【募】こんな小説を書けこの野郎【リクエスト】 作:hasegawa&friends
――――エキシビション! その4。
今回のお題はこちら↓(一部抜粋)
◆ ◆ ◆
お世話になっております。
春寒次第にゆるみ一雨ごとに暖かさがまして、そろそろほとぼりも冷めたかなと思う今日この頃、性懲りもなくお題をリクエストさせて頂こうかと思います。
お題:「Fate/stay night」と「トムとジェリー」のクロスによるコメディ
「そんじゃ、僭越だけど、俺が音頭を取るよ。
みんなグラスを持ってくれるか」
開けられた障子の向こうに、夕暮れ時の茜色の空が見える、衛宮家の居間。
自らもコーラの入ったグラスを手に取り、皆の顔をぐるっと見渡しながら立つ士郎くんが、声を張って告げる。一同注目。
「今日はみんな、集まってくれてサンキューな。
ホントはこういうの、遠坂がやるべきなんだけどさ……?
でも見ての通り、もうアイツ出来上がっちゃってるから。家主の俺で勘弁してくれな」
うけけけ! うけけけけ!
そんな気色悪くも、非常に機嫌良さげな声が、今もこの部屋に延々と響いている。
彼女は未成年、しかもまだ始まってもいないのに、一人で飲み始めてしまい、いまご覧の有様なのである。
ちなみに、いまこの場のテーブルに所狭しと並べられている料理は、全て士郎と桜が作った。コイツはなにひとつ手伝いをしなかった。
お前、優雅たれはどうしたんだよ? ただの飲んだくれじゃないか。……と士郎は思う。
まぁせっかくだし、今日だけは許してやりたいという気持ちだけども。
「それじゃ、みんな第五次聖杯戦争、お疲れ様!
「「「かんぱぁ~い……」」」
一斉に合わされるグラス。カチンという高い音が、そこらじゅうで鳴る。
けれど……反面この場に集まったサーヴァント&マスター勢は、ぶっちゃけ凄くテンションが低かった。
士郎くんの美味しいご飯が食えるという事で、とりあえず集まってはくれたものの……、実はこの場の何人かは“ガチ凹み”していたりもするのだ。
豪華な料理が並ぶ華やかな場所とは裏腹、もうドンヨリした空気だったりする。
「うえっへっへ! うえっへっへっへ!!
来たわっ! 遠坂の時代がッ! ざまぁ見なさいアンタ達ぃぃぃーーー!!www
あーーっはっはっは☆」
いきなり立ち上がり、〈ドーン!〉とテーブルに足を置く。
そんなメッチャお行儀悪い、淑女らしからぬ真似をしながら、遠坂凛がみんなを煽っていく。
「なぁ~にを (´・ω・`)ショボーン みたいな顔してんのよぉ! この負け犬どもがぁぁっ!!
さぁさぁ! 士郎と桜がご飯作ってくれたわよぉ! あたしがお金出したんだからねぇ!
このミス・パーフェクトこと、サイツヨ超カワ魔術師たる遠坂凛さまと戦ってぇ! 命があった事に感謝しながら、惨めったらしく食いなさいよぉーっ!! このクソ共がぁぁーーっっ!!
くやしいのぅw くやしいのぅw でもおいしいのぅってwww ぷーくすくす!」
あっはっは! とランサーや慎二の頭をペシペシ叩き、凛が上機嫌に笑う。
ちなみに彼らの方は、もう無言で「どよーん……」と額に影を落とすばかり。さくらももこキャラのように。
「えーっとぉ? 何でしたっけぇ~?
ここにお集まりの皆様はぁ~、確か伝説と謳われるぅ~、えらいえらい英雄なんでしたかしらぁ~ん?」
「「「……」」」
「アーサー王にぃ~? クー・フーリンにぃ~? 大英雄ヘラクレスぅ~?
あとメデューサとぉ、佐々木小次郎とぉ、王女メディアとぉ~? あー人類最古の王ギルガメッシュさんとかも、確かいらっしゃいましたかしらぁ~ん?
へぇ~、凄いですねー! かっこいいなー♪ あこがれちゃうなー♪」
「「「……」」」
「――――でもみぃぃぃーーんな! あたしのサーヴァントにやられちゃった!!!(爆笑)
やられちゃったのねぇ~ん??? あーーっはっはっは☆☆☆(大爆笑)」
――――殴りてぇ……! 泣くまで踏んづけてやりてぇ……!
そんな屈辱にギリリと耐えながら、唐揚げだのフライドポテトだのをパクつくサーヴァント達。
決して凛と、目を合わせないようにしながら。
いまこの場に、暴君が降臨していた。
「えっとね? えっとね? あたし今まで、頑張って来たのぉ~。
お父さんもお母さんも死んじゃって、それでも頑張って魔術勉強して、いっぱいお金貯めて……!
それがね? 今日や~っと報われたのぉ……!
こんな嬉しい事って、ないと思わない? そう思わない士郎???
あたしエライよね? 褒めてくれるわよね? 士郎ぅ~♪」
「おう、よく頑張ったぞ遠坂!
お前はホントに凄いヤツだ。俺尊敬してるよ」
士郎くんがまるで太陽のような笑みと、菩薩のような慈愛を以って「よしよし」と甘やかす。
凛は頭を撫でられ、もう「ごろにゃーん♪」って感じ。
彼女の妹である桜ちゃんも、これにはもう「あはは……」と苦笑するしかない。姉さんが嬉しそうでなによりです、といった風な顔だ。
「ほらぁーっ! あんたもこっちきて食べなさいよぉ~っ!
あたしが8割だけど、あんたのお蔭も2割くらいあるんだからぁ~☆ うえっへっへ!!」
「ッ!?」ビクーン!
これまでコソコソとメンバー達の影に隠れていた子が、凛に首根っこを掴まれ、無理やり抱きしめられる。
いくらジタバタ藻掻こうとも、相手はあの遠坂凛。しかも泥酔Ver.だ。
有無を言わさず「~♪」とスリスリ頬ずりされ、彼がすごく迷惑そうにしている事が分かった。
「なぁ……ぶっちゃけアレぁ、どうかと思うんだよ。
なんで聖杯戦争に、
もうワシャワシャと自分のサーヴァントをこねくり回す彼女を余所に、ちびちびとビールに口をつけるランサーが、ボソッとメンバー達に声をかける。
「大概のことは、我慢できるぜ?
董卓だろうがスターリンだろうが、呼びてぇヤツを召喚すりゃーいいよ。
でもよ……ありゃ駄目だろオイ。
「「「…………」」」
彼の問いかけに、一同は無言。
サーヴァント達は誰も口を開けず、凛の腕の中で嫌そうな顔をしている一匹の猫を、ただただ見つめるばかり。
――――彼の真名は“トーマス・キャット”。
往年のカトゥーンアニメ【トムとジェリー】に登場する、灰色の毛並みの猫。
此度の戦いにおいて“
◆ ◆ ◆
最初は、ハズレだと思った。
いつものうっかりをやらかし、一族の悲願であった聖杯戦争を台無しにしてしまった……と凛は嘆いた。
苦労と準備を重ね、確信に近い自信を持ち、満を持して呼び出したハズのサーヴァントは、自らが思い描いていたセイバークラスの英霊ではなく、なんと聞いた事も無い
しかも彼は人間ですらなく、どこの家にでも居るような、ペットの猫であったのだ。
始まりの日の夜、満天の星空輝くここ冬木の寒空には、彼女の「うわぁぁぁ!!」という悲痛な絶叫が、辺り一帯に木霊したものだ。結構なレベルの近所迷惑だった。
終わった……私の聖杯戦争終わった……。お父さまに顔向けできない……。
召喚の詠唱を終え、地下室に吹き荒れていた凄まじい爆風が止んで、ポツンと彼(猫)の姿が目の前にあるのを見た時、凛は膝から崩れ落ちる事となった。
まぁ肝心の彼の方は、「えっ、ここどこっスか? お姉さん誰っスか?」みたいに、のほほんとした雰囲気でいたけれど。
やがで暫しの時が経ち、ようやく深い絶望から少しだけ立ち直った凛は、いま自らが呼び出したサーヴァントに向けて、先ほどの暴風もかくやという凄まじい勢いで質問攻めをおこなった。
しかしながら……その行為が意味を成す事はない。なぜなら彼はアニモーであり、人の言葉など解するハズもない存在。意思疎通が出来ないのだ。
どーすんのよこれから!? あたし(マスター)一人で英霊共を倒せってゆーの!? どんな無理ゲーよ?!?!
そう首根っこを掴んで振り回したり、毬のようにぽこぽこドリブルしてやったり、「こんにゃろー!」とボカスカ八つ当たりしようとも、このトムという猫には微塵も堪えた様子が無く、ただただ驚いた顔でポカーンとするばかり。
彼には英霊としての自覚も無く、また何故ここに自分が呼ばれたのかも、よく分かっていないように見えた。
彼女は荒れに荒れ、やがて失意の中ぐったりとシクシク床に倒れ伏したのだが……、ふとトムが何かを見つけたかのように〈ピーン!〉と耳を立て、突然足を竜巻のように回転させながら(アニメ的表現)、地下室の隅の方へビューンと走って行ったのが見えた。
そこに居たのは――――小さな茶色い毛並みのネズミ。
彼の名前はジェリー。このトムという馬鹿猫の相棒的な存在であるという。
トムはこの小さなネズミさんを見つけた途端、すぐさま傍に駆け寄り、“ギュッと抱きしめた”。
そしてその子と二人(二匹かもしれないが)、もう「わーん! わーん!」と噴水みたいな涙を流して、しばらく泣き続けていた。
ちなみにだが、後日凛は眠っている時に、トムとジェリーが出てくる夢を見た。
これは自らのサーヴァントと“パス”が繋がり、彼の記憶が自分の方に流れ込んでくるために起こる現象だったのだが……。
その中で凛は、もう既に冷たくなってしまったジェリーを手の平に乗せ、いつまでもいつまでも泣き続けるトムの姿を見た。
きっと……これは寿命による物だったんだろう。小動物であるジェリーの命はとても短く、猫であるトムとは比べるべくも無いのだ。
弱々しく笑いながら、「今まで楽しかった」と友達への感謝を告げて、天国へ旅立って行ったジェリー。彼の方もグシャグシャになった顔で、その笑顔に応えていた。
にっくき、そして大切な喧嘩友達を失ったトムは、その日からずっと泣いて過ごした。
一日中、一週間も一か月も、ずっとずっと泣き続けた。
そして、やがて彼は衰弱し、そのまま死んでしまった。
まるで大好きなジェリーの後を追うようにして、その生を終えたのだった――――
ようやく夢から覚め、窓から差し込む光を眩しく感じながら目を開けた時、凛の頬には涙が伝った跡があった。
パスが繋がっている事で、まるで自分の身に起きた出来事のように、心が切り裂かれるような想いを感じたのだった。
その後日談ともかくとして、ここ冬木の地で再び友達と再会したトムは、今度は悲しみではなく喜びの涙を流した。その小さな体のどこに、そのような沢山の水分が詰まっていたのかと思ってしまう程に。
でもひとしきり喜びを分かち合い、お互いに「ニッコリ!」と微笑み合った後……彼らは突然ドタバタと追いかけっこをおっぱじめやがったのだ。
テーブルをひっくり返し、棚にあった物をガッシャーンと落とし、暖炉の煤で真っ黒けになりながら、大暴れを繰り広げた。
また一緒に遊べるね――――
ああ。今度こそ捕まえてやるぞ――――
そんな二人の想いが見えるような、仲睦まじい姿ではあったのだが……それを自分の屋敷でやられる凛は、もうたまった物ではない。
散々暴れまわり、そのせいで屋敷の一部が半壊してしまった頃、ようやく遠坂の雷が落ちる。
頭の上におっきなタンコブを拵えながらも、トムとジェリーの二匹は「えへへ♪」と微笑み合ったのだった。
「俺もよ、犬とは戦った事あるよ。
あの出来事は、忘れちゃならねぇ俺の戒めになってる。
けどよ……? ネコはねぇだろネコは。
俺ぁそんなんと戦う為に、ここ呼ばれて来たワケじゃねーんだよ……」
「「「…………」」」
「あれだ、血沸き肉躍る? そーゆうギリギリのヤツをやりたくて、英霊やってんだよ。
もうとっくの昔に死んでるってのに、恥を忍んで現世にお邪魔してるワケだよ。
なのに、
そーゆうんじゃねぇだろ聖杯戦争は! もっとギスギスドロドロしてるべきなんだよ!」
なんか思ってたのと違ぁぁーーう!!
槍の英霊クー・フーリンの叫びが、衛宮家の近所に木霊する。
いま周りに座っている英霊たちも、それに同意するようにじっと佇むばかり。
「いざ戦闘開始かとおもえば、
俺の槍をヒョイヒョイ躱しながら、ひたすらピュー! っと逃げ回りやがる!
戦う気あんのかって話だよ!!」
「そんで、ひっしこいてネコ追い回してるトコに、あのネズミ野郎だよ!
アイツが罠を張りやがるんだ!! 落とし穴だの、足ひっかけるロープだの、上から物が落ちて来るトラップだの……すんごい愉快なヤツをよぉ!」
学校の屋上で遭遇し、いざクー・フーリンとの戦闘が始まった途端に、トムはもう脇目もふらずにワチャワチャと逃げ回った。
漫画みたいな大粒の涙を流しながら、「たすけてぇー!」と言わんばかりの顔で、恥も外聞もなく、そこら中を駆け回り始めたのだ。英霊なのに。
一応は聖杯戦争という事で、たとえ相手がなんであろうと……って感じでランサーも戦いはした。
屋上だの校舎だの校庭だのを逃げ回るトムを、赤い槍を持ってひたすら追い回したのだ。
でもやっと追いついた、ようやく捕まえた~! というタイミングを見計らったかのように、いつもそこでジェリーの邪魔が入る。
校庭にラインを引く道具の石灰を頭から被り、青い戦装束を真っ白けにされたり、逃がすかーとばかりに飛びついた先で、跳び箱に顔から突っ込んでしまったりと、大変コミカルでファニーなドタバタを演じた。
トムが囮で、ジェリーがオフェンス。
この二匹の戦い方は、そのように完璧な役割分担がなされていた。
長年の付き合いによる、抜群のコンビネーション。まさに阿吽の呼吸で、簡単に英霊であるランサーを手玉に取ってしまったのだ。
いくら彼が頭を捻り、罠を回避したり追い詰めようとしたりしても、それを悉く読まれ、見破られ、もう言葉に出すのも憚られるような“酷い目”に合わされた。
その夜、余りの情けなさと不甲斐なさに、ランサーの心が折れて一時撤退していくまでの間、ずっとだ。
「一応、これでも英霊の端くれだ。
俺の突きも宝具も、当たっちゃーいるんだよ。何度も何度もよぉ……」
「でも効かねぇってのは、一体どーゆう事だ!?
串刺しにしても、胴体を泣き別れにさせても、ペチャンコに叩き潰してもぉ!
なんでヤツは、
いったいどーゆう身体してんだよ!! 舐めてんのかオイッ!!」
ゴムみたいに伸びた――――とクー・フーリンは語る。
勢いよく突き刺し、槍の穂先がヤツの口の中へ飛び込んだと思ったら、何故が喉がゴムみたいに〈ぐにょーん!〉と伸びた。
挙句の果てにトムは、あたかも「あービックリした~!」とばかりに額の汗を拭いながら、口からスポッと槍を引き抜きやがったのだと。やれやれって感じで。
「私もエクスカリバーを放ち、確かに一刀両断にしたハズだったのですが……。
でも彼は『ぎゃー!』とか言って二つに分かれた後、自分でグイッとピッタリ身体を引っ付け、そのまま元通りとなってしまったのです……」
「私なんて、テンドロビウムみたく絨毯爆撃したのよ?
大魔術をいくつも並行して放ち、辺り一帯ごと吹き飛ばしたつもりだったのに……。
でもあの子、まるでドリフのコントみたく真っ黒けになっただけで、瞼を2,3回パチパチした後、すぐ元通りなのよ……」
アニメだ。まさにTVで見るようなコメディショーが、リアルに目の前で行われたのだ。
いうなれば“不死身のネコ”。いくら英霊たちが刺そうが斬ろうが潰そうが、決してトムを倒し切ることは出来ず、それどころか少し目を離した瞬間(正確に言えば次のシーンには)、彼はまるで何事も無かったかのように〈ピューッ!〉と逃げ出す。
その堂々巡りであったのだ。
「初めてです……
たとえ分子レベルで粉砕したとて、彼が死ぬとは到底思えません……」
「いっその事、魔術で亜空間にでも飛ばしてやろうかと思ったんだけどね?
それでも次の瞬間には、普通に『ふーやれやれ』って帰って来そうで怖いのよ……。
頑丈な檻に閉じ込めても、なんか粘土みたいに身体を変形させて、簡単に抜け出してたし」
「お主らはまだ良い方よ。
俺などは得物が刀しか無いゆえ、ひたすらこれで斬りつけるのみであったが……。
だがきゃつときたら、その度に2つ3つと
斬ったら増えるとか、それはどんな悪夢だ? 俺の絶望が分かるか?」
セイバー、キャスター、アサシンがため息を吐く。
いうなれば“トム被害者の会”の面々である。
あの時の事は、もう思い出したくも無いといった顔だ。
「バーサーカーとやった時……あれやばかったよな?
あの二匹、暴れるヘラクレスから逃げ回りながら、
もうあからさまに、ヘラクレスの斧剣で俺らを
「はい、アレは逃げましたねぇ……。
わー! とか言ってトム達がこっちに向かって来た瞬間、シロウ引っ掴んで令呪使わせました」
「うん、私も速攻で空間転移したわ。
まぁ慌てて逃げたから、このでくのぼうを連れてくの忘れてたけど」
「ぺちゃんこぞ? 俺の身体が煎餅みたくなりよったわ。
だがアレは“トムの攻撃”という判定だったのか、何故が斧剣で潰されても、5秒くらいしたら元に戻ったんだがな……俺の身体も」
世界のルールなのか、トム&ジェリーの能力なのかは知らないが……。例え彼らから何かしらの攻撃を受けたとしても、その怪我や傷はすぐ完治した。
セイバーは上から降って来たドラム缶に圧し潰され、キャスターは落とし穴にはまってタンコブを作り、小次郎などは身体をペラッペラに平たくされたのに、それで消滅するような事は無かったのだ。
すなわち――――彼らとの戦いでは、決して決着は付かない。
どちらの怪我もすぐに完治し、殺すことも出来ないので、根負けするまで延々と戦い続ける羽目になるのだ。
それこそがトム&ジェリーの宝具、【
彼らと戦う者は、たとえ英霊だろうが殺戮者だろうが、必ずコメディちっくなドタバタに付き合わされる事となるのだ――――
「勝負付かなかったな……この聖杯戦争。
一応はアイツらが勝者、って事になったみてぇだがよ」
「脱落者ゼロ……だものね。
参加者は一人残らず、今もピンピンしてるわ」
「俺は聖杯戦争の期間中、一度も流血や怪我を、目にせなんだぞ?
ただただ我らは、ネコやネズミと遊んでいたのみではないか……」
「なにか戦闘が起こる度、どこからかあの二匹が〈ひょこ!〉っと顔を出すのです……。
そうすると私達の戦いが、
斬撃音や破壊音すらも、なにやらファニーな物へと変化していましたから。
“ぽよ~ん♪“とか“ポカーン☆”とか……」
もう4人は「どよーん」って顔をしながら、あちらの方で凛にワシャワシャされているトムの方を見る。
その傍らには、士郎にチーズの欠片を貰って嬉しそうにしている、相方ジェリーの姿もあった。
聖杯戦争は、本来もっと殺伐としていたハズ。
怨念と欲望渦巻く、魔術師同士の殺し合いの場であり、なんだったらRー18がついてもおかしくない位の残酷さであるハズだ。生き残りを賭けた戦いなのだから。
しかしながら……今回の第五次聖杯戦争は、そこに「トムとジェリーが参加していた」というただそれだけの事で、きっとお子様が見てもキャッキャと楽しんでもらえる位に、とても愉快で楽しい催しになっていたように思う。
彼らの頭に、ふと「やさしい世界」という知らない単語が浮かんだ。
聖杯によって教えられる、現代の知識だろうか?
「――――というか、そもそも“ネコを傷つける”というのが、もう有り得ません。
あなた方は、少しどうかしているのでは?」
「――――雑種の言う通りよ。
もし可愛い可愛いトム君が怪我をしたら、我が貴様らを罰しておったぞ?」
「「「…………」」」
ここで突然、“動物すきすき勢”であるライダーとギルガメッシュが、話に割り込んで来た。
彼らは「ぷんぷん!」と腰に手を当て、4人を批難するように睨んでいる。
「なぜイジメるのです。彼らは動物なのですよ?
斬るとか、突き刺すとか……そんなのサイコパスの発想でしょうに。
なぜ争うのではなく、
「こやつらには、人の心が無いとみえる。
英雄だの何だのと言っても、所詮はこの程度か……。
動物を愛せぬ者など、雑種以下の鬼畜ぞ?」
「しかも、ネコですよ?
分かっていますかセイバー?
愛しこそすれ、戦う理由がどこに? どこにあると言うのですか」
「愛でよ。ただただ全身全霊を以って愛でよ。
ネコとはそういう存在――――天使以外の何者でもなかろう。
我らはネコを飼っておるのではなく、ネコの世話を
「ジェリー君も可愛いではないですか。この上なくキュートじゃないですか。
ちょっとイタズラをされた位、それが一体何だと言うのですか。
心底理解に苦しみます」
「貴様らみたいなモンは、ただただ感謝しておれば良いのだ。
良いか? イタズラをされようとも、『
げぼかわ超絶もきゅい小動物を、視界に入れる事が出来る……。
その与えられた幸福を十二分に噛みしめ、農民の如くひれ伏しておれ。
おい頭が高いぞ雑種共。トムきゅんとジェリーきゅんをなんと心得る。不敬であろうが」
「「「…………」」」
二人の目がグルグルしている。正気の目ではない。
もうネコが可愛すぎて、小動物が愛おしすぎて、頭がおかしくなっているのだ。
この目をしたヤツとは、関わってはいけない――――決して口ごたえをしてはいけない。
そう直感したサーヴァント4人は、ただただテーブルにある酒だの料理だのに手を付ける。
決してライダー&ギルの方を見ないようにしながら。
「優しい世界、かぁ……。
まぁ良いけどな。こちとら世界の抑止力として、散々働かされてきたんだ。
暫くはまぁ、のんびりさせてもらうわ」
「私も。
せっかく宗一郎と出会えたのだし、この幸せを噛みしめる事としましょう」
「のどまりて征くも悪ぅない、か。
仕方あるまい、付き合うとしよう」
「私とシロウとの、お互いの想いをぶつけ合ったあの大喧嘩までもを、トム達によってコメディのようにされてしまったのは、少し納得がいきませんが……。
でも同感です。この世界が許す時まで、我が主の剣として在ろう――――」
覚悟と強い意思を以って聖杯戦争に臨んだは良いが、ネコとねずみのコンビによって、すっかり毒気が抜かれてしまった英霊たち。
いま彼らの目の前には、慌ててピューっと逃げ出している士郎&ジェリー、それを「待てこらぁ!」とばかりにドタバタ追いかけている凛&トムの姿がある。
この後の事は、だいたい予想が付く。
おおかたジェリー達の罠にかかって、トム達がちゃぶ台に脛をぶつけて悶絶するなり、倒れてきたタンスによって紙のようにペチャンコになったりするんだろう。
まぁそれも、次のシーンになったらば、何事もなかったかのように治るのだが。
いったい何を以って判断されたのかは謎だが……この戦いの勝者としてトムとジェリーが聖杯に願ったのは、「ずっと仲良く喧嘩したい」
優しい世界、聖杯の穢れまでもコメディパワーでうっちゃってしまった二人の願いは、今こうして現実の物となっている。
ドタバタ、ドタバタという騒がしい音が、夕暮れ時の衛宮家の居間に響いていく。
「どこ行くのよ士郎ッ! まだ頭を撫でてもらい足りないったらぁ!
家事なんてどーでもいいでしょうがッ! 捕まえて食っちゃうわよ!?!?」
「いい加減、酔いを醒ませ遠坂ッ!
優雅たれはどーしたんだよぉー!」
時に皿をひっくり返し、時にコップの飲み物を頭から被りながら、士郎と凛がグルグルと駆け回る。
それと一緒に、仲良く追いかけっこをするトムとジェリーの姿を、英霊達が微笑ましく見つめた。
◆スペシャルサンクス◆
甲乙さま♪