【募】こんな小説を書けこの野郎【リクエスト】   作:hasegawa&friends

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 アインス!(ひとーつ!)





リクエスト採用作品。
『サーヴァント、ファイター。真名、リュウ。よろしく頼む』(項劉さま 原案 )


 

 

 

「なんで僕が、こんな事しなくちゃなんないんだよ!」

 

 その日、間桐慎二の大きな叫びが、冬木の青空へ響き渡った。

 

「毎日毎日、しゃがんではシュッシュ! しゃがんではシュッシュ!

 いったい何なんだよコレ! 何をさせられてるんだ僕は!」

 

 富裕層と言っても差支えない、大きな間桐家の屋敷。

 だが慎二が今いるのは、そこのただっ広い庭だ。あたたかな暖炉も無ければ、快適なソファーも無い。

 こんな寒空の下で、ずっと伸び散らかした芝の上、立ったり座ったりを繰り返している。

 

 それもそのハズ。いま慎二がさせられているのは、“しゃがみ中キック”。

 先日ここへやって来たある男から、「これを練習するんだ」と指示を受けて、ひたすら繰り出している最中なのである。

 

「――――現代格闘技に、こんな技ないよ!!!!

 なんでいちいち屈む必要があるの?! 腰が痛いよ僕!」

 

 そんな愚痴を喚き散らしつつも、慎二はひたすら屈んではキック、屈んではキックを繰り返す。

 彼はシニカルな性格で、人に指図をされるのが大嫌いであるが、意外と素直な所もあるのかもしれない。無駄に律義であった。

 

 世の中には“サーキットトレーニング”という、ダイエットにとても効果的とされる有酸素運動があるが、この立ったり屈んだりキックしたりを繰り返す運動も、それに消費カロリーは負けていないと思う。

 別に彼は、ダイエットなど微塵も興味が無いのだけれど。

 

 だが今、そんな慎二の心の声が届いたのか、もしくはプチ近所迷惑になるほどに声が響いていたのか……。この場に一人の男が現れる。

 もうファックファック言いながら“しゃがみ中キック”とやらを反復練習していた慎二は、それに気が付いた途端、「ぐぅあー!」っと喚き散らす。

 

「おいリュウ! お前ホントふざけんなよ!?

 一体どこ行ってたんだよっ! マスターの僕を残してっ!」

 

「すまない、妹さんの手伝いをしていたんだ。

 力仕事だったので、俺が居た方が良いと思った」

 

 これまでの疲労から、もうガクガク震えている大腿四頭筋。

 だが慎二は、それをモノともしない勢いで、リュウと呼ばれた男に詰め寄っていく。

 時として、怒りというのは、肉体を凌駕するのだ。とんでもないパワーになるという事を、奇しくも慎二は証明してみせた。無駄に。

 

「部屋の模様替えをしていた。

 リビングの家具を動かしたり、カーペットを新しい物に変えたり。

 いつもは兄さんがやってくれるんですけど……と妹さんは言っていたが、君は修行の最中だからな。俺が代ったんだ」

 

「なにが修行だよ! 僕こんな事したく無いんだよっ!

 それこそ、部屋の模様替えでもしてた方がマシだ! ソファーでも持ち上げてる方が、よっぽど有意義だっての!」

 

「おお。やはり君は、良いお兄さん(・・・・・・)なんだな。

 さっき妹さんも、『兄さんは捻くれてるし、天パだし、性格悪いし、私のケーキを黙って食べるゴミカス人間だけど、優しい所もあるんです』と言っていたが、聞いていた通りだ」

 

「ちょっと待って?

 え……それ桜が言ってたの? ホントに?」

 

 慎二はさっきまでの怒りを忘れ、素になって問いかけた。

 

「きっと君達は、支え合って生きて来たんだな……。

 たった二人の兄妹なのだし、仲が良いのは素晴らしい事だ」

 

「聞いてる? 僕いま質問してるんだけど。

 桜ほかに何か言ってた? 僕きらわれてるの?」

 

 リュウは腕を組み、なにやら関心したようにウンウンと頷くばかり。あちらの質問は全て黙殺していた。マイペースである。

 

「さて! では俺も一緒にやろう!

 待たせてすまなかったな慎二。修行再開だ!」

 

 やぁ~るぞぉー! きっとラピュタを見つけてやるぅ~!

 あたかもパズーのような良い顔で、リュウがいそいそと隣に並ぶ。「ワクワク!」という擬音が聴こえて来そうだ。

 

 関係ないけれど、こうして並んでみると、ガタイの差が凄い。

 慎二も決して低い身長では無いのだけれど、人生を懸けて身体を鍛えこんでいる男とは、もう比べるべくも無い。リュウの胸囲は120㎝もあるのだ。大胸筋(マッスル)で。

 まさに大人と子供、錦鯉と金魚である。

 

 そして当然の事ながら、そんな超合金みたいな身体の男に、「さぁやろうか」とプレッシャーをかけられているのだ。

 まだ少年の域を出ない慎二が、逆らえるワケが無い。

 

「ちょっと待ってよっ! 僕もう1時間もコレやってたんだよ?!

 しゃがみ中キックばっかりさぁ!」

 

「ん? まだ昼じゃないか。日が落ちるまで(・・・・・・・)は、まだまだ時間があるぞ」

 

「!?!?」

 

 慎二は目玉が飛び出さんばかりに驚愕するが、リュウの方はのほほんとしたモンだ。さも当たり前のように告げる。

 

「反復練習が大事なんだ、身体に覚え込ませる為に。

 頭で考えるのではなく、自然と身体が動くようにしなければ、イザという時に困る」

 

「イザという時って何だよっ!!

 こんなの覚えたって、どこで使うっていうんだ! しゃがみ中キック(・・・・・・・・)だぞ!」

 

 ――――こんなのやってるヤツ、僕みた事ないよ! お前以外で!!

 慎二の魂の叫びが、再び冬木の空に木霊する。結構な近所迷惑。

 

「だいたい何だよ“中”って! 意味わかんないよっ!

 本気じゃないけどぉ~、手を抜いてるワケでもない~。……って中途半端ぁ!

 いつも全力でいけよっ!!」

 

「分からないと言われても、“そういうもの”だからな。俺に訊かれても困る。

 さあ練習しよう」

 

「――――断るッ! そんな理不尽な話があるかッ!!

 せめて説明責任を果たせっ!」

 

「しゃがみ中キックは、しゃがみ中キックだろう? それ以外の何物でもない。

 俺も師匠に、『今日はしゃがみ中キックを教えるぞい』とか言われ、練習させられたんだ」

 

「――――何も思わなかったの!? 何の疑いもなく?!?!

 言われるままじゃなく、自分の頭で考えろよ! 素直すぎるって!!!!」

 

 たとえば衛宮くんなんかも、凄く素直で良い子なんだが……でもリュウのそれは、彼とはちょっと違うような気がする。

 こいつのは、いわば“脳筋”だ――――

 もう考えるのを放棄し、筋肉のみで生きてるとしか思えない。それでも文明人か。

 

「しゃがんで、しかも中だぞ?! わかってんのか!?

 ぜったい麻痺してるってお前! 目ぇ覚ませよっ!」

 

「よく分からないが、君にいま必要なのは、しゃがみ中キック(・・・・・・・・)だ。

 俺はそう確信しているよ。さぁやろうか」

 

「お前ッ……! ホントお前ッ……! お前はッッ……!」

 

 一瞬“偽臣の書”が突っ込んであるポケットに目をやるが、結局はそれを使うこと無く、苦虫を噛み潰したような顔で練習を再開。

 こんなにも良い笑顔で始められたら、もうそれに付き合うしか無いとばかりに、一緒にしゃがみ中キックをおこなっていく。

 

 なんでこんな事になったんだろ……なんでこの僕が……。

 慎二は動きを続けたまま、思考だけで別のことを考える。

 このリュウという男と出会った日の事を、思い返してみた。

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「サーヴァント“ファイター”。

 真名はリュウだ。よろしく頼む」

 

 もう数日前となる、とても満月が綺麗だった夜。

 間桐陣営は地下室に集まり、此度の聖杯戦争に向けて、サーヴァントを呼び出した。

 

「これから先、俺の拳は君と共にある。

 まだ修行中の身だが、力を尽くすよ」

 

 きっと、人が見たら「ほわわ~ん♪」となっちゃうような笑み。

 そらサクラちゃん(ストゼロⅡ)も惚れるわと言わんばかりの男前さで、たった今召喚したサーヴァントは、慎二に握手を求めた。

 迷うこと無くスタスタと歩き、そこにいた彼に手を差し出したのだ。「あ……あのっ」とか言っている桜ちゃん(Fate)には目もくれずに。

 

「うん。まだ若いが、良い目をしている。

 困難を乗り越える事や、戦うことを知っている者の目だ」

 

 ……えっと、リュウさんって、人を見る目が無いんですか?

 その人チンカス野郎ですよ? と桜は言いそうになったのだが、とても口を挟める雰囲気じゃなかった。

 

 今も慎二はキョトンとした顔で、〈むんず!〉と掴まれたおててを見つめながら、パチパチ瞬きを繰り返している。きっと状況が理解出来ていないのだろう。

 そんな哀れな彼を他所に……今この場で儀式を見守っていた間桐臓硯が、一歩前へと出た。

 

「ふむ、ギリシャ神話のメデューサあたりが来るかと思うとったが……、予想を外したのぅ」

 

 先ほど、眩い光と共に、暴力的なまでの風がこの部屋に吹き荒れ、その中から現れたのは、見知らぬ白い道着を着た人物。

 真名を“リュウ”と名乗ってはいたが、長い時を生きた臓硯をしても、知識の中には無い。

 

 

「お主……何者じゃ? 格闘家(ファイター)などと言うておったが、どの程度戦える?」

 

「――――確かめてみろ」

 

 

 ドン! ドスッ! スパーン!!

 そんな三つの音が、連続して響き渡る。慎二と桜が見ている前で。

 

「えっ」

 

「えっ」

 

 打撃音(・・・)だ。

 たった今この地下室に木霊し、そして自分達の耳に届いたのは、一人の男が人生を懸けて鍛え上げた技による、重い打撃音。

 もしくは、“人体を破壊する音”というべきか――――

 

「あ……あれ?」

 

「りゅ、リュウ……さん?」

 

 いま慎二と桜が見たのは、自分達の祖父を名乗る怪物が、天高く跳ね飛ばされる光景(・・・・・・・・・・・・)

 あの三つの音は、瞬く間にリュウが繰り出した、彼の“コンボ”によるものだった。

 

 飛び蹴り、ボディ打ち、そして突き上げるようなアッパーカット。

 彼らは知る由も無いが、もしリュウと同じ世界に住む者達が見れば、それが【めくりジャンプ強キック】、【立ち近強パンチ】、そして【キャンセル昇竜拳】である事を理解するだろう。

 

 この三つの攻撃を、リュウは流れるような動きをもって、連続しておこなった。

 ふいに、即座に、相手に何もさせる事なく。

 

 いま攻撃を終えたリュウが、スチャッとばかりに地下室の床に降り立つ。

 そして高く跳ね飛ばされた臓硯の方は、まるでスイカでも叩きつけたような模様を天井に作ってから、同じく床におりた。……いや激突した(・・・・)という方が正しいか。

 あまりに咄嗟だった為か、もうピクリとも動いておらず、完全に気を失っているのが分かる。

 

 

「真空――――波動拳ッッッッ!!!!」

 

 

 先ほどおこなった、英霊召喚の儀式。それにまったく引けを取らない程の強い光が、再び地下室で荒れ狂う。

 思わず顔を庇った慎二と桜が、ようやくその目を開いた時には……、既にあの悍ましかった“化け物”の姿は、この世には無かった。

 

 活人拳――――ふいに慎二の脳裏に、そんな言葉が浮かぶ。

 いま自分の目の前で、静かに腕を組んで佇んでいる男から、そんなイメージが浮かんだのだ。

 

 この時点では、慎二とリュウに“パス”の繋がりは無い。ゆえにこれはマスターとしての知覚では無く、純粋に彼が抱いた印象なのだろう。直感と言っても良い。

 だがそれは、限りなく正しく――――この上なく的を射た物だった。

 

「真の格闘家への道は、まだ遠い……。修行あるのみ!」

 

「いやいやいやッ!? お前ぇぇーーッ!!」

 

 とても良い顔で、キリッ!

 そんなリュウの姿に、思わず慎二がつっこんだ。

 ちなみに桜は、先ほど「……ふぅ」とか言って倒れた。まだ彼女は知る由も無いのだが、きっとリュウの真空波動拳によって体内の蟲までも消し飛び(・・・・・・・・・・・)、その反動だかショックだかがあったのだろう。

 まぁ、ただ眠っているだけのようなので、何も問題は無さそうだ。

 

「ちょっとぉ! なに暴れてんだよお前ッ!? いったい何のつもりだ!」

 

「――――確かめてみろ!」

 

「やだよ!!!!」

 

 脊椎反射をもって、即座に言い返す。

 自覚は無かったが、意外と慎二は“つっこみ体質”なのかもしれない。NSCの講師も絶賛しちゃうような、見事なキレであった。

 

 あ、この青年は戦わないのだな。残念だ。

 その事を悟ったリュウは、何気なしに天井に目を向ける。

 そこにあるのは、先ほど臓硯(故人)が作った、人体という名のスイカで出来た模様だ。なんか今もポタポタ滴っている。

 

「お互い力を出し切ったんだ……。どちらが勝っても、おかしくは無かった……」

 

「――――ウソつけよ!! 瞬殺じゃないかッ!!」

 

 しかも不意打ち。問答無用。

 あたかもリュウは、お亡くなりになった臓硯のことを気遣うような姿勢を見せたが、それお前がやったんだからな? 殺人事件だからな? と慎二は頑張ってつっこむ。

 見事な仕事だ。どこかのお笑い事務所から、スカウトが来ちゃうかもしれない。これを見ていればの話だが。

 

 ちなみにであるが、ストⅡでもリュウは、たとえパーフェクト勝ちをしてても、あの台詞を言う。相手を煽っているとしか思えない所業だ。鬼畜か。

 

「む、そうか。ではやり直してみるよ。

 他に何があったかな? ……そうだ。

 お前の力はそんなものか! 悔しかったら、かかって来い!」

 

「――――もう死んでるよ!! 殺しただろお前がッ!!!!」

 

 テンプレに頼るな! 自分の頭で考えろ! この状況を見ろよ!

 そんなNPCめいたリュウに対し、慎二のキレのあるつっこみが、朝方まで続いた。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「貴公は、変わった戦い方をしますね。

 何故いちいち、ジャンプをするのですか(・・・・・・・・・・・)?」

 

 日課である“しゃがみ中キック”の修行を終えた慎二は、夜の街へと繰り出した。

 街灯の灯りだけが照らす、誰もいない深夜の公園で、彼らはセイバー陣営と対峙している。

 

「前に出る時も、後ろへ下がる時も、なぜピョンピョン飛ぶのです?

 かと思えば、時折じっと屈んだままの状態になる。

 えっと……それどこの格闘術ですか?

 真名を訊くまではしませんけれど、少し興味が湧いてしまいまして……」

 

 セイバーは冷や汗をかきながらも、勇気を出して問いかける。

 見た事ない――――そんな変な戦い方。出来たら是非教えて欲しい。

 もし聞けたらラッキー☆ くらいの気持ちで、思い切って訊いてみた。

 

「剣撃を物ともせず、しゃがんだまま蹴りを繰り出してくる戦士など、私は聞いた事が無い。

 しかも徒手空拳ですし……。前腕で剣を弾いたりしますし……」

 

 思わずセイバーは、剣をだらりと下げて、素の表情で問いかける。

 

「貴方はいったい、何なのですか(・・・・・・)

 いやホント、教えて頂けたら、とても幸いなのですが……」

 

 純粋な興味。まるで子供のような――――

 暫しの間、セイバーは戦いの最中である事すら忘れて、目の前の男に夢中になった。

 

「ん、おかしいか?

 俺のいた世界では、みんなこうだったぞ(・・・・・・・・・)

 

「みんなッ?!?!」

 

 剣を落としそうになる。それほどに今きいた事実は、衝撃的であった。

 

「ジャンプをするのは、飛び道具を躱したり、しゃがみガードしている相手を崩す為だ」

 

「しゃがみガード?! 私そんなの、した事ありませんよ?!」

 

「逆にしゃがむのは、相手の下段攻撃をガードしたり、下段攻撃を繰り出す為だ。

 向かい合って、お互いしゃがみ合い、パンチやキックを繰り出すぞ」

 

「しゃがみ合うんですか?!?!

 私それもやったこと無いです! たいへん興味深いっ!」

 

「剣を前腕で弾けるのは、“ブロッキング”という技術のおかげだ。

 これがあるから、俺はノーダメで攻撃をいなせる(・・・・・・・・・・・・)。ゲージを削られない」

 

「――――ノーダメ?! ゲージ?!

 なんですかソレ! 知らない言葉が出てきましたっ!

 でも凄いです徒手空拳の御方! 憧れてしまいますっ!」

 

 なんかおかしな事になっているが、リュウもセイバーも真面目にやっている。

 お互いに善人だし、きっと根が素直なのだろう。ついでに言えば“世間に擦れてない”というか、ちょっと天然も入っているのかもしれない。

 

 ちなみにリュウは、ロレントの棍棒だろうが、バルログの鉤爪だろうが、その全てをブロッキングで弾くことが出来る。もちろんノーダメで。

 たとえアーサー王の聖剣であっても、例外では無いのだ!

 

 リュウのいた世界では、物理よりも“世界のルール”が物を言う。

 高校生くらいのか弱い女の子が、ザンギエフをブン投げたり。幼女の蹴りで〈すってーん!〉とザンギエフを転ばせたり出来るのも、全ては“世界のルール”があるからである。

 

 至近距離で→強パンチを出せば、相手を投げられる――――

 しゃがんだ状態の強キックは、相手を転ばせる効果がある――――

 

 これは、決まっている事だ(・・・・・・・・)。世界のルールなのだ!!

 ゆえにリュウは、受付け時間が3フレームという難しさはある物の、実質的にどのような攻撃であっても、ブロッキングでノーダメにする事が出来る。

 

 それが連続技であるのならまだしも、宝具の攻撃が“単発”であるサーヴァントたち涙目である。

 技を繰り出す前に“初動”があるのなら、たとえそれがどのような神速であっても、リュウは無効化してしまう事だろう。こちとら世界一の格闘家(・・・・・・・)である。

 

「つ、つかぬ事をお訊きしますが……私にも“ぶろっきんぐ”は出来るのでしょうか?

 努力をすれば、貴方のように前腕で、攻撃を弾けるように……」

 

「あぁ出来るさ! きっと出来るようになる!

 努力をすれば、いくらでも強くなれるぞ! 俺が教えてやる!」

 

「――――シロォォーーウ! 今日の聖杯戦争は中止でーーすっ!

 我らが強くなる為に、この御方の指南が必要だっ!!」

 

 私もしゃがんだり、ピョンピョン飛び跳ねたりしたい! 前腕で剣を弾きたい!

 セイバーはまるで恋する乙女のように、キラキラした目でマスターを呼んだ。

 

「あー、ちょっと待ってくれるかセイバー!

 今こっちでも戦ってるからさー? 終わったらすぐそっち行くよー!」

 

 そして、セイバー達がいるこことは少し離れた場所から、彼女のマスターである衛宮士郎くんが、大きな声で返事をした。

 

「慎二、いったいどうしたんだ? 今日はお前、どっかおかしいぞ」

 

「うるさいバカ! 僕はこれしか出来ないんだよっ!

 良いからさっさとかかって来いよ衛宮! 近づいてこいよ!」

 

 いま彼の眼前にいる慎二は、この戦いが始まって以降、ずっと低く屈んだままなのである。

 

 

「――――しゃがみ中キックだよっ!!!!

 リーチも長いし、キャンセルだって効くんだぞ!

 僕はこれで試合を作ってくんだ!」

 

「知らないよそんなの。

 お前どうかしちまったのか? 立って戦わないと……」

 

 

 しゃがみ中キックで牽制し、届かない距離では波動拳。飛び込んで来たら昇竜拳――――

 そんな通称“鳥かご”と呼ばれる、リュウケンタイプの黄金パターンで、慎二は戦う。

 

 ちなみにであるが、偽臣の書を所持する今の慎二には、自らのサーヴァントのステータスが、もうハッキリと見えるようになっていた。

 

 

【CLASS】ファイター

【真名】リュウ

【性別】男性

【属性】孤高・善

 

【ステータス】

 筋力:B 耐久:B(F) 俊敏:B 魔力:B 幸運:B

 ※カッコ内は、無印ストⅡにおいて、唯一リュウだけが持っていた“バグ”のせい。彼はピヨリ時に攻撃を喰らうと、被ダメージが二倍になる。

 

 

 そして……、彼の特殊スキルの欄にある、【人たらし:S】の文字。

 これはリュウが持つ“人間的な魅力”の事で、一度拳を交えた者とは、たとえそれがどれほどの悪人であっても友達となれるという、彼の人徳が神格化した物である。

 リュウのいた世界では、もう世界中の格闘家たちが、彼を尊敬して慕っていた。サガットにいたっては、悪の道から更生までしたのだ。

 

 この【人たらし】のスキルこそ、慎二がいまいちリュウを邪険に出来ない、理由のひとつかもしれない。

 まぁそもそもの話、もし慎二が「令呪をもって命じる」とでも呟こうものなら、その「れ……」の時点でしゃがみ中キックor波動拳が飛んでくるだろうから、とても令呪なんてモンは使えないのだが。怖くて。

 

 ゆえに実質、慎二はリュウを従わせる術を持たず、彼を好きにさせておく事しか出来ずにいる。

 

 

 ――――けどまぁ、コイツのことは、キライじゃないし(・・・・・・・・)

 ――――真面目で素直な所とか、なんか衛宮に似てる感じがして、放っとけないじゃん?

 

 

 

 

 

 

 

 この日、少年の聖杯戦争の幕は上がった。

 

 これから間桐慎二は、サーヴァント“ファイター”のマスターとして、「魔術なんて知った事か!」とばかりに、しゃがみ中キックで戦うのだ。

 

 何かが激しく間違っている気が、しないでもなかった。

 

 

 

 






◆スペシャルサンクス◆

 項劉さま♪


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