はみんな、馬鹿な小学生なんだ。無邪気で残酷なのさ。
せめて仲間達に、俺の生き様を見せよう。
俺はいつも威張ってるんだ。こんな時にこそ、逃げずに男気を見せなきゃいけないって思う。
そしてジャイ子にも、兄貴の愛を示めそう。
野球の球だろうが、ベジータのギャリック砲だろうが、なんでも受け止めるぞ俺は。
ま、回を跨げば怪我は治んだろ……。
俺はそんな“世界のルール”に縋りながら、死んだ目で戸愚呂(妹)と相対し、キャッチャーミットを構えた。
◆ ◆ ◆
『――――お前もしかしてまだ、自分が死なないとでも思ってるんじゃないかね?』
そういや原作には、そんな戸愚呂の名セリフがあったなー。あれすげぇカッコ良かったなー。
そんな事を、最後の瞬間にふと思い出し、ぶっちゃけ走馬灯が見えたよ。
だが一応ジャイ子にも、人としての理性はギリ残っていたらしく、俺はなんとか命を奪われずに済んだ。
戸愚呂の技には“指弾”ってのがあって、コイントスみたく親指で空気を弾き出す攻撃なんだけども、なんかジャイ子はそれを使ってくれたっぽい。
振りかぶって球を投げるんじゃなく、ピシっと親指でボールを弾くことで、ピッチングをおこなってた。
漫画で見た技を、実際に生で見ることが出来たことに、仲間達は大喜び。
その反面、いくら100%の状態とはいえ、これはあくまで親指だけの力。加えて指弾は戸愚呂の持ち技だって事もあり、きっと力加減やコントロールも効いたんだろう。俺は死なずに済んだ。
……とはいえ、まあ案の定ボロ雑巾みたくなっちまったワケだが、詳しい説明は省く。
たとえピッコロ大魔王みたく腹をぶち抜かれようと、魔人ブウみたく跡形も無く消し飛ばされようとも、いま俺はこうして生きてる。
ちゃんと自分の足で立ってるんだから、結果オーライってやつだ。
「う~ん。血液検査も、心拍も、健康状態も、ぜんぶ異常なしだ。
タイムマシンで過去も見てきたけど、原因らしき物は見当たらない」
その後、ジャイ子を連れてドラえもんの所に趣き、色々調べて貰った。
けど結果は芳しくない。どれだけ数々の秘密道具を使っても、ジャイ子がこうなっちまった原因は見つからなかった。
「これが超常的な事なのか、それとも自然な現象なのか。
誰かの手による物なのか、何らかの薬や物質による物なのか……。
それすらも、ぼくには分からないんだ。ゴメン」
ドラえもんは、心底すまなそうに謝ってた。すげぇ悔しそうだった。
子守ロボットで、みんなの友達で、いつもどんな時も、俺達を手助けしてくれた――――
それがこいつの矜持で、優しさでもあるんだが、この時ばかりはホントにお手上げみたいだ。
こんな辛そうなドラえもんの顔、初めて見たような気がする。
「少なくとも、ジャイ子ちゃんは全くの健康体だよ。
これは病気とかでは無いし、この先どうにかなっちゃうとか、そういう心配はないから。
こんな気休めしか言えなくてゴメン……。でもお願い、ぼくに時間をちょうだい?
もっと調べてみる。もっともっと頑張って、ぜったいに君を助けるから」
ジャイ子の手を握り、真剣な目で語り掛けてた。
かあちゃんも、のび太達もそうなんだが……、ホント俺たち兄妹は、周りの人達に恵まれてる。
こんなにも良いヤツらに支えられてんだって、改めて思った。
ドラえもんは、必要になると思われるいつくかの道具を貸してくれて、「なにかあったら連絡してね、すぐに飛んでいくから」っていう力強い言葉をくれた。
その隣でのび太、スネ夫、しずかちゃんもコクコク頷いてて、コイツらも掛け値なしに協力してくれるんだって分かった。
こんな状況ではあるんだが……、俺はもう嬉しくて嬉しくて、ボロボロ泣いちまった。
どんだけ止めようと思っても、涙と「おーいおい!」みたいな声が押えられなかった。
あったけぇ気持ちと、これ以上ないくらいの安心感が、俺の胸に湧いた。
「君が泣いてどうするのさ。まったくジャイアンったら」
そうのび太に笑われちまったが、こればっかりは仕方ねぇよ。
男のくせに泣くな! とか言われそうだけど、うれし涙ってのはまた別だと思うぞ。
それから、俺と戸愚呂(妹)との生活が始まった。
ぶっちゃけジャイ子の身体能力は脅威で、「やだもうおにいちゃん♪」的な軽い一撃でも、俺は壁をぶち破って表に放り出されちまうから、マジで前途多難って感じではあんだけど……、まあ意外となんとかなってたと思う。
そもそもの話、俺の妹は心優しい女の子で、中身はそのまんまなんだから。
この世界も握れちまうような強靭な肉体を、なんか悪事の為に使おうとか、誰かをぶっ飛ばそうとか、そういう発想自体がコイツには無い。
見た目も変わっちまったし、力も爆上がりだし、まぁなんやかんやあったけど。
でもまぁ、平和に暮らしてた感じだ。
「酒は駄目なんで、オレンジジュース下さい――――」
二人でスネ夫の家に招かれ、晩飯をご馳走になった時、そのあまりの威圧感にスネ夫の親父さんがビビッてしまい、なんかヘコヘコしちまってた。
親父さんは「い、一杯どうですか?」と、なんか高そうなブランデーを勧めてくれたんだが、ジャイ子がまだ小学生って事すら忘れてたみたいだな。丁重に断られてたぞ。
関係ないけど、ジャイ子も原作の戸愚呂と同じで、オレンジジュースが好きみたいだ。
こんな強面なのに、スネ夫と一緒にストロー使ってチューチューしてんのが、なんか可愛く見えたよ。
「こう見えてもねェ、結構動物好きなんすよ――――」
俺とジャイ子が手ぇ繋いで買い物に行った時(まぁジャイ子の方が圧倒的に背が高いが)、その道すがらに散歩中の犬を見かけた。
ジャイ子は「ルンルン♪」とスキップで……まぁ地面はめっちゃドスドス鳴ってたけど、とにかく犬に近付いてって、ヨシヨシと犬を撫でてた。
意外な事に、こんなゴッツイ姿してても、犬の方はすげぇジャイ子に懐いてたんだよな。
何回も言うけど、これ中身はジャイ子だし、すげぇ優しい人なんだってのが、動物には感じ取れるのかもしんねぇ。
ま! 飼い主のオッサンの方は、腰抜かしてひっくり返ってたけどな!
戸愚呂が嬉しそうにスキップで近寄って来たら、誰でもそうなるさ。気にすんなよオッサン。
「よろしい――――もうお前に用はない」
これは、漫画を描いてる時のジャイ子。
漫画用の画材に“Gペン”ってのがあるんだが、これって大体数ページも使ってたら、ペン先が潰れちまって細い線が書けなくなる。頻繁に取り換えなきゃいけないっていう、消耗品なんだよ。
だからグイッとペン先を外しながら、ふと口走ったみたいなんだが、ジャイ子のセリフと顔が怖ぇ。
漫画描いてるだけなのに、今から誰か殺しそうな雰囲気だった。
関係ないけど、戸愚呂が漫画家チックなベレー帽かぶってんの、面白いよな。
「――――ヤツを砕くのは、技を超える限りない
これはジャイ子が、テニスで出木杉をボコボコにした時の言葉だ。
打てるもんなら打ってみろ、とばかりの高速スマッシュが、次々に出木杉側のコートに叩き込まれ、やがてヤツは全てを諦めた。ジャイ子の完勝だ。
出木杉ってったら、その名が示すように何でも出来るようなヤツだし、当然スポーツも俺たちの中で最強だ。
でも今のジャイ子を前にしたら、他のどんな競技でも歯が立たねぇみたいだな。サッカーだのバスケだのもやってたが、ぜんぶジャイ子の勝ちだったぞ。力押しで。
「 何か一つを極めるということは、他の全てを捨てること!!
それが出来ぬお前は、結局半端者なのだッ!! 」
「~~ッ!?!?」
多分いまのジャイ子は、無意識で戸愚呂的なセリフを言っちまうんだろうな。出木杉「ガーン!」ってなっちまってるよ。
まぁなんだかんだ、二人とも楽しそうにしてたし、別にいいんじゃねえかな?
きっとしずかちゃんあたりに話を聞いて、様子を見に来てくれたんだろう。コイツも良いヤツだ。
ジャイ子と遊んでくれて、ありがとよ出木杉。
「うわぁ! すごく高いわ! こんなに遠くまで見えるっ!」
「わわわっ! ぼく落ちちゃうかも!
でも楽しいよジャイ子! ありがと!」
「いえいえ、どういたしましてェ♪」
これは、戸愚呂80%くらいのジャイ子が、のび太としずかちゃんを両肩に乗せてやり、散歩してる所。
今のジャイ子は2メートル近くあるし、きっと今まで見たことの無い視点、見た事のない光景を体験してる事だろう。
まぁ80%になったジャイ子の妖気だの生命力吸収だので、周りの草木が枯れたり、辺り一帯の空気がドンヨリしてたりもするが、細けぇことは気にすんな。
二人がキャッキャと笑う楽しそうな声を聞きながら、俺とジャイ子はのんびりと並んで歩き、たまにお互いの顔を見て微笑み合う。
仲のいい友達、そんで愛する妹。
俺は頭の後ろで手を組みつつ、幸せだな~って気分に浸ってた。
確かに戸愚呂になっちまったのは突然だったし、ぜったいジャイ子を元に戻してやんなきゃって、そうは思うんだけどさ?
でも人生ってのは不思議なもんで、今のジャイ子は仲間達は元より、町内でもすんげぇ人気だったりする。
強面だけど優しくて、力仕事だったり困った時なんかには、快く手助けしてくれる。すげぇ頼りになる。そんなコイツを愛してくれてるんだ。
なんか町内で、爆発的に幽遊白書が流行ったりしたしな。特に暗黒武術会編のトコは、町中の本屋から消えたぞ。
元々は恥ずかしがり屋で、ちょっと引っ込み思案なトコがあったジャイ子けど、こんな風に沢山の人と関わり、そしてたくさんの愛を受けるってのは、コイツにとって、とても良い事なんじゃねぇかって。
いきなり別人になっちまった事への、恐怖や不安感は、もう見事なくらいにみんなが吹き飛ばしてくれた。みんなすげぇ良くしてくれるんだ。
まだ先のことは分からないし、とにかく俺も頑張んなきゃなんだが……、でもこの経験ってのは、ジャイ子にとって良い思い出になる気がする。
いつか思い出して、アハハって笑える、そんな大事な思い出のひとつになりゃーいいよな。
そうしてやんきゃ、いけねぇよな。
俺は兄貴なんだから。ジャイアン様だからよ。
◆ ◆ ◆
「やったぜジャイ子!! こりゃーとんでもねぇ快挙だ!!」
その日の朝、俺は本屋の開店時間に合わせて家を飛び出し、そんで狂喜乱舞しながら家路を急いでた。
今日発売だった少女漫画雑誌、【チャオッ!】って本を片手に。
「ジャイ子の名前が載ってる! アイツの描いた漫画が、
前にクリスマス会でお披露目し、のび太達が褒めてくれた漫画“虹のビオレッタ”。
あれをジャイ子は雑誌社の漫画賞に応募し、その二次選考の結果が書いてあるのが、いま俺が持ってる本だった。
ホントは俺、少女漫画なんて読んだ事ないし、こんな風に本屋で買うってのも、ちょっと恥ずかしい想いがある。俺って男の子だしな。
でもジャイ子はいま戸愚呂(妹)だし、あまり悪目立ちするのも良くないので、代わりに俺が本屋に行ったワケだ。
俺自身は詳しくないとはいえ、これは愛する妹のこと。
俺はもう我慢できず、買ったばかりの本を開き、すぐに内容を確認した。
するとどうだ。漫画賞の結果発表のページに、“虹のビオレッタ”とクリスチーネ剛田のペンネームが、ハッキリ載ってるじゃないか。
これにはもう、俺が飛び跳ねて喜んじまうのも、無理はないってモンだ。
「いけねっ、早くジャイ子に知らせてやんなきゃ!
これ見たら、アイツ喜ぶぞぉ~!!」
今まで懸命に努力し、ずっと絵の練習をしてきた。
厳しい意見を言われる事もあったし、それで人知れず泣いてた事も知ってる。俺は兄貴だから。
でもジャイ子は諦めずに漫画を描き続け、そして今日ついに憧れの雑誌社の賞で、最終選考に残ったんだ。
当然だけど、まだ十歳くらいであるジャイ子が、名前が載ってるヤツラの中で一番若い。
これはジャイ子がどんだけ努力したかっていう証だし、アイツの才能の証明でもある。もうとんでもなくすげぇ事なんだ。
俺は「うおぉぉ~!」とか言いながら、近年まれに見る全力で走り、家を目指してく。
これは他ならぬジャイ子、俺の愛する妹の事だ。まるで自分の事のように~って言葉があるが、もうそれどころじゃない。
こんな嬉しいと思った事、俺いままで一回もねぇもん!! 人生史上最高の気持ちだ!!
――――俺の妹はすげぇ! ジャイ子は世界一の妹だ!!
そう町中のヤツに自慢したい。この喜びを伝えたい気分だった。
「――――っ!?!?」
けど、突然俺の身体がグイッと引っ張られ、足が地面から浮く感覚がした。
走ってる途中だった。もうヤッホーって言いながら、ひたすら家に向かって駆けてた。でもふいに俺の隣に来た黒塗りの車が、俺を掃除機みてぇに吸い込む。
窓から大人のゴッツイ手がニュッで伸びて来て、有無を言わさず俺を中に引きずり込んだ。
「ん゛ーっ!! ん゛ん゛ーっ!! もがぁぁーーっ!!」
「確保成功だッ!
スピードを上げろ! 直ちにこの場を離れるぞ!」
「暴れるなこのガキ!
早く縛り上げろ! 薬で眠らせるんだ!」
いきなりの事に、頭が追い付かなかない。
さっきまでの嬉しい気持ちが、ぶち壊される。突然真っ逆さまに落とされる。
町一番のガキ大将で、腕っぷしの強いこのジャイアン様が、誘拐された――――
その事実を理解する前に、俺は口元にあてられたハンカチによって、スッと意識を失っちまった。
まるで、地獄に落ちてくみたいに。
◆ ◆ ◆
「ワシの名は“
ほれ、いま流行りの
あれから何時間か経ち、いま柱に縛り付けられている俺の前に、どっかで見た事あるようなキショいおっさんが姿を現した。
機嫌良さげに「ほっほっほ」とか言いながら。
「前の世界で首チョンパされた後……気が付けばワシは、ここに飛ばされとった。
大変じゃったぞぉ……なんの地盤もコネも無く、またイチから成り上がるんは。
どうじゃ、会えて嬉しいじゃろ? サインが欲しいか坊主?」
ハクション大魔王に30年くらい年取らせ、その上で50回くらい顔面殴ったような、醜い顔。
ブクブクと太り腐った、小学生の俺と同じくらい背の低い身体。
声優さんってスゲェって思っちまうくらい、あからさまなまでに「悪党です」と言わんばかりの声。
俺はこいつを知ってる。見た事がある。
あの幽遊白書の漫画やアニメに出てきたヤツ――――垂金権造だ。
サインはいらねぇけど。
「お前さんに来てもらったのは、他ならぬあの戸愚呂の為よ。
あやつの力を使って、いっちょ金儲けでもしようかと思ってな?
悪く思うなよぉ坊主。うっひっひ!」
兄貴である俺を人質にとり、アイツにいう事を聞かせる。
また賭けでも主催すんのか、暗黒武術会に出すのかは知らねぇが、こいつはジャイ子の力を利用しようとしてやがるんだ。
あんな優しい女の子を、その薄汚ぇ欲望のために。
「ふざけんな! そんな事させねぇぞ!
つーかお前が全部やったんだな!? ジャイ子を元に戻せよっ!!」
「はぁ?
何を言うとるのかは知らんが、とにかくお前さんは、もう此処から出られんよ。
命が惜しくば、せいぜい大人しくする事じゃなぁ~。
ワシのペットのエサになりたくは無いじゃろぉ?」
ガーっと怒鳴っても、垂金は涼しい顔。
どんだけ身をよじって暴れても、背中にある柱はビクともせず、縄も解けない。
どうやら気絶してるうちに、ドラえもんに借りてた道具も全部取り上げられたみたいで、ホントに成す術がない。
俺に出来んのは、この気色悪いオッサンを、ただ睨み付ける事だけ。
なんて情けねぇんだ! 俺はジャイ子の兄ちゃんなのに!
「今の時代には、ケータイ電話という物があるんじゃのぅ。なんて便利なんじゃろうかコレ。
そーれピッポッパっと♪」
歯ぎしりをし、目に悔し涙を浮かべる。
そんな俺を「うっへっへ♪」と眺めながら、垂金は懐からスマホを取り出し、楽し気に操作しだした。
「あー、剛田さんのお宅ですかな? ワシは垂金というモンなんじゃが。
いま戸愚呂はおるかね? ……あぁお主がそうか。玄田〇章ボイスじゃもんなぁ」
お前の大事な兄貴は預かったぞぃ、返して欲しくば今から言う場所まで――――
そんな悪党のテンプレみたいなセリフを、垂金が言う。
なんかそれが堂に入ってるというか、すげぇ手慣れてるというか。やっぱロクなもんじゃねぇな、このオッサン。
「ジャイ子ぉ! 来るんじゃねぇッ!!
これは罠だぁぁーーッ!!」
「ほっほっほ♪ いま聞いた通り、坊主は無事じゃ。
だがもしお主が来なければ、どうなるか分からんぞぉ?
戸愚呂よ、すぐにワシの屋敷まで来るのじゃ! 5分でじゃーっ!」
そらねぇだろオッサン、無茶苦茶だよ。
俺がそう批難する間もなく、垂金が「えーい!」と勢いよくスマホをポチッ! 電話を切っちまう。
相手が戸愚呂だからなのか、それとも勢いで言っちまったのかは知らねぇが、5分はエグイだろオイ。
「うーっひっひ! これで準備完了じゃーい! ビッグマネーはワシのものじゃーい!
さって、ワシはいったん自室に戻り、カントリーマアムでもパクつこうかのう?
ワシはあれに目が無くて。特にバニラ味のやつg
「社長っ……! 大変です垂金社長っ!」
「おや? どうしたんじゃモブキャラの部下Aよ。そんな慌ててからに」
「屋敷の警備隊が、
あと2秒後に、戸愚呂がここに来ます!!」
「2秒ッ?!?!」
1……2……ドカーン!!!!
そうきっかり2秒後に、俺の愛する戸愚呂(妹)が、天井ぶち破ってこの場に舞い降りた。
関係ないが、いまコイツの頭には“タケコプター”がある。きっと急いで空を駆けて来たんだろう。
「ぐぬぬ……! 流石は戸愚呂! ワシが見込んだ通りじゃ!
まさかもう到達しよるとは! 009も椅子から転げ落ちるぞ!?」
「あぁ兄者! 大丈夫なの兄者!? オロオロ!」
「おーっとぉ! 動くでないぞぉ!?
もしそこから一歩でも動けば、お主の大事な兄は、とてもお子さんには見せられんような事態になるぞぉ~う!」
オカマキャラを演じてる時の玄田〇章ボイスを出しつつ、戸愚呂(妹)がくねくね身体をよじってる。とても気持ち悪い。
きっと動揺しちまってるんだろうが、それでも一瞬にしてここに辿り着くところがスゲェ。半端ねぇよジャイ子の戦闘力。
「がーっはっはっは! では改めて、久しぶりじゃなあ戸愚呂よ!
ワシの顔は憶えて……というかお主って、そんなナリじゃったっけ?
なんじゃいそのオカッパ頭。なぜに女物のスーツ?」
「そこは今いいだろ! 話を進めろよオッサン!」
「お、おう……そうじゃな坊主。
じゃあ要件といくが――――戸愚呂よ、ワシの手先になれぃ!
同じ幽白キャラとして、共に小金を稼ごうではないか!
具体的なプランは無いんじゃけど、とにかく好き放題しようでは無いか!」
原作でも小物だったしなぁコイツ。野心があるんだか無いんだか。
とにかく垂金は\ババーン!/とジャイ子に告げる。
まるで天から見下ろしてるみたいな、とても良い笑顔で。
「いやよっ……! 誰が貴方の手先になんか!
イケメンの左京さんならまだしもっ……!」
「そんなことを言うても良いのか?
人質の命が惜しく無いんかの?」
「そ……そんなっ!?」
――――ドゴーン!!!!!! みたいな凄まじい衝撃がくる。
これは、ジャイ子が思わず足踏みをした音だ。
きっとコイツ的には、思わずって感じでやった事なんだろうが……でもその場の床が大きく陥没。
ビキビキー! ってコンクリの床にヒビが入り、まるで大きな蜘蛛の巣みたいになる。
「……」
「…………」
「おねがいっ、兄者を返してちょうだい!
もし兄者に何かあったら……私っ!」
俺たちが「ぽかーん」と放心する中、ジャイ子はそれにも気付かずにオロオロ。今にも泣きそうな顔。
仕草だけは乙女なんだが、その天元突破した戦闘力が怖ぇ。
そんなエゲツナイ強さなのに、何を狼狽える事があるんだろうって、不思議な気持ちになった。
「兄者が死ぬのはイヤ……!
でもいう事を聞けば、きっと私、エッチな事をされるわ。
同人誌みたいに、鬼畜凌辱プレイをされるんだわ」
「いや、それはどうかな~ジャイ子……? たぶん大丈夫なんじゃねぇかな?」
「兄者は知らないのよ。
この世には、兄者には想像もつかないような、色んな趣向があるの。
NTRとか、催眠アプリとか、メスガキわからせとか。
垂金のことだから、一体どんな変態プレイを強要されることか……。
きっと絶倫オークとかを飼ってるに違いないわ」
「でもお前、
俺は詳しくねぇけど、多分やらねーんじゃないか?」
マジで世の中って広いし、腐女子の情熱ってのはもうとんでもねぇから、もしかしたらそんな同人誌も、実在すんのかもしれねぇけど。だが俺は見たくも無い。
「分かったわ垂金さん……私を好きにして下さい。
兄者さえ助かるのなら、私はどうなっても構わない。
催淫薬でも、感度が三千倍になる薬でも、なんでも使うといいわ……。
でもぜったい負けたりなんかしないっ!(キリッ!)」
「ジャイ子?
いっぺんちゃんと見てみな?」
さぁ来い! と戸愚呂(妹)がモストマスキュラー*1をするが、いつまでたっても垂金は来なかった。冷や汗ダラダラだよコイツ。
「と……とにかくワシの言うことを聞けぇぇーっ!
さもなくば小僧の命はないぞぉーーっ!!」
「うわーっ!」
「あ、兄者ぁー!!」
えっ、さっき「言うこと聞く」って言ってたじゃん!? 無茶苦茶じゃん!
状況が理解出来ずに混乱した垂金は、とにかく自分の台本通りに事を進めるべく、強硬手段に出る。
ヤツが懐からリモコンのような物を取り出し、それをグイッと押し込んだ途端、俺の身体にものすごい電流が流れる。もう目の前が真っ白になっちまうくらいに、強力な電気が。
ジャイ子の悲鳴と、垂金の高笑いが響く中、俺は拷問めいた責めに晒され続ける。
ようやくヤツがボタンから指を離した頃には、俺の身体から漫画みたいにシューシューと煙が上がってた。
「やめて! 兄者をイジメないで!
やるんなら私にっ!」
「するか! いろんな意味で怖いわ!
さぁどうするんじゃ戸愚呂!?
ワシの手先となるか、この小僧を見捨てるか、好きな方を選べぃ!」
視界がグニャーと歪む、ぜんぜん身体に力が入らない。
俺は縛り付けられたままグッタリと項垂れ、ただ二人の声を聞くばかり。
なんにも出来ずに。
「もしワシに従うのなら、莫大な報酬をやるぞ?
お主らが一生お目にかかれんような大金を、くれてやろう」
ジャイ子の思考を乱す為なのか、また垂金がボタンを押し込む。
再び身体に電流が流され、俺の叫び声とジャイ子の悲痛な声が、この場に響く。
「よっと。
あー見た所、あと1回の電流で、この坊主は死ぬじゃろうなぁ。
ワシの手が滑らぬうちに、よう考えるとええ」
「金は良いぞぉ~戸愚呂? この世の全てが思うがままじゃ。
食いたい物を食い、欲しい物を手に入れ、見た事もないような豪邸に住める。
お主の両親も、さぞ喜んでくれようて。この上ない親孝行じゃ」
「なんならワシの力で、この出来の悪そうな小僧を、好きな学校に入れてやってもええぞ?
やりたい職につき、何不自由なく暮らす。そんな将来を約束してやる」
ゲヒた顔。気持ち悪い笑い声。
だがそれを見ても、ジャイ子は動けずにいる。
この俺が、自分の兄貴が、囚われてるから。
優しいコイツは、動くことが出来ないんだ。
「なぁ坊主、お前さんもそうしたいじゃろう?
若い身空だ、こんな所で虫のように死にたくはあるまい?
野球選手でも社長でも、なりたい物になればええ。自分の夢を叶えるとええ」
「ただ一言、“助けて”と言えば、それが出来るぞ?
さぁ坊主よ、お前から戸愚呂に頼むのだ。
垂金さまの言うことを聞けと――――」
ぶっちゃけ……ものすげぇ痛かった。
あの電流は、もう二度と喰らいたくない。考えるだけでちびりそうだ。
痛いのも、死ぬのも、泣きそうなくらい怖ぇ。
目は霞むし、身体は言うことを聞かねぇ、意識だって遠のきそう。
もう俺は、恥も外聞も無く許しを乞い、こいつの足を舐めちまいたいって気持ちだよ。
「あぁ……良いなぁ野球選手。でっかいスーパーの社長やんのも良いなぁ……。
なってみてぇなぁ……」
ボソッと、力ない声が洩れた。
垂金がニヤリと口元を歪め、ジャイ子が息を呑んで佇んでんのが分かる。
俺ひとりだけ、こんな情けない姿。
「でもよぉ垂金? 俺はそんなのよりも、なりてぇ物があんだ。
絶対に、なんなきゃいけねぇモンがあるんだよ……」
「ほう、ええぞ! なるとええ!!
お前が一言、あやつを説得しさえすれば、それが叶うっ!
言うてみぃ坊主! 戸愚呂にも聞かせてやれっ! お前の夢はなんじゃ?」
我が意を得たりって感じで、垂金が満面の笑み。
俺は気絶しそうなのを堪え、閉じちまいそうになる瞼をなんとか開けて、その顔を見返す。
「――――ジャイ子の、
きっと今、俺は情けねぇ顔してる。
負け犬そのものの、何にも出来ねぇ男のツラ。自分自身を皮肉った笑い。
「俺は……ジャイ子が自慢できる兄貴になりてぇ。
可愛くて、優しくて、世界一すげぇ妹だけど……そんなコイツに誇って貰えるような、立派な兄ちゃんになりてぇ」
ポカンとした垂金の顔が、どんどん憤怒の表情に変わってく。
ブルブル震えながら、電流のボタンに指をかけようとしてんのが見える。
「だから……卑怯者にはなれねぇ。
怖ぇからって、他人を差し出すような。自分の妹を守れないようなヤツにはよ」
「馬鹿だし、かあちゃんに怒られてばっかだし、乱暴者だ……。
だけど俺は、
ガキ大将が男気なくしたら、終わりじゃねぇかッ! ――――俺はジャイアン様だッ!!!!」
怒りに我を忘れた垂金が、「ならば死ねッ!」と叫び、ボタンを押し込む。
俺の身体に電気が走り、死がやってくるまでの、0,01秒。
その瞬きよりも短い時間に……、俺の妹が動いた。
「――――るあぁーーーーッッ!!!!!!!」
床が割れる。崩落する!
ジャイ子こと戸愚呂(妹)が振り下ろした拳により、今いる階の床が丸ごと無くなった!
「ああああああああ兄者ぁぁーーッッ!!!!
死ぬな兄者ぁぁぁあああああーーーーッッ!!!!」
俺の身体が落下してく。浮遊感を感じながら、成す術無く。
だが物凄いゴツイおっさん(妹)が、空中でクイクイッと平泳ぎして移動。すぐさま俺の所に来て、ギュッと抱きしめる。
垂金も、部下達も、俺たち兄妹も、みんな瓦礫と一緒に何十メートルも落ちた。
でも無事だったのは、俺とジャイ子だけ。
その強靭な足腰で(ドスーン!〉と着地し、俺を守るように衝撃を和らげてくれたから。
「だいじょうぶ兄者!? 怪我は無い? 無事なの!?」
「お……おう」
ジャイ子のごっつい腕に抱えられたまま、目をパチクリ。俺は未だ状況が飲み込めない。
だがチラッと辺りを見回してみると、そこには青空と森が広がってて、ここにはもう瓦礫しか無い事が分かる。
ああ……ジャイ子の拳は床を破壊するだけじゃなく、一撃で
「って……ジャイ子?! お前“戸愚呂100%”になっちゃってんじゃねーか!!
なんかゴツくて固ぇな~と思ったら!」
「あ、うん。
兄者の気持ちを聞いたら、私とっても嬉しくなっちゃって……。
思わず私の筋肉が、限界までパンクアップしてたの。えへ♪」
いや「えへ」じゃねぇよ! 一大事だよ!
なんか世界のルールとか、不思議なパワーとかが作用したお蔭で、ギリギリ死なずに済んでた垂金たちが、いま戸愚呂(妹)100%が放つ妖気とか生命力吸収とかのせいで、呻き声を上げてるよ! 「ぬぅお~!」って死にそうになってるよ!
ついでに俺もやべぇよ! こんな弱った身体じゃ耐えらんねぇよ!
もう命が風前の灯だよ!
「あれ……兄者? なんで首がカクッてなってるの? 白目を剥いているの?
私の顔を見て。お話しようよ兄者。……兄者?」
やがて瓦礫と化したこの場に、再びジャイ子の「るあぁー!」という雄たけびが響く。
ガックリと意識を無くした俺を抱きしめながら、天を仰いで戸愚呂(妹)が泣く。
まぁ俺は気絶してたし、後でジャイ子に「たくさん泣いちゃった♪ えへ♪」って聞かされたワケなんだけど。
俺は妹に助けられ、また妹によって命を奪われそうになったワケなんだけど。
まぁハニカミ笑いするジャイ子が可愛かったから、別にいいや(シスコン感)
◆ ◆ ◆
「幽遊白書の戸愚呂ぉ? 何いってんだいこの子は!
いいかね武? 剛田家の女は、
後日、かあちゃんが煎餅をボリボリ食べながら言い放った言葉に、俺はひっくり返った。
「ジャイ子くらいの年になると、急激に身体が成長するのさ。筋骨隆々になっちまうんだ。
あ~、そういやお前たちには、まだ見せた事なかったかねぇ?」
――――これが母ちゃんのッ! 100%だぁぁぁあああーーーッッ!!!!
そう言わんばかりに筋肉が膨張し、一瞬にして戸愚呂ばりのマッチョになる母ちゃん。
俺とジャイ子は目をまん丸にし、ただただ金魚みたく口をパクパクするだけ。
「まっ、こんなもんかねっ! これで分かったろう武?
というか、ちゃんと最初に言ったじゃないか。ジャイ子の変化は
やだねぇこの子は、人の話はちゃんと聞くもんだよ?」
そしてすぐ、元の姿に戻る。
シューってしぼむ風船みたく、かあちゃん100%はいつもの太っちょになった。
「女の子には、色々あるんだよ。心と身体が成長するに従ってねぇ。
そんで“毘沙門天の化身”とされる剛田家の女には、それがもう一個ある――――ってだけの話なのさ。そんな大騒ぎする程のこっちゃない」
「幽遊白書だか、何だか知らないけど、そういうんじゃないから。
……きっとジャイ子は、その漫画を知ってたばっかりに、勘違いをしちまったんだねぇ。
これは戸愚呂とかいうのに、なったんじゃなくて、
たまたま、あのクリスマス会の出来事(幽白エロ同人誌事件)があった事で、ジャイ子はこれを神様からの罰だと感じ、姿を変えられてしまったんだと思い込んだ。
姿は変わっても、ジャイ子という中身に変化が無かった事。そしてドラえもんがどれだけ調べても、原因が全く分からなかった事を考えれば、母ちゃんが言ってる事は本当なんだと思う。
わざわざグラサンをかけ、たまに原作のセリフまで踏襲していたジャイ子を思えば、少し可哀想な気がするが……。
でもこれは別に、「ジャイ子が戸愚呂になってしまった」というワケじゃなく、ごく普通の現象だった
のび太達にも散々心配かけちまったけど……、結局は俺たちの取り越し苦労。
別にジャイ子に何かあったとか、誰かの仕業とかじゃ無かったってワケだ。
「安心しな、そのうち慣れてくるよ。
今アタシがやったように、もっと上手に肉体を制御出来るようになるから。
心配しなくても、小さくて可愛い元のお前さんに、ちゃんと戻れるさね♪
なんてったってジャイ子は、アタシの自慢の娘だからね!」
「うん! ありがとうおかあさんっ!」
ギューっと親子で抱き合ってるトコ悪いけど、俺たちの家系って
えっ、人間じゃねぇの? さっき毘沙門天がどうとか言ってたけども……。
教えてくれよ母ちゃん。
ま、暫くしたらジャイ子は元の姿に戻れるようになったし、応募した漫画が評価されて、雑誌社の人から声がかかったし。
そんな幸せそうな妹が見られるだけで、俺は満足さ。
人間だろうが、戸愚呂だろうが、ジャイ子は俺の愛する大事な妹だ――――
これからも良い兄貴になれるよう、頑張ってかなきゃな。
俺は何気なしにジャイ子のグラサンをかけながら、戸愚呂みたいにニヒルな顔で、フフンと笑うのだった。
「ちなみに兄者も、もうすぐ
剣や盾に変身するやり方を、お父さんに教えて貰おうね。うふふ♪」
「なぁジャイ子、ホントに幽白かんけー無いのか?
剛田家は妖怪なんじゃねぇのか?」
そんな事より、俺の妹かわいい(なげやり)
◆スペシャルサンクス◆
源治さま♪