【募】こんな小説を書けこの野郎【リクエスト】 作:hasegawa&friends
今回サーヴァント達がやって来たのは、マウント深山にある中華料理屋【紅洲宴歳館・泰山】
商店街の中にあるにも関わらず、地元に住む者達は、誰一人として入ろうとしない。
そんな“魔境”として、(一部のマニア達に)有名なこのお店。
看板メニューの麻婆豆腐を始めとし、中国4000年の粋を(無駄に)凝らした、様々な
定番の天津飯、蟹あんかけ炒飯、変わり種の石焼き麻婆チャーハンなどの“ご飯物”。
もはや日本人の国民食ともいえるラーメンに加え、麻婆麺、かた焼きそばといった“麺類”。
みんな大好き餃子や、ド迫力の大粒シュウマイ、お行儀よく並んだカリッカリの春巻きなどでお馴染みの“天心”
エビマヨ、伊勢海老の天ぷら、贅沢に丸ごと使用されたフカヒレの姿煮などの“海鮮料理”。
噛めばジュワっと弾けるジューシーな唐揚げや、食感が心地よいカシューナッツ炒めとった、各種“鶏肉料理”
もちろん豚肉、牛肉、卵、豆腐料理などなど、他にも豊富な一品料理のラインナップが存在。
また中華スイーツの代表格である、ゴマ団子や杏仁豆腐といった“デザート類”も、みんなが笑顔で囲む食卓に、彩り豊かな花を添えてくれる事だろう。
そろそろ夕方になるかという、このかき入れ時に、何故か窓のカーテンがピチッと締め切られている、一風変わったこの店。
本日の企画のために、貸し切りにしているからだと思いきや、別にコレはいつもの事なのだという。
その“紅赤朱”を彷彿とさせる、イカレた外観のみならず、内装に至るまで全て赤一色に統一されている事により、異様な雰囲気と緊張感を醸し出すことに成功。
加えて店内では、息をするだけで「おっぐぇ!?」とえづきそうになるばかりか、気管支の弱い者ならば呼吸すらままならない程の、むしろ目がヒリヒリして開けていられないくらい強烈なスパイスの香りが、あたかも固有結界めいた凄まじい濃度で、充満してたりするぞ!
店のカウンター席に座る誰もが、いったい何を作ってるんだ……、これから俺は何を食わされるんだ……、と不安気な表情で料理を待つ姿が、この場においてはごく日常の光景。
そんな「軽い気持ちで訪れた一見さんが、悉く悲鳴を上げて逃げ帰る。もしくは救急車を呼ぶ」と評判の(?)、とっても素敵な町の中華屋さん☆
本日はここ【紅洲宴歳館・泰山】の人気メニューTOP10を、第五次のサーヴァント達に全て当ててもらっちゃおう♪ という企画なのだっ!
・ナレーター: 言峰フルテンション綺麗
「ではご紹介しましょう。店長の“
セイバーに促され、少女と思わしき人物が現れる。
サヴァ達のやる気のない拍手が、パチパチとこの場に響く。とっても嫌そうな顔。
「こちらの魃さんは、マウント深山で“ちびっこ店長”と親しまれている、謎多き中国人だ。
魃さん、本日はよろしくお願いします。
今この時より、我らの胃袋は、貴方と共にある」
「OKアル! 存分に腕を振るわせてもらうネー」
この魃さん、外見はロリっ子その物だが、まごう事なき成人女性。
バイトでもウエイトレスでもなく、彼女自身が中華料理店を経営している事からも、それは明らかだ。
しかしながら、非常にちんまい背丈と、cv田村ゆ〇りを彷彿とさせる鈴のような声。
この子が「アチョー!」言いながら中華鍋を振り回している所など、とてもじゃないが想像出来ない。
「セイバーちゃんは三日前からいるケド、他の子達は初めてネ?
中華四千年の神髄を見るヨイ! 楽しんでいけアル!」
「その自信が無いよ。
こいつかギルガメッシュを、ノックアウトした女……。
人の身で英霊を打倒するという、途轍もない偉業を成した人物。
6人のサヴァ達は、まるで化け物でも見るかような……もしくはサイコバスでも観察するような目で、彼女を見つめている。
かの英雄王を倒すには、力や宝具ではなく、ただこの店に連れて来るだけで良かったのか。とんだコロンブスの卵だ。
「つーか、セイバーも食ってたんだろ?
ロケテとか言って、三日ぶっ続けでよォ」
「そうよっ! よく無事だったわね貴方!?
アイツは打ち上げられた魚みたいになってるのに! ピクピクしてるのよ!?」
チラッと床で沈黙している英雄王を一瞥した後、セイバーの方へ向き直る一同。
「心配無用、私には
シロウがマスターである限り、私はモーマンタイ(震え声)」
「知っていますかセイバー?
身体の傷は治せても、
よく見れば、セイバーの手がガクガク震えているのが分かる。
まるで彼女の身体が、「もう食べたくない! お箸なんて持ちたくないの!」と拒否しているかのよう。
恐らく、あの三日間の事前調査とやらで、多大な精神ダメージを負ったのだろう。
なにがお前をそうさせるんだ。そこまでしてみんなと遊びたいのか――――
王様の責務に追われるばかりだった生前、その反動だった。
ちなみに、今カメラマンを担ってくれている士郎も、心配そうに彼女を見守っている。
「坊やも苦労人ねぇ……。あまり心配をかけなさんなセイバー」
「坊主は聖杯戦争の折、血反吐をはきながら頑張っておったというに。
その褒賞を、“帰れま10”の為に使われてしもうたのか」
「■■■……」(不憫だ。報われん……)
随分とバカなサーヴァントを引いたものだ。でもそこが愛おしいのだろうか? どんだけ善人なんだお前は。お父さんか。
サヴァ達の胸に、様々な想いが去来する。あと「俺はマスターに苦労をかけまい」という、反面教師的な誓いも。
「あー、君たち6人は一見さんアルから、一応言っとくけどぉ~」
ふいに声がかかる。一同は改めて魃さんの方を向くが……。
「――――お残しは、許さんアルよ」
ゴッッッ!!!!!!!! と音がせんばかりの闘気。威圧感――――
小柄な少女である筈の魃さんから、炎めいた巨大なオーラが吹き上がるのを幻視した。
「アタシの国では、出された料理を“少しだけ残す”のが礼儀ヨ。
貴方は沢山もてなしてくれました、もうお腹一杯です、という感謝を示すためにネ。
だけど、
まさか英雄様ともあろうモンが、食べ物を粗末にするなんて無作法……せんアルな?」
そんな不心得者は、煮込んで食っちまうゾ☆ 唐辛子でナ♪
魃店長が「あっはっは!」とカラカラ笑いながら、背を向けてこの場を去っていく。
7騎のサヴァ達が、暫し唖然とする静寂の中、やがて調理場の方からシャキン! シャキン! と包丁を研ぐ音が聞こえてきた。
コワイ。
◆ ◆ ◆
【第1巡、一皿目】 アルトリア・ペンドラゴン (セイバー)
「それでは始めていきましょう! 帰れま10 in 泰山! スタートですーっ!!」
わー! と歓声。
みんな「とりあえず声出しとけ!」とヤケクソで叫ぶ。何かを振り払うかの如く。
「厳正なる協議の結果、トップバッターはこの私、セイバーに決まりました。
2番手にアーチャー、3番手ランサー、4番手ライダー、5番手キャスター、6番手アサシン、7番手バーサーカーの順となります」
「嘘こけ、ぜってェ適当に決めたろ? 見た事あんぞこの並び」
「何故かは知らないけれど、この順番って
「ですです。これ以外考えられません」
「■■■……」(実家のような安心感)
見れば全員が「うんうん」と頷いている。
座っている席すらも、この並びに順じており、収まる所に収まった感がある。不思議だ。
「ではこれより、私がTOP10を予想していきますが、皆にも意見を募りたく思う。
自分の手番以外にも、忌憚のない意見を、積極的にだ。
これは我ら全員で挑む、“チーム戦”なのだから。協力し合っていきましょう」
「委細承知。承ったぞセイバー」
「ねぇねぇ、なんかワクワクしてこない? 私こういうの新鮮かも。ふふっ♪」
「ランサーの言葉ではないが、昨日の敵は今日の友……か。
まぁ力を尽くすとするさ」
各自、さっそく手元にあるメニュー表を開きながら、思考を巡らせていく。
アーチャー&キャスターといった“料理が出来る勢”の意見は参考になるだろうし、この町で働いているランサーやライダーも、きっと貴重な意見を出してくれるハズ。
残念ながら、この場には中華料理に親しみのある“中国のサーヴァント”は居ないものの、意外と生前は王子だの神だのといった、位の高い人達が多かったりする。
ようは舌の肥えた連中、違いの分かる人達なのだ。
彼らの持つ知識や感性に、大いに期待しようではないか。
そして前述の通り、最初の回答者はセイバー。「好きなアニメは、デリシャスパーティ♡プリキュアです!」と豪語し、毎週ニチアサには、ご飯を食べながらテレビに齧りついている彼女だ。
その食への拘りや愛情は、他の追随を許さない。ごはんは笑顔なのだ!
「そういえば、セイバーはここの料理を、一通り食べたんですよね?
何が一番美味しかったですか? 参考までに教えて欲しいです」
おお、そりゃ重要だな。ガヤガヤ。
みんな一旦メニュー表から顔を上げ、興味津々でセイバーの方を向く。
しかし。
「“水”……ですかね」
「オイ」
なにやら遠い目をした彼女が、消えそうなほど小さな声で回答。
「いえ、聞いて頂きたい。私はこれまで知らなかったのです。
お水がこんなにも美味しいだなんて……。有難いだなんて……」
「やめよ馬鹿者。正気に戻らぬか」
「ちゃんと言ってよセイバー。……嘘でも良いから」
「明日が見えないのだが」
どれだけ頭を捻ろうとも、セイバーの脳裏に浮かぶのはひとつ。水という一文字だけ。
彼女がこの三日で味わった苦しみ……その一端を垣間見た一同。そして今日は我が身だ。
「この店で一番高い料理は、この何千円もする豪勢なオードブルだ。
しかし、それと同じ値段であったとしても、私は水を頼むだろう。
――――だって! 赤くないから!
この店で唯一、
「テメェとんでもねぇ事してくれたな?
んなトコに連れて来やがったのか」
「私達をどうする気ですか」
「■■■……!」(ファック……!)
何故この店を選んだ? 何故わざわざここで?
そんな疑問を抱くも、後の祭り。彼らはもう戻れないのだから。帰れま10。
「なら、比較的マシな物はないの?
あんまり辛くないのを選びましょうよ♪」
「うむ。女狐のいう通りぞ。
どれならば、我らにも食えそうだ?」
キャスター陣営の二人が、気を取り直して提案。
絶望に染まった空気を変えるべく、元気を振り絞ってはみたが……。
「――――甘い。それは悪手ですよ二人共?」
ピシャリと、セイバーが制する。
「泥沼にハマり、ズルズルと戦いを長引かせてしまう、典型的な例だ。
そういうのを“負け犬の思考”と呼ぶのです」
カリスマ:Bを誇るサーヴァントの、威厳ある態度。説得力。
確かに多少は生きながらえよう。だが守りに入れば、勝つ事は出来んのだと。
「考えてもみなさい。こんな頭のおかしい店を訪れるのは、
ならば……我々はあえて攻めるべきだ。
マシな料理ではなく、自分にとって“一番食べたくない物”。
それを選ぶくらいの覚悟なくば、とてもここのTOP10など……」
「おめぇ何してくれてんだマジで(真顔)」
「怒りますよセイバー? ベルレフォ~~ンですよ?」
「■■■……」(射殺す百頭)
みんながスッと席から立ち上がるが、セイバーは「つーん!」と素知らぬ顔。我関せずでメニューを眺め続ける。
王は人の気持ちが分からない。そんなだから国滅ぶんだよお前。
「いや……セイバーの言う事も、一理あるやもしれん。
いま考えるべきは、リスクマネージメント。
どう傷を最小限に抑えるか? が重要となる。この場に至ってしまった以上は……」
だが彼女の他に、もう一人。
沈痛な面持ちでメニュー表とにらめっこをする、アーチャーの姿が。
「最短、最速で、TOP10を当てる他あるまい。
そろそろ腹を括りたまえ。
美味しい物が食べたいなどという、
「幸せって何? 教えて宗一郎」
恐らくADの役目なのだろう。少し離れた場所にいる葛木先生が、「がんばれ」と書いたカンペを、こちらに掲げているのが見えた。
こんなにも仲間がいるのに、孤立無援のような心境。
まるで自分達だけ、無人島にでも放り込まれてしまったような、迷子の幼子のような、耐え難い心細さを感じる。
今この場において、自分達は無力。まごう事なき“弱者”だというのを実感。
メニューにある料理の写真を見ているだけで、身体がブルブル震える有様なのだから。
不安、恐れ、諦観に沈む一同。
そんな中、唐突にセイバーの張りのある声が、この場の空気を打ち破る。
「――――麻婆豆腐です」
「「「 !?!?!? 」」」
ハッキリ、キッパリ、聞き間違えようの無い程に。
彼女のとても清廉な声が、ここ泰山の客席に響いた。
「店主、この
「 正気かテメェ!? 死ぬぞォォーーッ?!?! 」
きっと、この料理のことを知っていたのだろう。
何故ならランサーは、かの
彼が今、テーブルを叩きながら思わず立ち上がった事からも、その
そして関係ないけど、なんか料理名がおかしかった気がする。
「ハーイ! まいどアル~☆
――――アタシの鍋が、真っ赤に染まるゥ! 客を殺せと、轟き叫ぶゥ!!」
「 言わんこっちゃねェ!! この店は駄目だッッ!!!! 」
阿鼻叫喚。女性のキャスター&ライダーは元より、野郎共までが「ぎゃー!」と悲鳴を挙げている。地獄のような光景。
「なんでっ!? 相談するって言ったじゃないの! みんなでっ!」
「なぜ有無を言わさずやった!? 心の準備という物がだね?!」
「ひどいっ! あんまりです! この人でなしー!」
「フハハハ。私はブリテンの王、人ではないのですよ」
皆にワーキャー取り囲まれ、ライダーにガックンガックン肩を揺すられるも、セイバーは涼しい顔。高笑いをするばかりだ。
こいつは悪魔だ! 俺たちを地獄へ誘う鬼だっ!
きっと、聖杯戦争で勝てなかったから……。あの時もっと頑張って、コイツを止める事が出来なかったから、今こんな目に合ってるんだ。
頑張らなかった報い、ちゃんと真剣に戦わなかった罰を、今サーヴァント達は受けているのだろう。
まぁ、ただセイバーがおバカなだけかもしれないが……、でも極論“自分が勝っていれば”、こんな事にならずに済んだのは間違いないのだから。
この非情なる世界において、敗者は悪なのだ!
「戦うと決めた。それが私の誇り」キリッ
「一人で戦えバカ! 巻き込むんじゃねェ!」
「この
「その今がエライ事になってんのよ! どーしてくれるのよぉーっ!!」
悪びれない! 退かない! まったく謝らない!!
こんなヤツがブリテン治めてたのかと思うと、もう戦慄する他ない。
そらランスロットも裏切るわ。モードレッドもブチ切れるわ。
「――――狼狽えるなぁ! 負け犬共ぉぉーーっ!!」
「「「 ぎゃああああああ!?!? 」」」
セイバーの
かの聖剣から放たれた爆風によって、サヴァ達はペガサス流星拳を喰らったザコ聖闘士みたく宙に舞い上がり、ベチャッと落ちた。
というか、とんでもない威力であった。流石は第五次の勝利サーヴァント。
毎日シロウとエッチしてますからね♡ とセイバー談。
「案ずるなかれ。確かに貴公らにも、一口づつは食べてもらうが……。
でも残り全ての麻婆を、私が引き受けよう。
この帰れま10においては、【注文した者が一番多く食べる】という作法があるのです。
「それより、なにゆえ剣を抜きおった……? 得心しかねる」
みんな暗黙の了解で、どんなに怒ってても徒手空拳でいたのに……。
この娘はイカレている、どうかしてるぜ! そう身震いするサーヴァント達だ。
「貴公らは初陣。無理はさせん。
だが、このレンゲひとくち分の麻婆を、泰山の“洗礼”とせよ。
荒療治やもしれませんが、まずは敵を知る事。それが第一歩だ」
「せ……セイバー」
一瞬、ヤケになって俺たちを殺そうとしたのか? と思ったが……どうやら彼女にも考えがあっての事らしい。
サヴァ達はいったんその怒りをおさめ、彼女の言葉に聞き入る。
「断言しよう。この爆裂ゴッド麻婆こそ、泰山にて最強――――
一番辛い料理を担うのが、主催者たる私の役目だと思っていた。
せめてもの罪滅ぼしと思って頂けたら、嬉しい」
まぁそうは言っても、これは量的に言えば、小者です。
他にも食べるのがツラい料理や、別種のキツさがある物は、数多く存在しますが……。
そうセイバーがフフッと苦笑。軽くコテンと首をかしげる仕草が、愛らしかった。
それを見て、サーヴァント達の表情が変わる。
次第に彼らの心境が変化し、戦う覚悟が決まっていく様子が、見て取れた。
「いいぜ……やってやらァ。どーせ食わなきゃ帰れねェんだろうが」
「■■■……」(同意だ。凶戦士の生き様を見せよう)
「無様を晒しましたが、食べる事で挽回しましょう。
私も英霊の端くれ。……見ていなさいセイバー」
ぶっちゃけ、こんな事する羽目になったのは、セイバーのせいなのだが……。「遊びたい」というその一念を以って、無理やり自分達を巻き込んだのだから、罪滅ぼしも何もあったモンじゃないけれど……。
だがこの者達は“英雄”。ここは戦士が集う場である。
まがりなりにも、彼女が示した心意気……。それを見ておきながら「否」と抜かす腰抜けなど、この場にいよう筈も無し。
特にライダーに至っては、「彼女に舐められるワケにはいかない」という想いもあるのだろう。
宿敵であり、同居人であり、
彼女を失望させたくない。対等である為には、自らも戦わなければならない!
そうライダーの心に、勇気の火が灯っていく。
「はいヨー。爆裂ゴッド麻婆、おまちどうアル~♪」
「「「――――赤いッ!! そして目が痛いッッ!!!!」」」
だが運ばれて来た料理を見た途端、ボッキィィィィ! と心が折れる音を聞いた。
(続くぜェ!)