【募】こんな小説を書けこの野郎【リクエスト】   作:hasegawa&friends

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 ――――禊企画! その4!


 ※Fate/stay night二次創作。




Fateで帰れま10。~In 紅洲宴歳館・泰山~ その1 (幸1511さま原案)

 

 

 

 

 PM4時20分、マウント深山商店街――――

 

 

「よぉ、久しいなァお前ら! ご無沙汰ァ!」

 

 ポケットに手を入れ、チンピラみたいな歩き方のクーフーリンが、姿を現した。

 何がおかしいのかケラケラ笑いつつ、既に集合場所(大通りにある駐車場)へ集まっている面子の顔を、のんびりと見渡す。

 

「遅いぞランサー、10分前には到着したまえ。常識だろう」

 

「私なんて、家事をほっぽり出してまで来てるのよ?

 どれだけ小姑(一成君)にネチネチ言われたことか」

 

「まーまー! 固いこと言うなって!

 今日は無礼講ってヤツだろ? 楽にいこうや」

 

 エミヤ&メディアが苦言を呈するも、彼はどこ吹く風。集合時間を少し過ぎての到着だったが、まったく悪びれる様子無し。

 

「なんでも、『腹が破れるくれェ食って良い』って聞いたぜ? 酒もあんだってなァ!

 いきなり招集かけられた時は、何事かと身構えちまったが、ようは宴会だろコレ!」

 

「いわゆる“お疲れ様会”なのでしょうか?

 それにしては、少し時が経ち過ぎている気が……」

 

「聖杯戦争が終わり、早ひと月。

 今更かような労い、あの者共がしようハズも無し。

 きゃつらは飽きもせず、三百年殺し合っている輩ぞ?」

 

「■■■……」(同感だな。嫌な予感しかせん)

 

 メデューサ、小次郎、ヘラクレス。

 彼らも言われるがままに、ここへ集まり、そして難しい顔で眉を歪めている。

 

 今日この場にいる第五次のサーヴァント達6人は、それぞれ己のマスターから「この日にこの場所へ向かえ」と言い付けられ、イソイソと集まって来た者達だ。(小次郎に関しては、キャスターからの又聞き&許可を貰ってだが)

 詳しい事は分からない。どうやらマスター達も、詳細な内容までは知らなかったから。

 しかしながら、ランサーが言った通り、“皆で集まって食事をする”。

 その一点だけは、ザヴァたち全員の共通認識であり、どうやら間違い無いようだ。

 

「ま、何かしらはしてくんだろうがよォ、どーせくだらねェ事に決まってる。 

 連中の思惑なんぞ意に介さず、たらふく食って飲みゃー良いんだよ。だろ?」

 

「ふむ……」

 

「「「……」」」

 

 この場でただ一人、あっけらかんとした顔のランサー。

 対してアーチャーたち他の面子は、未だウムムと唸るばかり。

 

英雄(お前ら)ともあろうモンが、何をイモ引いてやがんだ?

 辛気臭ぇツラしてんじゃねェよ、らしくもねェ。

 こんだけ雁首揃えてんだ。なんとかならァな」

 

 たとえ一国の軍事力全てが相手だろうが、核や化学兵器の脅威に晒されようが、問題ない。

 自分たちは“英霊”。こちらを殺せるのは、同じサーヴァントだけ。

 ゆえに、たとえ何が来ようとも、恐れるに足らず。少なくとも“命”を取られる事は無い。

 それは物理的な事実であり、この世で唯一とも言える“絶対”だ。

 

「少し楽観的なように感じるが……まぁ君の言う通りか」

 

「おうよ! いざとなったら、赤原猟犬(フルティング)でも干将・莫耶でも、かましゃー良いんだよ。

 最悪、食うだけ食って、()()()()()()()()。戦上手がお前さんの売りだろ?」

 

 あん時は辟易したモンだが、今は心強ぇ。お前がこっち側で良かったぜ!

 そんな歯に物を着せない、真っすぐな信頼を受けてか、アーチャーは思わず「こほん!」と咳払い。

 昨日は敵だったけど、今日は仲間だ! ひゃっほう☆ ……そんなランサー特有の切り替えというか、サッパリとした気の良い笑顔に、もう苦言や皮肉など言えなくなってしまった。

 

「とりあえずは、行きましょっか?

 あまりここで、長々と話し込むのも……ね」

 

「はい。私たちは今、()()()()()()

 正直、人の目が辛いです……」

 

「私は和装ゆえ、気にならぬが、この大きな御仁には拙かろうて」

 

「■■■……」(感謝する……)

 

 キャスター&ライダー&アサシンが、不憫な子を見るような目で、バーサーカーの方を向く。

 古代ローマの剣闘士もかくやという、もう半裸といっても差支えない恰好でいる彼を、早く人目から隠してやらなければ。下手すりゃ捕まってしまうし。

 

 ちなみにだが、サヴァ達がいま“現代の服”でないのは、「英霊としての装束で来い」という指示があった為だ。

 各々のマスター達も困惑気味だったが、とりあえず監督役(言峰)にそう言われたので、ここは従っておきましょうとの事。

 

 なにやら妙な“ドレスコード”ではあるけれど……、その代わりと言ってはなんだが、飲食代や参加費は一切不要らしい。なので甘んじて受け入れる事とした。

 今みんなの姿は、まごう事無く第五次聖杯戦争、当時のまま。もう今すぐにでも、ヒュンヒュンそこいらを駆け周りそうな感じ。

 総じてみんな物騒というか、時代錯誤な恰好である。

 

「つーか、なんでセイバーだけいねェんだ?

 今日アイツは不参加なのか?」

 

「いや、凛が言う所によると……彼女は直接店に向かうらしい。

 なんと言っても、今日の“主賓”だからね」

 

「あー、準備とかあるのかもね。ドレスでも着るつもりかしら。

 ねぇ、貴方はなにか聞いてる?」

 

「いえ、私はサクラに“別行動”としか。

 同居人とはいえ、あまりセイバーとは、話す事をしませんから」

 

「以前は宿敵同士、加えてお主らは女子(おなご)よ。

 あれか? 口を開けば罵り合い、といった具合か。姦しい事よな」

 

「■■■……」(あまりあの子ら(マスター達)を困らせるなよ? 程々にな)

 

 暫し雑談に興じていた6人は、「やれやれ」といった気だるげな様子で、ようやくその場から動き出す。

 大通りを歩く通行人たちが、こぞって「ひいッ!?」と道を空ける中を堂々と歩きつつ、目的の店へと向かう。

 

 何百何千という時を越えて(つど)った、英霊達のちょっとした行進。

 有り体に言って、イカツかった。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「おっ! ちーっすセイバー、今日はよろしくなァ~」

 

 そして、到着しました本日の会場。

 その名も【紅洲宴歳館・泰山】

 ここマウント深山商店街で、唯一となる中華料理屋である。

 

「■■■■……!」(香辛料の香りだ。食欲をそそる!)

 

「ほほう、雅な店構えよな。

 大陸(中華)の者達にとり、赤は高貴な色と聞くが」

 

「へぇ、中はこんな感じなのね~。

 私はいつも、お買い物の時に通りかかるけど、入った事は無かったのよ」

 

「私もです。あまり外食をしませんから。

 サクラはとても料理上手なのです」エッヘン

 

「凛もそうさ。加えて彼女は守銭奴でな。

 ……まぁそれはそれとして、私はあまり気が進まんのだ。確かこの店は……」

 

 ガラガラっと扉を開けて入店。

 すぐさま興味深そうに、キョロキョロと辺りを見渡すサーヴァント達。

 まぁ若干一名、なにやら額から汗をかいている者もいるが。

 一体どうしたと言うのだろう? 彼の墓の上を、誰かが歩きでもしたか?

 

「おー、もう席に着いてんのかセイバー、随分早ぇじゃねーか。

 お前さんの事だ、先に料理をつまみでもs

 

「――――遅い」

 

 ピシャリ、空気を切り裂くような言葉。

 行儀よく椅子に座りながらも、たった今やって来た者達を、キッと睨み付けている。

 

「この宴は、4時半開始の筈――――

 すでに時計の針は、それを過ぎているように見えますが?」

 

「おっ……」

 

「「「……」」」

 

 カッと目を見開き、壁時計を指さす。ただいま時刻は4時40分也。

 有無を言わさない雰囲気。かつては王であった彼女の纏う、絶対的なカリスマ。

 先ほどまでの弛緩した空気など、既に無い。6人のサーヴァント達はポカンと呆ける。

 その後、ハッと目を覚ましたように、慌てて彼女にちゃんと向き直った。

 

「いや……済まなかったよセイバー。準備に手間取ってしまった」

 

「ゴメン、待たせちゃったわね。機嫌を治して頂戴」

 

「申し訳ありません……。こちらの落ち度です」

 

「つか、俺がやらかしちまったんだよ。悪ぃなセイバー?」

 

「■■■……」(許せよ……)

 

「あいすまぬ」

 

 ペコペコ、ペコペコ。サーヴァントたち平謝りの図。

 みんな歴戦の英雄だし、とてもプライドの高い人達なのだが、この時ばかりは必死こいて謝る。

 だってセイバーの様子がオカシイんだもん。なんかいつもの彼女と違うんだもん。

 正直、めっちゃ怖いのだ。今のアルトリアさんは。

 特に目がエグイ。本当に獅子とか竜みたい。

 

「――――いつもこうなのですか?

 貴公らは(いくさ)の時も、このような感じで、戦っていたのか。

 大切な(たみ)や祖国を背にしても、ヘラヘラ笑って敵と対峙するのか」

 

「「「えっ!?」」」

 

 だが、追撃。

 アルトリアさん、ぜんぜん許してくれなかった。

 更に彼らを問い詰め、容赦なく追い詰めていく。

 

「いやいやッ! そりゃあ予定通りにいかねェのは、戦の常だけどよォ?

 だがそんなつもりはッ……!」

 

「ほら、電車が時間通りに来るのは、日本くらいのモンだって言うじゃない?

 別に私達、貴方を軽んじてたワケじゃ……」

 

「せ、セイバー?! 一体どうしたと言うのですか……?!

 こんなに怒っている貴方を、私は見たことがありませんっ!

 心優しく、清廉な貴方が、何故このような……」

 

「何か理由(ワケ)があるのかね!?

 もしそうならば言ってくれ! 賠償をしよう!」

 

 もう絵に描いたような「ぶっすぅ~!」とした顔。激おこセイバーさん。

 まるで初孫の機嫌を取るおじいちゃんの如く、サヴァ達は皆オロオロしながら、必死に言い募る。

 けれど……。

 

 

「そんなだから、()()()()()()()。聖杯戦争に――――」

 

 

 ピキリと、致命的な亀裂が、この場に走った。

 

「真面目にやらないから、頑張らないから、勝てないのです。

 どういう事ですか貴公ら? なぜ負けたのに、ヘラヘラ笑っていられるのです」

 

 バン!!!! と強くテーブルを叩く音。

 それに反し、静まり返る中華料理屋・泰山。

 

「ランサーが死んだ! このひとでなし! ……じゃないですよ。

 そんなネタをする位なら、もっと真面目にやれと言いたい。

 何がコメディですか。ほのぼのですか。我々サヴァの本分は“戦い”でしょうに。

 後ちょっとしたエロシーンと(ぼそっ)」

 

 この場の誰にも聞こえないような小声で、ごにょごにょと何か呟いた後、すぐに気を取り直した彼女は、ピシッとライダーに指を突き付ける。

 

「分かっていますかライダー? たとえどのような分岐を経たとしても、貴方が聖杯を手に入れる未来など、全く存在しなかったのですよ?

 シロウに協力をし、サクラの()()()()のように生きながらえる未来が、ひとつあるだけです」

 

「っ!?」

 

「ランサーもそう、アサシンもそうです。

 待っているのは、哀れで無惨な未来のみ。

 散々他人にこき使われた挙句、ポイッと切り捨てられるだけの人生だ」

 

「っ!?!?」

 

「ッッ!?!?」

 

「バーサーカーはワンチャンあるかもですが、それでもかの英雄王を打倒するのは至難。

 貴方はその為の努力を、ちゃんとしましたか?

 狂化とか、喋れないとか泣き言を言う前に、一度でもマスター(イリヤ)を説得したか?

 地面に文字を書くなり、ボディランゲージするなり、いくらでも意思疎通の方法はある! ちょっと賢いゴリラにでも出来る事だぞ!!

 子供をただ見守るのではなく、“導く”のが大人の役目だろうに……。

 シロウと和解しろ、シロウと組め。それが最善だと。

 なぜ真の意味で、あの子の“幸せ”を想わなかった? 貴方ほどの大英雄が!!」

 

「■■■ッ……!?」

 

「キャスターに関して言えば、確かに勝利する未来はある……。

 だがそれは、なんか()()()()()()()

 所詮は作者がササッと書いたような、シロウのBAD ENDのひとつに過ぎない。

 あんな物、ちょ~っと周りがその気になれば簡単に崩れ去る、砂上の楼閣の如き栄光だ。

 ……これまで散々人をだまくらかし、悪事の限りを尽くしたでしょう?

 最弱のサヴァなのに沢山の恨みと、聖杯を所持するという妬みを買ったでしょう?

 断言しよう、貴公は狙われる――――間違いなく死ぬだろう。因果応報だ」

 

「っっ!?!?!?」

 

 5人は愕然とする。ぐうの音も出ない程。

 痛烈に、メタを駆使してまで、こいつらの性根を叩き直す。

 

「見なさい、彼を。

 主役やヒロイン以外で“良い感じ”になれたのは、アーチャーくらいのものです。

 彼は努力をしました……。血の滲むような想いをし、たくさん苦労して来ました……。

 だからこそ、なんか()()()()()()()良い感じの未来を掴めたのだ」

 

「……っ!?」

 

「利用され、裏切られ、歯磨き粉のチューブみたいに搾り倒され、ボロ雑巾の如く魂まで擦り切れた挙句ようやく手に入れた、『なんか一応は救われたっぽいな~』という未来!

 でも何も無いよりはマシでしょう?

 ここまでやって! ようやく手に入ったのが()()! これですよ皆さんッ!!(迫真)」

 

「……っっ!!!???」

 

 なんか湾曲的にボロクソ言われてる臭いアーチャー。

 それを余所に、いま満を持してセイバーが、椅子から立ち上がる! 拳を握りしめて!

 

「ゆえに負け犬共よ、今一度問おう――――貴公らは努力をしているかっ!?

 成り行きや適当ではなく、これまで死ぬ気でやってきたという、その自負はあるのかっ!?」

 

「「「……っっ!!!!!!」」」

 

 ホロウだの、たいころだの、カニファンだの……。

 そんな仮初のドタバタコメディで満足か! 貴公らは“戦士”だろうッ!!

 今セイバー先輩は、そう皆に怒っているのだ! ()()()()()()()()

 

 

「では始めましょう! 我々の、我々による、我々だけの戦いをッ!

 ――――只今よりぃ! 聖杯戦争の負け犬共と行う、泰山の人気メニュートップ10を全て当てるまで帰れま10(英霊の座に)

 開催しまぁぁぁあああーーすっ!!」

 

 

 輝くような笑み、満面のドヤ顔。

 セイバーがグゥアーっと右手を振り上げ、冬木に轟かんばかりの大声で、高らかに告げた。

 

「うーい、お疲れ~い」スタスタ

 

「次回は居酒屋にでも行こう。またな」スタスタ

 

「顔が見れて良かったわ♪ それじゃあねみんな」スタスタ

 

「――――待って下さいっ!! 思ってたのと違うっ!!??」

 

 6人のサヴァ達が、ゾロゾロと店を出ていく。全員一斉に。

 それをセイバーが押し留めたり、手を引っ張ったり、昭和の夫婦ドラマのように腰にしがみついたりして止める。めっちゃ忙しい様子だ。

 

「なぜ帰るのですかっ! 私あんなに熱弁したのに! なぜ帰るのです!」プンプン

 

「それはそうですよセイバー。

 私忙しいです。読書したいです」

 

「動かぬ草木を眺めておる方が、まだ幾分かマシよ。付き合うてられん」

 

「■■■……!」(お前はどうかしている、頭を冷やせ)

 

 しがみついてくるセイバーを、うっとうしそうに振り払いながら、スタスタと一直線に出口へ向かう一同。

 その様は無慈悲。「あー無駄な時間だったー」って感じがアリアリと出ていた。

 

「というか、無理ですよ!

 泰山の人気メニューTOP10を当てるまで、貴方がたは帰れないのですっ!

 そう私が、()()()()()()()()()()

 

「「「 !?!?!?!? 」」」

 

 たった今サラッと放たれた、セイバーの衝撃発言。

 それに一同は思わず振り向き、ピキーンと身を固くした。

 

「此度の第五次、私が優勝したではないですか?

 この世全ての悪( アンリマユ )とか、なんやかんやはあっても、無事に冬木の聖杯を手にしたワケです。

 でも私、ブリテンの救済など、既にどうでも良くなってたので……かける願いなど無かった」

 

「「「……」」」

 

 暫し、黙って聴く。じっと次の言葉を待つ。

 まぁサヴァ達にとっては、さして聴きたい事でもなかったりするのだが。一応は確認として。

 

「ゆえに、とりあえず第五次の皆と、()()()()()()()()()()()()事にしました。

 この“帰れま10”をやりたいと、聖杯に願ってみたのです」テレテレ

 

「――――おめぇバカだろ!? アホトリア・ペンバカゴンか!!!!」 

 

 ペンペン、バカゴン、バカゴンゴン♪

 と、なんかバカボンみたいな響き。だが一同はそれどころでは無い。

 

 いま「えへへ♪」って感じで、愛らしく微笑んでるセイバーを見て、思う。

 ――――よくそれで聖杯戦争勝てたな!? 坊主(士郎)えれぇ頑張ったなオイ?!?!

 つか俺ら、こんなアホなサーヴァントに負けたんか!! マジでか?!

 

「きっと、王様としての役目に、疲れ果てていたのですね……。

 誰にも理解されず、愛されず、さぞ孤独だったでしょうに」ホロリ

 

「同情するのは良いが、我々ものっぴきならん状況だぞ?

 地母神の慈愛の前に、現実を見たまえ」

 

 普段は仲悪くても、今は涙がちょちょぎれているライダーさん。根はとても優しい人だ。

 しかしながら、彼の言う通り、今は自分の心配をすべきである。

 

 先ほどサラッと告げられたが、セイバーは確かに「TOP10を当てるまで帰れない」と言った。

 しかも家にではなく、“座”に帰れないと。

 ぶっちゃけ「戦いは終わったのに、なんで自分たち消えてないの? まだ現界してんの?」って疑問が、実はこの一か月の間、ずーっと皆の心にあったのだが……その理由がようやく分かった。

 

 こいつだ、アホトリアの仕業だ。

 みんなとご飯食べたいからって、消滅した俺らを無理やり現世に繋ぎ止めてたんだ。

 聖杯に願ってまで――――

 

「この帰れま10が終わっても、“座”に帰るかどうかは、各自の判断にお任せします。

 みんなしっかり受肉させましたので、どうぞお好きなようにして頂きたい。

 ですが……()()()()()()帰れません。

 申し訳ないが、ここの人気メニューTOP10を当て終えるまで、一歩も出られないのです」

 

 私的には、このマウント深山商店街にある全ての店で、帰れま10をやりたいと思っている。いずれ皆で制覇してみたいものです。

 そんなたわけた事を、平然と言い放つセイバー。遊びたい盛りかお前は。

 

「だが、まずは今日の戦いを越えよう。

 この一戦に、己の矜持をかけ、挑むのだ。

 よろしいですね皆さん?」

 

「「「……」」」

 

 正直、人によっては「有難い」と感じている者も、居たかもしれない。

 キャスターのように、宗一郎様と暮らしたいとか、ライダーのように桜を見守ってやりたいとか、そう現世に未練がある者達もいるから。

 敗れてもなお、この世界に繋ぎ止めてくれたセイバーに、感謝の気持ちを抱かないでも無かった。

 たとえ「ご飯食べたい」という、食い気による物であっても。

 

 ――――しかしながら、この娘は()()()()()()

 それが聖杯使ってまでやる事か。必死こいて戦った者達や、三百年も聖杯追い続けてきた連中が報われない。

 

 そんな風に思ってしまうのも、仕方ない。

 現に今、この場の全員が白目を剥いている。

 俺たちはいったい何なんだ。たらふく中華を食べるために、“英雄”となったワケじゃないぞと。

 もっとやりようは無かったのかセイバー。

 

「ちなみにですが、恐らくは気になっている者もいると思うので、言っておきます。

 あのチンカs……いえ“英雄王ギルガメッシュ”についてですが」

 

 皆の雰囲気が変わる。茫然と呆けていた顔が、ハッと真面目な表情に。

 彼も第五次に参加した英霊だ。正確には「乱入して来た」という形なのだが、立派に聖杯を争ったライバルである。

 アイツいないけど、一体どうなってるんだろう? 金持ちだし運営側に周ってるのかな? 一人だけ逃げやがって。

 なんとなしに、そう思っていたのだが……。

 

「こちらをご覧ください」

 

「「「 ッッ!?!?!? 」」」

 

 テーブルクロスをバッと引っ張り、勢いよく払いのけた時……そこにあったのは彼の姿。

 なんか()()()()()()()()()()()()()()、机の下で倒れているのが見えた。

 

「この三日ほどをかけ、私はコイツと共に、泰山にある全てのメニューを食した。

 戦において、事前調査は必須。どの料理が美味しいのかを、調べ尽くしたのです。

 いわゆる“ロケテスト”も兼ねて」

 

「「「……」」」

 

「その結果、英雄王は()()()()()()()

 正直いけ好かない人物ではありますが、彼の尊い犠牲を無駄にしない為にも、我々は戦わねばならんのだ」

 

 よく見れば、彼の唇は今、タラコのように酷く腫れ上がっており、顔なんてもうブルーハワイのかき氷みたいな色。

 まだギルが生きている(現界している)のが、信じられないくらいの様子。

 というか、今すぐ救急車を呼んでやらないと、拙い気がするのだが……。これ間違いなく“重体”だし。

 

「――――勝ちましょう皆さん。

 私は此度の戦い、パーフェクトを狙っている。

 一度も間違えることなく、TOP10を全て当てる気でいます。

 どうか皆も、そのつもりで」

 

 気迫、熱意、覚悟。

 そんな色んな物が、セイバーの顔からハッキリ見て取れる。

 道楽や悪ふざけではなく、彼女は本気で挑んでいる。

 全力で、なんとしてもパーフェクトを取るつもりでいる。

 いま無惨に床に転がされている犠牲(ギル)を見れば、それは一目瞭然だ。

 

 セイバーいわく、「もしパーフェクトを取れば、褒賞として“聖杯の権利一回分”が、全員に贈呈されます」との事。

 本家の番組では100万円だが、こちらの賞品はそれより上。まさに破格と言えよう。

 まぁぶっちゃけ、第五次の面子には「聖杯とかどうでもいい」と言っちゃうような連中が多いのだが……、それでもあったら嬉しいし、きっと己のマスターも喜んでくれる。

 何より、ついに叶わなかった“勝利”を、今度こそ手に入れたい。

 

 戦闘ではなく食事、しかも全員(チーム)で協力するという変則的な形だし、バカみたいな催しだけど、これはまごう事無く“聖杯戦争”。

 かの栄光の盃を手に入れる為の、闘争に他ならない――――

 

「今更かもだけど……帰れま10って()()よね?」

 

「TVで観たことがあります。

 はる〇愛が“地獄”と称していた、あの過酷な企画……」

 

 キャスターとライダーが、顔を見合わせて冷や汗。

 

「試されるのは、推理力と胃袋。

 だがなにより、ここ【紅洲宴歳館・泰山】でやるというのがな……」

 

 そうアーチャーが、ゴクリと固唾をのむ。

 6人の中で唯一、この店を知っているらしき彼は、誰よりも事の重大さを理解していた。

 

 

「諸君、覚悟したまえ。生半可な力では、生き残れんぞ。

 英霊などという、そんな思い上がりは捨てろ――――

 この(ギル)のようになりたくなくば、気を引き締める事だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 退路は無い。このタイトルが示している。

 ならば自分達は、前に進む他ない。

 中華特有の回転テーブルが備わった席に着き、限界まで知力と胃袋を駆使するのみ。

 

 セイバーが笑う。挑戦的な顔でニヤリと口元を歪める。

 覚悟を決めた戦友達を見て、なにやら満足気な様子。

 

 戦え――――それのみが己を示す、だたひとつの方法。

 貴公らは英雄。平穏の中では生きられぬ、度し難き存在なのだ。

 

 

 7騎のサーヴァントが、倒れ伏すギルをゲシゲシ踏み付けながら、それぞれの席に向かって行く。

 一体なんの恨みがあるのか、それとも結構どーでも良かったのか、余人には知る由も無い。

 

 

 そして今、満を持して、第五次の勝者アルトリア・ペンドラゴンPresents、【泰山の人気ランキングトップ10を当てるまで帰れま10】が始まる。

 

 

 

 

 

 

(続くのです!)

 

 

 

 

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