【募】こんな小説を書けこの野郎【リクエスト】 作:hasegawa&friends
唐突だが、ここからはダイジェストでお送りしよう。
『第ッ! ――――――31位ィィ!!!!!』
「■■■ッ!」(アカンかったんや! やっぱりご飯物はアカンかったんや!)
「炒飯だけじゃなく、天津飯もロクに作れないってゆーの!?」
「あの子はどうやって調理師免許を取ったんだね?!」
『第ッ! ――――――59位ィィ!!!!!』
「よもや、ピータンまでもが激辛仕様とはな。恐れいった……」
「わざわざ注射器でデスソース注入するとか、謎の執念を感じますね……」
「何を食わされているのか、もうよく分からなかったよ、私は」
「ただただ辛かったデス」
『第ッ! ――――――33位ィィ!!!!!』
「私、玉子って“やさしい味”のイメージがあったのです。……この店に来るまでは」
「■■■」(見事にぶち壊されたな。これは悪意の塊だ)
「ブロークン・ファンタズム(遠い目)」
「作るヤツよっちゃあ、カニ玉もこんな風になんだな。あんかけ赤ェ赤ェ」
『第ッ! ――――――20位ィィ!!!!!』
「■■■!?」(何故これを頼んだライダー!? 根拠はッ?!)
「お、美味しいかと思って……(震え声)」
「野菜炒めと言えど、“カレー味”よ!?
そんなのホーリーシット*1に決まってるじゃないの! 何考えてるのっ!」
「見えている地雷……を踏んだ感じかな?
しかも順位が中途半端、と」
『第ッ! ――――――40位ィィ!!!!!』
「もしかしたら魃さんは、日本語を
「豚肉と白菜のピリ辛スープか……。
確かに“ピリ辛”の範疇ではねェわな」
「豚さんが可哀想になった。
まさか己が、こんなエゲツナイ味付けをされるだなどと、思っておらんかったろうに」
『第ッ! ――――――48位ィィ!!!!!』
「白菜のクリーム煮(白目)」
「あのぅ……これのどこがクリーム煮ですか?
まったく分からないのですが……」
「■■■」(食いはしたが、クリームの“ク”の字も見当たらなかったぞ)
「これ
食うの無理だし、胃が苦しいみてェな」
『第ッ! ――――――12位ィィ!!!!!』
「せっかく回復した
「サイドメニューかと思いきや、まさか焼豚が
「 」チーン
『第ッ! ――――――37位ィィ!!!!!』
「たまには当てろよテメェ! なんの為の下調べだオイッ!」
「このおバカ! それでよく戦に勝てたわね!? なにが騎士王よっ!」
「貴公も、ベティヴィエールと同じことを言うのですね――――」
……
…………
……………………
先のゲスト回から数えて、悪夢の“11連敗”。
ファッキン天津飯や、地獄レバニラ炒めを始めとする、ありとあらゆるジャンルの品々を試してはいるのだが、未だにこの店の傾向は掴めず。光明らしき物も見当たらない。
セイバー達は、ただただ無為な時間と、空いたお皿ばかりを積み重ねていた。
◆ ◆ ◆
【第3巡、二十四皿目】 英霊エミヤ(アーチャー)
「やぁやぁ英霊のしょくん! 你好☆」
先の見えない戦い、既に限界まで膨れているお腹。
流石にサヴァ達の顔にも疲労の色が浮かび、厳しい現実の前に意気消沈。
だが唐突に、とても機嫌良さげな少女の声が、彼らの耳に入ってくる。「かんらからから☆」って感じの。
「オイ、よくツラ出せたなお前……」ワナワナ
「君は命がいらんのかね?
今すぐ下がった方が良い。私がこの者達を、食い止めておくから……」
ほわっとキャスターの身体から、青白い光が放たれる。魔術回路を起動させたのだろう。
それのみならず、ライダーはさりげなく眼帯を外し、アサシンはチャキンと刀に手をかけ、バーサーカーの手の中でコップが粉砕。
当然だ。これまでサヴァ達は、ひとつ料理を口にする度に「
こんな空気最悪の場所に、わざわざ元凶自らが赴いて来るなど、正気の沙汰ではない。
英霊並に豪胆なのか、空気を読む能力が欠如しているのか、それとも真正のチャイニーズ・サイコパスなのか……。
とにもかくにも、魃さんは今も、のほほんとした顔。
このゴゴゴ……と空気が震える殺伐とした雰囲気など、まったく気にしていないご様子。
「で、何の御用かしら?
まだ注文は決まってないのだけど」
「心配せずとも、すぐ次を頼む。
うぬは鍋でも磨いておれば良かろう」
「まーまー、そう言うナ! 君とアタシの仲じゃないカ♪
泰山の料理を食べたヤツは、みな友達ヨ☆」
どの口で言うんだ。そう英霊達がまた額をピキピキ。
だが彼女は、心底愉快そうに……。
「実はアンタらに、渡したい物があてネ?
ジュース買いに行くがてら、持て来てやたアル」
すっと、黒いシートのような物を、代表者のセイバーに手渡した。
「オメデト! 一般ピープル卒業アル!
ちょと甘めの判定かもだケド、こんだけアタシの料理を食べたんダ。
今この時を以て、貴様らを“常連”認定してやるゾ☆」
それは、ツルツルの防水加工がなされたシート。
これまで手元に置いてきた物とは違う、どこかおどろおどろしいデザインをした、泰山のメニュー表。
初来店だろうが、素人(?)であろうが、だれもが注文できる通常の品ではなく、それとは“別枠”とも言うべき目新しい料理名が並ぶ、いわば“裏メニュー”が記載された表であった。
「貴様らは資格を手に入れタ――――
裏メニューを頼む
魃さんの\ババーン!/って感じの声。満面のドヤ顔。
さぁ、喜ぶヨイ! 庭駆け回レ! そんな風にみんなの反応を期待しまくっているのが窺える。フリスビーとってきた犬みたいに。
対して、サヴァ達は無言。
みんな一様に、黒いメニュー表を真顔で見つめている。
なんのリアクションも取らずに。
「ひとつ……訊いてもいいかな魃さん」
「ん、なになに赤い人? どーかしたカ?
アタシいま彼氏いないケド、あんた立候補スル?」
いや、そうではなくてだな……、とアーチャーが素の声で仕切り直す。
「この黒いメニュー表にあるのは、いわば“裏メニュー”なんだね?
君が認めた者だけが注文できる、特別な品々だと」
「そーヨ! これはアタシの“親愛の証”と言ても、過言じゃないネ☆
そんじゃ、いつウチに越してくル? 親御さんにもご挨拶しとかないト。
あ、明日の朝になったら、速攻で婚姻届け出し行くカ? 善は急げヨ♡」
家事も料理も折半してやろーネ! アタシ炒飯とか作れないし、それアンタに任せるアル!
ちょーどよかたよマイダーリン♪ 末永くよろしくネ♡
そう魃さんが、いやんいやんと身をくねらせる。「イケメンGETだゼ!」とすごく嬉しそう。
「ちなみにだが、このメニュー表を貰える“君が認めた者”とは、何人くらい居るんだね?」
「おん? そんなの片手で数えられるくらいヨ。
ここ冬木じゃ、言峰とカレンしかおらんアル。
どいつもこいつも、ナンジャクで困るネー」
キョトンとした顔の魃さん。対してアーチャーは、何かを悟ったような表情。
「理解した。ではこのメニュー表は、
裏メニューなどを頼んでも、TOP10には
「 !?!?!? 」
もうお手本のような「ガーン!」という顔。魃さんが仰け反って驚愕。
「なぁ嬢ちゃん、なんで俺らがコレ頼むと思うんだよ? そりゃねーだろオイ」
「いえ、ご厚意はありがたいのですが。私はあまり辛い物は……」
「腹もほどよく膨れとる故な? これ以上、無駄な品を食す余裕は……」
「■■■」(お前の親愛、一体どうなってるんだ。スコヴィル値*2で好意を表してるのか?)
「サイコパスの特徴として【他者の痛みを理解できない】、【自分に都合よく物事を解釈する】というのがあるそうよ?
例えば殺人を犯そうとも、きっとそいつは『救ってくれてありがとう』と、こちらに感謝しているハズだ~って、そう思っちゃうんだって」
あと“異常なまでの攻撃性”とかもあったかしらね。
そうキャスターが呟き、一同は「うんうん」と首を縦に振る。何かに納得したかように。
やがてセイバーがこの場を代表し、おずおずと魃さんのもとへ。
申し訳ないですが、これはお返しする。いったん帰って貰って良いですか――――と告げた。
「ちっ、チキショー! おぼえてやがれ英霊共っ!
グレてやるアル~~っ!!」
うわーん! と大粒の涙を撒き散らしながら、魃さんが調理場へ退散。
その悲しい後ろ姿を、みんなボケーっと見守った。「なんやねんアイツ」と。
「グレるって、何だ?
もう立派に、
「自分が“まとも”だって、まだ信じてるのね。
救いようが無いわ……」
◆ ◆ ◆
この後も、普通に料理は作ってくれるんだってさ。
魃さん、「これで適当にやったりしたラ、なんか負けたような気がスル」って。
そうADの士郎くんに伝えられ、みんな一安心。
まぁ何が安心なのかはよく分からないのだが、とりあえず再びメニューに向き直り、次の注文を考え始める。やれやれって感じで。
「ねぇ、あの裏メニュー表の中に、【プロトタイプMB】という文字があったのだけど……」
「恐らくは、
人間の限界を遥かに超える口内負荷と、致命的な環境汚染を引き起こす、悪魔のMB。
……といった風な感じか?」
「ぜったい食べたくないです、そんなの」
きっと、とても人が食べるような代物じゃない。その確信がある。
今みんなの脳裏に「言葉は不要か……(cv言峰綺礼)」という謎の言葉が浮かんだが、これはいったい何なのだろう? サヴァ達には知る由もなかった。
「しからば、どうするのだ双剣使いよ?
次はお主の手番のようだが」
「ふむ、それがな……」
もうすっかり手に馴染んだ、泰山のメニュー表(ノーマルVer)
それをうむむと睨みながら、アーチャーは葛藤している様子。
「正直、少し迷っているんだ。
やってみたい事が、ふたつあるのだが……そのどちらでいこうかな、と」
セイバーが作成していた、これまでの注文を全て記録したフリップ。
それを指さしながら、彼は皆の顔を見渡す。
「まず一つ目は、ここいらで“ラーメン”を注文してみる案だ。
泰山には数多くのラーメンがあるが、これまであまり注文していなかっただろう?」
たまたま機会が無かったのか、それともあの滅殺☆
だが日本の中華飯店において、やはりラーメンというのは鉄板だ。
どこの店にも必ずあるし、誰もが一度は頼んでみる品である筈。
「醤油、味噌、塩、チャーシュー麺、もやしラーメンetc.
どれも有名所だし、ランクインしている可能性は、充分にある。
ここら辺を重点的に攻めてみるのも、悪くないと思ってね」
サーヴァント達は「ふむふむ」と頷く。
みんなラーメンは好きだし、実はけっこう気になっていたりもしたから。
まがりなりにも中華屋さんに来たのに、ラーメンを食べておかないのは、おかしい気もするし。
老舗の喫茶店に入ったというのに、コーラやクリームソーダばかりを頼むようなものだ。コーヒー飲めこの野郎! って話である。
「そして、もうひとつの案としては、これは茨の道になるやもしれんのだが……。
とにかく“麻婆”と名の付く料理を、片っ端から注文してみてはどうか、と」
「「「 !?!? 」」」
空気が張り詰めるのが分かった。
みんな身を固くし、じっとアーチャーの方を見ている。
「なんだかんだ言っても、泰山といえば“麻婆”だよ。
先の石焼き麻婆炒飯は、ここではご法度となるご飯系だから、例外だとしても……。
しかしながら、やはり麻婆というブランドは、泰山において特別な意味を持つだろう」
「実際に私は、この店にやって来た時、まず最初に『何品くらい麻婆系の品があるのか』と、ひと通りメニュー表を探したからね。
麻婆麺、麻婆茄子、麻婆春雨、麻婆定食etc……未だ多くの品が存在している。
素人考えで恐縮だが、やはりこれらの料理には、みんな特に目を惹かれると思うんだ」
「まぁ言うまでもなく、この店の麻婆は
ゆえに正直、私もあまり気乗りはせんのだが……。
現在の行き詰った状況を打破したいのならば、この“麻婆ローラー作戦”ともいうべき物を、あえて実行してみるのも手かもしれんぞ?」
流石に全部いっぺんに頼もうなどとは思わんが、順番に一皿づつ注文していかないか?
そう麻婆という恐怖の前に葛藤しつつも、アーチャーは提案。みんなの意見を仰ぐ。
前述の通り、ただいま11連敗中――――まったく光が見えない状況だ。
この期に及んでは、致し方なし。そろそろ腹を括るしかないか……。みんなの表情にも覚悟の色が宿る。
「それも良いのですが、
まだ注文出来ていませんが」
「――――まだ言ってんのかよライダー!? いい加減にしろってッ!!」
そんな皆の決意を余所に、ライダーがのほほんとした声で発言。「エビマヨ食べたいです」と。
「だって……みんな『駄目だ』って言うんですもの。
さっきもエビマヨ頼もうとしたのに、止められてしまいました……。
ここら辺でそろそろ、と思うのですが……」
「■■■」(そりゃあ止めるさ。無いよエビマヨは)
「何故にお主は、マヨに固執する?
泰山は唐辛子の店ぞ。分かっておるか?」
実は、あの第一巡目の手番以降、ライダーは事ある毎に「エビマヨエビマヨ」言っていた。
どれだけ皆に言われようとも、頑なに意見を曲げようとしない。
ぜったい美味しいハズだ、入っているハズだと、逆にみんなを説得する始末。
いったい何が彼女をそうさせるのだろう? それは誰にも分からない。
「でも、代わりに注文した野菜炒め(カレー味)も、結局ランクインしてませんでしたし……。
きっと泰山には、私達には推し量ることの出来ない、何かがあるのですよ。
だから、ここはもう思い切って、エビマヨや冷やし中華を頼んでみては……」
「ああもうっ! テメェってヤツは! 本当によォッ!」
「その純粋さは、どうか大切にして欲しい。……でも今はこらえて貰えんかね?」
正直、みんな呆れ顔。
なにを言ってるんだこいつはと、怒りすら滲ませている者もいる。
TOP10を全て当てなきゃいけないのに、まだ4つしか正解しておらず、しかもこの企画を開始してから、既に6時間も経過しているのだ。
そう苛立ってしまうのも、無理はない事かもしれない。
「ライダー……」
セイバーがどこか悲し気な表情で、じっとライダーの方を見つめる。
ただ食べたい物を、素直に言っているだけ。なんにも悪い事してないハズなのに、みんなに怒られている。
そんな彼女の姿に、思う所があるのだろう。
「と、とにかく今は、私の手番だからね。
この話は、また後で構わないか? 決して君を無碍にはせんから」
「……はい、分かりましたアーチャー」
優しく窘められるも、彼女は「しゅん……」とした顔。
何故みんな分かってくれないんだろう、信じてくれないのだろう。そう悲しんでいるのが見て取れた。
思わずセイバーが駆け寄り、ギュッと彼女の手を握る。
なにも言う事が出来ず、なんと言って良いのかも分からないままで、じっとライダーを見つめる。
すると彼女は「大丈夫ですよ♪」と伝えるかのように、ニコッと微笑んでくれた。
それは薄い笑みで、いつもとは違う力のない物ではあったが、なんとか
「それじゃ、ラーメンか麻婆かの二択ね。どっちにするの?」
「俺ぁ……どうだろなァ?
どっちもアリそうな気がするし、ムズイよ」
「■■■」(両方とも、理があるように思う。やってみる価値はあるだろう)
「もうスパッと決めて構わぬぞ? お主の直感を信じてみてはどうだ。
なぁに、既に11連敗もしておるのだ。この期に及んで、文句などつけぬよ」
「ふむ……」
果たして、どちらが良いのだろうか。
そう顎に手を当て、暫しのあいだ悩んでいたアーチャーが、ようやく顔を上げる。
「ならば、一度“ラーメン系”を頼もうか。
醤油という一番オーソドックスな物で、是非を探ってみるよ」
……
…………
……………………
◆ ◆ ◆
「――――クライ! フォーザ! ムゥゥゥーーーーンッッ!!!!!!」
ビクゥ!? とアーチャーが身を起こす。
いきなり耳に飛び込んできた大声に、思わず意識が覚醒。
「地 獄 へ ヨ ウ コ ソ !
二択を間違えて即死した君にお送りする、出張版タイガー道場よ☆
ショーーーック!! 嘘でかーたーめた~♪」*3
「久しぶりねシロウ!
生前だけじゃなく、英霊になってもここに来るなんて、そんなに私に会いたかったの?
筋金入りの死に急ぎ野郎だね! ヒーハー!」
なんか剣道着を来たお姉さんと、ブルマ姿のロリっ子がワーキャー言っているが、アーチャーは茫然とする他ない。
あまりに突然の出来事に、頭が真っ白だった。
「ひたすら画面をスクロールしてりゃあ、ハッピーエンドに辿り着けるとでも?
そんな甘ったれた考えは捨てろッ! 人生は戦いなのよっ!」
「うんっ! 中華料理を食べただけで、あの世行きになる事だってあるんだからーっ!
いくら英霊だからって、油断しちゃダメだよシロウ?
じーごくーの、ナイフがー♪ 君を狙っているぅ~♪」*4
アーチャーを前にし、楽しそうにはしゃぐ二人。
彼女らが何を言っているのかは、皆目見当が付かないが……でもなんか
特に、背の高い方の女性が持っている、虎のストラップが付いた竹刀とか。
――――あの、ひとつ訊いても構わんかね? 君達はいったい……。
そう彼女らに言おうと思ったアーチャーだが、なぜか微塵も口を動かすことが出来ず、それどころか身じろぎする事すら出来ない。
まるで、金縛りにあっているような、夢の中にいるような感覚。
「ん、何かな弓の英霊くん? その呆れ顔は。
そ ん な 腐 っ た 目 で 人 間 を 見 る の は や め ろ ッ !!(カッ)
もっと深くッ……深く愛してやれぇぇーーッ!! 人間を舐めるなァァーーッッ!!」
「あはは! 師匠ったらジョウチョフアンテーイ☆
べつに気にしなくていーよシロウ♪ 瓦せんべい食べる? 龍角散のど飴もあるよ?」ニッコリ
長渕剛みたく〈ドゴーン!〉と壁を蹴り飛ばしながら、剣道着の女性が暴れまわっている。
そして「いつもの事だわ」とばかりに、それをまったく気にしていない様子のちびっ子が、アーチャーの口によいしょと喉飴をねじ込む。なんか物凄くマズい。
とりあえず、なんだろうこの状況は?
確か自分は、泰山の客席で醤油ラーメンを食べていた筈。
みんなの声援を受けながら注文し、それをズズッと啜った所までは憶えているが……そこからの記憶が途絶えてしまっている。
ここが何なのか、自分はどうしてこんな剣道場みたいな場所にいるのか。アーチャーには全く身に覚えが無かった。
「さてさて、訊く所によると貴官は、醤油ラーメンを食べて即死という、大変めずらしい死に方をしたらしいな?
せこせこ身体を鍛え、死に物狂いで投影魔術を磨いても、辛いものには勝てなかったと。
アンタの二十年ちょいの人生、
「なにがアイアーム、ザボーン、オブマイ、ソゥ~~ドよぉー!
アラヤの抑止力さんは、ずいぶんザコ舌なのねっ。おにいちゃんダッサー☆」
「ということで、こちらに醤油ラーメンを用意しました(キリッ)
今から私が、見事これを食べきり、姉貴分の威厳を示してあげるわっ!
勝手にサーヴァント縛りで、帰れま10なんぞやりおってからに!
Fateのメインヒロインがいったい誰なのか、そろそろ示しとかなきゃって思ってたのよ♪」
謎の力によって、この場に泰山の醤油ラーメンが召喚される。
だがそれは、決して皆が知っているようなブツでは無く、醤油ラーメンとは名ばかりの赤黒い邪悪な見た目をしていた。
確かに醤油も入っているんだろうが、きっとその何十倍もの比率で、デスソースやらキャロライナ・リーパー*5やらが入っているのだろう。
「見さらせぇぇーーッ!!
私は大河! 油風呂の藤村大河じゃーーい!
それでは、いっただっきまーーす☆」
大河がニッコニコしながら、どんぶりを手に持ち、お箸で持ち上げた麺をフーフー。
そして躊躇うことなく、〈ちゅるるん♪〉と啜って見せた。
「――――毒 眼 鉄 ッ ッ !!!!」ブフゥ
「ししょーーお!?!?」
そのままバターンとひっくり返り、ラーメン撒き散らしながら昏倒。
辛いとか痛いとか言う前に、速攻で意識を持っていかれた。
「そ……そんな!? なか卯の牛丼に七味をかける師匠がっ!
ボンカレーの中辛だって食べられるのに、まさか敗れるなんてっ!
えいせいへーーい! えいせいへぇぇーーーい!!」
ブルマの悲痛な声が辺りに木霊する中、大河は泡を吹いて倒れ伏している。
その姿はどこか、【サイバイマンにやられたヤムチャ】を彷彿とさせた。もうピクリともしていない。
「えっとぉ……そういうワケでございましてぇ(司会進行)
とりあえず、今回のシロウの敗因は、『ヒヨッちゃった事』だよ?
確かにラーメンにも心を惹かれるだろうけど、ここは思い切っていくところ!
せっかく泰山にいるんだから、そろそろ“麻婆”ってヤツと、決着をつけなきゃね☆」
アホのように呆け、その場に立ちすくむアーチャーに対し、イリy……いや弟子1号が何事もなかったかように告げる。
「ではでは、今回のタイガー道場は以上ですっ!
ちゃんとセーブはしてるよね、おにいちゃん?
大河が血文字で書いた「まったねー☆」というダイイングメッセージと、元気にブンブン手を振るブルマに見送られつつ、アーチャーの意識がこの世界から遠ざかっていった。
◆ ◆ ◆
『第ッ! ――――――4位ィィ!!!!!』
『第ッ! ――――――3位ィィ!!!!!』
『第ッ! ――――――5位ィィ!!!!!』
『第ッ! ――――――10位ィィ!!!!!』
彼があのふざけた【ファッキン・ファンタズム】より帰還して、暫くした後……。
言峰のハツラツとした声のナレーションが、矢次にこの場に響いた。
「すげェ! ドンピシャじゃねぇかお前!!」
「■■■!」(4連勝ッ! まさに破竹の勢い!)
「やっぱり麻婆だったのね!
小難しいこと考えず、最初からこれを注文しとけば良かったのよっ!」
「見事也、双剣使い! 天晴ぞっ!!」
みんなの喜びの声、そして四つの料理の空き皿。
それを前にし、アーチャーはなんとも言えない表情をしていた。
あれから、彼女らの提案通り、アーチャーは醤油ラーメンを止めて、麻婆麺を注文。
そして仲間達も次々に追従し、麻婆茄子、麻婆春雨、麻婆定食といった、ここ泰山にある全ての麻婆系料理をコンプリート。
その結果、5番手のキャスターの手番には、怒涛の4連勝を達成。
一体これまでの苦労は何だったのかと思っちゃうほど、あっさり正解出来たのである。
思えば一番最初の、爆裂ゴッド麻婆での非常に手痛い失敗や、あの石焼き麻婆炒飯なる物がくっそマズかった事で、麻婆系に対する忌避感が出ていたのかもしれない。
いつもその文字は目に入っていたし、きっと人気なんだろうな~とは思いつつも、どこか注文するのは気が進まずに、ここまでズルズルと避けて通っていた。
しかしながら、何を頼もうかと思考の中に沈んでいたアーチャーが、突然「ハッ!?」と顔を上げたかと思えば、これまでとは打って変わって、迷うことなく麻婆麺にすると宣言。
ハッキリした声で、魃さんへ注文して見せたのだのだった。
その男らしさ……いや
仲間達は少し戸惑ったものの、その有無を言わせぬ勢いに押されるように、黙して彼の意思を受け入れた。
その結果が、今のこの状況。
もう泰山の客席は、あたかもディズニーのパレードのような様相だ。
これまで散々味わって来た苦渋がカタルシスとなり、みんな万馬券でも当てたかのような喜びようである。ヒィィィーーハァァーーー!!!!
「いや、確かに嬉しいよ。助けて貰った。
だが私は、どこか腑に落ちない気持ちでいてね……」
「アーチャー?」
ライダーが、キョトンと不思議そうに彼の方を見る。
エビマヨを頼みたいという気持ちを抑えて、お利口に麻婆春雨を注文し、この4連勝に大きく貢献した彼女だったが……。
その立役者である筈のアーチャーは、なんかとても難しそうな顔で「うむむ……」と腕組みをしているから。
「あれは一体、何だったのだ?
なにやら、どこか懐かしいような気が……」
この世界とは違う、別時空の存在――――
いち英霊である自分には分からない、なにか大いなる者の意思によって、あのタイガー道場とかいう場所は運営されているのだろう。
迷える子羊を助け、ユーザーフレンドリーを大切にしながら。
「とりあえず、『直前の選択肢からやり直せ』は無いだろう……。
見てはいけない物を、垣間見た気分だ」
「?」
とにもかくにも、あと2つ。
いよいよ英霊達の帰れま10も、佳境に差し掛かるのだった。
(つづきフォォーーン!)