【募】こんな小説を書けこの野郎【リクエスト】 作:hasegawa&friends
「んじゃあよォ、お前ら目玉焼きには、何かけて食う?」
テープチェンジを兼ねた暫しの休憩時間、雑談タイム中。ふとこんな話題が出た。
この時代の食べ物って、ちょっと美味し過ぎない? チョーやばくない?
神話に登場するような人物や、何百年も前に生きた英雄たちにとって、この現代の世というのは、正に
見る物、口にする物の全てが、驚きと喜びに満ちており、そればかりか飢えることも争うこともせず、皆が安心してお腹いっぱい食べられる世の中。
栄養があり、見た目も華やか、そして安心して食べられる美味しい料理。星の数の如く、数え切れないほど多種多様な食べ物たち。
そんなのは、一部の王族や特権階級の者達くらいしか食べられないのが、この世の常であったというのに。
こんなの感動する他ない。なんと素晴らしい世の中だろうかと。
セイバーじゃなくったって、食べるの大好きになるに決まってるのだ。
まぁ残念ながら、彼らはいま泰山という魔窟にいて、食の修羅道ともいうべき試練に挑んでいるわけなのだが……。それはともかくとして。
「俺はやっぱ、目玉焼きには醤油だねェ! これ一択だぜ!」
そして、当然のことながら“好み”という物が生まれる。
この豊かな時代に生き、様々な食を体験していく内、次第にサーヴァント達にも好物が出来たり、また自分にとっての拘りを見つけていく。
それがランサーにとって、「目玉焼きには醤油」なのだろう。
「ほほう、お主も和の心を解するか。嬉しいぞ槍使いよ」
「正直、少し意外だがね。
君ならば、卵を焼くような手間はかけず、そのままツルッと飲んでしまいそうな物だが」
「もちろん生前はそうしたぜ?
だがここは戦場でなく、せっかく美味ェ食い方がある。やらない理由はねェさ」
今じゃ、昔食ってたモンが、味気なく感じちまう位だ。……でお前らはどうよ?
そう改めてランサーが問いかける。
自分は色々な発見をしてきたけれど、こいつらの方はどうだろう? そんな興味の色が見て取れた。
「私は塩胡椒かな。いつもシンプルな味付けで食べているよ」
「■■■」(俺もだ。そのままの味を楽しみたいクチでな)
「私などは、何もかけずに食すぞ?
そも、生前は農民であった故な。卵を食えるだけ僥倖というものよ」
アーチャーを始めとし、野郎三人はシンプル派であるようだ。
アサシン小次郎に至っては、「重税にあえぎ、冬を越せるか越せないかという最中、調味料などという贅沢……」となんか変なスイッチが入っている。
「ケチャップです」キリッ
「マヨです」カッ
衛宮家のお子様舌ふたりも、自信満々で即答。
セイバーは、初めてケチャップに出会った時の感動を、大学教授もかくやという勢いで弁舌しているし、ライダーにも何やら譲れない拘りがある様子。
そういえば私、絶対エビマヨを注文しようと思っていたのですが……。なぜ麻婆だったのでしょうか?
酔いから醒めはしたものの、先ほどまでの記憶がとんでいる彼女は、ひとりキョトンとした顔。可愛く小首を傾げる。
だがみんなプイッと顔を背け、黙ってスルーだ。
「目玉焼きねぇ……。私あれ、上手に出来ないのよね~」
そんな中、片方の眉を上げて困り顔をする、キャスターの姿。
「半熟にするのとか、加減がよく分からないし。
それに、いつもフライパンにたまごが引っ付いてね? グチャッてなっちゃうのよ」
たまごを割る時に、黄身が潰れちゃって、結局スクランブルエッグになる時も多いし。
そう愚痴をこぼし、お酒をひと口。
どうやら家事初心者であるキャスターは、あまり目玉焼きが得意では無いようだ。
「いや、そこまで難しい事ではないのだが……。
しっかり油をひき、弱火でじっくりと焼いて、ちゃんと時間を計ればだね?」
「でも面倒じゃない? 繊細すぎるのよ卵って。根性が足りてないわ。
もっとグワー! って適当に作れる料理は、ないものかしらね?」
「キャスター、丁寧さは料理に不可欠です。
サクラも新しい料理に挑戦する時は、しっかりと下調べを行い、レシピ通りに作っていますよ?」
「え、それつまんなくない?
たとえ美味しく出来ても、自分の腕じゃなくて、
自分のセンスで作った方が、絶対おもしろいし、上手くいくような気がするもの♪
クックパッドとかでレシピ調べるのも、ちょっと悔しいし……」
こちとら神代の魔術師。偉いんだぞぅ!
数々の霊薬や、神秘の魔術具を作って来た私が、たかが料理の作り方を調べるだなんて……。
しかもネット上にあるレシピなんて、所詮そこいらの凡人が考えた物でしょう?
それに教えを乞うのは、私のプライドが許さない。なんか負けた気になるじゃないの。
そうキャスターがワケの分からない事を言う。涼しい顔でジョッキに口を付ける。
見ている者達はポカーン。アーチャーなどはもう唖然だ。
某ミ〇コ・ク〇コップ氏よろしくの、「お前は何を言っているんだ?」って顔。
「ちなみに私、目玉焼きには
……。
…………。
……………………。
ふいに、皆が一斉に宗一郎氏の方を見た。
鬼気迫る表情、思わずといったように。まったくの同時で。
ADとしてこの場に控え、カンペを手にこちらを見守っている宗一郎氏は、今も何を言うでもなく無表情。その心情を窺う事は出来ない。
「初めてカルピスを飲んだ時は、本当にビックリしたわ!
私は王女なのだけど、こんなにも美味しい物が、この世にあるなんてーって♪」
「あれから私は、もうありとあらゆるものに、カルピスかけるようになったの!
別に薄めても良いのだけど、濃い方が美味しいに決まってるんだし。原液そのままね♪」
「コロッケにもかけるし、サンマにもかけるし、お豆腐にかけたりもするわ♪
お味噌汁とか、ごはん炊く時に入れても美味しいわよね~っ!」
「葛木さん家では、お醤油やお酢よりも、カルピスの消費量が多いの♪
創味シャンタンなんて目じゃないわっ! まさに万能調味料ね☆」
あの頃の私……見ていますか? 未来の貴方です。
若くして心を壊され、故郷を追われ、胸が引き裂かれそうな悲しみに耐えながらも、必死に頑張って来たのに……つらかったね。
でも、もう泣くのはおよしなさいな。
少し時間はかかるけれど……いつか英霊として冬木にやって来た時、貴方に素晴らしい出会いが待っています。
貴方を心から幸せにしてくれる、素敵な物と出会うことが出来るから――――どうか挫けないで。
そう唐突に、過去の自分への“ビデオレター”を撮り始めるキャスター。
優しい顔、キラキラとしたおめめで、「カルピスすんごいわよ~♪」と熱弁。
「あの……そこは普通、葛木先生でしょう?
あれだけ『奇跡の出会いだーっ!』って惚気ておいて……」
「■■■」(というか葛木氏は、いつもカルピス味の手料理を食わされているのか)
「そら仏頂面になるわな。
表情筋も心も、死んじまうワケだよ」
次の手番は、メシマズ嫁。
なんかそこはかとなく嫌な予感がする、サーヴァント達だった。
◆ ◆ ◆
【第1巡、五皿目】 王女メディア(キャスター)
デデンデデン! バババババン、バンバン! ジャジャジャン☆ ピーッ♪(BGM)
続いての回答者は、第五次の昼ドラ担当(?)、コルキスの魔女ことメディア!
知力と策謀に長け、歴史上でも五指に入るという魔術師は、帰れま10を思うがままに操れるのか~!?
・ナレーター: 言峰フルテンション綺礼
「それじゃ、
「待てぃ」
何食わぬ顔でチート発言。
流石はキャスター。ルールの網をくぐった反則はお手の物だ。まぁ抵触してても躊躇なくやるけど。
「なによ、正解すればいいんでしょ?
ならカンニングした方が早いじゃないの。なに考えてるのよ貴方」プンプン
「お前が何を考えてるんだ。
真面目にやらんかキャスター」
「真面目? もう始まりからしてコレ、
なら、まともにやらなきゃいけない道理が、一体どこにあって?
運営は悪乗り。私達は無理やり演者をさせられてる。
なのに、こちらにだけ真面目さを強いるだなんて、そんなの通るワケがないわ」キッパリ
「――――正論パンチをやめろッ! 私もどうかと思わない事もないがッ!」
皆で頑張ろうと言ったではないか! それを反故にするのかね?!
あら、良識を持ち出すの? 悪いことをしている人ほど、それを棚に上げて屁理屈をこねるのよねぇ♪ 貴方どこの特定アジアの人?(笑)
そうワーワーと口論。一方は必死に、もう一方は「ふっふーん♪」と涼しい顔だが。
関係ないけれど、こと“口喧嘩”において、この女に勝てる気はしなかった。
アーチャーもかなりの皮肉屋だが、根がとても善人なので。
それに【嫌われるのを覚悟して開き直っちゃった人】というのは、もう本当に手が付けれない。こんなのモンスターと一緒なのだ。
「ふーんだ! これが私の真面目ですぅ~!
魔術師が魔術を使って、何が悪いのかしらぁ~ん?
ご説明頂けますことぉ~? 魔術師崩れの弓兵さぁーんwww」
「くっ……! 叩きたい! すごく叩きたいッ!
こいつが女じゃなければ、パチンとしてやるものをッ!」
「禁止事項があるのなら、事前に知らせておくべきじゃないのかしらーん?
何にも言われなかったし、原典の番組の方にも、そんなルールありまっせ~んwww
否定をする前に、ちゃんと根拠を示しなさーい! それが筋ってものでしょー!
何そのスッカスカの一般論!? そして感情論で物を言うのは馬鹿のする事よ! おほほのほー♪」
「すごい……! 私は反英雄の側ですが、それでもムカつきますっ!
なんでしょう、あの腹の立つ顔! とても堂に入っていますっ!」
「流石は女狐! 手の付けようが無いッ!
こんなのに傀儡にされておる私、げに不憫也!」
「■■■ッ!」(今日からこいつを“インテリクズ女”と呼ぼう! お前なんて大嫌いだ!!)
孤軍奮闘、……といって良い物か分からないのだが、キャスターの弁舌が猛威を振るう。
相手はインテリジェンスで飯食ってる人、加えて性格最悪の魔女だ。
かつては純粋であったハズのメディアさんも、こうして敵対してくる者には容赦が無い。とても辛辣だ。
たとえ何人がかりで挑もうが、彼女を論破する事は出来ないだろう。地味に企画崩壊の危機だった。
しかし、2分後……。
「うーん。まぁ坊やが言うのなら、仕方ないわね♪」アッサリ
「仕向けておいてなんだが、シロウの説得力よ」
ちょーっと士郎くんに「頼むよキャスター」とお願いされただけで、あっさり引き下がってくれた! これには彼に助力を仰いだセイバーもビックリ☆
ちなみにだが、聖杯戦争時には色々とあったものの、現在キャスターと士郎の関係は、非常に良好である。
掃除や洗濯などの家事を教えて貰ったり、また葛木先生の義弟である一成くんとの仲を取り持って貰ったりと、すごくお世話になっているのだった。彼の顔を立てざるを得ない。
どーでもいいが、なんか【北風と太陽】みたい。
グワーっと噛み付いて来る相手には反発するが、ちゃんと礼節を以ってお願いをする人には、普通に対応してあげるメディアなのだった。魔女とは斯様な物か。
「さって……めんどくさいけれど、何を頼むか決めなきゃねぇ。
催眠かける気マンマンだったから、
「オイ意外と馬鹿だぞ。第五次のキャスターは」
「彼女は頼りにならんかもしれんな……」
我関せず、至極マイペースでメニュー表を眺める。
えっとぉ~、どうしたらいいのかしらぁ~? そんな風に1から考えているのが、ハッキリと見て取れた。
もうこの企画が始まってから2時間以上が経過しているのだが、今更のように考え始めたのだ、この女は。
本当の意味でメディアは、ただのほほんと酒飲んで飯食ってただけだったらしい。
「そもそも私、中華なんてロクに食べたこと無いのよ……。
お寺住まいの身だから、あまり外食はしないし、自分で作りもしないわ。
データが手元にあるのならいざ知らず、頭脳の活かしようが無いじゃないの。
こんなのどーしろって言うのよクソが。みんな死ね死ね死ね死ね――――」ブツブツ
「いかんッ! 駄目な方に入りおったぞ!」
「なにやらドス黒いオーラが! 根暗出てます出てますっ!」
キャスターの身体から、オルタ的な黒いモヤモヤが発生。
なんで私こんな目にあってるの? なんにも悪いことしてないのに……。そうこの世の全てを見境なく呪い始めた。
メディアは魔術師ではあるが、もし魔法少女まど〇マギカのように“ソウルジェム”を持っていたのなら、それピータンみたく真っ黒になってると思う。
「もういいっ! 適当に頼むわよっ!
お嬢ちゃん、
「――――そんな料理はねェよ! 現実から逃げんなッ!」
ちなみにスラマッパギとは、インドネシア語で『おはようございます』の意。
もう名詞ですらない。
「あいよ~、
「――――あったよチキショウめ!!
もう分かんねェよ俺ァ! 世界がッ!」
◆ ◆ ◆
(拙いわね、本当に分からない。どれを注文すれば……)
あれから5分後。未だにメニュー表とにらめっこし、難しそうに眉を歪めるキャスターの姿がある。
ちなみにさっきのスラマッパギは、魃さんの小粋なジョークだったのだろう。普通におしぼりを持って来ただけであった。
(あまり時間をかけるのもなんだし、スパッと決めなきゃなんだけど。
でも中華は馴染みが無さ過ぎて、いったい何を頼めばいいのか……)
もしかしたら、変なものを選んで笑われてしまうかもしれない。下手をすれば怒られたり、常識知らずだと呆れられてしまうかも?
まがりなりにも彼女は王族だ。とてもプライドが高く、しかもちょっとした事を物凄く気にしちゃうタイプ。そんなキャスターは、未だに解答を出せずにいるのだった。
そうしている内に、結構時間が経ってしまい、だんだんこの場の空気が気だるげな物になっていくのを感じる。「早くしろよテメェ」みたいな。
それも彼女の心に焦燥感を生み、負の連鎖となって思考を鈍らせる。アセアセとメニュー表をめくるが、どうやっても決めることが出来ない。
(なんて事……まさか頭脳系の勝負で遅れを取るだなんて。
インテリジェンスで負けるのは、私の全てを否定されるのと同じよっ!
だって、
「おーいキャスター、あんま気負うんじゃねェぞ~」
「楽にいきましょー。私達がついてまーす♪」
ランサー&ライダーが気遣うが、彼女はもうそれどころではない。己の思考に埋没するのみだ。
「■■■!」(中華テーブルおもしれー! まわすの超楽しー♪)
「ちょんまげってダッセェよなぁー☆
これまで決して口にはせなんだが、あれ気が狂うとると存ず」
「シロウのちんちん引っ張って遊びたい。どれだけ伸びるのか確かめたい」
――――見なさいッ! こいつらに負けるワケにはいかないのよっ!
まだそこいらのセキセイインコの方が、頭使って生きてるわよ! 頑張ってるわよ!
そう「ムキャー!」と頭を掻きむしり、キャスターはメニュー表を凝視。少しでも情報を集めようと躍起に。もう何の余裕も無かった。
(……はっ!?)
しかし、その時キャスターは、前方からの視線を感じ取る。
(そ、宗一郎ッ!?)
そこに会ったのは、その場で物言わずこちらを見つめている、愛する夫の姿。
だが必死さの滲んだ、熱のある視線で、じ~っとキャスターを見ているようなのだ。
まるで、彼女に何かを伝えようとするかのように。
(えっ。あれは……口を?)
パクパク、パクパク。彼が口を動かしている。
ADゆえに声は出さない。だがそうする事により、キャスターと意思疎通を計っているのが窺えた。
(よ・し・ぎ……。よしぎ?)
同じ口の形。それを何度も繰り返す。
キャスターは言われるまま(?)、夫が口を動かしている通りに、思わず声に出した。
「よ……
「キャスター?」
仲間達がポカーン。彼女もポカーン。
いま遠く眼前で、宗一郎さんが「グッ!」と親指を立てているのが見えた。
「……吉牛を注文するわ。アタマ盛りの汁切りでお願い……」
「なに言ってんだお前?」
平静を装い、何食わぬ顔で告げる。
内心はすごく動揺しているのだろうが、それをおくびにも出さずに。
「あらごめんなさい、なか卯の方が良かったかしら?
それじゃあせっかくだし、
なか卯は他の店とは違い、すき焼き風の“和風牛丼”というのg
「 どうしたのだキャスター!? 意味が分からんぞ?! 」
ぶっちゃけ、いま自分がおかしな事を言ってるのは、重々承知してる。
しかし、
その意思のみが、今キャスターを突き動かしているのだ!
(はっ……!? 宗一郎、またですか?!)
ふと目を向ければ、再び口をパクパクしている、愛すべき人の姿が。
いつも寡黙だし、放任主義。「お前の好きにするといい」が口癖のような人。
けれど、いま彼がメディアに協力している。愛する妻の為、一生懸命、なんとか力になろうと頑張っているのだ!
メディアにはそれがヒシヒシと分かる! あぁなんと尊いのだろう! 宗一郎ッ!!
(ど・ん・き。……どんきですね宗一郎?! 承知しましたわ!)
なら、迷わない。考えるまでも無い。
メディアは宗一郎が言った言葉を、そのまま口に出す。
「じゃあ
パイナップルが乗ったヤツを、200gで」
「――――しっかりしろキャスター!! 何があったのですか?!?!」
ここ中華屋だろうが! そんなモンねーよ!!
そう一同総出で突っ込みを入れるが、キャスターは「プイッ!」と目を逸らすばかり。全く悪びれていない様子。
だって仕方ないじゃない、宗一郎が言ってくれたんだもの。不器用な彼が必死に頑張ってくれてる。なら私に選択肢などあって? 吉牛だろうがドンキだろうが、迷わず言ってみせるわ!
たとえ宗一郎が、未だに
そう冷や汗を流しつつも、キャスターは己を貫く。
場の空気とかTOP10とか、そんな物は知らん! もうどーなっても知らん!
「うるさいわねっ! はやくドンキもって来てよ! はり倒すわよっ!」
「なんでキレてるんですか?! 意味が分かりませんキャスター!」
「よ~く考えたら……牛丼もドンキも、結婚前に宗一郎が連れて行ってくれた店じゃないの!
さっさと持って来なさいな! 思い出の味なのよぉぉーーっ!!」
「知るかァ! 目ぇ覚ませよお前ッ! 落ち着けって!」
「離婚したらどーすんの!? ねぇどーするのよ!?!?
ただでさえ、聖杯戦争勝てなかったのにぃ! 不義理をするワケにはいかないのぉ!
これで愛想つかされたり、夫婦仲が冷え切ったら、アンタ責任取れるの?!
――――私には彼しかいないのよっ! から牛とハンバーグプレートいっちょう!(迫真)」
「 やかましいのだよ! 中華を頼みたまえッ!! 」
天井を見上げ、スヌーピーみたく「わー!」っと泣く。
メディアは色々と必死だ。昭和の夫婦ドラマのように「捨てないでぇ~!」って感じ。
有り体に言って、もう企画どころじゃない。
メディアは烈火の如く喚き散らし、牛丼もってこいハンバーグを出せと、ひたすらに要求。
もうメンバー達は「どよ~ん……」と額に影を落としている。お家に帰りたい気持ちだ。
「あっ! “杏仁豆腐”!!
前に宗一郎、お土産に買って来てくれたでしょう?
あれ私とっても好きでした! 杏仁豆腐いかがですか宗一郎っ!?」
(グッ!)b
「あーもう相談しちまってるよ。無茶苦茶だよ」
◆ ◆ ◆
この杏仁豆腐は、泰山でも人気メニューのひとつヨ!
死ぬ気で麻婆たいらげた後、シメで頼む人が多いアル♪
ウンチクになるケド、“杏仁”てゆーのは、本来薬膳でネ?
喘息の治療に効果的とされてるヨ♪
主にお菓子用に使われる“甜杏仁”と、薬膳用に使われるにんがぁ~い“苦杏仁”、その二種類があるケド……。うちで使用してるのはもちろん 苦 杏 仁 !!
とーぜんながら、
苦みと辛さの二大巨頭、夢のコラボレーション♪
これは、「最後くらいは甘いもの食べたい」などとのたまうクソッタレ共を、地獄に叩き落すためn……じゃなかた、みんなの健康を考えて作た中華スイーツ☆(だが甘いとは言ってない)
泰山の半分は、優しさで出来てるネ! 身体を大事にしろヨ♡
・ワイプ: 謎の中華少女、魃さん
◆ ◆ ◆
『第ッ! ――――――9位ィィ!!!!!』
あれから15分後。「おぐぇっ!」とか「ほんぎゃー!」とか言いながら、必死こいて杏仁豆腐を平らげたメンバー達。
「よもや……入っておるのか?
驚愕、そして絶句。
ぶっちゃけこれは、望外の結果だった。
だってキャスターがアワアワしながら咄嗟に注文した一品だったし、食べてみたけど「なんにも美味しくない」という出来栄えだったから。
「もしかすると、この店の特性なのか……?
激辛料理に耐え切った者達が、自分へのご褒美として注文する、といったような」
「まぁ“甘い”なんて、
脳天突き抜けるくらい苦いわ、胃に穴が空くほど辛いわ……。
これを頼んだ客達は、さぞ無念だった事でしょう」
「■■■」(怨嗟が渦巻くな。人間でもオルタ化するかもしれん)
海で遭難し、三日三晩必死に泳いで辿り着いた先が、人っ子ひとりいない無人島だった……みたいな気持ちだろう。“どう足掻いても絶望”というヤツだ。
ちなみにだが、本家の番組において、これがTOP10にランクインするのは“非常に稀”なのだという。ラーメンや炒飯などの一品料理が上位を独占してしまい、杏仁豆腐を始めとする中華スイーツ勢は、どうしてもランキングが低くなるのだそうだ。
そこに来ての、この結果。
適当に言ったのに、あんなにマズかったのに、なんにも甘くなかったのに……。
でも第五次サーヴァント達は、見事に泰山の第九位を、当てることが出来たのだった。
「まぁ私は、離婚にさえならなければ、それで良いけどね……」グッタリ
「必死よなぁお主」
「ちょっと引いたぞ俺ァ」
「後が無いですからね、アラサーの女というのは」
今も皆の眼前には、「がんばれ」と書いたカンペを無表情で掲げている、宗一郎さんの姿。
寡黙だけど愛妻家な彼に向けて、キャスターは「ぐっ!」と親指を立てて見せるのだった。
(