【募】こんな小説を書けこの野郎【リクエスト】 作:hasegawa&friends
――――禊企画! その3!
今回のお題はこちら↓(頂いたメッセージより抜粋)
◆ ◆ ◆
以前スウィートホーム×バイオハザードをテーマにしてくださいというリクエストに応えてもらい、あの抱腹絶倒ものの作品を書いていただきました。
ですが実は、あの後少し「これは良くなかったな」と後悔していたリクエストでもありました。
理由としては、やっぱりホラーの犠牲者側が過剰な攻撃力(銃火器)を持ってしまっては、ホラーがホラーたり得なくなってしまうからです。
やはりホラーものは、無力(対抗手段が限られている)な犠牲者達が狩猟者(ハンター)側に如何に恐怖を煽られながら被害を被るかが、醍醐味になってきます。
…が私自身はホラー映画は好きだけど、あんまり怖いのはちょっと…という訳のわからない人間です。
そこで私は考えました…。「どうすれば犠牲者にも被害がでて、且つあまり恐怖を感じない(この時点でホラーじゃないことに気付かないアホ)ことができるのか?」と。
そんなある日、ある漫画を読んでいて「ある人物」を発見し、「こ、これだ!!」と天啓を受けました。
※ジョジョの奇妙な冒険(第五部)×多重クロス
『オ、オレは何回死ぬんだ!? 次はどっ……どこから……?
い……いつ“襲って”くるんだ!?』
あのジョルノ・ジョバーナとの決闘から、いったいどれほどの時が流れたのだろう?
『――――オレのそばに寄るなああーーーーーッ』
文字にすれば「ひぃぃぃーー!?」みたく、まるでガラスの仮面の登場人物のような顔で、恐怖におののいた。
武器も持っていない、しかもまだ幼い無垢な女の子に対して、必死に命乞いをしたことを憶えている。
イタリアの闇組織を牛耳るギャング組織“パッショーネ”、そのボスであるディアボロともあろう者がだ。もう見る影も無い。
当然だが、別にあの女の子が怖かったワケじゃない。
この後、確実に自らに迫ってくるであろう“死”を予感し、それを恐れた。
あの最後の時、ジョルノに叩き込まれた“ゴールド・エクスペリエンス・レクイエム”。そのスタンド能力によって、今ディアボロは【終わりのない終わり】の中にいるのだ。
・たとえば、自らが街にばら撒いたとも言える“麻薬”、それに
・ハッキリ意識があるにもかかわらず、その状態で医師に司法解剖をされ、身体を切り裂かれる耐え難い苦痛を受け続ける。
・ふいに「ワン!」と犬に吠えられ、それに驚いて転んでしまった所を、車に跳ねられる。
etc.
そんな【つまらなくあっけない死】を、ディアボロはもうずっと繰り返している。気の遠くなるほど長い時を。
現実感のない幻影めいた世界の中で、次々と襲い来る、決して逃れ得ない理不尽な“死”。
例えるなら、動画サイトなんかにある、映画のショッキングなシーンだけを繋ぎ合わせた映像集。それを自らの身で体験しているような物だ。
しかもこれには“終わり”という物がない。死んだら即座に次のシーンに飛ばされ、そこでまた唐突な事故に合って死ぬ。死に続ける。
たとえ何千年の時が経とうが、決して開放される事はない。仏教における“無間地獄”のように。
正にディアボロは、この上なく無惨な
「クソがァーッ! もう“サメ”は沢山だァ!!
なんべんサメに喰われるんだァー! オレはァァァーーッッ!!」
……だがエライもんで、こんだけ何千何万と死に続けていると、
現在ディアボロは、この状況をある程度は客観視出来るというか……、それなりに“死”をエンジョイ出来るまでに成長していた(?)
「おッ、お前ェェェーーッ! さっきもオレを喰ったろうがッ! 見覚えあるぞォ!?
どんだけ大食いなんだァー! 貴様ァァァーーッ!!!!」
なんかサメなのに
もう下半身を丸ごといかれているのだが、でもこういうのは慣れた物なので、気にせず怒鳴り散らしているようだ。
ちなみにこのサメさんは“シャークトパス”という名前の、いわゆる生物兵器である。
とある研究者がホオジロザメと蛸の遺伝子を掛け合わせてみたら、なんか強いの出来た! って感じの生物であり、もう3回くらいディアボロを食べに来ていた。
その特徴的な姿、めっちゃ見覚えあるもん。めっちゃタコ足生えてるもんこの子。インパクトすごいもん。
「バナナボートに乗ってたら、そこをガブッといかれたりィ!
ビキニを着て、トロピカルジュースを飲みながらビーチで寛いでたら、突然襲って来たりィ!
お前はどんだけオレが好きなのだッ!? 何故オレばかり狙うッ?!?!」
普通こーゆうのは、ピチピチギャルを襲うものだろう。こんな中年男ではなく、バインバインのお姉さんを喰うのが相場のハズだ。
サメ映画における、いわゆる“サメのえさ”といわれる役どころは、おっぱいの大きいボンキュッボンな女性であるべきだ。それを観に来てるんだぞ観客は。
ちなみに今、ディアボロは「ひゃっほーい!」とばかりに崖からバンジージャンプをし、わっはっはとゴムでびよんびよんしていたら、そこを海面から飛び出してきたシャークトパスに「ぱくっ!」といかれるという、大変ユニークな殺され方をしている。
こんな無間地獄めいた生活においては、娯楽や楽しい事なんて滅多にないものだから、突然振って湧いたように体験する事となったバンジージャンプに、もう内心MAXテンションだったというのに……! ニッコニコしながら飛び降りたというのに! そこに来てこの仕打ちはひどい。
「なんだ!? “サメぱくタイム”なのかッ!?
もう7回くらい連続でサメに喰われているのだがッ……!? 今そーいう時間帯か!?」
思い返してみると、これには“流れ”があるような気がする。
なんか妙に落下死が連続したり、刺される死に方のヤツが続いたり、今回のようにサメに喰われる死に方が何回も重なったりと、その時々によって同じ死に方が頻発する時間帯があるように感じるのだ。
恐らくだが、現在は【ハイパー☆さめさめ☆タイム】に突入しているんだろう。
さっき頭が3つもある“トリプルヘッドジョーズ”とも言うべき生物に喰われたし、身体が金属で出来ている“メカ・シャーク”ちっくなヤツに体当たりされたし、そこに来てこのシャークトパス襲来だから。
なんかジョルノのゴールド・エクスペリエンス・レクイエムには、変な茶目っ気があるのかもしれない。
あれか、「せっかくですし、色々な死に方をお楽しみ下さい♪」みたいな事か。意外とエンターティナー気質なのかアイツは。お客を退屈させたくない~みたいな。
そんな無駄な気遣いは、非常にノーセンキューだった。
「くっそォ! 空からサメが降って来やがったぞッ!!
今回は市街地だから大丈夫かと思ったのに、
どうせダラダラとパート5くらい続けて、グデグデな展開になるんだろうがッ! このB級サメ映画めェェェーーッ!!」
シャークトパスにもぐもぐされたと思ったら、即座に今度はシャークネード襲来。
今ディアボロの頭上には、空を覆い尽くさんばかりの無数のサメ達が、雨のように地上へ降り注いで来るという地獄のような光景が広がっている。
まぁワケの分からん非現実的な出来事だが、ニューヨークでは
近年のサメは凄まじい進化を遂げているので、たとえ屋内だろうが宇宙空間だろうが、どこに居ようとも襲い掛かってくるのだ! サメすごい☆
「ち、チェーンソーはどこだ……!? アレがないとサメは倒せないんだッ……!!
どこかでチェーンソーを調達しないと……ってギャアアアアァァァーーッッ!!??」
辺りをキョロキョロしている所を、空から降って来たコバンザメっぽいヤツに、カプッとやられて死亡。
頭部を半分くらい失ったディアボロの身体が、すぐにスゥーっと霧のように消失し、また次の“死に場所”へと送られて行く。
きっと次は、メガロドンあたりにパクッといかれるんだろう。いや意外とゴースト・シャークや悪魔サメという線もあるか……?
ダブルやトリプルはもう見たので、あとはファイブヘッドジョーズに喰われたら、多頭サメシリーズをコンプリートだな! わっはっは♪
そんな風にディアボロは、次に何が来るかをウンウンと予想しつつ、結構余裕ある感じで“終わりのない終わり”をエンジョイするのだった。
慣れってホントすげぃ。
◆ ◆ ◆
・酔っぱらった状態で、自動販売機のジュースを盗もうと試みて、機械の上に乗ってみるもバランスを崩してしまい、倒れて来た自販機に圧し潰されて死ぬディアボロ。
・搭乗直前で閉まったエレベーターに腹を立て、ドアに何度も体当たりを敢行していたら、そのままドアを破壊して転落死したディアボロ。
・SNSのプロフィール画像撮影のため、滑走路で自撮りをしていたら、着陸しようとした航空機に翼で頭を強打されて死亡したディアボロ。
・窓ガラスの頑丈さを説明するために体当たりをしてみた結果、窓は大丈夫だったが“窓枠”が外れてしまい、10階建てのビルからヒュ~っと落下するディアボロ。
そんな【ダーウィン賞シリーズ】とも言うべき、情けなくておバカな死に方を、一通りやらされたった後……。
「分かるッ……分かるぞ! この後オレは死ぬッ! 間違いなくゥーッ!」
現在ディアボロは、薄暗いテントの中にいる。
ここはキャンプ場の一角に設置された、ありふれた2人用テントの内部であり、しかもなんか金髪のグラマラスな女性まで、隣に座っているようなのだ。しかも半裸の状態で。
「うふふ☆ それじゃあ楽しみましょうダーリン♪ さぁ来て♡」
「――――駄目だぁッ!
この直後、化け物に襲われて死ぬというのが、ホラー映画のお約束だろうがァーッ!!」
イソイソと胸をはだけながら、嬉しそうにこちらへすり寄ってくる、半裸の女性。
それは世の男性諸君からしたら、まさに「ごっつぁんです!」ってなシチュエーションなのだが、対してディアボロは震え上がっている。
寄るな! 来るな! と額に冷や汗を浮かべながら、なんとか後ろに下がろうと必死。まぁこのテント内では逃げられないだろうが。
やがて金髪の美女が「さぁ捕まえたわダーリン♪」とばかりに、ディアボロの首にキュッと手を回し、そのまま身体を預ける。たわわに膨らんだバストが、ディアボロの胸板に押し付けられ、〈もにゅ〉っと変形。
彼は今「うぎゃー!」と叫び声を上げているのだが、そんなの全然お構い無しにキスを迫って来る。
「ほら見ろぉ! 案の定ではないかッッ!!
今バリバリと音を立てて、鉈がテントを切り裂き、
お前のせいだぞォ! 女ァァァーーッッ!!」
通称“風紀委員”。
リア充は許さぬとばかりに、ホッケーマスクを被った大男が、鉈を携えて登場。
公共の場で破廉恥な行為にふける不届き者(金髪の女性)は、「キャー!」と声を上げる間もなく、即座にズバーンと切り裂かれてしまった。容赦無しである。
「ま、待てェ! ホッケーマスクの男よ! よぉく考えろッ……!
オレはまだ、エロいことをしてない! キスも未遂で終わっているだろッ!
話せば分かるゥゥゥーーッッ!!!!」
両手を前に出しながら、ズリズリと後ずさるものの、重ねて言うがここはテントの中。逃げ場はないのだ。
返り血で赤く染まったジェイソンさんが、「ぬぼぉ~!」って感じで、ゆっくり近付いて来る。
「おッ……俺も同じだぁッ! 貴様とォ!
こう見えて風紀は大切にする方だし、女も一回しか抱いた事ない!
このような場所でエロい事をするのは、公序良俗に反する行為だと思うし、お前の考えには大いに賛同していギァァァアアアーーッッ!!!!」
鉈が振り下ろされ、ディアボロの頭蓋が見事にパッカーン! 真っ二つとなる。
せっかく“セカンド童貞”の告白までしたというのに。この世界は無慈悲であった。
「や……、やめろォ! オレは一緒にシャワーなんぞ浴びたくなぁいッ!
入ってくるんじゃない! 女ァ! 押し掛けてくるなァーーッ!!
どうせエロい事する気だろう!? ホラー映画みたいに! ホラー映画みたいにぃぃーッ!!」
そして、即座に次の世界へ飛ばされたディアボロが、湯気がモクモクしているシャワー室で絶叫。
背後の扉がガチャッと開き、そこから「うっふーん♪」って感じの女性が姿を現した途端、シャンプーまみれの髪を振り乱す。必死に逃れようとする。
だが案の定、盛ったネコのように発情している女性に抱き着かれ、そこを窓から侵入してきたジェイソンさんにブッコロされる~という、ホラー映画でよく見る光景を際限する羽目となった。
ちなみにだが、かの【13日の金曜日】は、全13作を超える大人気シリーズなので、恐らくディアボロは、あと10回くらいは彼に殺されることが予想される。
映画に登場した全ての人物の死に様。それをキッチリ再現するまでは、決して終わらないんだろう。
――――エロス許すまじ! セックスだめ絶対!
アメリカの風紀を守る為、ジェイソンは今日も戦うのだ! この世から全てのリア充どもを撲滅するその日まで!
がんばれジェイソン!
◆ ◆ ◆
「……はっ!?!? ここは今までと、少し趣きが違うぞッ!?」
・愛する恋人の目の前で、胸板に“七つの傷”を刻まれて死ぬ。
・ライバルの拳で倒れることを拒否し、「サラダバー!」と自ら身投げして死ぬ。
・ピラミッドめいた建築物を、巨大な石を持ち上げた状態で登らされ、ようやく頂上に辿り着いた途端、聖帝様が投げた槍に貫かれて死ぬ。
そんなどっかの漫画で見たような死に方を、一通りこなした後……、ディアボロが次に飛ばされたのは、どこかのありふれた市街地であった。
恐らくは今、台風でも来ているのだろう。辺りには風が吹き荒れており、強い雨が身体を打つのを感じる。
きっとこれは、アメリカかどこかの街並み。どことなく西洋の雰囲気がある。
この事から察するに、少なくとも世紀末救世主伝説からは、抜け出せたようなのだが……。
「これは何だッ……!?
なぜ俺は、黄色いレインコートなんぞ、着せられているんだッ……!?」
いま雨が降っている。それは分かる。
だがディアボロには、こんなレインコートを着た覚えなんか無い。
自分はあのジョルノ・ジョバーナと戦った時の状態……ずっと着の身着のままでいたのだから。そもそも所持していないハズだ。
こいつはどういう事だ? 今度はどういった趣向だ?
そうディアボロが辺りをキョロキョロしてみると、これは台風のせいなのか、まるで濁流のように勢いよく水が流れる排水溝が、ふと視界に入った。
「んッ!? あれは“船”か……?
子供が画用紙で作ったような小さい船が、勢いよく流れる排水溝の川に、浮かんでいるではないかッ……!!」
プカプカとではなく、スイーーッ! って感じ。
ミニ四駆を彷彿とさせる結構な速さで、白い折り紙の船が流されて行く。まるでレーシングコースのように伸びた排水溝を、道なりにどんどん進んでいるのが見える。
ぶっちゃけ、ちょっとカッコいい。童心を思い出してワクワクしてしまうディアボロである。
「あッ! いかん! 行ってしまうッ……!!
待てぇー♪ ふねふねぇー♪ 捕まえてやるぞォォ~~ッ☆」
心の中で勝手に“ディアボロ号”と名付けたそれを、追いかけてみる。
どうやらレインコートに加えて、長靴も履いているようなので、雨なんてヘッチャラだ!
ディアボロはバチャバチャ水しぶきを上げながら、「わーい!」と台風の中を走る。正しくアホな子供のように、暫しこの現状を忘れて楽しむ。
もう時間にすれば何年も死に続けているワケだし、だいぶ慣れて来たというのもあり、「人生楽しめる時に楽しまないと損だ!」とばかりに、ここは童心に帰るべきだと判断。即座に幼児返りをして見せた。
「あはは! うふふ! ふははははァーーッ♪♪♪
征けェェい! オレのディアボロ号ォォーッ☆
大海原を駆け、地平線の彼方まで進……ってああッ?! オレの船がァァァアアアッ!!??」
その時! 元気よく進んでいたハズの船が、唐突に飲み込まれる!
まるで渦潮に沈んでいくかのように、突然あらわれた下水道へと続く穴の中に、吸い込まれて行ったのだ! ディアボロ号がロスト!
「なんッ!!? だとォ~~ッ!! そんな馬鹿なことがッ……?! こんなーッ!!??
ディアボロ号がッ! 帝王たるオレの所有物がッ! よもや沈んでしまうなどとッ……!!
嘘だと言ってくれェェ~~ッ!! 船よぉぉオオオーーッッ!!??」
“贈り物”だと思った。
これは今まで頑張ってきた自分に対する、情け深い神からのプレゼントだと――――
だが束の間の楽しい時間は終わり、ディアボロは深い絶望へと落とされる。
さっきまで「ひゃっほー♪」という気分だったのに、今はこのお天気の如く、涙を流す羽目となる。俺の大切なおもちゃが。
「くおのッ……ド腐れがぁぁぁあああッ!! オレは諦めェェェーーんッ!!
このディアボロは、いつだって危機を乗り越えてきた“帝王”なのだァーッ!
戻ってってこい、我が愛機よッ! マイフレェェェンド!!!!
必ずッ……必ず救い出してやるゥゥッ!! このディアボロがなァァァーーッッ!!」
おーいおい! とむせび泣きながら駆け寄る。
ギャングに親でも殺されたかのような悲痛さで、たった今マイフレンドフォーエバー(船)が消えていった場所に縋り付く。もう35のオッサンだというのに、恥も外聞も無く。
きっと心が疲れているのだろう。ぬくもりを手放したくない。
「――――はぁい、ジョージィ♪」ヒョコッ!
「 ぬうッ!?!?!? 」
だがその時! とつぜん排水溝の穴から、謎の男の姿が!!
なんでこんな所にいるのかは知らないが、ディアボロが排水溝を覗き込んだ途端、中から“ピエロ”のような化粧を施したオッサンが、ひょこり出て来たではないか!
「なッ……なんだァ貴様はーッ!! 凄くビックリしただろうがッ!!
こ、このディアボロに対してェ……! ド低能のチンポ野郎がァァァーーッ!!」
「オーウ、ジョージィ。随分ごあいさつだなぁ~。
せっかくこうして会えたっていうのにぃ。私は悲しいぞぅ」
「誰だジョージって!? 人違いだッッ!!
このディアボロは、世界に選ばれた帝王ッ! そんなありふれた名前ではなァァァい!!」
「まぁ落ち着けよ。そんなに怒ってたら、血管が切れてしまうぞぉ?
ほら、良い物をやろう。私が作ったフワフワの風船だ。
欲しくないかぁジョージィ?」
「だからァァーーッ!! くおのッ……!! クソァァァ!!!!」
プリプリと怒るディアボロを、「まあまあ」と諫めるピエロの男。
彼の名は“ペニーワイズ”。スティーブンキングの映画に登場する悪役である。
甘い言葉や幻覚を駆使して、次々と子供を殺すオバケみたいな存在なのだが、ディアボロには知る由も無い。
「そもそもの話ッ! このディアボロッ! 幼少の頃より『知らない人から物を貰ってはいけません』と教わっているッ! 養父は敬虔な神父だったのだッ!!
風船などに、目が眩むものかァッ!! 貴様の思い通りにはならんぞォォォ~~ッッ!!!!」
「Oh! 君のパパは利口らしい。立派な御仁じゃないかぁ」
「だがッ! それはそれとしてッ! 風船は頂いておこうッ!!(キリッ)
今は娯楽に飢えているのでな? さぁ寄こすが良い」
「……そ、そうか」
フワッと飛んで来た風船を、慌ててキャッチ。ディアボロは「ほくほく♪」とご満悦。
ふん! 黄色などという下品な色は趣味じゃないが、貰っておいてやろうッ! ありがたく思うがいいッ!! ……そんなツンデレめいたセリフを言いながらも、「わーい」と風船に夢中だ。無邪気なことである。
「では、ありがとう! と貴様が言え。
帝王たるオレに、風船をプレゼントする栄誉を与えられた事を、誇りにするが良いッ!
ではな、道化師よッ! フハハハーーッ☆」
「ちょッ!? 待てよジョージィ!!!!
コレを置いて行くのか!? 大切な物だろう?」
「ぬッ! そいつはオレのッ!?」
ご機嫌な様子で「じゃ!」と踵をかえすディアボロを、慌ててペニーワイズが呼び止める。その手にあるのは、先ほどロストした折り紙の船。
「でかしたぞ貴様ァ! 拾ってくれたんだなァァーーッ!!
その高貴でファニーな船は、このディアボロにこそ相応しいッ!!
海を支配するのはッ、このディアボロだァアアアアアーッ!!」
「そうかぁ、いきなり落ちて来たから驚いたが、拾っておいて良かったよ。
これからは気をつけるんだぞジョージィ?
ぶっちゃけ、台風の日に外で遊ぶのは、すごく危険な事なんだからなぁ?」
普通、ここは“殺す所”だ。
大切な船を受け取ろうと、こちらに伸ばされた手を捕まえ、そのまま穴に引っ張り込むなり噛み付くなりして、ディアボロを惨殺するシーンのハズだった。
だがペニーワイズは、なんと
たった今、密かに生命の危機を脱していた事にも気付かず、ディアボロは船が返ってきた事に大喜びしている。
その嬉しそうな顔を見て、あろう事がペニーワイズもニコニコしているのだ。
「私も以前は、“殺人ピエロ”なんて呼ばれ方をしていたけどな?
でも現在までに、有志による数多くのMADが作られ、ジョージィとの心温まる交流を重ねる事によって、改心したのさ♪
今ではほら、こんなにも丸くなってしまった。もうただの
「?」
「雨が降ってるから、気をつけて帰るんだぞジョージィ……いやディアボロか?
会えて嬉しかった。風船を貰ってくれてありがとう。
喜んでくれて、ありがとう♪」
まるで本当のピエロのように、ペニーワイズは「にっこり」とあたたかな笑みを浮かべる。とても優しい顔をしている――――
そして彼は、フリフリと手を振ってから、再びヒョコッと顔を引っ込め、穴の中に戻って行った。
「こいつはプレゼントさぁ! たまには“休憩”もいいだろぉ?
怖いシーンばっかりじゃ、観客も慣れちまうし、こういうホットなのも入れとかないとな♪ 大切な緩急ってヤツだっ!」
「おいッ! どこへ行く道化師ッ!!? まだオレはッ……おッ! お前とォ!!」
「頑張れよディアボロ、挫けるなよ?
なぁに♪ 私も昔は散々ぶっ殺され、悪夢の中をのたうち回ったものさぁ!
でも終わってみれば、きっと良い思い出になる――――君に幸運を♪」
「いッ……行くなッ! 消えるんじゃない道化師ッ!! このオレの前からッ!!
行かないでくれェェェエエーーッッ!! マイフレェェェエエエンド!!!!」
やがて声が途切れ、ペニーワイズの気配が消失する。
ディアボロはその場に蹲り、ただただその場で嗚咽を漏らすばかり。
たった今出来た大切な友達を呼びながら、涙を流し続ける。
せっかく返してもらった折り紙の船さえも、放りだしたままで。
その後、やっぱり台風の日に外へ出たら駄目だったのか、突然上から降って来た【スーパー玉出】の看板に圧し潰され、結局ディアボロは死亡してしまったのだが……。
でもペニーワイズに貰った思い出と、彼からの心の籠ったエールは、しっかり心に刻まれている。
こんな“永遠の死”という、光の見えない世界の中で、たったひとつ煌めくお星さまのような体験。自分と同じ“悪党”でありながらも、優しかった人の記憶。
たとえこの先、体感で何百年の時が経とうとも、きっと色あせる事はないだろう。
ゼロだと思ってた。でも“真っ暗”じゃないんだ。
たとえか細く、たったひとつだとしても、光はあるんだ。見つける事が出来た――――
なら自分は、進んでいけるような気がする。
これからも、やっていけるような気がする。この時の果てまで。
◆ ◆ ◆
「ふう……まさか貞子&伽椰子&トイレの花子さんによる、スリープラトン攻撃を喰らおうとはな」
あれからも長い長い時が経ち、ディアボロはこうして“死”を繰り返している。
今はちょこっとだけ、先ほど味わった世界での出来事について、回想に浸っている所である。
「飛ばされた先が、いわゆる“呪いの家”で……、気が付けばオレの目の前には、“呪いのビデオ”が再生中のTVがあり……、そして慌てて逃げ込んだトイレに、まさか“花子さん”がいるとは……。
このディアボロの目をもってしても、見抜けなかったぞッ」
豪華共演。きっと映画の登場人物だって体験できない程の、夢のオールスターであった。
ひとりでも主役級だというのに、そんなオバケ達に三人がかりでぶっ殺されたのは、きっと自慢出来る事なんじゃないだろうか? 人知れずディアボロは「ふふん♪」と鼻を鳴らす。
よっし、俺の“戦歴”に、また輝かしい勲章が刻まれたぞ! そんな風に喜んでいるのが見て取れる。
この男、本当に結構余裕であった。流石は元ギャングの親分。タフガイ。
「さて、此度の催しは何だ? 何が来る?
キノコ男が出るか、尻怪獣アスラが暴れるのか、はたまたシベリア超特急に乗る事となるか。
キラーコンドームにちんこ喰い千切られるのだけは、勘弁願いたいが」
関係ないが、こいつは普段、どんな映画を観ているのだろう?
それ全部、Z級映画と呼ばれる「お察し下さい」な作品ばかりだ。かなり尖ったチョイスである。
それはともかくとして、ディアボロは例によって、キョロキョロ辺りを見回してみる。どうやら辺りに人の気配は無いようだ。
ここは屋内……いやどこかの施設っぽい感じの部屋。ヒーロー戦隊番組の指令室にあるようなモニターや、よく分からない機械や、謎の計器などがある。そこはかとなく近未来的な雰囲気があるような気がする。
加えて、これは気のせいかもしれないが……僅かに“振動”を感じるのだ。
あたかも今、この部屋自体が動いており、ゴゴゴっと移動しているかのような……?
『――――ディアボロ君! ディアボロ君! 聞こえるかね!?』
「ッ!!??」
突然、室内にあるモニターに、映像が映る。
そこにあったのは、とても大きな鼻が特徴的な、ハゲたおっさんの姿。
白衣も着ているようだし、その風貌から鑑みるに、どうやらその人物は“科学者”であるようだった。
『知っての通り、その宇宙船は現在、
地球の運命は君に賭かっているぞ!』
「な゛ッ!? なんだとォォォオオオーーーッッ!!!???」
それでは、武運を祈るッ! プチッ!
その言葉を最後に通信を切る、どこぞの博士風の男。
ひとり船内に取り残されたディアボロは、あまりの超展開に茫然。口をパクパクしている。
「そ……そうかッ! 今オレが乗っているのは、正に“運命の船”というワケだなッ!?
唐突に起こった、太陽の急激な温度上昇によって、現在ぼくらの地球は存亡の危機に立たされておりッ! それを救うべく、このディアボロが宇宙へと飛び立った!
核爆発を抑える効果がある物質、それを内蔵したロケットを太陽へと打ち込み、地球温暖化を食い止めて、見事世界を救ってみせろと言っているのだ!
このディアボロに対してェェ!! 納得ゥゥゥウウウ~~ッ!!!!!」
前から思っていたのだが、この男のセリフは
まるで読者の為に、現状を一から十まで分かりやすく説明する口調を、常に心掛けているかのように。
まぁこれは、ジョジョの登場人物すべてに言える事だが。
「そう言ってる間にも、太陽に接近ッ! 距離1万メートルだッッ!
やってやるッ……やってやるぞォォォ! この便器に吐き出されたタンカスがァァ!!
地球を救うのはッ、
核爆発抑制ロケットォォッ、発射ァァァアアアーーーーッッ!!!!」
あそーれ、ポチッとな♪
そう言わんばかりの笑顔で、ディアボロが発射ボタンを押し込む。
なんのためらいもなく、気軽に。
「――――いかん! まっ……まずいッ!!!!
どうやらロケットの照準が僅かに狂っており、途中にある隕石と接触してしまったようだッ!! 進路がずれてしまっているではないかッ!!??
こ……このままでは、太陽から逸れてしまうッ! 地球を救う事が出来なァァい!!
なん!!? だとォ~~~~ッ!!??」
モニターを確認しているディアボロの表情が、驚愕に染まる。
だが彼は、即座にその場から駆け出し、恐らくは宇宙船のハッチに続いていると思われる梯子を猛然と昇り始めた!
「こんな事で……!? オ……オレはッ!! ディアボロだぞッ!!
――――くおのッ!! 太陽のガキィがァァァ!!!!
地球はやらせん! やらせんぞォォォ!! 世界の“帝王”としてェェェーッ!!!!」
宇宙船の外へ飛び出す! 今ディアボロの脚部には、まるで鉄腕アトムそっくりのジェットが内臓されており、その推進力を以ってグングン宇宙空間を進んでいく!
そして! 即座にロケットへと追いつき、その背にまたがってみせたではないか! あなやっ!
「くッ……! ロケットの進路を変える為には、このままオレごと太陽にツッコむしか無いようだッ! 世界を救うためには、致し方ないッッ!!!!
仕方ない事なのだァァァアアアッ!! ウオォォォォオオオオ~~ッッ!!!!」
ロケットと共に進むディアボロの眼前に、どんどん太陽が迫ってくる。
その表面は赤く燃え盛っており、凄まじい高熱によって、彼の身体がどんどんボロボロになっていく……。
「さらばだイタリア……! さらばパッショーネの者達……! さらば我が娘トリッシュ!!
……お別れだゴミクソ共ッ! このディアボロは、ロケットと運命を共にするッ!! 太陽を元に戻してみせるぞォォッ!!
そうッ! 人は皆ァ、運命に選ばれた兵士ィィ……! 世界はこのオレを、救世主として選んでくれたのだァァァーーッッ!!!!」
衝突の瞬間、最後の時……ふと何気なく背後を振り返る。
そこにあったのは、ディアボロが住んでいた星。
青く輝く、ぼくらの地球だった。
「あぁッ……! 綺麗ッ! 綺麗だなァァッ……!!!!
このディアボロ……! 今までの人生でェ、ここまで心を震わされた事はないッ……!!
栄えろ地球ッ!! そして生きろトリッシュッ! オレの意思を継げェッ!!!!
――――天皇陛下ァッ! ばんざァァァアアアーーいッッ!!!!!(ノリノリ)」
……
…………
……………………
彼は気付いているだろうか? これは決して【つまらなくあっけない死】ではなく、誇りに満ちた死である事を。
そして彼は、分かっているだろうか? これは全然【ホラー映画関係ねぇ】という事を。アトムの最終回だからねコレ?
とにもかくにも、ディアボロは死んだ。
見事に世界を救い、太陽の中に散った。
けれど彼が最後に見せた表情は、満足気。これまでとは違う、とても意義のある死だった。
ぶっちゃけた話、これ【終わりのない終わり】とか言われている物ではあるけれど……、でもあくまでゴールド・エクスペリエンス・レクイエムによる“スタンド能力”なのだから、決して仏教にあるような無間地獄では無いはずだ。
いつかジョルノ・ジョバーナが死に、そのスタンドが消滅しさえすれば、もしかするとワンチャンあるかもしれない。
スタンドが消えさえすれば、その能力も消失するというのが、基本的な決まり事であるのだし。ポルナレフVer.のレクイエムの能力だって、それで消えたんだし。
まぁ若い彼に寿命とかで死なれたら、これから開放されたその瞬間に、自分も寿命が尽きて死ぬかもしれないけれど……。でもジョルノはギャングの親分になったワケだし、暗殺とかで死ぬ可能性だってある。
確かに僅かながらの希望ではあるが、決して捨てた物では無い“光”が、ディアボロにはあるのだ。
もしかすると、かの“蜘蛛の糸”みたく、いつかひょっこり抜け出せるかもしれないし。
とりあえず、今回みたいにカッコいい死に方が出来る(事がある)というのも分かったので、死にはしたけれどディアボロは満足気。
こうやって地道に“徳”を貯めていけば、いつか救われるかもしんないじゃんと♪
「やッ……やめろォ! 【ミザリー】とか【ハンニバル】とかの、精神的にくるタイプのホラーはやめろォォォーーッ!!!!(迫真)
オレはそういうサイコなヤツが、一番苦手なんだァァァッ!!
ウオォォォ! キング・クリムゾンッ! キング・クリムゾォォォオオオン!!」
言うまでも無いが、スタンド能力は全て不発でした(無慈悲)
そうテンション高めに騒ぎつつ、ディアボロはこの世界で死に続けてく――――エンジョイ!
◆スペシャルサンクス◆
団子より布団さま♪
【元ネタ】
・シャークトパスシリーズ
・シャークネードシリーズ
・13日の金曜日シリーズ
・IT
・ダーウィン賞(情けない死に方をした人に贈られる、アメリカのブラックユーモアな賞)
・北斗の拳
・鉄腕アトム
【今回勉強のために視聴したホラー映画】
・DOLLs
・ザ・チャイルド
・ブレアウィッチ プロジェクト
・ザ・リング(ハリウッド版)
・恐怖!キノコ男
・キラーコンドーム
・呪怨
・貞子vs伽椰子
・トイレの花子さん
etc.