【募】こんな小説を書けこの野郎【リクエスト】   作:hasegawa&friends

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Fateで帰れま10。~In 紅洲宴歳館・泰山~ その5

 

 

 

 

 

「つーかよ? だんだんイラついて来たぜ俺ァ」

 

 ボソッと、静寂の中で妙に響いた声。

 

「消耗戦は、不得手じゃねェ。昔嫌って程やらされたしな。

 けどよォ……それが好きかと言われりゃ、話は違ってくる」

 

 なんだよこの状況は。殴られっぱなしじゃねーか俺ら……。

 そうクーフーリンが、苛立たし気に眉間に皺を寄せる。

 

「おら! いつまでも凹んでんじゃねェよ。

 俺らも散々言ったしよォ? もう(みそぎ)は済んでんだろ」

 

 今も「チーン♪」と聞こえそうな様子で、白目を向いているセイバー&アーチャー。

 ちびまる子ちゃんみたいにドヨーン! と影が落ちている。すんごい陰気な雰囲気。

 

「やぁランサー。こんど私達、土でも食べてみようかと思ってね」

 

「コノ世カラ、消エ去リタイデス」

 

「良いから顔上げてくれや……。三騎士の名が泣いてんよ」

 

 今は椅子に座ってるけど、ほっといたら隅っこで三角座りでもしそうだ。床に“の”の字を書いて。

 

「正直、言い過ぎたと思います。ごめんなさい二人共……」

 

「ほら、元気出していきましょ? まだ先は長いんだから♪」

 

「いつもの主らはどこへ行きおった?

 先の戦では、あれほど獅子奮迅だったというに」

 

「■■■■」(外しはしたが、お前達の頑張りは見ていたぞ。団結していこう)

 

「そーだよ。敵は身内に非ずだ。

 あのイカれた中華娘だろ」

 

 仲間たちがコクコクと肯定。

 ランサーがアーチャーの肩をポンと叩き、ライダーが「大丈夫ですよ」とセイバーの手を握ってやる。

 やがて意気消沈していた二人も立ち直り、次第に柔らかな表情を見せ始めた。

 

 よくよく考えずとも、此度の戦いはチーム戦。仲間割れやギスギスなど論外だ。

 いま自分達は、まごう事なく危機に瀕しているのだから、協力してこれに挑まなければ。

 憎むべき&打倒すべきは、今日の料理人である魃さん。あのドSのチャイニーズ・サイコなのだ。

 

「おっし、聴けテメェら。

 いま俺の脳裏に、ひとつ痛烈に浮かんでる“イメージ”がある。

 こりゃあ今どこぞで、確実に起きてる光景だろうぜ」

 

 別にキャスターみてェに、遠見の魔術を使ったワケじゃねェ。予想の範疇に過ぎない事かもしれん。でも俺には分かんだ。

 そうギロリと鋭い目で、みんなの顔を見渡す。額に青筋を浮かべて。

 

「俺らの様子を、ゲラゲラと笑いながら観てる、()()()()()()()()()()

 

 ――――ピキリ! と空気が凍る。

 この場の全員が、思わず目を見開き、そしてランサーとまったく同じ顔に。

 まるで殺し屋の目、憤怒に満ちた表情。

 

「手ェ叩いてよぉ、エビみてェに反りかえって、爆笑。

 テメェそんな(ツラ)できたんか? ってくれぇ、満面の笑みをしてやがるに違いねェ」

 

「……」

 

「……」

 

 言峰は本日のナレーション担当であり、いま別室でこちらをモニターしているハズ。

 ランサーはあたかも見て来たかのように、その様子をつぶさに語ってみせる。

 そして……これは決して見当違いな予想では無かった。もうまんまだったから。

 

 人の不幸が、三度の飯より好き――――

 神と、愉悦と、麻婆豆腐で出来ているのだ、あのクソッタレな神父は。

 

「さぞ面白ェだろうさ、俺ら悶絶してる姿ってのは。

 藻掻けば藻掻く程、苦しめば苦しむ程、ヤツは楽し気に笑うんだ。

 安全な場所で、高っけェワイン片手によォ」

 

 そんなの許せるか? コケにされてんだぞ? 英霊ともあろうモンが。

 彼がそう口にした途端、なにやらこの場にギリギリ……と歯を食いしばる音が、いくつもいくつも響く。

 シーンとしていたこの空間に、目をひん剥いた英霊達の“怒り”が、どんどん充満していく。

 

 

「舐められっぱなしじゃ、いらんねェ。

 ヤツ等をビビらせる。我が槍にかけて――――」

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

【第1巡、三皿目】 クーフーリン (ランサー)

 

 

 

 デデンデデン! バババババン、バンバン! ジャジャジャン☆ ピーッ♪(BGM)

 

 続いての回答者は、生き残る能力にかけては第五次サヴァで随一! 槍の英霊ランサー!

 クランの猛犬の嗅覚は、見事TOP10を嗅ぎ分けられるのかぁ~!

 

 

・ナレーター: 言峰フルテンション綺礼

 

 

 

 

「おっし! とりあえず酒いくかオイ? ビールとかよ」

 

「えっ」

 

「唐辛子とかぶち込まれてるかもしんねェが、酒は酒だろ。

 飲まずにやってられっかよクソが。俺を誰だと思ってやがんだ」

 

 さっきまでのシリアスから一転。ランサーのお気楽な声に、キャスターが目を丸くする。

 

「個人的には、チューハイとかで構わねェんだけどな。

 俺の国じゃ果実酒が主でな? 安酒だが、飲み慣れたヤツが落ち着くね!

 まぁ中華屋だし、ここには無いみてェだがよ」

 

「ちょっと貴方! マジメにやってるの?!

 ここにきてお酒って……」

 

 老酒とか紹興酒もあるらしいぞ。気が利いてんなァ!

 そうランサーが「じぃ~!」っとドリンクのページを凝視。メディアの苦言など意に介さずに。

 

「あんだよ、今も言峰の野郎は、ガブガブいってんだぞ?

 俺らも飲まねェでどーするよオイ」

 

「「「……」」」

 

「あーん、五加皮酒ぅ~? 桂花陳酒だぁ~?

 こいつァどんなだよ。興味あんな!」

 

 ――――拙い! 嫌な予感するッ! コイツに任せてはいけないような気がする!

 みんなの心配気な表情なんて、どこ吹く風。ランサーはひとり「♪~」と酒を吟味。凄く機嫌良さそう。

 

「おーっし! いっちょ()()()()()()()()()()()

 ちまちまやってらんねェよな!」

 

「「「 !?!?!? 」」」

 

 その予感は、速攻で的中。

 ランサーを除く6人がガタッ! と椅子から立ち上がる。

 

「なに言ってるんですか貴方は! いったい何考えてっ……!」

 

「おぉ? それが普通だろうが。

 数を注文し、皆でシェアすんのが、中華料理ってヤツだ。

 その為の回転テーブルだっつーの」

 

「でもっ……一気に五品だなんてっ! 一人ひとつづつのハズでしょう!?」

 

「んなこたねェさ。あのハマグチェの大将も、たまに複数注文してんぞ?

 確か“二枚抜き”とか言ったか。ヤツの得意技だ」

 

 そう、確固たる“前例”があるのだ。原典の番組の方でガッツリと。

 ならばランサーのこの行為も、特に問題ないと言える……のか?

 いま彼の隣に立ち、必死に諫めているライダーを始めとして、みんな顔面蒼白だ。

 いつも飄々としているアサシンや、多少の事では動じないバーサーカーですら、おめめをひん剥いて冷や汗。

 

「とりあえず酒だろ? そんでツマミになりそうなモンを、片っ端から頼もうぜ。

 こんな会でも、タダ飯には違いねェ。食わなきゃ損ってモンだ」

 

「おまっ……!」

 

「えっとぉ~、悶絶ファイヤー焼売にぃ、粘膜崩壊カラアゲにぃ、ターミネート( 終わらせる )春巻きだぁ?

 おぉっ! ピリ辛☆餃子(笑)だってよ! コレいっとくかオイ!」ケラケラ

 

「まてまて待てッ! 落ち着きたまえよ君ッ!」

 

「ステイですランサー! ステイ!!」

 

 群がる。ランサーの周りに。

 今にも「おーい女将ぃ~」とばかりに魃さんを呼びつけようとしている彼を、総出で押し留める。

 関係無いが、なんか料理名もおかしかった気が。

 

「取り上げてっ! 誰かメニュー表をっ!」

 

「大人しくせぃ! 暴れまいぞランサー!」

 

「■■■ッ! ■■■!!」(うお速っ! 気持ち悪いくらい速いっ!)

 

「バーカ! 捕まるかよノロマ! こちとらコレで飯食ってんだ!!」

 

 掴みかかろうとする仲間たちを躱し、ランサーが店中を駆ける。

 縦横無尽に、ドリブルをするサッカー選手みたく。時に天井や壁を蹴りながら、槍を棒高跳びの選手みたいに駆使しながら、ヒュンヒュン動き回る。

 なんという俊敏性ッ! 流石は槍の英霊! ……タチ悪っ!!

 

「降りて来なさい! それでも貴公は英雄か!」

 

「何がクランの猛犬よっ! ただのバカ犬じゃないの!」

 

「いや、あんなの猿ですよ! なに天井にぶら下がってるんですかっ!」

 

「どーしたどーしたクソ共! 早くしねェと注文しちまうぞォ?

 おっ、なんか“この世全ての悪( オードブル )”とかいうのがあんなぁ~♪

 おーい中華の嬢ちゃーん!」

 

「「「 いやぁぁーーーっ!!!! 」」」

 

 ――――やめろっ! それだけはッ!!(迫真)

 この場の誰もが絶叫。オロオロ狼狽えながら懇願する。

 というのも、かの“この世全ての悪( オードブル )”は、先ほど仲間たちもメニュー表で確認しており、その上で「絶対に頼むまい」と心に決めていた品だったのだ。

 宴会や大人数を前提とした、そのボリューム! 肉団子だろうが八宝菜だろうが、全てが赤一色に染まった悍ましい見た目よ!

 もう直視するのも嫌だった為、チラッとしか見てはいないのだが……、正にアンリマユの名を冠するに相応しい、あたかも仏教における八大地獄が一皿になったような品だった。

 

「拙いっ……! それだけはいけない!

 アルトリア・ペンドラゴン調べ、“二度と食べたくない料理”、第一位ですっ!」

 

「■■■ッ!」(ゴッドハンドが全て消し飛んでしまう! やめるんだランサー!)

 

「サクラッ! 宝具の使用許可を! 眼帯を外させて下さぁーい!」

 

「別に倒してしまっても構わんのだろう!? このままでは全滅するぞ!」

 

「届かぬっ! 物干し竿ぜんぜん届かぬ! おのれぇーッ!」ブンブン

 

「うるせェー! 今の手番は俺! 権利は俺にあんだよ!

 あー気分いいぜオイ☆」 

 

 関係無いけど、物凄く良い笑顔だっ!!

 これまで散々こき使われ、不遇な戦いを強いられて来た鬱憤を、ここで晴らすが如く!

 いま輝いてる! ランサーめっちゃ輝いてる!! とっても楽しそう☆

 

「■■■!」(おおランサー! ランサーよ! 人の皮を被った鬼めっ!)

 

「何が君をそうさせるのかね! 話し合おう! 我々には交渉に応じる用意があるッ!」

 

「なにヤケになってんのよ! アンタなんて嫌いよバカ! バカァー!!(語呂力消失)」

 

「死ぬなら一人で死んでくださいっ!

 道連れなんて酷いです! このひとでなしー!」ビエーン

 

「がっはっは!

 さぁ泣け! 命乞いをしろッ! 俺を呼んだ冬木の聖杯を恨むこったなァ!

 我が名はクー・フーリン! 地獄に行っても忘れんじゃねェぞウケケケ!(ノリノリ)」

 

 もう駄目だぁ……! オシマイだぁ……!

 そんな声が聞こえてきそうな光景。この絶望感よ。

 過去には一騎当千と称されたであろう英霊達が、いま雁首を揃えて「助けて下さい!」と懇願。

 ははーっ! と農民のように、恥も外聞も無く許しを乞う。勘弁して下せぇお侍様!

 言っちゃ悪いが、とっても情けない光景。もう生前の武功など面影すらなかった。

 

 またシロウと街を歩きたかった……!

 宗一郎と幸せに暮らしたかった……!

 話に聞くグラコロというのを食べてみたかった……!(しょうもない人生)

 そんな怨嗟の声が渦巻き、「おーいおい!」とサヴァ達が泣く。地獄であった。

 

 

「あー笑った笑った! っと。

 んじゃあ、おふざけはこの辺にしとくかね」

 

 

 だが……ふいにクーフーリンが。

 

「わりぃわりぃ! あんまりにも良いリアクションするもんだからよォ?

 ちと興が乗っちまった。許せや」

 

 フワッと、手元にあるメニュー表を投げる。

 それは先ほど「取り上げて!」と騒いでいたキャスターのもとへ。

 有り体に言って、これは彼が()()()()()、その意思表示であった。

 

「ま、普段さんざん弄られてっからよォ? 軽い意趣返しだと思ってくれや。

 それ以上の意図はねェし、別にヤケ起こす気もねェよ」

 

 たまにはこーいうのも良いだろ?

 そう言って「いよっと!」と床に降り立つ。

 ポカーンとした仲間たちを余所に、さも当たり前のように、何気なく。

 逃げ回っていた先ほどとは一転。柔らかな表情ながら、真剣な面持ちで、堂々と皆と向かい合って見せた。

 

「だがよォ、さっきのセイバーの言葉じゃねェが……。

 お前らちぃとばかり、()()()()()()()()()()()

 なんだオイ、そのなっさけねェツラはよォ」

 

 一同はハッとする。

 いま彼がしている、諭すような言葉に。

 決して侮蔑や叱咤ではなく、どこか“友を鼓舞する”ような、その声色に。

 

「言ったろ? ヤツらをビビらせる、舐められっぱなしじゃいられねェと。

 だからよォ……俺ぁもう『思いっきり楽しんでやろう』って、そう決めてんだ」

 

「こちとらタダ飯が食える、お前らと飲めると聞いたから、わざわざ来てやったんだ。

 なんかゴチャゴチャしちまってるが、俺は当初の目的を曲げるつもりはねェぞ?

 意地でもお前らと飲んで、たらふく食ってやる」

 

「よぉライダー、オメェも言ってたろうが。やろうや“お疲れ様会”。

 連中の思惑なんざ関係ねェ。我が道を往くのが英雄よ。

 俺らサーヴァントの打ち上げ、ここでかまそうぜ」

 

「俺がやりてぇのなんざ、その程度の事さ。

 飲んで騒ぐ。心行くまで。お前らとだ――――

 いっちょ第五次の思い出話でも、花咲かそうじゃねーか」

 

 さっきまでのおちゃらけなど、もうどこにも無い。

 強い意思と、英霊としての矜持が籠った、とても真っすぐな言葉。

 悪びれないカラカラという笑い声が、そのあったかい笑みが、とても彼らしくて様になっている。

 ゆえに……もう怒る気にもなれない。

 

「――――賛成だ。貴公の提案を受けよう」

 

 突然、セイバーが口を開いた。

 どこか弛緩していた空気が、このキッパリとしたひと声により、引き締まる。

 

「ドタバタも一興だが、友と酒を交わす喜びは、何物にも代えがたい」

 

「おっ、分かってんじゃねーかセイバー。流石は円卓の騎士ってか?」

 

「だがランサーよ、先ほどの“ひよっている”だけは、撤回させるぞ?

 こと食に関して、後塵を拝するワケにはいきません。目にもの見せましょう」

 

「へっ! やってみろや、アーサー王さんよ」

 

 二人が連れ立って、テーブルの方へ。

 物言わずとも、まるで通じ合っているかのように、静かに席に着いた。

 この場の者達を置き去りに、さっさと自分達だけで。

 

「義を見てせざるは勇なき也……か」

 

 たった二人、スッキリとした顔で座っているランサー&セイバー。

 その姿を暫し見つめた後……、一度だけ目を伏して「ふっ」と笑ったアーチャーが、スタスタと彼らに続く。

 

「ここまで言われて動けぬようでは、玉無しの誹りは免れん。

 筋力Dの低ステ弓兵にも、譲れん物はあるのさ」

 

「根に持つねェ、お前さんもw

 まぁ座れやアーチャー。酌くらいしてやるよ」

 

「歓迎しよう、共に戦おう友よ」

 

 まだお酒は来ていないので、乾杯は出来ないけれど、その代わり三人でコツンと拳を合わせる。「やってやろうぜ」って感じで。

 絶望感に覆われ、あれだけジメジメしていたハズの空気が、あの中華テーブルの一角だけ澄み渡っている。空から太陽が差し込んだみたいに。

 

 その光景を見て、なにやらワナワナと震えているのは、もちろん残された4人だ。

 誰もが歴史に名を残す英霊。まごう事なき戦士である。

 

「なに三騎士でイチャついてんのよ……。馬鹿にしてっ……!」

 

「なんですか、あの清々しい顔……。ムカつきます……。

 反英雄だからって、いつもいつも陰キャ扱い! そんなの願い下げなんですっ!」

 

「侮るな! 激辛なにする物ぞ!

 お主らは佐々木小次郎を知らぬのかッ!」

 

「■■■」(いやお前農民だろ。……まぁ良い、俺達も付き合うぞランサー)

 

 ある者はプンプンと肩を怒らせ、またある者はドシドシと勇ましく音を立てながら。

 いま再び、泰山の中華テーブル席に、第五次のサーヴァント七騎が集結した。

 

「やってやるわよ! 何でも来なさいな!

 ほら頼みなさいよランサー! あの“この世全ての悪( オードブル )”とかいうヤツ!」

 

「応ッ! 中華などに屈するか! 大和魂を見せてくれるッ!」

 

「ぜったい完食しますから!

 日陰者にも意地があるんです! 死なば諸共ですーっ!」ムキーッ

 

「お~、なんか吹っ切れたなオイw いい面してんじゃねーかw」

 

 さっきメニュー表を手放したが、もうそれを見る必要はなさそうだ。

 んじゃ、遠慮なく。そうニヤニヤ機嫌良さそうな顔で、彼が魃さんを呼びつける。

 

 

「よぉ嬢ちゃん! とりあえず生中7つだ!

 ほんで、この世全ての悪( オードブル )――――貰い受けるッ!!」キリッ

 

「出たぁー。ランサーのゲイボルグ注文だー(棒読み)」

 

「え、こういうのやらなきゃ駄目です? 全員?」

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 帰れま10in泰山、ランサーが選んだ三皿目は【この世全ての悪( オードブル )

 

 7つのゾーンに区切られた大皿に、それぞれエビチリ?、牛肉のオイスター炒めっぽい物?、味付け唐揚げ(意味深)、蒸し鶏らしき物体、敢えて言うなら春巻きに似たナニカ、焼き豚という名の赤い悪魔とも言うべき悍ましい肉塊、そしていわゆる“酢豚”という料理と無視できないレベルの類似性が認められるものの恐らくそれとは別物であろう事が容易に見て取れるような謎の豚肉料理などなど……。

 そんなバライティ豊かな品々が、ひとつの皿に勢ぞろいっ!

 

 まさに“中華のお子様ランチ”と呼ぶに相応しい、みんなが大好きな物をこれでもかと詰め込んだ、夢いっぱいのカーニバル・ファンタズム☆

 それが泰山が誇る至高の盛り合わせ、この世全ての悪( オードブル )なのだっ!

 

 

・ナレーター: 言峰フルテンション綺礼

 

 

 

 

 

 

「ハイヨー! アンリマユおまちどうアル~♪

 うんしょ、うんしょ」

 

 ――――でかっ!?!?

 それがサーヴァント達の抱いた第一印象。

 

 身体の小さな魃さんが、まるでアフリカあたりの水瓶を頭の上に乗せて運ぶ人みたいにして、オードブルを運んで来る。

 その大皿の直径は、明らかに魃さんの身長より大きい。いくら脳天で支えているとはいえ、よくそんなの持って来られたなと関心するサイズだ。

 

 メニュー表を見る限り、コレは全7品の料理から構成されているようなのだが……そのひとつひとつが山のようにコンモリ盛り上がっている。

 沢山の料理をちょっとづつではなく、全部が“大盛り”なのだ。

 恐らくトンデモナイ重量となっているだろうに、魃さんはカラカラと機嫌良さそうに笑いながら、「よいしょーい!」と大皿をテーブルに置いて見せた。

 

「いや~嬉しいアル! まさかこれ注文する()()()()()()()()()

 あの言峰やカレンでも、頼まんかたのに。お前ら命いらんアルか?」

 

「「「……」」」

 

「死んで二階級特進カ? なんか嫌な事あたカ? ()()()()()()()()()

 ま! アタシ腕によりをかけて作たから、堪能するヨイ! これが中華の神髄ヨー☆」

 

 そして、貴様らの最後の晩餐アル――――

 料理場に下がっていく去り際、そんな彼女の声が聞こえたような気がした。

 

 

「……何ですかこれは? ヒマラヤ山脈ですか?」

 

「8000メートル峰の山々が、ズラリと並んでるように見えるのだけれど」

 

「無駄に壮観だな。

 まぁ雪山ではなく、ぜんぶ火山みたいな色だが」

 

 赤いエベレスト、唐辛子で出来たK2、山椒のアンナプルナ、デスソースのマカルーetc.

 そんなニルマル・プルジャでも裸足で逃げ出すような、絶対に挑みたくない感じの山々が、いま眼前にドーン! と鎮座している。

 

「ぶっちゃけコレ、()()()()()()()()()

 

「ええ。先ほど魃さんも、“誰も頼まない”的な事を……」

 

「これより我らが歩むは、まさに修羅道というワケか。是非も無き事よ」

 

「■■■」(というかネタバレじゃないか? いいのかアレは)

 

 こんなモンがTOP10にあるワケが無い。

 分かっていた事とはいえ、改めて実物の料理を目にしてみると、嘆息が漏れそうな心地。

 なんかもう、「俺達は何やってんだろう」みたいな気持ちも、湧いてこない事もなかった。

 しかし、事前に運ばれていたビールジョッキを手に取り、一斉に「乾杯!」と叫んだ時、既に皆の心は決まっていたのだ。

 

 この会を楽しむ。俺らの打ち上げをやる――――

 たとえどんな事があろうと、意地でも飲んで騒いでやるんだと。

 

 ちなみにだが、既にサーヴァント達は生中を一息に飲み干しており、もう何度目かのおかわりをしている。メインである料理が届く前に、だいぶ酒が入っていた。

 そんな状態ではあっても、各自が取り皿を手に、どの料理をいこうかとウンウン吟味する。

 

「いけるな貴様? まぁ、空気で構わんがな」

 

「どっかで聞いたセリフねぇ、それ。

 ならば自分で死を実践してみせろ! って誰がブラスメイデン( 娼婦 )よ馬鹿」

 

 ほろ酔い状態のアーチャーが、キャスターにウザ絡みを敢行。

 中華料理・泰山……大げさな伝説も今日で終わりだ。……とばかりに。

 

「ほう、蒸し鶏かねキャスター。

 だが心しておけッ……! 貴様らの惰弱な発想が、人類を壊死させるのだとッ!」カッ

 

「人類など、どこにもいないさ……ってそーいうの止めなさいよアーチャー。

 水没させるわよ?」

 

 周りの面子がキョトンとする中、二人はワケの分からない事を言い合う。

 ――――元より貴様らの始めた事だろうがッ!!!!

 そうどこからか現れた大河が叫んだが、即座に士郎くんにズルズルと引きずられ、退場して行った。いったい何だったのだろう?

 

「うっし、準備出来たな?

 そろそろおっぱじめるとすっか」

 

 やがて吟味を終えたサヴァ達が、自分の好きな物を取り終えた。

 今みんなの皿には、色とりどりの……と言いたい所だが悲しいくらい赤一色の料理たちが、盛り付けもクソもあったモンじゃない感じでコンモリと盛られている。

 ひとり頭の取り分が、ちょっとした大盛り店の定食くらいある事には、もう閉口するしか無かった。

 

「例によって俺から行くが……その前にひとつ提案だ。

 よぉ英雄共、いっぺんコレ()()()()()()()()()()?」

 

 は? という顔をする一同を前に、ランサーがニヤッと口角を上げる。

 

「表情を変えず、“普通”に食うんだよ。

 ちょっとでも面をゆがめたり、辛いだの何だの言ったヤツは、その場で罰ゲーム。

 ……ってのはどうだ?」

 

「おぉ、なんか楽しそうです♪」

 

「■■■」(よかろう、のったぞランサー)

 

 オドオドしながらではなく、ガハハと笑いながら。

 辛い事に耐えるのではなく、ゲームのように楽しみながら。

 こういった心構えはとても大切だと、メンバー達は賛同。速攻で可決。

 生前はツライ戦いばかりを強いられ、その上で何度も生き残ってきたというクーフーリン。そんな彼らしい、しなやかな強さから来るアイディアだと思った。

 それに、やはり飲み会をやるのなら、こういったゲームは欠かせない。

 みんな「どんと来い!」って感じで、ワクワクしている様子。

 

「んじゃあ食うが、せっかくだから喋りながら食ってみっか。適当によォ」

 

 手元のお皿を見る事もなく、ランサーが皆の方を向きながら、料理を口に運ぶ。

 

「知っての通り、俺の名はクー・フーリンだ。

 此度の生ではランサーのクラスを冠し、ここ冬木に現界し※▲□★〇◆――――」

 

「あ、ダメみたいですね(察し)」

 

「綺麗~に崩れ落ちたな。狙撃でもされたかのように」

 

 機嫌良くおしゃべりをしつつ、パクッと春巻きを口に入れた途端、机に突っ伏した。

 何の前触れもなく、突然電池が切れたみたいに、ガックー!

 

「おい、喋らぬかクーフーリン。

 冬木に現界して、何ぞ?」

 

「白目剥いてるわよコイツ。

 意識飛んでるじゃないの」

 

「■■■」(いくら敏捷性Aでも、即落ち過ぎるだろ)

 

 真顔とは何だったのか。あの自信はなんだったのか。

 いま彼はグッタリ倒れ伏しており、ピクリとも動いていない。瞬殺であった。

 

 恐るべきは、この世全ての悪( オードブル )

 ……だがその恐怖が心を支配する前に、何か余計なことを考えてしまう前に、ライダーが動いた。

 

「では時計回りという事で、私が続きますね?

 こんにちは。私はメデューサといいます」

 

 例によって手元を見ること無く、まっすぐ前を向きながら料理をパクッ。

 

「姉が二人いるのですが、これがビックリするくらいに、愛らしい人達で。

 普段は辛辣なのですが、たまに優しい時もあるから、どうしても嫌いになれz」ゴフゥ

 

「吹きましたね、真顔のままで」

 

「そして糸が切れるように死んだな。

 無駄に流れるような動作だ」

 

 ライダーが沈黙。まったく動かなくなる。

 チーン♪ と音か聞こえてきそうな様子で、同じく机に突っ伏した。

 きっと、辛いとか痛いとか思う前に、意識を刈り取られたのだろう。

 

「きっとライダーは、【駄目男に引っかかるタイプ】ですよね?

 確かに殴られるけど、良い所もあるの。この人には私がいてあげなきゃ~、と言ってのけるような」

 

「いわゆる“共依存”というヤツね。

 まぁ本人が幸せなら、それで良いんじゃないかしら。

 次は私がいくわね~」

 

 長い髪をワッサ~とテーブルに広げている彼女を「あーあ」と見つめながら、今度はキャスターが皿を手に取った。

 品の良い笑みを浮かべながら、上品にお箸を操る。

 

「私はメディア。葛木さん家の若奥様よ♪

 この前バターを切らしちゃってね? 似たようなモンでしょと思って、マーガリンで卵を焼いたのよ。オムレツを作ってやったの。

 そしたらなんか、それを食べた宗一郎が、今まで聞いたこと無い声で『おっふぇ!?』って言ってから、暫く一人っきりで部屋に籠r――――」ガッシャーン

 

「キャスターも駄目だったか」

 

「おもいっきりテーブルに頭を……。即座に崩れ落ちよった」

 

「■■■」(これは天罰だと思いたい)

 

 メシマズ嫁に天誅が下された。そうウンウンと頷く一同。誰もメディアに同情しなかった。

 

「佐々木小次郎、アサシンのサーヴァントだ。

 近頃、あまりにも山門の見張りが暇でな? 無駄に円周率を4千桁くらい暗記s」ボフゥ!

 

「■■■■……」(ヘラクレスだ。イリヤに狂化をかけられた状態で、ワンピの二次小説を書くのがライフワークになっているぞ。ハメの感想欄で「貴方は頭がおかしい」と言われたりもするが、仕方ないじゃないか俺はバーサーk――――ゴハァ!!??)

 

「我が名はアルトリア・ペンドラゴン。ブリテンの王だ。

 この前、マリオカートで抜かれそうになった時、思わずシロウの脇腹に、渾身の足刀蹴りを叩き込んでしまいました。

 危うくごはん抜きの刑に処される所でしたが、後でお風呂に背中を流しに行って、見事お咎め無しを勝ち取っt」オフゥ!

 

「クラスはアーチャー、真名はエミヤだ。

 中山き〇に君のYOUTUBEを見るのが、最近の日課になっているよ。

 おい俺の筋肉! やるのかいやらないのかい! どっちなんだい! やぁ~~るッ!(キリッ)

 とか言いながら70㎏背負ってブルガリアンスクワットをs」ブホォッ!

 

 結論から言えば、全員アウト。

 誰もが料理をひと口食べた途端、即座に噴飯して気絶。この世全ての悪( オードブル )の前に屈した。

 

「んだよ、全然ダメじゃねーか俺らw」ケラケラ

 

「この場合はどうなるんです? 全員罰ゲームですか?」

 

「おうよ、順番にやるしかねェだろ。

 料理はまだ、たんまり残ってんだ。これ摘まみながらいこうや」

 

 やがて、なんとか持ち直した一同が、罰ゲームの執行に入る。

 まさか全員瞬殺とは思わなかったが、一度決めた以上はやらなくてはならない。ルールはしっかり守ってこそ、意味があるのだ。

 関係無いが、普通にムクッと起き上がってみせる頑丈さが、サーヴァントたる所以なのかもしれない。またはコメディ補正とも言う。

 

「そんじゃアンタ、“自分のマスターの嫌いな所”を、ひとつ言いなさいな」

 

「ああん? そんなんで良いのかよオイ。100個くれェ言えんぞ?」

 

「「「おー、やれやれー♪」」」

 

 キャスターの何気ない提案に、みんな前のめりで囃し立てる。いったれいったれと。

 

「まずは……まぁ人間の屑だわなwww

 というか、そもそも()()()()()()()

 誰か教えてくれや、言峰やカレンの良いトコをよ」

 

「「「あっはっは!!(爆笑)」」」

 

 馬鹿舌だし、サイコだし、性格クッソ悪いし。

 そりゃあんなドSの娘生まれるわ、救いようがねェよあの親子。そうランサーがカラカラ笑う。

 前の主人であるバゼットについては、彼いわく「女として終わってる」のだそうだ。

 食生活の適当さのみならず、戦闘以外のありとあらゆる事に対して無頓着。コミュニケーション能力も皆無ときたもんだ。あれじゃあ嫁の貰い手がねェわなぁ、との事。

 まぁそれでも、ランサー的には随分と気に入っていたらしく、友であったり背中を任せる分には最高で、妙に人間的な魅力のある“いい女”だと評していたのが、とても印象的であった。

 

「次はテメェだライダー。

 あの間桐の嬢ちゃんの“恥ずかしい秘密”を、ひとつ言いやがれ」

 

「えっ、サクラのですか?!」

 

 コイツが桜至上主義なのは、みんな知っているので、少し変化球。

 愛するマスターの秘密をぶっちゃけやがれ、そうやんややんやと盛り上がる。

 

「そんなっ……! いくら罰ゲームとはいえ、サクラのだなんてっ!

 ……あ、でもこの前、彼女がシロウの分のクリームシチューに、こっそり“謎の体液”を混入しているのを見ました!」カッ

 

「おー、やってんなぁあの嬢ちゃん!w 業が深いねェ!!w」

 

 ゲラゲラゲラ! とみんなの笑い声が響く。

 どの体液なんだね! 言いたまえよ! イヤねぇそんなの決まってるじゃない♪ ヤボなこと言わせないで下さいよ☆ そう大盛り上がりだ。

 まぁ中には若干一名ほど「シロウのだけですよね!? 私のは大丈夫ですよね!?」と慌てている様子の騎士王もいるが。ご愛敬である。

 みんな程よく酒も入っているし、少しタガが外れているのだろう。テンション上がってきた様子。

 

「じゃあ私の番ね~。

 この前、宗一郎に『コスプレをするとしたら何が良いですか?』って訊いてみたのよ。

 そしたらあの人、少し頬を赤らめながら、『()()()()()()()()()()』って!w」

 

「――――マニアック! マニアックですね宗一郎さんっ!」

 

「未亡人プレイ! 分かるぞ宗一郎殿! 天晴ッ!」

 

 きっと、勇気を出して言ってみたんだろうなぁ~。

 寡黙な人だけど、あの人メディア大好きだからネ~。良かったね葛木先生っ!

 そう微笑ましい気持ちになる一同。

 

「なぁ、もちろん着たんだよな?

 彼のカワイイお願いを、聞き届けてやったのだろう?」

 

「あったり前じゃないの! 着ないでどーするのよっ! わたし五分後には喪服着てたわ!

 でも……また5分後には()()()()()()()()()(大爆笑)」

 

「――――惚気てんじゃねェぞ!w ふざけんなよテメェ!!w」  

 

「何が罰ゲームですか! こんなのお金貰わないと聞いてられませんよ!w」

 

 いや~、まいったわねぇー☆

 そう近年稀に見るほど「絶好調!」のメディア。

 どんだけレンゲとかおしぼりとか投げられようが、まったく怯む様子もなく惚気続ける。

 皆さーん! 葛木メディアで御座いまーす♪ 新妻でぇーす♪ とばかりに。

 

「では引き続き、彼女のサーヴァントであるアサシン、いってみようか」

 

「うむ、任せよ双剣使い」

 

「っ!?!?」

 

 そんな上機嫌な彼女の顔が、小次郎がスッと立ち上がった途端、ピキーンと凍り付く。

 

「私は常に山門に居ろう? だが煩ぅてかなわん。こちらまで声が届きおるのだ。

 丑三つ時になっても、飽きもせず“何やらやっているらしき声”が聞こえてな?

 アヘェ~だの、ブヒィ~だの、()()()()()()()()()()()()()

 

「――――イヤァァァアアアーーッッ!!!!」

 

 表にいる小次郎に聞こえる。それ即ち「辺り一帯に響いている」という事。

 当然、寺の者達にも丸聞こえだろうし、近隣の皆さまの耳にも届いているかもしれない。

 しかもなんだ「ブヒィ~」って。どんな声出してんだメディア。

 

「真正のドM(小声)」

 

「不憫だった人生が、性癖にも影響して……」

 

「変な薬とか作ってそうですね。

 絶倫になるヤツとか、感度3000倍とか……」

 

「夜のルールブレイカー(意味深)」

 

「やめてよ! 作んないわよそんなの!

 全部デタラメだってばぁー!」

 

「■■■」(あ、その性癖のせいで、離婚したんだったか?)

 

「――――してない! 離婚してない! 指輪もしてるっ!」

 

「ほう、ではいつ離婚するのかね?」

 

「――――しない! 離婚しない! 添い遂げる!(必死)」

 

 さっきまでの陽気はどこへやら。一転して「うわぁ……」とドン引きしている一同。

 メディアは一生懸命に弁解するが、なしのつぶてだ。

 

「■■■」(次は俺か。だが困ったな……)

 

 彼女が「ムキィー!」とワチャワチャやっている間に、罰ゲームの手番はバーサーカーに移る。

 彼の主と言えばイリヤだが、なにやらうーんと考え込んでいる様子だ。

 

「■■■■」(我が主の恥ずかしい秘密など、あまり思い付かんな……。年頃の女の子相応の“愛らしい秘密”ならば、いくつかあるのだが)

 

「ふむ、イリアは純真ですから。

 分かる気がするぞバーサーカーよ」

 

 正直ちょっとサイコ入ってたり、無邪気に人をターミネートしたりもするけど……、それは人慣れしていないせいだったり、生まれや環境のせいだったり、純粋さゆえの部分も大きい。

 あの子はとても良い子で、人を気遣う心や、思いやりも充分に持ち合わせている事は、この場の全員が知っているのだ。

 

「■■■■」(そうさなぁ。イリヤは先日、ついにアハト翁を打倒し、ヤツを東京湾の魚の餌にしてやった……という風な話なら)

 

「それ秘密じゃないわ、()()よ」

 

 アハト爺の身体を粉砕機にかけ、漁船から海に撒いて証拠隠滅したよ☆ これで安心だよねシロウ!

 そんな女の子の秘密は、聞きたくなかった。

 

「では、私の番か……。

 シロウの良くない所と、恥ずかしい話、どちらが良いですか?」

 

「どちらでも構わねェが、この際だし、ぶっちゃけちまったらどうよ?

 あるならどっちも言えよw」

 

 どこか沈痛な面持ち。覚悟を決めた顔のセイバー。

 景気付けに「えいやっ!」っとばかりに、酢豚だの焼き豚だのをモゴゴッとかっ込む。

 

「ではまず、良くないと思う所をあげよう。

 これは決して悪い部分というワケではなく、まだ“未熟”なのだと解釈して頂きたい」

 

 おごごごっ……! と数回ほど身震いした後(きっと辛さや刺激に耐えているのだろう)、セイバーは行儀よくナプキンで口元を拭い、語り始める。

 

「私はシロウの剣術指南役を承っている。

 日々鍛え、教え、導き、共に汗を流しているのです」

 

「おお、坊主がんばってんなオイ。

 いくら得物が竹刀でも、お前を相手にするってのは、並大抵の事じゃねェ」

 

「はい、私もそう思う。

 ですが、まだまだ良し悪しの見極めが養えていないというか……。

 有り体に言って“見る目”が無いのではと」

 

「ん?」

 

 どことなく不満げな、ぶすっとした顔。

 そしてどこか的を得ない言い方。

 

「見えるのですよ。時折シロウの剣筋に、()()()()()()()()()()()()()

 

 あっ(察し)

 この場の何人かが、そっと彼女から目を逸らしたのが分かった。

 

「アーチャーは、分からない事も無い。

 ある意味、シロウの理想たる存在ですし、アーチャーを参考にすることに異論は無い。

 けれど……()()()()()()()()()

 なぜシロウの剣筋や足運びに、貴方の面影が?」

 

「……」

 

「私ですよね? シロウの剣術指南役。私の教え子のハズだ。

 貴公は、サクラのサーヴァントだろう? 余所の子ですよね?

 ライダーよ、一体いつの間に、シロウと道場で会っていた?」

 

「……」

 

 修羅場の雰囲気がするっ! 昼ドラの匂いがする!

 この泥棒猫――――そう言わんばかりに睨むセイバーと、無言で目を逸らすライダー。

 なんか空気がピリピリしてる気がする。

 

「とはいえ、誰しも目移りする事はある。

 特に若い内は、様々な物に目が行きがちだ。

 シロウはとても頑張り屋さんですが、まだまだ未熟ですから」

 

 ふぅ、とセイバーがひとつため息。

 

「少しでも強くなりたい、その為にはどうすべきか……。

 そう考え、模索していくのは、とても大切な事だ。

 その一生懸命さの結果として、特徴的で、異質で、()()()()()()()()()()()()()()、貴方のけったいな体術に目を奪われてしまうのも、仕方ない事だ」

 

「っ!?」

 

「非常に残念だが、情けなくはあるが、ただただ()()()()()貴公に指南を乞うてしまったのだ。

 たとえ我が剣こそが王道で、一番だと理解してはいても、時には魔が差す事もあるだろう。

 きっと『少しセイバーを驚かせてやりたい』という可愛いイタズラ心が湧き、ついつい貴方に声を掛けてしまったのでしょうね……。

 他ならぬ私の為、嫌々()()の体捌きを学んだのだ。この私の為に(二度目)

 あぁなんと愛おしき我がマスターよ! 大丈夫、私は分かっていますよシロウ♪」

 

「っ!!??」

 

「という事でライダー、貴方に感謝を――――

 ですが、もう結構ですよ♪ お手数をお掛けしましたね♪」

 

 今後は私が、責任を以ってシロウを指南する。

 ゆえに、貴公はお役御免だ。今までありがとう御座いました。

 そうセイバーがニコッ☆ と微笑み、キッパリと告げた。

 貴様はサクラと乳繰り合っていれば良いのだ。二度とシロウに近付くな、このクレイジーサイコレズめと(本音)

 

 関係ないけど、寒い! この場の空気が! 凍てつくような極寒だッ!!

 アーチャーもキャスターもバーサーカーも、普段は飄々としているアサシンでさえ!

 みんなガクガクと震えながら、南極にいるペンギンのように身を寄せ合っている。恐らく無意識下の事だろうが、この凄まじい冷気に耐えかねているかのように。

 たった一人……、いま額に青筋を浮かべているライダーを除いて、ではあるが。

 

 

「――――おうワレ、よぅ言うたのぅ。この乳無しがコラ」

 

「「「 !?!?!? 」」」

 

 

 突然この場に響く、低くてコワイ声、

 ここ冬木では聞く事の無かった、なんかガラの悪い口調。

 

「……失礼、近頃“任侠物”の小説を読んでいるもので。

 ナニワの言葉使いが出てしまいましたね」

 

 メガネをクイッとやるインテリヤクザみたいに、目元の眼帯を直す。

 セイバーを始めとし、皆が「!?」と凍り付く中で、ただ一人ライダーだけは冷静だ。その蒼い炎の如く燃え盛る内心はともかく。

 

「まぁ本の一冊も読まない貴方には、知る由もない事ですが。

 さて、何でしたか……指南?

 あぁすいませんセイバー。あまりにも貴方のマスターが、()()()()()()()()()()

 

「ッ!?」

 

「せっかく才能があるのに。あれだけ懸命に鍛えているのに。

 でも毎日毎日、()()()()()()()()()をやらされ、その芽を潰されていた。

 同じ日本人であるアサシンの剣ならいざ知らず……古臭いブリテンの剣術を(笑)

 私はそれが不憫で不憫で……、助け船を出さずにはいられなかったのです。ついね?」

 

 コテンと小首を傾げ、悪びれない顔。大人の女性の余裕を感じさせる表情。

 しかもさりげなく腕組みをし、その豊かな胸を強調している。眼前の小娘に見せつけるようにして。

 

「困っている誰かに手を差し伸べるのは、人の情という物です。

 許して下さいねセイバー。どうやら心ならずも、()()()()()()()()()()()()()

 いやー、そんなつもり無かったんですけどー。ホントにホントにー(棒読み)」

 

「ありがとうライダー! すげぇ勉強になったよっ!

 やっぱライダーは強いな~! 動きに華があるっていうかさ? 思わず見惚れちまった!

 ……そう無邪気に笑ってくれるのが、堪らなく嬉しくてね?

 あ、ごめんなさい。そんなシロウの楽しそうな顔、()()()()()()()()()()()()()()()

 

「いつも『痛くなければ覚えませぬ』とばかりに、一方的に打ち据えるばかり。これではシロウが伸び悩んでしまうのも、無理はありません。

 そりゃあ子犬みたいに可愛い顔しながら、私の方にすり寄って来ちゃいますよ。

 しかもブリテン流ってw 1000年以上前の剣術ってw

 日本人が両刃の大剣握ってる所、一回でも見た事あるんですかw 貴方w」

 

「ねぇどんな気持ち? セイバーどんな気持ちです?

 己の不徳でマスター取られちゃうのって、さぞ情けないでしょうねー。

 こうして誰かに、八つ当たりしたくもなるという物です♪」

 

「というか……おぅ貧乳、血ぃ吸うたろかぃ。シロウの血ぃ吸うたろかぃ。

 いつでも寝取ったるぞボケが(真顔)」

 

 ――――誰だ! こいつに酒を飲ませたのはッ!!!!

 眠れる獅子を起こしてしまった! もう目ぇ座っとるがな!

 そう引き続き、ガックガク震える一同。まぁ昼ドラ的なのが大好きなランサーだけ、なんかテンション上がっているようだが。

 

「駄目だっ! こうなったらもう、肉体で語るしかありませんっ……!

 やりますよセイバー!」

 

「我らは言い過ぎてしまった……もう後には退けんっ!

 戦いましょうライダー! ぬるぬるオイル相撲で!」カッ

 

「おーい坊主ぅー。サラダ油もってこーい。

 あと庭で使うプールみてぇなヤツー」

 

 急遽スタッフ(士郎達)によって、ぬるぬるオイル相撲の為のリングが用意され、その中でセイバー&ライダーがワーキャー言い合う。

 お互い油でドロッドロになりながら、ツルツルとくんずほぐれつ。どったんばったん。

 酒の力とは恐ろしい物で、ついつい一線を越えた口喧嘩をしてしまった二人は、また同居人としてこれからも仲良く暮らしていく為に、ここで全力を以って戦い、遺恨を無くす事にした。

 

 関係ないが、普段衛宮家で喧嘩しそうになった時も、二人はよくこうやって、士郎や桜立ち合いの下、ぬるぬるオイル相撲をおこなっている。

 道場も竹刀もあるんだし、そこで戦えば良さそうな物だけど、何故かいつもこっちで勝負するのであった。仲良きことは美しき哉。

 

 

 

「えっと、次は私の番なのだが……、コレいるかね?

 既にオチてしまっている気がするのだが」

 

 そんな二人を余所に、アーチャーは額に汗を浮かべる。

 みんなもセイバー達のぬるぬるオイル相撲を横目で眺めつつ、我関せずと言ったようにオードブルをパクつく。辛い辛い言いながら。

 

 まぁとりあえず言っとけよ。オチとか気にせんでもいーからよ。

 そうランサーに気遣われ、どこか腑に落ちない気持ちで【マスターの恥ずかしい秘密】を暴露するアーチャー。

 

「凛は毎年、桜君の誕生日に合わせて、貯金をおこなっていてね?

 お昼をコッペパンひとつで済ませたり、具無しのかけ蕎麦を食べたりし、そうして浮かせた小銭を少しづつブタの貯金箱に貯めて、妹の誕生日プレゼントを買うのだ」

 

 オイ普通に良い話じゃねーか。止めろよお前こんなタイミングで。

 そう「空気読めよ」と皆に怒られるわ、赤面した凛にグーパンされるわで、ロクなもんじゃないアーチャーであった。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 【この世全ての悪( オードブル )】は、アタシが好きなモンをしこたま詰め込んだ、まさに泰山の魂とも言うべき一皿アル!

 まぁウチの店で宴会やろうなんて馬鹿は居ないし、これ出前で注文された事も、一回たりとも無いけどネー♪

 

 ぶちゃけた話――――これ頼んだヤツは立て帰れない。

 というかもう()()()()()()()くらいの気持ちで、気合入れて考えたカラ! その殺気がメニュー表にも出ちゃてたのかも分からんネ!

 もしMA〇鈴木とか、もえ〇ずがウチの店来たら、これで血の海に沈めてやろう思てたのに。全然来やがらねぇヨ。残念アル……。

 

 アタシ的にはコレ、「己が無力さ、思い知るヨイ!!」とか思て作たアル。

 ……でもなんか、()()()()()()()()()()()()

 

 それはそれで……ちょと嬉しかたカモ? 中々やりおるワ。

 

 

 

 

・ワイプ: 謎の中華少女、魃さん

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

 

『第ッ! ――――――72位ィィ!!!!!』

 

 

 

 

 

 暫しの時が経ち、グッテーとテーブルに伏したサヴァ達に、結果が告げられた。

 けれど、そんなのもう、誰も聞いちゃいない。どーでも良い事であった。

 

「ダメ……気持ち悪い……吐きそう」

 

「胃が焼けるように痛みよる……。こりゃ穴でも空いとるのではないか?」

 

「私は頭痛が酷い……。

 これはアルコールのせいか、はたまた劇物のせいなのか……もうよく分かりません」

 

 死屍累々。満身創痍。

 かのクソッタレなオードブルは、英霊達によって既に殲滅されており、今まさにこの場は「兵どもが夢の跡」といった様子。

 辛さで破壊された口内、ヒリヒリと痛む喉、無駄に膨れたお腹、アルコールで働かない思考。しかも見事に不正解という、踏んだり蹴ったりな状況。

 まだ三皿目だというのに、もう明日が見えない。

 

 

「へへっ……ざまぁ見やがれってんだ。()()()()()()()

 

 

 けれど、力なく椅子に身体を預け、天井を仰ぎつつも、ランサーはどこか満足気な顔。

 

「あぁ。君の言う通りだランサー。達成感があるな……」

 

「■■■……」(どうだ、()()()()()()()()()()。見たか匹夫共め……)

 

 そしてそれは、この場の者達も同じ。

 力を合わせ、あの赤いヒマラヤ山脈を食べきった。乗り越えたと――――

 この経験が、奇しくもよく分からん自信と、無駄な連帯感を生み出していた。

 しかもセイバー&ライダーに至っては、それに加えてぬるぬるオイル相撲までしたのだから、もうマブダチだ。しっかり仲直りをし、バッチリ仲良くなれた。

 

 

「ア〇ヒスーパードライにまで、デスソースぶち込んであんのは、正直腹立つが……。

 でも酒あると、やっぱ違うよな?」

 

「ええ、気分が上がる。

 お酒の力でも何でも借りて、やり切るしかないわ……」

 

「うむ、征こうぞ最後まで。

 この勢いを以って、TOP10を全て当てるのだ」

 

 

 

 

 

 

 重ねてになるけど、まだ三皿目。

 なのに全員ビールの飲み過ぎで、()()()()()()()()()()()()()()、もう物を考えるのもおぼつかない。

 TOP10を推理するどころか、「シロウ~♪」とか「しゃくら~♪」とかムニャムニャとうわごとを言い始める始末。

 

 だが……なんか気分は良い。

 正直先の事なんて、これっぽっちも分からないけれど……、でも今は少し“楽しい”。

 これが始まった時なんて、みんな絶望してたのに。でもフワフワといい気持ちでいる。

 

 だったらもう、それでいいんじゃないかな? そんな風に思う。

 

 

 まぁコレ“帰れない”ってだけで、別に時間制限があるワケじゃないし。

 ここはひとつ、のんびり腰を据えてやろう。

 みんなで仲良く、酒でも飲みながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

(続くわよっ!)

 

 

 

 

 

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