【募】こんな小説を書けこの野郎【リクエスト】 作:hasegawa&friends
――――エキシビション! その6!
今回のお題はこちら↓
◆ ◆ ◆
引き続き、“クジ引き小説”のパート2です。
皆さまから募集した原作、テーマ、ジャンルなどが書かれたカードの中から、無作為に一枚づつ選んで頂き、それで小説を書いてみました。
今回のお題は……【千と千尋×アーマードコアで、飯テロがテーマの、ドシリアスなアクションダークファンタジー物】
依頼主 : インテリオル・ユニオン
作戦エリア : 群馬県、吾妻郡中之条町(異界)
作戦目標 : 油屋の占拠、敵全撃破
報酬 : 1000000c
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◆ ◆ ◆
『――――ミッション開始ッ!
八百万の神々が集う巨大温泉宿、“油屋”を占拠する』モグモグ
全長15メートルを超える人型機動兵器、アーマードコア・ネクスト。
振動やGによって激しく揺れるコックピットのスピーカーから、当機のオペレーターである“セレン・ヘイズ”の声がする。
『まずはVOB*1で、一気に
超高速戦だァ……、目を回すなよォ?』ズゾゾゾ…
だが様子がおかしい。なにやら麺をすするような音が、音声に混じっている。
どうやらセレンさんは、今カップ焼きそばを食いながらオペレーターをこなしているようだ。お腹が減っているのだろうか?
小麦で練った麺を油で揚げ、それを3分ほど湯でふやかして食うという、“焼きそば”という名にあるまじき食べ物。
総エネルギー量は700kcalを超え、十二分に腹が膨れはするものの、反面これには栄養もクソもあったモンじゃなく、健康の為に必要なタンパク質やビタミンといった重要な栄養素が、致命的なまでに不足している。
それどころか、その30gに迫るという脅威の脂質量が、体内のコレステロール値を劇的に上昇をさせ、狭心症や心筋梗塞などの心疾患、脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患のリスクを飛躍的に高めるだろう。
加えて、その過剰なまでにぶち込まれた脂質は、胃腸への深刻な悪影響をもたらす。
消化不良を引き起こすばかりか、せっかく摂ったタンパク質の吸収を阻害し、筋肉の成長や回復を妨げてしまうのだ。
それのみならず脂質という物は、胃の中で麺の糖質と結合する事によって、この上なく
たとえばだが、揚げ物(脂質)とお米(糖質)を、別々の機会に食する事は出来る。口にするとしても同時には食べないよう、工夫する事は可能だろう。
お米じゃなく、キャベツの千切りなどと一緒に、揚げ物を食せば良い。食物繊維は脂質の排出を助ける効果があるので、とても理にかなっていたりもする。
だがこのカップ焼きそばという物は、あろうことか
ゆえにどう足掻いても絶望。どこにも逃げ場など無い。食えば体脂肪になるのは不可避。
もしこれを食い続ければ、不健康は決して免れないという悪魔めいた代物だ。
全ダイエッターの天敵とさえ言われたこの“カップ焼きそば”は、史上最も多くの人間を太らせた料理でもある。
『そろそろ燃料切れだ、VOBの使用限界が近いぞ。通常戦闘を準備しておけ』カカカッ
だが……カップ焼きそばは“美味しい”。
この上なくうまいのだ。困ったことに……、
むしろ上記であげた負の要素、「食べてはいけない」という罪悪感こそがスパイスとなり、この食べ物は完成すると言っても過言ではなかろう。
更にこのアルティメット・コレステロール・クリーチャーとも言うべき“おデブまっしぐら”を、敢えて深夜に食すことにより、真価は発揮されるだろう。
今セレンさんが、箱にへばりついたキャベツの欠片をかき集めるべく、箸でプラ容器をカカカッとやっているが……その音すらも愛おしい。たいへん食欲をそそる。
お湯を捨てる時の、シンクが〈ボコン!〉となる音……。
麺をお箸でグリグリし、執拗なまでにかき混ぜている時の期待感……。
鼻孔をくすぐるオタフクソースの、甘く芳醇な香り……。
付属のふりかけを、出来る限り高い所から〈ファッサー!〉と散らし、それがフワフワ舞い落ちる光景は、あたかも春風の中で散る桜吹雪を想起させる。
そして! おもむろにぶっかけるマヨネーズの背徳感よ!!
もう太ってもいい! ダイエットなんざ知るか! そう明日を省みず、己の未来すらも粉砕する勢いで発射されるマヨビームが、焼きそばをギルティ・イエローに染め上げた時の高揚感よ!!
全てをかなぐり捨ててかっ込む満足感、口いっぱいに頬張る充足感は、何物にも代えがたく! 得も知れぬ幸福に身を震わせること必至である!
さぁ想像しろ! 深夜0時に食うカップ焼きそばの味をッ! なんと素晴らしいッ!!
かの偉人は言った――――「おいしいから大丈夫だよ」と。
こんなにも美味しい物が、健康に悪いハズが無い。私の細胞がそう言ってる。
むしろこれを我慢しちゃう事で、ストレスとかで寿命縮むんじゃないかな?
人は皆、幸せになる為に生きているのに、カップ焼きそば食わないのは矛盾してない?
ちゃんとキャベツも入ってるんだし、ヘルシーじゃん♪
そうアホみたいな屁理屈をこねながら、今日もクソデブ我々人類はカップ焼きそばを食べるのだ。
UFOは、悠然と空を舞っている。
『よし、敵の懐に潜り込んだな。心の準備は出来たか?』ズルズル
ネクスト機が空気の壁をブチ破り、とてつもないジェット音を撒き散らしながら流星の如く飛行。
引き続きセレンがカップ焼きそばをすする音が聞こえているが、そんな事を気にしている暇は無い。「姐さんまたダイエット失敗っすね!」とか言ってる場合じゃない。
眼下には古風な日本家屋の街並み、そしてすぐ目前には、今回の作戦目標である“油屋”。
以前なにかで見た、奈良の東大寺にも負けないほど巨大な木造建築物。とても雅で豪華な店構えだ。
そしてその周囲にも屋根にもワラワラと蠢いている、
かの【スピリット・オブ・マザーウィル】を彷彿とさせる、要塞めいた防衛設備。数えるのも億劫になるくらい多くの対空砲。
これを今から、単独で撃破しなくてはならない。ここを占拠せねばならない。
人が戦ってる時にとか、咀嚼音のせいで全く締まらないとか、泣き言を言っていられないのだ。
『始めるぞ。VOB使用限界、パージするッ!
見せてみろォ――――お前の可能性を』クチャクチャ
機体の背部から、用済みとなったVOBが切り離される。
残り火の慣性、そして自らのブーストを吹かす勢いを以って、敵の真っただ中に突っ込んでいく。
日本という国、神々が集う異界、しかもジブリの世界観。
今ここに、アーマードコア・ネクストが推参。戦いの幕が上がる――――
「 レ ッ ツ 、パ ー リ ィ ィ ィ ー ー ッ ッ !!!!!! 」ヒャッハー
『ちょっと待て、
私のリンクスじゃない……?! 知らんヤツが乗ってる!!
思わず空容器をポイッと捨て、モニターに向き直った。
「ヤツ等のような“腐ったチーズ”には、決して負けない。
何故なら私は――――アメリカ合衆国大統領だからだ!!」カッ
『オイ何だ貴様はッ! 何故そこにいるッ!?』
私のリンクス*2をどこへやった!? そう声を荒げる。
だが無線機の向こうにいるのは、自らが手塩にかけて育てた愛弟子ではなく、ぜんぜん知らない男。
しかも“アメリカ大統領”を自称する、ものっすごく自信に満ち溢れたダンディな声。
『なッ……!? よくよく見れば、
いつの間にすり替わった!?』
「HAHAHA☆ これは我が国が開発した
人呼んで【メタルウルフ】さ、ハスキーなお嬢さん」
セレン・ヘイズ自身が設計し、大切な愛弟子に託した機体、ACストレイド。
だが今モニターに映っているのは、あの見慣れた水色のボディではなく、なんかよく分からない黒色のロボットだ。
しかもACより一回りも二回りも小さく、恐らく全長は5mかそこらだろう。明らかにネクストとは違うし、恐らくはノーマルでも無い。
そんな見ず知らずの機体が、いつの間にか愛弟子と入れ替わっており、VOBで神々の温泉街へと出撃していったのだ。
クーデレながらも弟子を溺愛し、軽くオネショタ気質まで持つセレン・ヘイズ。現在の心境は、いったい如何ばかりか。
そして――――騙して悪いが彼の名は【マイケル・ウィルソン・Jr.】
この特殊起動重装甲メタルウルフのパイロットであり、第47代アメリカ合衆国大統領だ。
過去には海兵隊に所属する兵士であり、世界各地の紛争に参加。その功績からメダルオブオナーを授与された人物。
また、過去に家族をテロで失った経験から、テロという物に対して深い憎しみを抱いており、決してこれには屈しないという強い信念を持つ。
正義を貫く熱いハートと、大統領にまで昇りつめた人望、そして高い知性を合わせ持つナイスガイである。
なのでこの人は、決して“首輪付き”の愛称で親しまれる、セレンのお弟子さんではない。
何故こんな所にいるんだコイツは。お前プレジデントだろうが。
「ちなみに私は、この
良いセンスだと思わないか?」
『 思うかァ!!!! 』
ジブリの世界にロボが乱入、しかもパイロットは別人で、アーマードコアではなくメタルウルフが登場。
そんな理解し難い状況ではあるが、
他ならぬ彼がそう言っているのだから。間違いないのだ。
「OH! そこら中を八百万の神々がうようよしているぞ。
これが魑魅魍魎ってヤツか。
『 ぜんぶ口で言うなッ! 卑怯だぞ!! 』
書けないんだったら、口で言えば良い――――
表現出来ないのなら、ハッキリ言葉で示す他ない。「これは〇〇なんです」と言い張れ。
そう言わんばかりの所業。
「ノルマは達成した――――
ここからは好きにやらせて貰おう」*3
彼が何を言っているのかは、皆目見当が付かないが……とにかくマイケル操るメタルウルフ(ドシリアス)が空から舞い降り、ガッシーンと大地に着地。カッコいいポーズを取る。
「ではセレン、指示を頼む。
ブギーマン共をBeat Downするぞ」*4
『えっと……私のリンクスは無事か? それだけ先に教えて?』
もうこうなったら、やるしか無いかッ……! 仕事は仕事だッ!
アイツ今どうしてんだろ、ちゃんと帰ってくるよな? とか思いつつも、セレンは目をモニターを注視。
新たにドミノピザの箱を手元に置いて、彼と共に戦う覚悟を決めた。
『ではこれより、巨大温泉宿“油湯”を占拠するッ。
ピザを食べながらレーダーを確認。もう画面が赤い点で埋まってしまう程の敵反応がある。
ノーマルや戦車などの兵器は無いものの、まさに無尽蔵と言える敵勢力。
『なお今回の作戦名は……【日本の文化をファックしろ大作戦!】だ。
武運を祈るぞォ、Mr.
「ROG that」*5
メタルウルフがブーストを吹かし、勢いよく駆け出していく。
対するは、日本中から集った神道由来の神々、YAOYOROZU。
おそらくは豊穣を司る神なのだろう、大根を模したマスコットのような者。秋田のなまはげをモチーフにしたような者。またどこからどー見ても、でっかいヒヨコにしか見えないような者など、多種多様で大勢の神々が征く手を阻む。
「――――Yeahhhhhhhhhhッッ!!!!」ドゴゴゴゴ
だがその神々の誰もが、「やめて! ぼくらの住処をこわさないで!」とばかりの、悲痛な顔をしている。
メタルウルフ(ドシリアス)が両手で操る、二丁の巨大なガトリングガン。その暴風めいた弾幕に晒されながらも、必死にみんなの憩いの場を守ろうと、健気に頑張っているのだ。
みんなマスコットっぽくて可愛らしい子達だし、「うえーん!」と泣いてしまってるのだ。とっても可哀想に見える。
「Take this!!*6 ビリーヴ・ユア・ジャスティス!!」ドゴゴゴゴ
だが容赦なく叩き込まれる弾丸。これじゃあどっちが悪だか分かりゃしない。
しかしながら、マイケルが己の正義を疑うことは、決して無い。
なぜなら彼は、アメリカ大統領だから!
魑魅魍魎で、未開人で、人間ですらない――――そんなヤツラに白人は慈悲などかけない。ゾンビを撃つのと同じだ。
そもそも、天にいまし我らが神の愛は、人間にのみ向けられているのである。
獣畜生(と白人以外の存在)は、人間(というか白人)の為にこそ存在する物なので、別に殺しちゃっても構いませんよ~と、ちゃんと主の教えにある。神が太鼓判を押して下さっている。
ゆえに、なんの良心の呵責もなく
……ジブリキャラ? そんなもん知るか!
こちとら Indianを虐殺し、Japanに原爆落とした民族の末裔やぞ。Kiss my ass!*7
バタバタと倒れ伏す神々。崩れ落ち、砕け散る建物。炎と硝煙に包まれる街。
そして、そこらじゅうに飛び散る、血! 血! 血ッ!!
やがてそれは流れ、ひとつの川を成す。
生物も、建物も、地面も、世界が赤一色に染まっていく。
ああ、これぞ正にアクションダークファンタジー。フロムの社員さん達もニッコリだ。
全てを破壊する、暴力ッッ!!
『YAOYOROZU,残り半数――――
いいぞォ、効いている。そのまま続けるんだ』モッチャ モッチャ
そして物を食いながらオペするセレン・ヘイズ。
その手にあるのは、ドミノピザの“アメリカン”。
チーズ・パペロニ・トマトソースが乗った、とても美味しそうなピザである。
今もセレンの手元から〈びよ~~ん!〉とチーズの糸が伸びており、それを「おっとっと」なんて言いながら、慌てて口に運んでいる。
指に着いたトマトソースを、少しお行儀が悪いけれど、ペロッと舐め取ったりもする。
あぁ正に至高のひと時。
一見すると、なんたらデラックス~とか、なんたらジャイアント~みたいな、いわゆる豪勢なピザの方が良いように思える。
なんだったらマヨネーズが乗ったテリヤキピザや、海老や蟹がふんだんに使用されたシーフードも、それはそれは美味しい事だろう。
しかしながら……セレン・ヘイズはいつも“アメリカン”を選ぶ。
これはアメリカ人がよく食べている感じの、テンプレというか典型的な物。言わば最低限の具とチーズだけが乗った、とてもシンプルなピザだ。
セレンは元トップランカーのリンクスであり、言うまでも無くお金持ち。
ゆえに豪勢なのを注文する事も出来るし、実際に以前は色んなピザを食べていたものだ。
けれど、近年の彼女が頼むのは、このシンプル極まりないアメリカン・ピザ。これ一択となっている。
ヘレンは思う――――なんだかんだ言っても、やっぱりコレだと。
ダイエットの辛さに身を焦がし、心身共に極限状態にある時、いつも頭に浮かんでくるのはこのピザ。
身体が求めるのは、心が欲するのは、決してゴテゴテした高価なピザなどではなかった。
したいのは散財じゃない。それじゃあ“自尊心”しか満たされない。そんな物は女子供が食えば良い(※セレンは女性です)
――――アメリカンのようにシンプルなピザを、Lサイズでひとり食いしたい!
――――誰に気兼ねする事無く、思う存分、お腹いっぱい食べたい!
それに尽きる。こんなにも心が満たされる行為が他にあるか?
これこそが彼女にとって、真の“贅沢”なのである。
しかも、しかもだ。今セレンが食べているのは、ただのアメリカンに非ず。なんと“ダブルチーズ”と呼ばれる増量Ver.だ。
ちょっと過剰なまでにたくさん乗せられたチーズが、ピザ生地の上でドロッドロにとろけ、零れそうな程の“チーズの海”を作る。
そこにポツポツと乗せられた赤いパペロニは、海に浮かぶ孤島か。
店員さんが入れてくれた切れ目を探り当て、それに従って一切れづつピザを分離させる。
どこまでも際限なく伸びていくチーズ、そして生地から滑り落ちそうになるパペロニに苦心しつつ、「あわわわ、あちち」なんて言いながら必死こいて口元に運び、それを頬張る。モチャモチャと咀嚼する。
チーズの乗った生地のしっとり感、そしてミミの部分のフラットで食べ応えのある食感、その違いを楽しむ。
うすっぺらいパペロニから感じる、僅かだけど確かな肉の旨味に意識を集中するべく、目を瞑って味わう。
とりおり漏れる「う~ん♪」という幸せそうな声。
口いっぱいに広がるチーズの風味、その美味しさに思わずほっぺを押えつつ、じっくりのんびりとピザを堪能していく。
そして、時折コーラを喉に流し込むことも忘れない。口の中の油を一度リセットし、また新鮮な気持ちでピザを味わう為に。
この孤独だけと豊かな食卓において、なんと言うかコーラは……とても爽やかな存在だ。
偉い人は言いました。「ピザはイタリア料理だが、そこにコーラを付ければアメリカ料理になる」と。
それは真理だと思うし、上手いこと言うもんだなァ~と、セレンも関心したものだ。
とにもかくにも、彼女はピザを食べ進める。
一人ではとても食べきれないようなサイズのピザに、モニターとにらめっこしながらではあるが、猛然と挑んでいく。むしゃむしゃ、もぐもぐ。
なんて美味しいんだろう……。ピザはなんて素晴らしいのだろう!
熱中症の身体に水が沁み込んでいくように、ピザの脂質が身体中に染み渡る。砂漠のようにカラカラだった心が、“おいしい”で満たされていく……。幸せ♡
よっし、明日からも
そんな妄想を思い描き、気持ち悪い顔で「ぐへへ……♪」と笑いつつ、セレンは大好きなピザをモチャモチャ。
気が付けば、あれだけ大きかったLサイズのピザは、もう手元にある一切れ分を残すのみだった。
ぜったい食べきれないって思っていたのに……なんとかなってしまったらしい。
ちなみにであるが、今日はチートデイでも何でも無い。何かを計算しての事でもない。
ただドカ食いしてるだけなのだ!
「――――ハッハー! 随分と楽しそうだなマイコォ~ウ!
私も混ぜてくれないかぁ~い?」
「ッ!?!?」
その時、あらかたのYAOYOROZUを殺し終えたマイケルの耳に、とても聞き慣れた声が届く。
ねっとりし、どこか聴く者をイラッとさせるような、おっさんの声だ!
「おっ……お前はっ! リッチャアアアァァァーードゥ!!!!(巻き舌)」
「マイコォォォオオオーーウッ!!!!(巻き舌)」
彼こそは、アメリカ合衆国の副大統領、リチャード・ホーク!
マイケルとは大学時代からの友人であり、戦場でも轡を並べて戦った戦友。そして現在は片腕たる男である。
しかし、彼の心は大統領たるマイケルへの嫉妬で満ちており、いつも陰湿な嫌がらせばかりするのだ。
ブラックが好きだと言っているのに、コーヒーにクリープを入れてきたり、マイケルが読んでいた本の栞を、こそっと抜きとったりされた。
これじゃあ、どこまで読んだのか分からないじゃないか! なんて卑劣な! ぜったいに許さないっ!(プリキュア感)
「さぁマイコ~ゥ?
Japanのブギーマン共をジェノサイドするのも良いが……ちょっとあちらを見てみろよ」
「んっ? ……あ、あれはっ!?!?」
ヤツがほくそ笑みながら指さした先を見る。
ついでにさっきまでピザに夢中で、モニターをよく観ていなかったセレンも、慌てて確認。
「ミスター・プレジテェェント! I'm sorry、ひげソーリー!」
「ジョディ……!? そんな所でWhat's happen?! ジョディィィーーッ!!」
温泉宿“油屋”の屋根にある、巨大なしゃちほこ的な飾り。そこにロープでグルグル巻きにされている、ジョディ・クロフォード女史の姿。
彼女は大統領補佐官であり、普段はメタルウルフのオペレーターも勤めている、マイケルの相棒的な存在。アメリカン・ビジネスウーマンである。
そしてよく見れば、彼女のみならず大勢のホワイトハウスの職員たちが、そこに縛り付けられているでは無いか! みんなマイケルの愛すべき友だ!
「フハハハ! 実はお前をハブにして、
まさかここまで追って来るとはな……」
「 リ ッ チ ャ ア ア ア ァ ァ ァ ー ー ド !!!! 」
ビックリしたよ。わざわざメタルウルフに乗ってまで……。
そうリチャード副大統領は冷や汗。対してマイケルは激高している。
私だって温泉入りたい! 仲間外れは酷いじゃないか! と。
『……おい貴様ァ。
お前は温泉入りたさに、
ただそれだけの為に、手品のように私のリンクスと入れ替わり、ここへ来たのか……?』モシャモシャ
「Yeah,sure! 君の言う通りだミス・セレン。
どうしてもVOBが必要でな」
今度はファミチキに齧り付きながら、セレンが震え声。
『なッ……! 何故そこまでするッ!!
何がお前をそうさせるんだ! 無茶苦茶だろうがッ!!』ゴックン
「いや、無茶ではない。
何故なら私は――――アメリカ合衆国大統領だからだ!!!!」
私だけハブにするのは許されない。だって大統領だもん☆
そうマイケルは声高に主張。よくわからん謎の説得力があった。惨めだが。
「Mrプレジデント! 来ては駄目! これは罠です!
掘った芋いじくるなーっ!」
「ジョディ! ……クソッ、卑怯だぞリチャード! 皆を人質に取るとは!」
「ハーッハァ!
これは最初から、お前をおびき寄せる為の作戦だった……という事にしておいてだな。
こうなったら死んでもらうぞマイコゥ!! せっかくだし!!
お~っと、動くなよぅ? コイツ等の命は無いぞぅ~」
温泉行きたさに、ひよこ饅頭食いたさにリチャードの甘言に乗り、大統領を裏切ったジョディ&ホワイトハウスの職員たち。
だが彼らは今、無防備な状態で油屋の屋根に拘束されており、人質として利用されているのだ。
リチャードがマイケルを倒すため! 彼を殺して大統領の座を奪うために!
「ヤツ等がいる場所には、油屋を木端微塵に出来る量のTNTを仕掛けてある!
俺が手元にあるスイッチを押せば爆発するぞ! 大人しくするんだマイコゥ!」
「Oh fuck! なんてドシリアスな展開なんだ!」
『 口で言うんじゃないッ! 内容で示さんかッ! 』サクサク
セレンがフライドポテトを齧る。マックで買って来たヤツを。
けっこう時間が経っているのだが、さっきちゃんとトースターで温め直したので、カリカリ復活だ。
油と塩気のコンビネーションが口内に染み渡る。マーヴェラス!
「待っていろ皆! すぐ助ける!」
「なっ……! 逃げて下さいMrプレジデント! 死んでしまうわっ!
なぜ私達を助けようとするのですか? 貴方を裏切ったのに!」
「ジョディ……私には友人を見捨てることは出来ない。
何故ならば――――アメリカ合衆国大統領だからだ!!!!」
『便利だなァそれ。何でもイケるじゃないかァ』モシャモシャ
ナゲットに付いていたBBQソースをディップしながら、引き続きフライドポテトを齧る。
ちなみにだが、セレンはナゲットを食べる時は、断然マスタードソース派だ。頑ななまでに、これ一筋で生きて来た。
でもマックの店員さんに「二つとも付けて下さーい♪」とお願いすれば、BBQもマスタードも両方貰えるという事を最近愛弟子に教えて貰ったので、こうしてポテトの方に活用している次第である。
そう言えばアイツは、サムライマックが好きだったな……私もひと口貰って食べてみたが、あれはとても良いものだ。
しかしながら、私はビッグマックを裏切らない。ビックマック愛を曲げることは出来んのだ! 許せ私のリンクスッ!
そう「I'm lovin' it!」と叫びながら、セレンはモニター内の様子を見守る。手を油まみれにしながら。
「見ろぉマイコゥ! これが私専用の特殊機動重装甲、“MAリチャードモデル”だぁー!
胸部にレールガンが搭載されており、超大型ガトリングガンや、KARASAWAっぽいライフルまで装備しているのだ! どうだ強そうだろぉ~う?」
「くっ! 勝手に税金を使いやがって! 私は許可した覚えはないぞリチャード!」
「知ったことかぁマイコゥ! 今からこいつで息の根を止めてやるぞ! Go to hell!!」
「ぐわーーっ!!」
「Mrプレジデェェーーント!!??」
ポテトを片付けたセレンが、今度はポテトチップスを手に取った。
なにやら先ほどのフライドポテトと重複しているような気がするが、関係ない。
そんな事を気にして、戦場で生きられるものか。それにこれ“のりしお”だし?
「ハッハー! 鉛玉の味はどうだぁ~!?
たらふく食わせてやるぜマイコォォォーーゥ!!」ドガガガガ
「うぎゃあーーっ! リッチャーード!!」
「Mrプレジデント……?! プレジデェェェエエエーーント!!!??」
そして、バリバリとのりしおチップスを瞬殺したセレンが、満を持してケンタッキー・フライドチキンに移る。
「さぁ命乞いをしろ! 俺に大統領の座を譲るのだマイコゥ!
そうすれば、命だけは助けてやるぞぉ~?」バキュン バキュン
「Shut the fuck up asshole!!*8 誰がこの程度で!
でもうぎゃあーーっっ!!」
「おぉ主よ……! 彼を救いたまえっ……!
このままでは、アメリカの自由が死んでしまうわっ!
ちなみにだが、セレンが一番好きなケンタッキーの部位は“サイ”だ。
これは鶏の腰にあたる部分であり、量・食べ応え・油の乗り方、どれを取ってもエクセレント!
これが他の胸肉やササミなんかの部位と同じ値段であるのが、本当に不思議でならないほど美味しく、聞く所によるとケンタッキーでも一番人気であるという。
これ食べたさに、セレンはいつもオリジナルチキンを購入する時は、5ピースで注文する。
こうしておけば、「せっかくケンタッキー来たのにサイが入ってなかった!」という憂い目に合うことが無く、どの部位も満遍なく食べることが出来るのだ。
まぁオリジナルチキンの栄養素的には、一個あたりのエネルギー量が平均して【218kcal】、そして脂質が12.8gと、マジでとんでもない事になっている。
なのでこれを5つも食べると、ぜったい確実におデブまっしぐらなのだが……そんな事を気にしてはいられない。こちとら元リンクスなのだ。
オリジナルチキン・サイの美味しさ……ひとたび齧り付いた途端に、〈ジュワッ♪〉と油が弾けるあの感覚を味わう為なら、ちょっとばかり太っちゃう事など、いったい何だと言うのか。
それ相応の覚悟もなく揚げ物を食おうなどと、ケンタッキーを舐めてるのか。
むしろカロリーなど、
自らの頭で考える事もせず、己を信じずして、なにが人間か! 人として恥ずかしくないのかお前ら!
食べたら食べたで、その分走ればいいじゃない。また運動すればいいじゃないか☆
そんな想いを以って、セレンはケンタッキーフライドチキンを齧る。「♪~」と幸せそうに食べる。
なんで鶏の油って、こんなに美味しいんだろう?
なんでフライドチキンって、こんなに心が満たされるんだろう?
いつもセレンはそう思うのだが、どれだけ考えても答えは出ない。
ただ美味しいから美味しいのだ。哲学するのは人の
我武者羅に肉に食らい付く。ライオンになった気分だ。
骨に少し残った部分も、小鳥のように「チュッチュ♪」とついばんで、綺麗に食べる。
こんなおいしい物、少しでも残してなるものか。それが食べ物に対する礼儀だとばかりに。ただ食いしん坊なだけかもしれないが。
ぶっちゃけ今、手が油でギットギトなのだが……。乙女にあるまじき感じになっているのだが。
でも指に付いた油さえおいしいのは、一体どーゆう事なのだろう? なぜここまで“おいしい”に満ち溢れているんだろう? ケンタッキーって食べ物は!
指についた油を「ペロッ♪」っと舐めてみれば、またそれによって脳内にドーパミンが分泌され、至上の幸福感に包まれる。まったくモーマンタイ。
たまに「手が汚れるからケンタッキー行きたくない」などとのたまうマザーファッカーがいるが、女子供はすっこんでろと言いたい(※セレンは女性です)
ジューシーで柔らかな鶏肉、イイ感じに味付けされた衣、そして犯罪的においしい油……。
これを食べないのは、逆に罪だ。「人間は須らく幸せになるために生まれてきた」という、神の教えに背いている気がする。間違いない。
私はケンタッキーを食べるぞ! ダイエット中だけどな☆
そうセレンは「ふんす!」と鼻息を荒くする。
正直、少し体重計に乗るのが怖くもあるのだが……美味しいから大丈夫だよ。きっと。
ビリーヴ・ユア・ジャスティス! 目指せ夏までに5㎏。
余談ではあるが、本日のセレンの摂取カロリーは、先ほど1万を超えた。
「くっ……! 残りAPが少ない! このままではっ……!!」*9
「アーーッハッハ♪ ではトドメだぁマイコゥ! 死ねぇぇぇえええーーいっ!!!!」
「おお神よ! 彼がいったい何をしたと言うのですかっ!」
『おっと。そうこうしている内に、食べ終わったなァ。
オペレーターに戻るとしよう』ホッコリ
満足気にお腹をポン! と叩くセレン。
彼女がモニターに向き直った時、既に戦闘は佳境へと突入していた。
えっと……チョコパイはどこへやったかな?
そう気にせず机の上をゴソゴソしているけれど。
「――――そこの者、心配するな!
捕らえられていた者達は、すべて開放したぞッ!!」
だがその時……。突然見知らぬ“少年の声”が轟く。
「これで其方も、憂いが無くなったハズ!
さぁ立つのだ! ぷれじでんと? とやら!」
ふと空を見上げれば、そこにあったのは
今、ハクこと“ニギハヤミコハクヌシ”が、龍の姿でこの場に駆けつけたのだ。
その背に大好きな女の子、千を乗せて!
「――――かえって下さい! そーゆうのは
一瞬、この場の空気が〈カチーン!〉とフリーズ。
顔を真っ赤にして怒る千が、大統領ご一行様へ、おもいっきり怒鳴った。
「そうだッ! 私達は寄り添って生きているだけだ! 何故この地を襲うッ!」
「みんな良い神様なのに……、イジメるなんてあんまりですっ!
ケンカに巻き込むなんて、ひどいですっ!
それが大人のする事ですかーっ!」
「「「…………」」」
ぐうの音も出ない。まったくその通りだから。
なんで俺達は、こんな見ず知らずの国で、アメリカの未来を賭けて戦ってるのか。
よくよく考えてみると、それは誰にも分からなかった。ホワイトハウスでやれってなモンだ。
「かえって下さい! かえって下さい! もう来ないで下さーいっ!」
「
今、捕らえられていたホワイトハウスの職員たちが、優しい八百万の神々によって助け出され、ゾロゾロと屋根を降りていくのが見える。
でもその誰もが「帰れ! アメリカ人帰れ!」とプンプンしている様子。かわいく激おこである。
「いや、まだ帰ることは出来ない……。
何故なら私は――――アメリカ合衆国大統領だからだ!!!!」ババーン
『それ流石に無理だ。空気を読めプレジデント』モグモグ
せっかく来たのに、温泉にも入らず帰れるか!
そうマイケルが声を大にして主張。他のみんなは冷めた目をしてる。
「はっ……!よく見れば隙だらけ?
今だぁぁぁあああーーーっっ!!!!」ドゴーン
「ぐぅおぉぉーーっ!? マイコォォォオオーーーウ!!!???」
メタルウルフことマイケルの鉄拳が、リチャード機の顔面に刺さる! おもいっきり貫く!
この急展開に「ぽかーん……」としていた彼は、突然の攻撃に対応出来なかったのだ!
「見たか!
お前の負けだリチャード!」
『――――それが大統領のする事かッ! ズルいぞッ!!』
いや……でもあいつアメリカ人だしなァ。それならアリなのか?
そうセレンは、ロッテのガーナミルクチョコレートを齧りながら、思い直す。
だってあの人ら、マジで「勝てばなんでもOK」みたいなトコあるし。
そらベトナムに枯葉剤撒くわ。ナパーム落とすわ。
「ふっ……ふはははは! まだ終わってなどいないさ、マイコォ~ウ?」
セレンがツッコミを入れた、その一瞬の隙を突き、リチャード副大統領がブーストを吹かす。この場を緊急離脱!
「どこへ行くリチャード!
温泉はどーなる!? みんなで入らないのかっ!」
「ふはははは! それはまた別の機会にしよう!
この場はいったん、退散させてもらうぞぉー!」
「あっ! Mrプレジデント! あれはっ……!?」
無事に救出されたジョディ補佐官が、指さす先……。
そこには〈ゴゴゴゴ!〉と真っ二つに割れていく油屋。そしてその中から、凄まじい轟音を立てながら空へ飛び出していく
「まさか、こんな物を用意していたなんて……!
ここは人様の国、余所の土地なのに!」
「そうだなジョディ、私もビックリさ。
流石はリチャードだ」
大 迷 惑 ☆
その一言に尽きる。千やハク達も「油屋がこわれたー!?」って大騒ぎしちゃってるし。ちゃんと賠償はするのだろうか。
そして遠くには、巨大なスペースシャトルに乗り込んで去って行く、リチャードの姿が。
流石は副大統領。スケールがでかい。もうとんでもない事になっている。
「なんてこと、あんなの追えませんよ。
ねぇMrプレジデント。……あれ、プレジデント?」
同意を求めたジョディだが、そこにマイケルは居なかった。
いつの間にか、この場から姿を消している!
「――――うおぉぉぉぉぉおおおおおおおお!!!!!!!」ゲッション ゲッション
「Mrプレジデェェェエエエーーント!?!?!?」
そして! ガラガラと崩れゆく巨大温泉宿の屋根に、バイソンの如く疾走するメタルウルフの姿が!
追っている! スペースシャトルを! リチャードを追いかける気だ!
「駄目です! いくらなんでも無茶ですよ!」
「無茶ではない。何故なら私は、アメリカ合衆国大統領だからだ!!!!」
――――Y E A H H H H H H H H H H ッッ!!!!(大統領シャウト)
そう雄たけびを上げたメタルウルフ(ドシリアス)が、ダッシュの勢いのままスペースシャトルに飛びつき、そのままガッシリと取り付く!
大気を震わせるほどのジェット噴射で、空へと昇っていく巨大なスペースシャトル!
そこに今、あたかも気軽にボルタリングを楽しむかのように、マイケルが張り付いているのだ!
「ジョディ、
「 M r プ レ ジ デ ェ ェ ン ト ッ!!!!! 」
……
…………
……………………
ジブリの世界に、大統領の熱き叫びが木霊する。
彼は行く、新たな戦場へと。
正義の為、そしてアメリカの自由の為に――――宇宙へ。
◆ ◆ ◆
『作戦エリア離脱を確認……
モニターを死んだ目で見つめるセレン・ヘイズが、赤いきつねと緑のたぬきを、同時食いしている。
『いったい何だったんだ、あの野郎は……』ズゾゾゾ
ユニオンの依頼、アメリカ大統領、ジブリの世界観、そして私のリンクス……。様々な事に想いを馳せる。
関係無いけれど、緑のたぬきのおダシは、カップ蕎麦系で最強だと思った。
◆スペシャルサンクス◆
リクエストを頂いた全ての皆様♪
・原作
【ARMORED CORE for Answer】
【千と千尋の神隠し】
【メタルウルフカオス】
PS ……卑怯? 最高の誉め言葉だ。