【募】こんな小説を書けこの野郎【リクエスト】 作:hasegawa&friends
「サクラです」
「いや、凛だろう」
先の注文を食べ終えた後の、ちょっとした雑談タイム。
美しき蛇と錬鉄の英霊が、睨み合う。
隣の席同士、バチバチと火花を散らしながら、双方同じ言葉を繰り返す。
サクラだ、いや凛だ、と。
「何を言っているのですかアーチャー? サクラでしょうに。
あまり妙なことを言われましても」
「君こそ何を言っているのかね。
酒のせいで、どうかしてしまったか? 凛に決まっている」
「「「……」」」
ゴゴゴ……っと二人の身体から、黒いオーラが。
それは決して、見ていて気分の良い物じゃなく、生物的な本能が警笛を鳴らす類の物。
いわゆる“殺意”を込めて、鋭い眼光を交わす。
その光景を見守る仲間達5人は、みんな一様に無言。額に汗を浮かべている。
「 サ ク ラ の オ ム ラ イ ス が 、い ち ば ん 美 味 し い ん で す っ ! 」
「 凛 の 作 る 炒 飯 は 至 高 だ ッ ! 」
――――なにその喧嘩。しょーもな!
んな事で殺気を剥き出しにせんでも。大人げない大人げない。
そうサヴァ達は「どよーん……」とした顔。
それを余所に、ライダー&アーチャーはどんどんヒートアップ。
「どちらがカワイイか……。どちらが良いマスターか……。
これに議論の余地はありません。
「うむ、同感だ。君の言う通りだよライダー」
「しかしっ! こと“料理”に関しては、サクラに分があるハズ!
貴方はあの夢と幸せが具現化したかような、超絶ふわとろオムライスの美味しさを知らないのですか!?」
「ふっ。玉子ならこちらにも入っているさ。
君こそ、凛の五目炒飯が織り成す、素晴らしい味のハーモニーが分からんのか?
焼き豚、ネギ、ザーサイ、カニカマに加え、君の大好きな海老も入っているんだぞ?」
「違うっ! オムライスの方がおいしいです!
まぁリンも、すごく可愛いですが。非の打ち所がない程に、素晴らしい女の子ですが」
「愚かな。五目炒飯が上だ。
まぁ桜君も、この上なく愛らしいがね?
とても良い子だし、健気で頑張り屋さんだ。愛しさが込み上げて来るよ」
もうやめて。本人の前で――――
ADとしてこの場に控えている凛&桜は、もうどうして良いのやら分からず、林檎みたいに赤らめた顔を「クッ!」と逸らすばかり。とても恥ずかしい。
「あのオムライスは、兄妹愛の結晶なのですっ!
普段は素っ気ないシンジが、独自にレシピを研究し、根気よく練習に付き合った!
料理が上手くなりたいという、幼き日のサクラのためにっ!
そうして、初めてサクラが上手に作れた料理が、このオムライス!
今でもシンジの誕生日には、毎年これが食卓に並びます!
あの捻くれ者のシンジが、サクラのオムライスを食べている時だけは、昔のような優しい笑みを浮かべるんですっ!」
「大切な思い出の味……というワケか。しかし凛とて負けてはいないぞ?
この五目炒飯は、彼女の父である“遠坂時臣氏”の直伝だ。
不器用ながらも家族サービスをしようと、たまに台所に立っていたという時臣氏が、いつも作ってくれたのがこの料理だ。
火が通り過ぎていたり、パラパラとはいかなかったりと、決して良い出来栄えでは無かったそうだが……、それでも凛と桜君は喜んで食べた。いつも沢山おかわりをした。
後に凛は、当時の記憶を頼りに、その味を忠実に再現。
更に絶え間なく練習を積み、昇華させたそのクォリティは、もう言わずもがなというヤツさ。
この五目炒飯は、いわば父と子の絆――――世界で一番おいしい炒飯だよ」
ぐぬぬ……! と睨み合う。両者一歩も譲らず。
彼らのマスターに対する……いや遠坂姉妹に対するクソデカ親愛が垣間見える。喧嘩の名を借りた“惚気”のようにも見える。
あの子らを幸せにしたらなアカン! この命にかえても!!
そんな想いをヒシヒシと感じた。
「まぁまぁ、二人とも落ち着こう。
ここは間を取って、『ファミチキが一番うめぇw』という事で」
「――――殺しますよセイバー?」
空気を読まないのほほんとした声に、二人は青筋を立てた。
「いつもシロウのごはんを食べている私、高みの見物! 勝ち組!
ふはは。格下の者達の喧嘩は、いつ見ても滑稽だ。
争え……! もっと争え……!」
「そんなだから『王は人の気持ちが分からない』とか言われるんだ君は」
「そりゃモードレッドもキレますよ。ブリテン滅びますよ」
ふとみんなの頭に「こいつは本当にセイバーなのか?」という疑問が浮かぶ。
あまりにもイメージと違い過ぎるのだ。聖杯戦争時の凛々しさや高潔さは、一体どこへ?
つかこんなヤツに俺達は負けたんだなと、今更ながら悔しくなってきた。
「オラぁ
「鈍ってる鈍ってる。そろそろ元に戻って頂戴……」
今度お休みをあげる。温泉にでも行って、のんびりして来ると良いわ。
そうめずらしく労うキャスターと、未だ立ち直れていない様子のアサシン。
彼女らの姿に、なんか気が抜けてしまった一同は、とりあえず喧嘩腰だった態度を改め、ふぅと一息つく事に。
「サクラの話ならば、まだいくらでも出来ますが、今日はこの辺にしておきましょうか。
ではバーサーカーの方はどうです? なにかイリヤの話があれば」
「おっ、あの気の強ぇお嬢ちゃんか!
いいねェ、聴かせてくれよ旦那」
「■■■?」(俺の主か? そうさなぁ)
皆が「いーかげんにしろ」と止めるまで続いた、セイバーによる士郎ちゅきちゅき話、同じくキャスターの夫自慢、そして先の騎&矢による遠坂姉妹LOVE話。
それに引き続き、今度はバーサーカーに、この話題のバトンが渡ったようだ。
クラスが凶戦士とはいえ、サーヴァントの鑑とも言うべき忠義者。
ここ日本でも広く知られる、強さの代名詞的な存在。
英雄と言えば、誰もが真っ先に思い浮かべるほどの人物。それが大英雄ヘラクレスだ。
そんな彼のマスターたる少女は、いったいどんな子なのだろう?
英霊達は興味深々といった様子で、ワクワクとバーサーカーの方に向き直る。
「■■■■」(この度アハト翁の打倒を果たし、名実共にアインツベルンのトップに立ったイリヤなのだが……、最近S〇Kというゲーム会社を
「「「 すげぇぇぇーー!!!! 」」」
破産したり、パチスロ作ったり、中国企業に買収されたり。
そんなずっと不憫だったS〇Kに、イリヤが救いの手を差し伸べたのだという。しかも個人で!
これにより、めでたくKOFシリーズは復活。なんでも20年ほど音沙汰がなかった餓狼MOWすらも、今年中に続編が出るのだとか。非常に楽しみである!
「■■■■」(S〇Kの者達は『ドイツ人のキャラを出しましょうか?』と、イリヤに提案したらしい。自分達のボスがドイツ国籍なのだし、そこに気を遣うのは当然の事なのだろう。……しかしながらイリヤは『余計なことは考えなくて良いわ。自分達が面白いと思う物を作りなさい』と言い、それを突っぱねたんだ)
「「「 かっこよッ!!?? 」」」
素敵ッ! イリヤさん器でかッ! チョー男前!!
S〇Kのクリエイター達が自由に、なんのしがらみも無く、思う存分ゲーム作りに専念出来るようにした。十二分に力を発揮出来る環境を、彼女がプレゼントしたのだ。
それはどれほどのゲーム愛、そしてどんな強大な力と情熱があれば、成せる事なのだろう? もうサヴァ達には想像すら付かない。
とにもかくにも、ここに真の意味でS〇Kは復活を果たし、また面白いゲームをみんなのもとへお届け出来るようになったのだ。
これには士郎、大河、クラスメイトの後藤くんを始めとする、冬木中の格闘ゲームファン達も大歓喜。
またKOFが出来る! もう諦めかけていた餓狼の続きが見られる! そう「わっしょい! わっしょい!」とイリヤを胴上げし、彼女の素晴らしい功績を讃えたそうな。
もうやってる事が
でもバーサーカーは、誇りに思う。
アインツベルンの新当主となったイリヤは、そのゲーム愛という心意気ひとつを持ち、今日も世界中の才気あるクリエイター達の“翼”となり、手を差し伸べ続けている。
「■■■■」(まぁイリヤは、ゲームで負けて
「台無しだよ、旦那」
◆ ◆ ◆
【第1巡、九皿目】 ヘラクレス(バーサーカー)
デデンデデン! バババババン、バンバン! ジャジャジャン☆ ピーッ♪(BGM)
1巡目ラストの回答者は、筋肉モリモリで理性の飛んだ半裸の人、ヘラクレス!
主神ゼウスの子であり、十二の難業を成したギリシャの大英雄は、帰れま10という試練をも乗り越えるのかぁ~!?
・ナレーター: 言峰フルテンション綺礼
「■■■」(ではいっても構わんか?
「「「えっ」」」
止まる。いま耳にした言葉に、一同は思わず彼の方を見た。
「■■■」(もう15分も箸を動かしていない。俺はグーペコなんだ。早く何か頼もう)
「ちょっと待って、正気なの貴方?!」
前述の通り、いま9皿目を決める所。
これまで自分達は、7騎がかりとはいえ多くの料理を食しており、しかもその内のひとつはオードブル。あのヒマラヤ山脈と見紛うほどに巨大な品を、必死こいて完食したばかりである。
だが彼はあっけらかんとした顔で「はらへった」とのたまう。
「あのっ……まだお腹に余裕があるんですか?
私などは既に、かなりキテいるのですが……」
「■■■」(そうなのか? ではお前は暫し休んでおくと良い。俺が肩代わりしよう)
フォアザチームの精神だ、任せておけライダー。
そうあたたかな声で告げる。
とても心強いし、彼らしいとも思うのだけれど……しかしながらその様子は異常。
いやアンタ、あれだけ食っておいて!!
「■■■」(ちなみに俺の身長は253㎝、体重が311㎏ほどあるんだが……)
バーサーカーは何食わぬ顔で、仲間達の顔を見渡す。
「■■■」(
「「「 !?!?!? 」」」
◆彼が一日に摂るべき栄養素◆
・タンパク質 【870g】 ※卵124個、牛肉5.1㎏分
・脂質 【311g】 ※マヨネーズ大さじ34杯分
・炭水化物 【1004g】 ※カップ麺22個、うまい棒251本分
何このPFCバランス――――こんなの初めて!!
お前はどこのフードファイターだ、こんなのダイエッターが見たら憤死するわ。
そう言わんばかりの数字ではあるが、彼はこの量を一日で食べなくてはならないのだ。その苦労は推して知るべし。
バーサーカーいわく、「これは生きていく上で、必要最低限の量だ。俺達は戦士だから、鍛錬もすれば戦いもするだろう? 実際にはこの4割増しの量になる。そうせねば
なんでも唐辛子などに含まれる“カプサイシン”という成分には、脂質の排出を助ける働きや、脂肪燃焼効果があるらしいぞ? でもそんなの俺にはノーセンキューだ! いつもより多めに食わなきゃいけないじゃないか!(プンプン)
……そう彼は「■■■ーッ!!」と憤慨しているが、みんな「あんがー」と呆ける他ない。
有り体に言えば、バーサーカーは“牛丼の並”を20杯くらい食べちゃう人、という事である。住む世界が違う。
「■■■」(では必殺技注文をやるか? 俺の“射殺す百頭”にあやかり、ありったけのメニューを頼んでみるか。店の冷蔵庫を空にしてやるぞ)
「「「いやいやいや」」」
みんな一斉にプルプル首を振る。バーサーカーはひとり「キョトン?」としているが。
「■■■」(どうした皆。たくさん食わねば大きくなれないぞ?)
「もう背は伸びんのだよ。
君のようになりたいとは、思っていないんだ」
オードブルの時みたいなのは、もうこりごりである。
一同は「思いとどまれ」と、必死に彼を説得。
「■■■! ■■■!」(ほらクーフーリン、ラーメンいくかラーメン! メディアはフカヒレ好きか? 小次郎ゴマ団子食うだろ? さぁ遠慮するなお前達! 若いんだから!)
「親戚のおっさんじゃないですか。しんどいしんどい」
若者と飯を食うのが嬉しくて仕方ない、世話を焼きたくて仕方ない。そんなおっさん特有のテンションでウザい絡み方をしてくる。たまったモンじゃなかった。
◆ ◆ ◆
おっちゃーん、あたいコレ食べてほしいー!
よーし任せとけ! おじさんどんどん食べちゃうぞ~! 見とけよ見とけよ~!
そんな風にメンバー達からリクエストを受け、それ全部ひとりでモリモリ食ってやろうかと思ったバーサーカーなのだが……。企画の趣旨がズレてしまうという懸念もあり、あえなく断念する事に。
「■■■?」(本当に良いのか? 十皿でも二十皿でも構わないんだぞ)
「いや……気持ちは有り難いけれど、それではすぐに終わってしまうわ。
まだ一巡目なんだし、のんびりいかない?」
「■■■……」(そうか、いい所を見せるチャンスかと思ったんだが……しょぼーん)
「おっきい人がシュンとしてるのって、なんかカワイイですね」
「ああ、ほんわかするよ」
パンダやトトロに通ずる所があるかもしれない。
意外と愛嬌満点なバーサーカーだった。
それにしても、ここにきて頼りがいのある人物が出てきたものだ。
彼の胃袋は宇宙。その規格外な巨躯を持つバーサーカーは、大食い大会で優勝できちゃうレベルの健啖家であったのだ。
もしこの先、仮にメンバーの誰かに限界が来てしまったとしても、バーサーカーがいればなんとかなる。たとえどれほどの量だったとしても、ペロリと平らげてしまえる。
先ほどあったライダーへの労わりを見ても分かる通り、彼ならば快くみんなの手助けをしてくれる事だろう。この上ない安心感があった。
まぁ大丈夫なのは、あくまでも“量”だけ。
ここ泰山で出される料理の辛さは、またそれとは別問題であるのだが。
「■■■」(さて、それじゃあ注文を決めようと思うが……ときにセイバーよ?)
次の食事に備え、黙想をして気を静めている彼女に対し、バーサーカーが視線を投げる。
「■■■」(ここで一番手ごわいのは、お前が最初に頼んだ品。それに相違ないな?)
「はい。かの品は泰山にて最強、間違いありません」
「■■■」(ならば、
いや、あの爆裂なんたらを除いた【辛さのTOP5】を訊きたい。
その四品を片付けよう――――
大型の肉食獣にも似た「グルル……!」という低い唸り声。
だが静かに、決意の籠った強い瞳で、そう彼女に告げた。
「なっ……何を申すか御仁!」
「そうだ! いくら貴方といえども、上位四品は……!」
「■■■」(なぁに、俺はすこぶる燃費が悪くてな? 一品では足りんというだけの話だ)
それに……皆の雄姿は見ていたぞ。
初手で最強に挑んだセイバー、皆を背中で守るように戦ったアーチャー、この死地においても男を魅せたランサー。そして誰もが己を貫いていた。
ならば、お前達ばかりに良い恰好をさせておくワケにもいくまい?
同じ英霊として、俺もやらねばな――――
そう凶戦士らしからぬ得意げな顔で、ニタリと笑う。
「■■■」(忘れたかセイバー、我が宝具“ゴッドハンド”を。流石にお前の治癒宝具とまではいかんが……屈強さには自信がある。主神ゼウスのお墨付きだぞ?)
そう真っすぐ彼に言われてしまえば、もはや返す言葉など無い。
少しの間、じっと押し黙っていたセイバーだったが、やがて俯いていた顔を上げ、バーサーカーを真っすぐ見つめ返した。
「ピリカラ(笑)餃子――――
滅殺☆
ネオ四川風・みかんシャーベット――――」
「どれも強敵、一騎当千の武将だ。
しかしながら、これらは所詮5~3番目にすぎません。
問題は、次なのです……」
なにやら謎のスイーツが混じっていたような気がするのだが……、でもあまりにセイバーが真面目な顔をするものだから、誰も口を挟めなかった。
まぁそれはともかくとして、彼女の美しい桜色の唇が、再び動き出す。
「――――泰山式・
これは泰山における、無冠の帝王ともいうべき物だ」
出たよ、悪ふざけ。
第五次のサヴァ達が、シグルイよろしくのきれ~な白目を決める。
「正直……これと爆裂ゴッド麻婆は、
張飛・関羽を彷彿とさせるその力は、他の追随を許しません」
泰山で最高の辛さを誇る上位5品。これはあたかも“蜀の五虎大将軍”。
関羽・張飛・馬超・黄忠・趙雲が揃い踏みだ。
中でも、この
「関係無いのだけど……なら
「人徳なんざありゃしねェ。あいつは狂ってるよ」
そんな蜀は嫌だ。
マーボー食わせてくる劉備玄徳とか、誰が慕うっていうんだ。
でもあれだろうか? 泰山を“蜀”とするなら、どこぞのカレー屋さんが“魏”だったり、トムヤンクンのあるタイ料理屋さんが“呉”だったりするんだろうか。激辛三国志、開幕。
そう皆が想像の翼をファッサー! と広げそうになった所で、セイバーが「こほん!」と咳払い。弛緩した空気を元に戻した。閑話休題。
「以上が、泰山における残りの上位4品です。
これらを片付けることが出来れば、後の戦いがグッと楽になることは、間違いないでしょう」
しかし……とセイバーが言葉を続ける。どこか煮え切らぬ、言いよどんでいるような小さな声。
「貴方ほどの大英雄に、このような言葉をかけるのは、侮辱にあたるのやもしれん。
だが敢えて言わせて頂こう。――――無茶ですバーサーカー」
「これらを完食する為には、私とて多大な犠牲を払わざるを得なかった。
人類最高と称される治癒宝具を所持する、このアルトリア・ペンドラゴンがだ」
「何度も箸を置き、失神して倒れ、時間を取り、挫けそうになる心を『いい子いい子』とシロウに慰めてもらいながら、竜ではなく亀のように少しづつ、無様に進んだ……。
そこに騎士の誇りなど無い。人としての尊厳すら、もはや有りはしない。
かような物、あの
「そして、かの英雄王を地に墜としたのが、他ならぬ
あれから五~六時間ほど経ちますが……未だにヤツは目を覚まさない。ピクリとも動かん。
聖杯の泥ですら侵すこと能わぬ、桁違いの自尊心。
すぅ……と彼女が静かに息を吸う。
キッバリ、聞き間違いようの無いほどハッキリした声で、彼に告げるために。
「――――貴公が思っている程、
うぬぼれるな、ヘラクレスよ」
せっかく拾った命だ、ここで捨てる事もあるまい――――そう言い放った。
生前の彼女を思わせる、王としての毅然とした態度。非情なまでに冷たい言葉。
えっ……中華料理屋さんで、命?(震え声)
そんな皆の呟きが聞こえたような気がしたが、セイバーはガン無視した。
「■■■……」(ふっ。はははは……)
だがふいに、黙って耳を傾けていた筈の彼が。
「■■■」(お前も人が悪い……。それは煽っているのか? それとも
さも楽し気に、笑う。
「■■■」(そう言われて、はいそうですかと引き下がるようなら、俺はここにおらん。今この場にいる誰もが、過去に同じようなことを人から言われ、それを越えてきた筈だ)
「■■■」(ゆえに英霊、だからこその英雄――――違うか?)
善意、心配、優しさ、侮り、嘲り。……様々な理由があるだろう。
だが人々は、いつも彼にこう言う。「やめておけ」と。
己の知る常識や、想像や、見える範囲の物を鑑みて、彼の前に立ちはだかる。当たり前のように止める。
悪い事は言わない。
無理はするな。
お前のためを思って言ってるんだ。
その不安気な顔や、怒りの滲んだ声、もしくはこちらを小馬鹿にしたうすら笑いを振り切り、いったい何度旅立った事だろう?
山に、丘に、森に、海に、孤島に、何度ひとりで乗り込んでいった事だろう?
数えきれない。憶えていない。
だってそれが、自分にとっての日常。ごく当たり前の光景だったから。
「■■■」(セイバー、俺には『がんばれ』と言っているようにしか聞こえんよ。悔しかったらやってみろ、越えてみせろと)
「■■■■」(俺の冒険の始まりは、いつも誰かの『お前には無理だ』という言葉だったよ。こんなにも人をやる気にさせる物が、他にあるか?)
◆ ◆ ◆
帰れま10in泰山、7番手のバーサーカーが注文したのは、先のクソッタレな麻婆を除く、ここの辛さ上位4品!
彼の保有スキル“
人の悪意という物を体現したような赤。6つの深紅の魔弾。【ピリカラ(笑)餃子】
ひと目で脳が「逃げろ」と告げる、チャイニーズ・アトミックボム。【滅殺☆
その味、予想不可能! 愛媛の愛を噛みしめろ(?) 【ネオ四川風・みかんシャーベット】
そして泰山辛さ番付――――堂々の№2。
真の辛さというものを、ま○か食品に知らしめたい! 【泰山式・
映画ドラゴンボールZにて、メタルクウラの大群が現れた時くらいの絶望感が漂っているが、果たして彼はこの“13番目の試練”を、生き残ることが出来るのかぁ~っ!?
・ナレーション: 言峰フルテンション綺礼
「――――■■■■ッ!!」(我に七難八苦を与え給えッ!!!!)
その雄たけびと共に、彼の戦いの幕が上がった。
「■■■ッ!! ■■■■■~~ッッ!!!!」モゴゴゴ! モゴゴゴゴゴ!
動く。
箸が、腕が、皿が、中華テーブルが。
ひと時たりとも止まる事無く、バーサーカーが勢いよく料理をかっ込んでいく。
その様は、敵陣に突貫する兵士か。それとも城門をぶち破る攻城兵器か。
「はっ……速ェ!! なんだこりゃ?!」
「バーサーカー! 貴公はッ……!?」
ガガガ! ズズズ! モモモモモ!
絶え間なく響く咀嚼音。麺をすする音、食器が打ち鳴らされる音。
そこら中に飛び散る、料理の汁、欠片、額の汗。それはあたかも剣撃の際に散る火花の如し。
有り体に言って、“悟空の食事シーン”を彷彿とさせる凄まじい光景。
「■■■!!」(えいしゃーい!)
「「「 !?!? 」」」
ひと口! 6つ一気にピリカラ(笑)餃子を!?
お箸でグッと掴んだかと思えば、即座に口にねじ込み、瞬殺!!
信じられない光景が今、サーヴァント達の前で繰り広げられている。
「■■■!!」(はいだらぁーーッ!!)
「「「 !?!?!? 」」」
かの滅殺☆酸辣湯麺を瞬く間に啜り終え、返す刀で餃子を仕留めたバーサーカーが、「
当然だ! 彼がいま食したのは、他ならぬ泰山のトップランカ―!
常人であれば一口で昏倒、その後ピーポーピーポーと病院に搬送されるのは不可避な代物。
それをあろうことか、“一気食い”しているのだから! 口の中いっぱいに頬張ったのだから!
同じ塩であっても、指に付いたのをペロッと舐めるのと、大さじ1杯分をザザーッと食べるのとでは、大きく感じ方が違う。比べるのもおこがましい位に、後者の方がダメージがデカいことだろう。
それとまったく同じ現象が、今バーサーカーの口内で起きている事は、想像に難くない。少しづつチビチビ食べるのならともかく、一度に6つの激辛餃子を食べてしまったのだから。
しかし! バーサーカーは仰け反った身体を戻すのと同時に、その勢いを以ってネオ四川風・みかんシャーベットをパクッ☆
スプーンすら使用せずに、器を頭上で傾けて「あーん!」と食べてしまった!
その間――――わずか7秒。
挑戦開始から、たったの数秒ほどで、彼は泰山の上位ランカ―である3品を、ペロリと片付けたのだ!
「■■■■ーーッッ!!!!!!」(ん゛ーーッッ!?)
当然、そのダメージは計り知れない。
宝具で換算するなら【A++】クラスに該当するであろう激辛料理、その三立てである。
だが、折れない。倒れない。
バーサーカーは健在! 今もしっかりと意識を保ち、箸を持ち続けている!
「歯牙にもかけん、というのか……。
我々があれだけ苦戦した激辛料理、そのトップランカーだぞ!?」
「いえ、平気なハズが……。
だって彼の身体は、あんなに……!」
バーサーカーの髪が〈ボンッ!〉と爆発したみたいに逆立ち、身体中に血管が浮き出る。顔なんて焼けた鉄のように赤く染まっているのだ。
効いている! 決して大丈夫なワケでは無い!
だが彼はその屈強さ、そして不屈の精神力により、持ちこたえているのだ!
――――少しだけ耐えられるという事は、永遠に耐えられるという事。
これは前にセイバーが口にした、空手道の心を表す言葉だが……まさに今のバーサーカーがソレだ。
意識を刈り取られなければ、少しでも指が動くのならば、まだ戦える。
たとえ頭の中が“辛い”という2文字で埋め尽くされ、悲痛な声で「
ずっと! いつまでも! 永遠にだ! 決して止まること無く!!!!
その破竹の勢い、戦いっぷりに、サーヴァント達は目を見開く。
いま自分達が見ている物が、信じられないといった様子で。
「■■■……!」(ふっ、すこし恰好をつけ過ぎたか……)
ブシュウ! という破裂音。
北斗神拳の使い手に秘孔でも突かれたかのように、額の血管が破け、間欠泉のように血が噴き出す。
出血! 中華料理屋で流血ッ!
力み過ぎたのか、辛さに耐えかねたのかは不明だが、ついに彼の身体が悲鳴をあげた!
口内を火傷するのならいざ知らず、まさかのガチ負傷ッッ!
普段は白目であるハズの瞳を、真っ赤に血走らせて、バーサーカーがぜーはー肩で息をする。満身創痍だ!
「いけないっ! もうやめてバーサーカー!」
「死ぬぞ御仁! 無謀だ!」
「■■■。■■■■♪」(なぁに、まだまだこれからさ。ミ・ミ・ミラクル、アインツベルン♪)
メディアと小次郎の悲痛な声に、ニタリと笑みで応える。
顔は流血で赤く染み、身体はガクガクと震えていようとも、その表情はいつもの彼。
頼りになるみんなの大英雄。バーサーカーヘラクレスだ!
「■■■」(さて……ここからが本番か)
彼が空いた三つの皿を重ね、端に置く。
そしておもむろに最後の一品、【泰山式・
「くっ……! なんと!?」
「こ、これは……!」
ペヤングという事で、ご丁寧にプラ容器に入ったそれは、一見すれば中華飯店らしからぬチープな印象を受ける。
だがそこから立ち昇る、大魔王ゾーマを彷彿とさせるオーラよ! 赤紫の瘴気よ!
並の者であれば、その湯気に触れただけで、戸愚呂弟と相対したザコ妖怪のように身体を溶かされてしまうであろう(?)
もう食べずとも分かる……桁違いだ!
これまで皆で挑んで来た品々とは、まさに別格の存在! レベチ!
けれど、
「■■■」(いざ――――南無三)
彼は微塵の躊躇なく、ズゾゾと啜って見せた。
◆ ◆ ◆
『ん……ちょっとさむいね』
雪と同じ髪色の少女が、手にはーっと息を吹きかけながら、隣に並ぶ。
それはこちらの腰の高さにも満たないような、小さな女の子。
己の全てを賭して守るべき、大切な我が主。
『わたし、さむいのはニガテだなぁ。
あったかいのがいい……。つめたいのはイヤだよ……』
白一色に染まった森。
全てが凍りつき、身を切り裂くような寒さの中、お互いの呼吸の音だけが、静かに響いていた。
『でも、へーきだよ? バーサーカーがいるもん。
さむくても、いたくても、がんばれる。
ずっといっしょにいてね、バーサーカー――――』
◆ ◆ ◆
「………………■■■ッ!?」(……ハッ!?)
今、
なんか走馬灯のように、過去の思い出が頭に浮かんできた。
そして謎の〈ドゴン!〉という爆発音が体内で鳴り、己の宝具である
「■■■■ーーッッ!!」(ほぎゃーッ!!)
火を吐く! 口から!
彼の口膣内を焼く灼熱が、炎となって〈シュゴォーーッ!!〉と天井まで吹き上がる!
魔術でも物理法則でもなく、コメディの世界観が可能とした、古典的漫画表現!
それによって火災報知器が作動するわ、スプリンクラーで辺りが水浸しになるわの、大惨事。
一度死から蘇生したハズなのに(?)、それでも消えずに容赦なく襲い掛かって来る辛さ! 燃えるような耐え難い痛み!
「■■■ッ!!」(でもえーーい☆)
「「「 バーサーカー!?!? 」」」
しかし! 再び彼が箸を取る! ペヤングを口に運ぶ!
その途端、またしても体内で〈ドゴン!〉と音が鳴り、本日3つ目となるゴッドハンド消失。一瞬で消し飛んだ!
「■■■ッ!!」(ぼけじゃーーい!)モゴゴゴ
「 やめろ旦那! 消滅しちまうぞッ!! 」
だが再び復活!
ダ○ソンの掃除機を思わせる吸引力で、勢いよく麺を啜る! チュルンといく!
当然ながら、また消し飛ぶ彼のゴッドハンド。
ペヤングを食べ始めてから、たった10秒かそこらで、計4つを失った事となる。
その姿に、思わずサーヴァント達が席を立つ。彼の周りに駆け寄る。
いま猛然と5口目を食べようとしていたバーサーカーの腕に、数人がかりでしがみつく。
「 止まれ! やめないか! 何が君をそうさせるんだッ!? 」
「 もう洒落になりませんっ! 本当に死んでしまうっ! 」
「■■■ーッッ!!!!」(おっしゃー!!)モゴゴゴゴ
だが止まらない。食べ続ける。
バーサーカーの凄まじい腕力は、たとえ同じサーヴァントでも、止められる物では無い。彼の筋力は天元突破しているのだから。
腕・足・首・腰といった、そこらじゅうにしがみ付く仲間達を、全く意に介すことなく、猛然と箸を動かす。
5,6,7と矢次にゴッドハンドが消し飛んでいく。だが決して動きを止めない。ハムスターみたいにほっぺを膨らませ、モグモグ咀嚼する。
その姿、まさに鬼神の如し。いや“狂戦士”そのもの。
根性があるとか、我慢強いとか、もうそんなレベルではない! これは狂気の沙汰だ!!
「■■■ッ!!」(ぬうッ……!?!?)
だが、バーサーカーが手を止める。
次の瞬間、彼の口元から〈たら~っ!〉と一筋の血が。
恐らくは、噛んでしまったのだろう。ひたすらペヤングを食べ進める内に、勢い余って唇を噛み切ったのだ。
見れば彼の唇は、お歳暮とかでしかお目にかかれない高級明太子の如く、立派に膨れ上がっているのが分かる。
これは先ほど食べた【滅殺☆酸辣湯麺】のせいもあるのだろうが、ペヤングなどの麺類のダメージというのは“唇”にこそ来るのである。
カレーやスープなどと違って、麺はズズズっと啜ることによって食する料理。
それによって辛み成分が、唇の粘膜を激しく攻撃し、むしろ舌や喉よりも痛む。
バーナーで焼かれているみたいに痛いし、タラコみたいに腫れ上がってしまう。
それでもバーサーカーは食べ進める。一度グイッと口元の血を拭ってから、再び箸でペヤングを持ち上げる。
その気迫、死をも厭わぬ凄まじい闘志に、もう仲間達は呆ける他ない。茫然と立ちすくむ他なかった。
「……おかしい、こんなハズは……」
しかし、ふいにセイバーが呟く。
今ちょうど8つ目の命を失った彼を前にし、額に大粒の汗。
「すまない友よ! 失礼しますッ!!」
電光石火の動きで、瞬く間にバーサーカーのもとへ駆け寄り、ペヤングに手を伸ばす。
そしてプラ容器にへばり付いていたキャベツの欠片を、スプーンでひとすくい。パクッと口に入れた。
「ほんごぁ!?!?(悶絶)
……ち、違う! これは私の知っている泰山式ペヤング
セイバーの叫び声。
そして燃料の切れた機関車の如く、ついに〈ズズーン……!〉と動きを止めるバーサーカー。
「別物です! ここまで酷くは無かった!
このペヤングは――――以前より遥かにパワーアップしているッッ!!!!」
◆ ◆ ◆
泰山式・
巷で話題のペヤングに対抗してみたんだケド、思いのほかお客さんに好評でネ? 今ではうちの看板メニューのひとつヨ♪
けど本家のヤツと同じく、これ定期的に
今日新しいのが完成したから、ちょーど良いので出してやたヨ。
そこのデカイおじさんが、記念すべき犠牲者第一号! てコトになるカナ♪
名付けて、【泰山式ペヤング・Final】
前の“三倍”の辛さになてル☆ まーちょとした“愛情盛り”てやつヨ♡
おやおやぁ、箸が止まてるアルな~?
なんかウチの店に対して、ずいぶん舐めた口きいてたみたいだケド……もう気は済んダ?
――――遊びは終わりカ? ミスター・
・ワイプ: 謎の中華少女、魃さん
◆ ◆ ◆
「■■ッ……■■■ッ!!」(ぐっ……ぐぬぉぉぉッ!!)
彼の身体からシュウシュウと煙。
いま計9度目の蘇生を終えたバーサーカーが白目を剥き、震える手で箸を握っている。
「■■■……」(ファ、ファーティマ……)
その眼前には、未だ半分ほどの中身を残したプラ容器……。
泰山式ペヤング・Finalが、ふてぶてしいまでに\ババーン!!/と鎮座。
「■■■■■ッ !!!!」(うおおおぉぉッ!!!! )
だが、不屈! 不退転!!
空気どころか、建物すらも揺らす大きな雄たけびと共に、ペヤングをかっ込む!
――――バーサーカーは、つよいね。
――――――まるでお父さんみたい。だいすきだよバーサーカー。
ピキリ! と頭の中で、何かがひび割れる音。
今、
そのあまりの精神負荷(辛さ)により、なにかとても大切な思い出が、脳から消し飛んでしまったのを感じた。
――――わたしには、おにいちゃんがいるんだって。“シロウ”っていうなまえの。
――――――どんな子かな? あってみたいなぁ。そしたらもう、ひとりじゃなくなるもん。
ガラスが割れたような破砕音。それと共に消滅。
また思い出が消えた。もう決して思い出せなくなる。
あんなに大切な物だったのに、失ってしまった!
――――ははっ、いい気味だわ♪ 大人の女なんかに、もう価値はないのよ!
――――日本人はみんなロリコンなのよ! くらえぇぇ! 年増ぁぁぁーー!!!
なんかどうでもいい思い出まで、混じっていたような気がするが……とりあえずそれも消し飛ぶ。
なにを置いても、絶対、必ず守ると誓った少女との記憶が、どんどん失われていく。
ゴッドハンド……残り2。
彼の身体がガクガクガクー! っと激しく震え、口からブクブク泡も噴いている。
「も、もう限界よっ! これ以上はっ……!」
「くっ……! 許せバーサーカー! レフリーストップだッ!!」
キャスターの震え声、悲痛な叫び。
それを耳にした途端、アーチャーが体内で術式を展開。【
「■■■■ッ!!!!」(ふんぬぁーーッ!!)バッキーン!
「「「 なんとぉーー!?!?!? 」」」
しかし!
いくら贋作とはいえ、あのギルガメッシュの切り札たる拘束宝具を、バーサーカーはあたかもガムテープか何かのように、力づくで粉砕ッ!!
そして間を置かず、またペヤングをズルズルズル!! 速攻で11個目の命が消し飛ぶ! もう残りひとつしかない!!
「駄目だ! 我を失ってやがるッ!」
「私の
「緊急事態ですイリヤ!
食べるのを止めさせるのですッ!!」
仲間達の叫び声、そしてこの場の責任者たるセイバーの一喝。
いまADとしてこの場に控えているイリヤに対し、強い声で告げる。
「何をしているのですか! 早く!! 彼が消滅してしまうッ!!」
だが、不動――――
イリヤは動かない。ただじっとバーサーカーを見つめるばかり。
いや、
「裏方でわるいけど……今だけしゃべらせてもらうわ。
ごめんしてね、おにいちゃん」
一度だけ士郎の方を見て、ニコリと微笑んだ。
そして彼女はカッと見開いた瞳で、司会進行役であるセイバーの方へ向き直る。
「令呪? バカなこといわないでよ。
いったい誰だとおもってるの? わたしのサーヴァントを」
ふと気付けば、彼が握るプラ容器の中身が、ほとんど無くなっていた。
残すは、箱にへばり付いた大量のキャベツを残すのみ。
「まけない……。こんなマーボーなんかに。
バーサーカーは! 世 界 で い ち ば ん 強 い ん だ か ら っ !!!!」
――――
イリヤの身体が赤く輝きを放ち、身体中に魔術回路の文様が浮かび上がる。
それと同時に、バーサーカーが五大陸に轟くほどの雄たけびを上げ、猛然と手を動かす! プラ容器をお箸でカカッとやり、残ったキャベツをかき集め始める!
この身は大英雄ヘラクレス。アインツベルンのサーヴァント。
そして、雪の少女の護り手。彼女の想いをまもる守護者也。
ゆえに、倒れない――――この子の前では不屈であらねばならないッ!!
「いって! いくところまでいくのよっ! わたしが見てるわバーサーカー!!」
イリヤとヘラクレス、主従二人の声がシンクロする――――
「 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ッ ! ■■■■■■■■■ーーッッ!!!!!! 」
「 お゛お゛雄 雄 雄 オ オ ォ ッ ! いっけぇぇぇえええ~~っっ!!!!!! 」
プラ容器を口元に引き寄せ、思いっきりかっ込む!!
ガガガガ! もぐもぐもぐ! ごっくん!
そんな元気のいい咀嚼音の後、彼はカラーンとお箸を置き、「
◆ ◆ ◆
「すごい……すごいですバーサーカー! 素敵ですっ!」
「ひゃっはー! さすが俺達のヘラクレスだぁーッ!!」
「「「 ヘッラクッレス! ヘッラクッレス! ヘッラクッレス! 」」」
彼らは空になったペヤングのプラ容器を、「ポカーン」って感じで茫然と見つめた後、次の瞬間に歓喜が爆発。
ホームランを打った野球選手にするみたいに、「わーい!」とバーサーカーを取り囲み、ギューっと嬉しそうに抱き着く。
バーサーカーは、世界で一番強いと。
そして……。
『第ッ! ――――――6位ィィ!!!!!』
『第ッ! ――――――18位ィィ!!!!!』
『第ッ! ――――――30位ィィ!!!!!』
『そして、第ッ! ――――――
セイバー達がいる客席の方から、ナレーションである言峰の元気な声が聞こえた。
連続して告げられる結果発表。しかもその四品の内、なんと二品がTOP10入りしているという、素晴らしい成果だ。
でもそれを余所に、いま調理場で「スパーッ!」とタバコの形をしたチョコレートを吹か(す真似を)しながら、ここの店長である少女“魃さん”が、どこか不機嫌そうな表情。
「アレを食いやがた……カ。
どうしてどうして、なかなかやりおるマン」
壁を挟んだ向こう側から、バーサーカー&イリヤの「ヒィーーハァーーッ☆☆☆」という雄たけび。
それに魃さんは、さもやる気のない仕草で、とりあえず~といったようにパチパチ拍手を贈る。
ぶっちゃけ、ヤツ等を殺す気で作った――――
みんなでベソかいて「勘弁して下さい!」と、アタシに謝りに来るだろうと。この帰れま10という企画をリタイアする物だとばかり。
あの泰山式ペヤング・Finalを完食出来るのは、冬木じゃ言峰くらいのモンだって、そう思っていたのに……。見事に予想を裏切られた感じである。
「まぁヨイ。あの麻婆ペヤングは、泰山四天王の中で
せいぜい今のうちに、勝利の美酒に酔うておくが良いアル――――」
こーいう地域密着型の個人店には、必ずといって良いほどある“裏メニュー”。
一見さんではなく、ある程度の常連さんだけが知る、隠れた名物料理が存在するものなのだ。
たばこの形したチョコをポリポリと食べ終えた魃さんが、「よっこいせ」と椅子から腰を上げる。
そして自分の身長よりデカいんじゃないかってくらいの中華包丁を、おもむろにシャキンシャキンと研ぎ始めた。
ウケケケケ! と楽し気に笑いながら。
(続きボルグ!)