【募】こんな小説を書けこの野郎【リクエスト】 作:hasegawa&friends
――――hasegawa的“アメリカ三部作”。一本目。
※頂いたお題はこちら↓
【エヴァンゲリオン四号機の幻想入り】でお願いしますw
劇中でいままでの全エヴァの破壊シーンにすら呼ばれてない不遇エヴァを活躍させちゃってくださいww
よろしくお願いします☆
(マスターPさま)
※今回のお話は、独自設定の嵐です。理由は作品内にて。
【新世紀エヴァンゲリオン×東方プロジェクト】二次創作。
エヴァ四号機が幻想入り。 (マスターPさま 原案)
どしーん、どしーん。そう空気と地面が振動する音が聞こえる。
家具や、ちゃぶ台に置いてある湯呑の中身が、プルプルと小さく揺れているのが分かった。
霊夢はそれを感じた途端、さも渋々といった面倒くさそうな顔で、
博麗の巫女としての正装である、この脇の空いた特徴的な巫女装束は、いつも普段着として使用している。
身支度は、それだけで事足りた。
「……なにこれ、白い巨人?」
さして緊張を感じない、いつも通りと言えるのんびりした顔で、音の震源地へと向かった。
彼女は特に急ぐでもなく、ふわふわという擬音が聞こえてきそうな緩慢な速度で、まっすぐに現場へと飛んだ。
普段であれば、異変の元凶を探す為、その道中で見かける者達には、誰彼かまわず喧嘩をふっかける(話を訊く)のだが、今回に限っては必要なかった。
ただただ、遠くから響いてくる音を頼りに、そっちの方向へ飛べば良かったのだから。
けれど、やがて数分ばかり空を行き、遠くの方に巨大な物影があるのを見つけた時、霊夢はコテンと小首を傾げた。
――――何あれ、仏像? それにしては大きいし……、なんか歩いてるっぽいわね。
この地鳴りは、かの物体が起こしている物に相違ない。だがこれはいったい何だ? 幻想郷にこんな物あったっけ?
直感として、……いやもう純然たる現実として、霊夢は「またやっかいな事になりそうだなぁ」と、ひとつため息をついた。
遠目で見る限り、恐らく全長は10メートルを軽く超えているだろう。
白を基調としたボディで、腹や腕など所々に黒いラインがあり、そして若干の赤が部分的に交じっているのが分かる。パッと見で「なんかカッコいいわね」という印象を持った。
霊夢はこの幻想郷に生まれ、まるで江戸時代の初期くらいで時が止まっているかのような場所で、ずっと暮らして来た。なのでこんな“ロボット”みたいな物は、知らないし見たことも無い。
極一部の物が、外の世界から流れ込んでくる事があるとはいえ……、ここにはTVも無ければ、漫画や雑誌みたいなのもロクに無いのだから。まったく馴染みが無かった。
この巨人には、なにやら身体中に装甲のような物が、沢山へばりついているようだが……、でも霊夢は“装甲”という言葉すら知らない。
幻想郷には戦闘機も軍艦も無いので、普段使うことの無い言葉だから。
ゆえに「なんか固そうねコイツ」という印象だけを持つ。後しいて言えば「太陽光でキラキラしてるな~。綺麗だな~」って程度。
とはいえ、いま実際に眼前にあり、そしてこのワケの分からん物が“異変”であるのなら、対峙せねばなるまい。
この身は博麗の巫女。幻想郷の管理者。平和維持と異変解決を
相手が何であっても、退くワケにはいかない。
……たとえそれが、山と
◆ ◆ ◆
「ねぇアンタ、言葉は分かる?
ちょっと止まって欲しいんだけど」
ドシン、ドシンと重い足音を立てて、白い巨人が真っすぐ歩いている。
その耳元(人間で言う所の、だが)にフワフワと近づいた霊夢は、とりあえずと言った風に、普通に声を掛ける。
「ここ人里の近くよ? きっとみんな、地震かと思ってビックリしてるわ。
走ったりせず、ゆっくり歩いては、くれてるみたいだけど……。
でもアンタ、そんな大きな身体だしね」
普通なら、有無を言わさず攻撃してたかもしれない。
はたしてこの巨人に、針や対魔札が効くかどうかは、分からないけれど。とりあえず弾幕を用いた威嚇射撃くらいはするだろう。
けれど、たとえ霊夢が何気なく近寄ってみても、この白い巨人は歩くだけ。まったくこちらの事を気にせずに、ただまっすぐ進むだけだったのだ。
特に急いでる風もなく、破壊的な素振りなども、微塵も感じなかった。
あたかも、ただ散歩してるかのように。
ゆえに、対話を試みる。
もし幻想郷に害を成す意思がなく、本当にノシノシ歩いてるだけなのだとしたら……。まぁその可能性は低いとは思うのだが、とにかく意思疎通を計るべきだと思った。
希望的観測かもしれないが、もしかしたら少し会話するだけで、この事態がアッサリ収まるかもしれないし。
極端なことを言えば、自分は幻想郷の平穏さえ守れるなら、あとはどーでも良い。
この白い巨人が居ようが居まいが、人里に迷惑さえかけないでいてくれるのなら、敵対などする必要は無いのだ。
だって面倒くさいし? こんな大きな怪物と戦うなどと、こちらの労力も馬鹿にならないし。
穏便に済むのなら、それに越したことはない。霊夢はのほほんと声を掛けた。
まぁ内心は、ちょっとだけこの巨人に、興味深々だったりもするが(なんかカッコいいし)
「私は霊夢。ここの管理者をやってるわ。
お散歩中わるいけど、よかったら話でもしてかない?」
ニコッと、ほんのり笑いかけてみる。
霊夢はどこか感情表現が薄いというか、いつも不愛想な所があるが、この時は柔らかな表情をしているのが見て取れた。
なんかこの巨人、怖い感じがしない――――悪意を感じないわ。
そんな彼女の“カン”が、そうさせたのかもしれない。
これまで多くの修羅場を潜り、数多の異変を解決してきた、巫女としてのカンが。
『――――やぁキュート・ガール。いや“お嬢さん”と言った方が良いか?
そういえばここは、日本だったな』
おっきな声ね……。そう霊夢は、片方の眉を訝し気に上げる。
彼女はこれが
『そう、俺はいま日本に来てる。分かっているとも。
ここは日本で、そこにある幻想郷っていう場所なんだ――――
あぁ分かってる。しっかり分かってるぞ』
辺り一帯、山をも揺らす大きな声。
白い巨人は、なんかとても朗らかに喋りながら、いったんその歩みを止めた。
『ちょっと待て、いまエヴァを降りる。トークをしようじゃないか。
待ってろ、今そっちに行くからな? エヴァを降りるよ。
……まぁ待て! そう急かすな! いま降りているからな。
ほら降りる。降りているぞ。俺はエヴァから降りてる所なんだ。あぁ間違いなく降りている。
ほぉ~ら――――降りたぞぉ~う!(欧米的スマイル)』
人間でいう“うなじ”のあたりから、プシュケーと蒸気のような物が出て、エントリープラグが飛び出した。
そこからノソノソと出て来た男が、なんかよく分からない事を一人で喋りながら、ロープをつたって地面へと降り立つ。
なんか……とてもクドい独り言をいいつつ、緩慢な動作で。
「さぁ~降りた! 俺は確かにエヴァから降りたんだ。
やぁレイム、元気してるか?
俺は
デイラン――――マッケイだ(欧米的スマイル)」
ニカッと、まるで歯磨き粉のCMのようなスマイル。
そしてとてもフランクな態度で、彼が挨拶をする。
金髪に近い、ブラウンの髪。それは整髪料によってリーゼントにされている。
白人特有の肌。青いジーンズにインしている、チェック柄のシャツ。
霊夢は観たことは無いが、まるで80~90年代に放送された、アメリカの青春ドラマのような出で立ち。典型的な“アメリカの青年”。
彼こそはデイラン・マッケイ――――
この白い巨人……、エヴァ四号機の専属パイロットである。
「ちなみに、
……まぁ待て! 言うな。いわなくても分かってる。
こんな老け顔で、リーゼントの子供なんかいるワケ無いって、そう思ってるんだろ?
でも仕方ないじゃないか、14才じゃないと乗れないんだから。
俺はエヴァのパイロットで、まごう事なき14才だ。
ああ14だとも。確かに俺は14才で、エヴァのパイロットなんだ」
両手を広げ、随所に身振り手振りを加えた、オーバーな話し方。
すぐコロコロとかわる、表情の豊かさ。そして霊夢を見つめる温かなブルーの瞳。
それは間違いなく日本人がする物ではなく、自由の国アメリカで生まれ育った者特有の、とても友好的で朗らかなコミュニケーション。
ちょっと見ていて「……」ってなっちゃう感じの。
ちなみに、彼自身が言っていた通り、デイランは14才であり、
豊かな自然と、近代的な建物が共存する都市、ビバリーヒルズで青春を謳歌する少年なのである。
今の子達は知らないかもしれないが……、きっと大きなステカセを肩に担いだり、チューインガムをクチャクチャしながらスケボーに乗ったり、友人達とピンボールのハイスコアを競ったりしてたんだろう。
もう絵に描いたようなアメリカの青年であった。ちょっと老け顔ではあるけど。
「そして、私もいるわ。お久しぶりね霊夢」
「アリス! アンタこの人と一緒だったの? 何してるのよ!」
続いて、エヴァ四号機の中から、フワフワとアリス・マーガトロイドが降りてくる。
彼女は霊夢の友人であり、落ち着いた雰囲気の美しい少女だ。
清楚さを感じさせる青と白のドレスが、とても良く似合っていると思う。
ちなみに都会派な少女で、愛らしい人形作りをライフワークとする、通称“七色の魔女”。
「ええ。実は少しまえに、この人が魔法の森に迷い込んでいるのを見つけてね?
保護というか……いま一緒に住んでるのよ。
彼は手先がとても器用だから、人形作りを手伝ってもらっているわ」
「ああ住んでいる。アリスの家に住んでるんだ。
俺はいつもアリスと一緒だ。もう住み慣れたもんさ。あぁ~」
「それに、あの大きな人形……エヴァ四号機っていうらしいんだけど。
これにも興味があるしね。彼に許可をもらい、少しイジらせて貰ってるの」
「ああイジっている。アリスのやつ、いつもイジってるんだ。
エヴァをいじくりまわす事にかけては、アリスは他の追随を許さないぞ?
こんなにもイジるのかって、俺はいつも心配になる。もうイジりまくってるんだ。
そんなイジらなくても良いじゃないかって言っても、ちっとも聞きやしない」
「この人ね? いわゆる“幻想入り”しちゃった人なんだけど、相談に乗ってあげてくれる?
デイランったら、いつものほほんとしてて、ちっとも事態を重く見てないの。
なるようになるさ、ケセラセラって。のんきなモノよ本当」
「いやぁ~、そんなことは無い。俺はいつも真面目さ。
もう真面目すぎて、どうにかなっちまうってくらい、俺は真面目なんだ。
見てみろ、この真摯な顔を。いつも朝と寝る前は、神様にお祈りを欠かさない。
そう、俺は真面目な男だ。レイムもそう思うだろう? あぁ~」
「アンタちょっと、黙っててくれない……? いまアリスと話してるからさ?」
入って来るな、ややこしくなる――――
レイムはそう苦言を呈し、デイランは「Oh」と肩を竦める。とてもオーバーに。
「やれやれ。自分の事なのに、喋ってはいけないって言うのか。
まったく、いったいどうなってるんだ幻想郷は。
「ごめん。気を悪くしないで?
私アリスとは友達だから、そっちの方が早いって思ったのよ。
アンタのこと蔑ろにしたりしないわ。ちゃんと考えるから」
「そうか、ならしょうがない。レイムとアリスに任せるとしよう。
俺はここに来たばかりだから、まだ幻想郷のことを、よく知らないしな。
知っているのはスケボーと、ピンボールのハイスコアを出すやり方だけ。
あとレモネードの作り方も知っているぞ? アリスはいつも喜んで飲んでいる。
あぁ飲んでいるとも。アリスは間違いなく飲んでいる。確かに飲んでるんだ」
「ええ。また機会があれば、私にも飲ませてね。
でも今は、まずアンタのことを考えなくっちゃ。アリスと話をしなきゃね」
「そうだな。アリスなら間違いない。
なんてったってアリスは、俺の事をとても良く理解してるんだ。
パンケーキの好みや、マッシュポテトの固さ、なんでもだ。
特にクラフトコーラにかけては、彼女の右に出る者はいない。
ああ居ない。存在しないとも。アリスの作るクラフトコーラは世界一だ。
決して存在したりしないんだ。アリスは最高だ。あぁ~」
「そろそろひっぱたくわよ? 口を閉じてなさい」
ウザい。朗らかなのにウザい。ちっとも話が進まん――――
霊夢の少し冷たい感じの声に、デイランはまた「Oh」と肩を竦める。
良い人だが、きっとお喋り好きなのだろう。
「悪かった。少し喋り過ぎたな。機嫌を直せレイム」
「ええ。別に怒ってないわ。大丈夫よデイラン」
「じゃあ暫くの間、俺はお口を“ミッフィー”にしておこう。
分かるか? あのバツ印のことだ。
これは『もう決して喋らないぞ』っていう、俺の誠意と覚悟の表れなんだ。
理解してくれるか」
「ありがと。じゃあ悪いけどアリスと話するから、アンタはちょっとだけ余所n
「――――でもひとつ言わせてくれ。
確かにアリスは世界一だが……ひとつだけ駄目な所があるんだ。
アイツはいつも、チーズケーキにレーズンを入れる。
俺はレーズンが大嫌いだ」
「……」
また始まった。
デイランはまるでマシンガンのように、止めどなく喋っていく。
ポカンとしている霊夢なんか、もう置き去りにして。
「なぜレーズンを入れる?
確かにビタミンは摂れるかもしれないが、ここで摂る必要があるか?
せっかくのチーズケーキを台無しにしてまで、何故レーズンを入れるんだ。
ビタミンが欲しければ、俺は迷わずDHCのサプリメントを飲む。
ああ飲んでいる。飲んでいるとも。俺は毎日サプリメントを飲んでいるんだ。
もう飲まずにはいられない。俺はアメリカ人だからな。あぁ~」
「……ちょっと待ってデイラン? 待って頂戴」
「ん、どうしたんだアリス? そんな怖い顔して。
確かに耳が痛い話だろうが、これはお前の為でもある。いいかよく聞くんだ。
アメリカは無駄に土地が広いが、チーズケーキに入ったレーズンを好きなヤツなんt
「――――私、デイランにチーズケーキ作ってあげた事ない。レーズンを入れたことも無い」
ピキン! と空気が凍る音がした――――
今アリスは、まるで感情の感じられない表情。有り体に言えば“とても怖い顔”で、まっすぐデイランを見つめている。
霊夢の方はポカンとしているが。
「いったい誰と間違えたの……? 教えてデイラン」
「いや待て、落ち着け。いいか落ち着くんだ」
「落ち着けるワケない……。私チーズケーキ作ってないわ?
誰に作って貰ったの? 誰と会ってたのよ。ねぇ」
「落ち着け。確かに入れてた。
お前はレーズンを入れたんだ。俺は憶えてるぞ。あぁ確かに憶えてるとも」
「そんなワケない。私もレーズン嫌いだから、そもそも家に置いて無いもの。
隠れて誰かと会ってた……私に黙って。
そこで作って貰ったんでしょう? どうなのデイラン」
「そうじゃない。いいか落ち着くんだ。
何かの間違いだ。これはきっと妖精の
お前が作ったチーズケーキに、ヤツらがレーズンを入れやがった。そうに違いないんだ」
「馬鹿げてる。チルノもサニー達も、そんな事しないわ。とっても良い子だもの。
なんで隠すのデイラン……? なんで黙って会うの……?
私には言えないこと……?」
「落ち着け、落ち着くんだ。
これは不幸な行き違いだ。愛が二人を試してるんだ。
汝、隣人を愛せよ。愛を疑うことは、お互いを傷つける事だ。
いいか落ち着くんだ。俺は何も知らない。お前の勘違いだ」
デイランはもうタジタジ。対してアリスの瞳には、青白い怒りの炎が宿る。(霊夢はボケっとしてるが)
「ならデイラン――――“コレ”の前で誓える?」
突然、アリスが懐から、バサッと布のような物を取り出す。
青と白、そして赤を基調とした、なにやら複雑な模様の薄い布だった。
しかし、それをひとめ見た途端……デイランは「ふぅ」とため息をつき、両の手の平を上に向ける。いわゆる“降参”のポーズ。
「まさか、
やれやれと言った風に、デイランはガックリとうなだれる。
傍で見ていた霊夢は「えっ、そんなんで降参するの?」と、キョトンと目を丸くした。ワケが分からない。
「分かった、正直に言おう。
チーズケーキは、
「……っ!?」
「腹を空かせてたのを見かねて、紫が作ってくれた。
「ほらっ! やっぱりじゃないの! 信じられないっ……!」
アリスは顔を赤くしてプリプリ。
デイランは困った顔で、彼女を諫める。
霊夢は「なんやねんコイツら」と思った。
「毎日いっしょに居たのに……。私といると落ち着くって……。
お腹なんて空かせてるワケない。だっていつも私、パンケーキ焼いてたわ。
毎日マッシュポテトをこねて、トーストにバターも塗ってあげた」
「あぁそうだ。確かに焼いてもらい、こねて貰い、塗ってもらった。
だがなアリス……? いいか、よ~く聞くんだ」
突然、デイランがキリッとした顔で、彼女の方を見つめる。
その深い瞳に吸い込まれるかのように、アリスはハッとした表情で見つめ返す。
「バターは、塗って貰わなかった――――
暫し、時が止まる。
「…………ええ、確かにバターは塗ってない。
ピーナッツの方だったわデイラン」
「そうだ、あれは茶色い。そしてほんのり甘い。
まったく似て非なる物だ」
どーでもええがな――――
霊夢はそうツッコミたかったが、あまりに二人が真剣に話しているので、入り込めなかった。
この独特の空気は何だろう? どういう世界観なのだろう? ずっと幻想郷で生きてきた彼女には、いまいち理解が出来ない。一体なんなのコレ?
「間違いは誰にでもある。大事なのは、それを繰り返さない事だ。
さぁ言ってみろアリス、俺と一緒に言おう。“ピーナッツバター”」
「ピーナッツバター」
「あぁ良いぞ。これで分かっただろうアリス? ただの不幸な行き違いだ。
八雲の子達とは、ちょっとお茶してただけだ。そんなに怒ることじゃない」
「なんで? 怒るわ……! 怒るに決まってるっ……!
私もう、デイランのこと信じられない……! ばかっ……!!」
「おい! ちょっと待てアリス! どこへ行くつもりだ!?」
やがてアリスがふわっと地面から浮き上がり、そのままスィーっと空を飛んでいく。
プンプンと頬を膨らませ、なんかとてもカワイイ感じで、この場を飛び去って行く。
「待つんだアリス! この場から去るな!
去るな……。なぜこの場から去ってしまうんだ……。
去ってはいけない。あぁ絶対に去っちゃいけないんだ。この場から」
悲しそうな、どこかやり切れなさそうな顔をして、デイランは凹む。
だがすぐにパッと顔を上げ、元気よくエヴァに乗り込んでいった。
「なんて事だ。
ふっ! アリスも普段は、あぁじゃ無いんだけどな。まったくやれやれだ♪
よ~し待てアリス。待つんだ。俺は追いかけていくぞぉ~う!」
やがて、この場には霊夢ひとり。
デイランはエヴァ四号機に乗り、〈ゲッション! ゲッション!〉と歩いて行ったので、もう誰もいなくなってしまった。
「……なんだったのよアレ。
痴話ゲンカなら、余所でやりなさいよ……」
幻想郷の管理者たる少女は、そう一人立ち尽くすのだった。
◆ ◆ ◆
『俺のエヴァ四号機は、実験中の事故で、爆発しちまってな?
だから
後日、今度は何故か魔理沙と一緒に来たデイランは、博麗神社の縁側でお茶を飲みながら、のほほんと語った。
『施設ごと吹っ飛んだから、きっと記録もロクに残ってない。
どんな武装があったとか、どんな見た目や性能だったとかは、あまり外には伝わっていないんじゃないか?
ようは、このエヴァ四号機も俺も、
あのS2機関実験の爆破事故により、デイランは確かに死んだ覚えがあるのだという。
だが気が付けば、自身はこのエヴァ四号機に乗った状態でここにおり、そこをアリスや紫に見つけてもらい、ここ幻想郷で生活をし始めた。*1
『幻想郷に飛ばされたのも、それが理由だったんだろうな。
だが俺としては、こうして活躍の機会が得られたのを、うれしく思っているんだ。
せっかく訓練もしたのに、あんな終わり方をするだなんて、無念で堪らなかった。
俺は絶望の淵に落とされたのさ……。
今回の事は、きっと神様が、俺と相棒の願いを聞き届けてくれたんだろう。
毎日二回、欠かさずお祈りをしてたからな。信心深い甲斐もあるってものだ』
そう彼は、静かに「エイメン」と祈り、ネックレスの十字架に口づけをした。
神道の巫女である霊夢にとっては異教徒となるが、その敬虔で深い信仰は、確かに感じ取ることが出来た。
そして――――更に数日後。
「なんなのよアレ……。
フランのご機嫌取りのためにと思って、異変起こしてみたら、なんかとんでもないヤツ来ちゃった……」
深紅の屋敷“紅魔館”にて。その主であるレミリア・スカーレットの驚愕が、静かに部屋に響いた。
「ちょ、デカくない……? あれ屋敷潰されちゃわない?
霊夢や魔理沙だったら、こっちの事情も知っているし……、そこそこ懲らしめられるだけで済むって、そう思ってたのに」
だが今、屋敷のテラスから一望出来る光景には……、その真ん中にどでかい巨人の姿。
白を基調としたデザインの、なんか幻想郷らしからぬロボットが、ドスドスこちらに向けて歩いて来るのだ。
「どーすんのよアレ……。
まぁあの子の事だから、死んだりはしないでしょうけど。……酷くない?
門番ありがとね美鈴。
忠義者の貴方には、今度お休みとバカンス旅行をプレゼントするわ……いつもありがと」
そして、なんやかんやと紅茶片手に眺めている内に、霊夢と魔理沙が屋敷に侵入して来た、という報告を受ける。
パチュリー、咲夜、メイド妖精たちが迎撃に向かう中……、主たるレミリアはその場に座ったまま、ただただ「ぼけぇ~」っと眼前の光景を見つめる。
『さぁフラン、お前もエヴァに乗ってみるか?
ちょっとシンクロ率に影響が出るかもしれないが、なぁに構うことは無い。
乗るだけなら問題ないさ』
「えっ……いいの? 私もこれに乗れるの!? ホントに!?」
『あぁ良いとも。遊び相手を探していたんだろう? じゃあ俺と遊ぼう。
このエヴァ四号機で、ひとつドライブと、しゃれこもうじゃないか。
さぁ見てろ、エントリープラグを出すぞ? 少し下がってるんだ。
いま出している。あぁ出しているとも。確かに出しているぞ』
無邪気な笑みを浮かべるフランが、あの白い巨人(アメリカ製)にフラフラと寄って行き、なんか楽しそうに戯れている。
やがて彼女は誘われるまま、搭乗者のご厚意によって、機体の中へと乗り込んでいった。
「よっと! ほら来い、乗っていいぞフラン?
おっと、そう急かすな。いまフランが乗り込んでいる。すぐコックピットまで来る。
プラグの入口に手をかけ、中に乗り込もうとしているんだ。
ほら乗っているぞ。あぁ~間違いなく乗ってるとも。
いま乗ってる最中だ。フランがエヴァのコックピットに乗り込んでいるぞぅ。
よぉ~し――――乗ったぁ~!(欧米的スマイル)」
そして、キャッキャと喜ぶフラン&それを微笑ましく見守るデイランによって、紅魔館の外壁がドゴンドゴン壊されていく。
屋根が崩れ落ち、正面の巨大時計が外れ、庭の地面がドンドン掘り返される。またたくまに紅魔館が瓦礫に変わっていく。
「……えっと、
それがレミリア・スカーレットの最後の言葉となった。
エヴァ四号機のグーパンが、彼女のいるテラスを破壊したから。まぁ死んだりはしないのだけど。
『悪者を倒したら、イーストベルのウェストモールに行こう。
そこに旨いチェリーパイを出す店があるんだ。食いに行こうじゃないかフラン。
おっと……ここは日本だったか? どうやら俺は勘違いをしていたらしい。
あぁ分かってる! みなまで言うな。ここは幻想郷だろ?
俺は幻想郷にいる。あぁ間違いなく居るとも。確かに俺はいるんだ――――』
この後、この地で唯一エヴァを知る東風谷早苗が、テンション爆上げして巨大ロボット非想天則で戦いを挑んできたり、強い者が大好きな地底の鬼たちが、デイランとエヴァを見に地上へ百鬼夜行して来たりもするのだが、それはまた機会があれば語ろう。
彼は無邪気なフランと共に、楽しそうに遊ぶ。
元の世界では恵まれなかった活躍の機会を、心から楽しむ。
いま茶色いリーゼントの髪を揺らしながら、欧米的なイケメンスマイルを見せる、アメリカのビバリーヒルズからやって来た男。エヴァ4号機の専属パイロット。
そう。彼の名はもちろん、デイラン――――マッケイだ。
◆スペシャルサンクス◆
マスターPさま♪
・元ネタ
海外ドラマ【ビバリーヒルズ青春白書】(のモノマネ)