【募】こんな小説を書けこの野郎【リクエスト】   作:hasegawa&friends

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Fateで帰れま10。~In 紅洲宴歳館・泰山~ その11

 

 

 

 

 唐突だが、ここからはダイジェストでお送りしよう。

 

 

 

『第ッ! ――――――31位ィィ!!!!!』

 

 

「■■■ッ!」(アカンかったんや! やっぱりご飯物はアカンかったんや!)

 

「炒飯だけじゃなく、天津飯もロクに作れないってゆーの!?」

 

「あの子はどうやって調理師免許を取ったんだね?!」

 

 

 

 

 

『第ッ! ――――――59位ィィ!!!!!』

 

 

「よもや、ピータンまでもが激辛仕様とはな。恐れいった……」

 

「わざわざ注射器でデスソース注入するとか、謎の執念を感じますね……」

 

「何を食わされているのか、もうよく分からなかったよ、私は」

 

「ただただ辛かったデス」

 

 

 

 

 

『第ッ! ――――――33位ィィ!!!!!』

 

 

「私、玉子って“やさしい味”のイメージがあったのです。……この店に来るまでは」

 

「■■■」(見事にぶち壊されたな。これは悪意の塊だ)

 

「ブロークン・ファンタズム(遠い目)」

 

「作るヤツよっちゃあ、カニ玉もこんな風になんだな。あんかけ赤ェ赤ェ」

 

 

 

 

 

 

『第ッ! ――――――20位ィィ!!!!!』

 

 

「■■■!?」(何故これを頼んだライダー!? 根拠はッ?!)

 

「お、美味しいかと思って……(震え声)」

 

「野菜炒めと言えど、“カレー味”よ!?

 そんなのホーリーシット*1に決まってるじゃないの! 何考えてるのっ!」

 

「見えている地雷……を踏んだ感じかな?

 しかも順位が中途半端、と」

 

 

 

 

 

『第ッ! ――――――40位ィィ!!!!!』

 

 

「もしかしたら魃さんは、日本語を()()()()()()()()()()()()?」

 

「豚肉と白菜のピリ辛スープか……。

 確かに“ピリ辛”の範疇ではねェわな」

 

「豚さんが可哀想になった。

 まさか己が、こんなエゲツナイ味付けをされるだなどと、思っておらんかったろうに」

 

 

 

 

 

『第ッ! ――――――48位ィィ!!!!!』

 

 

「白菜のクリーム煮(白目)」

 

「あのぅ……これのどこがクリーム煮ですか?

 まったく分からないのですが……」

 

「■■■」(食いはしたが、クリームの“ク”の字も見当たらなかったぞ)

 

「これ苦理胃無(クリーム)の間違いなんじゃねーか?

 食うの無理だし、胃が苦しいみてェな」

 

 

 

 

 

『第ッ! ――――――12位ィィ!!!!!』

 

 

「せっかく回復した十二の試練(ゴッドハンド)が、またギューン! と減ってしまいました……」

 

「サイドメニューかと思いきや、まさか焼豚が()()()()()来るとは……ご愁傷様だ」

 

「 」チーン

 

 

 

 

 

『第ッ! ――――――37位ィィ!!!!!』

 

 

「たまには当てろよテメェ! なんの為の下調べだオイッ!」

 

「このおバカ! それでよく戦に勝てたわね!? なにが騎士王よっ!」

 

「貴公も、ベティヴィエールと同じことを言うのですね――――」

 

 

 

 ……

 …………

 ……………………

 

 

 

 先のゲスト回から数えて、悪夢の“11連敗”。

 

 ファッキン天津飯や、地獄レバニラ炒めを始めとする、ありとあらゆるジャンルの品々を試してはいるのだが、未だにこの店の傾向は掴めず。光明らしき物も見当たらない。

 

 セイバー達は、ただただ無為な時間と、空いたお皿ばかりを積み重ねていた。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

【第3巡、二十四皿目】 英霊エミヤ(アーチャー)

 

 

 

 

「やぁやぁ英霊のしょくん! 你好☆」

 

 先の見えない戦い、既に限界まで膨れているお腹。

 流石にサヴァ達の顔にも疲労の色が浮かび、厳しい現実の前に意気消沈。

 だが唐突に、とても機嫌良さげな少女の声が、彼らの耳に入ってくる。「かんらからから☆」って感じの。

 

「オイ、よくツラ出せたなお前……」ワナワナ

 

「君は命がいらんのかね?

 今すぐ下がった方が良い。私がこの者達を、食い止めておくから……」

 

 ほわっとキャスターの身体から、青白い光が放たれる。魔術回路を起動させたのだろう。

 それのみならず、ライダーはさりげなく眼帯を外し、アサシンはチャキンと刀に手をかけ、バーサーカーの手の中でコップが粉砕。

 

 当然だ。これまでサヴァ達は、ひとつ料理を口にする度に「Who the fuck did this(どこの糞がこれをしやがった)?」とばかりの顔で、額にピキピキと青筋を浮かせていたのだから。

 

 こんな空気最悪の場所に、わざわざ元凶自らが赴いて来るなど、正気の沙汰ではない。

 英霊並に豪胆なのか、空気を読む能力が欠如しているのか、それとも真正のチャイニーズ・サイコパスなのか……。

 

 とにもかくにも、魃さんは今も、のほほんとした顔。

 このゴゴゴ……と空気が震える殺伐とした雰囲気など、まったく気にしていないご様子。

 

「で、何の御用かしら?

 まだ注文は決まってないのだけど」

 

「心配せずとも、すぐ次を頼む。

 うぬは鍋でも磨いておれば良かろう」

 

「まーまー、そう言うナ! 君とアタシの仲じゃないカ♪

 泰山の料理を食べたヤツは、みな友達ヨ☆」

 

 どの口で言うんだ。そう英霊達がまた額をピキピキ。

 だが彼女は、心底愉快そうに……。

 

「実はアンタらに、渡したい物があてネ?

 ジュース買いに行くがてら、持て来てやたアル」

 

 すっと、黒いシートのような物を、代表者のセイバーに手渡した。

 

「オメデト! 一般ピープル卒業アル!

 ちょと甘めの判定かもだケド、こんだけアタシの料理を食べたんダ。

 今この時を以て、貴様らを“常連”認定してやるゾ☆」

 

 それは、ツルツルの防水加工がなされたシート。

 これまで手元に置いてきた物とは違う、どこかおどろおどろしいデザインをした、泰山のメニュー表。

 初来店だろうが、素人(?)であろうが、だれもが注文できる通常の品ではなく、それとは“別枠”とも言うべき目新しい料理名が並ぶ、いわば“裏メニュー”が記載された表であった。

 

「貴様らは資格を手に入れタ――――

 裏メニューを頼む()()()()()()☆」

 

 魃さんの\ババーン!/って感じの声。満面のドヤ顔。

 さぁ、喜ぶヨイ! 庭駆け回レ! そんな風にみんなの反応を期待しまくっているのが窺える。フリスビーとってきた犬みたいに。

 

 対して、サヴァ達は無言。

 みんな一様に、黒いメニュー表を真顔で見つめている。

 なんのリアクションも取らずに。

 

「ひとつ……訊いてもいいかな魃さん」

 

「ん、なになに赤い人? どーかしたカ?

 アタシいま彼氏いないケド、あんた立候補スル?」

 

 いや、そうではなくてだな……、とアーチャーが素の声で仕切り直す。

 

「この黒いメニュー表にあるのは、いわば“裏メニュー”なんだね? 

 君が認めた者だけが注文できる、特別な品々だと」

 

「そーヨ! これはアタシの“親愛の証”と言ても、過言じゃないネ☆

 そんじゃ、いつウチに越してくル? 親御さんにもご挨拶しとかないト。

 あ、明日の朝になったら、速攻で婚姻届け出し行くカ? 善は急げヨ♡」

 

 家事も料理も折半してやろーネ! アタシ炒飯とか作れないし、それアンタに任せるアル!

 ちょーどよかたよマイダーリン♪ 末永くよろしくネ♡

 そう魃さんが、いやんいやんと身をくねらせる。「イケメンGETだゼ!」とすごく嬉しそう。

 

「ちなみにだが、このメニュー表を貰える“君が認めた者”とは、何人くらい居るんだね?」

 

「おん? そんなの片手で数えられるくらいヨ。

 ここ冬木じゃ、言峰とカレンしかおらんアル。

 どいつもこいつも、ナンジャクで困るネー」

 

 キョトンとした顔の魃さん。対してアーチャーは、何かを悟ったような表情。

 

「理解した。ではこのメニュー表は、()()()()()()()()()()

 裏メニューなどを頼んでも、TOP10には()()()()()()()()()()()

 

「 !?!?!? 」

 

 もうお手本のような「ガーン!」という顔。魃さんが仰け反って驚愕。

 

「なぁ嬢ちゃん、なんで俺らがコレ頼むと思うんだよ? そりゃねーだろオイ」

 

「いえ、ご厚意はありがたいのですが。私はあまり辛い物は……」

 

「腹もほどよく膨れとる故な? これ以上、無駄な品を食す余裕は……」

 

「■■■」(お前の親愛、一体どうなってるんだ。スコヴィル値*2で好意を表してるのか?)

 

「サイコパスの特徴として【他者の痛みを理解できない】、【自分に都合よく物事を解釈する】というのがあるそうよ?

 例えば殺人を犯そうとも、きっとそいつは『救ってくれてありがとう』と、こちらに感謝しているハズだ~って、そう思っちゃうんだって」

 

 あと“異常なまでの攻撃性”とかもあったかしらね。

 そうキャスターが呟き、一同は「うんうん」と首を縦に振る。何かに納得したかように。

 

 やがてセイバーがこの場を代表し、おずおずと魃さんのもとへ。

 申し訳ないですが、これはお返しする。いったん帰って貰って良いですか――――と告げた。

 

「ちっ、チキショー! おぼえてやがれ英霊共っ!

 グレてやるアル~~っ!!」

 

 うわーん! と大粒の涙を撒き散らしながら、魃さんが調理場へ退散。

 その悲しい後ろ姿を、みんなボケーっと見守った。「なんやねんアイツ」と。

 

「グレるって、何だ?

 もう立派に、()()()()()()()()気がすんだが」

 

「自分が“まとも”だって、まだ信じてるのね。

 救いようが無いわ……」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 この後も、普通に料理は作ってくれるんだってさ。

 魃さん、「これで適当にやったりしたラ、なんか負けたような気がスル」って。

 

 そうADの士郎くんに伝えられ、みんな一安心。

 まぁ何が安心なのかはよく分からないのだが、とりあえず再びメニューに向き直り、次の注文を考え始める。やれやれって感じで。

 

「ねぇ、あの裏メニュー表の中に、【プロトタイプMB】という文字があったのだけど……」

 

「恐らくは、麻婆(MB)なのだろうね。

 人間の限界を遥かに超える口内負荷と、致命的な環境汚染を引き起こす、悪魔のMB。

 ……といった風な感じか?」

 

「ぜったい食べたくないです、そんなの」

 

 きっと、とても人が食べるような代物じゃない。その確信がある。

 今みんなの脳裏に「言葉は不要か……(cv言峰綺礼)」という謎の言葉が浮かんだが、これはいったい何なのだろう? サヴァ達には知る由もなかった。

 

「しからば、どうするのだ双剣使いよ?

 次はお主の手番のようだが」

 

「ふむ、それがな……」

 

 もうすっかり手に馴染んだ、泰山のメニュー表(ノーマルVer)

 それをうむむと睨みながら、アーチャーは葛藤している様子。

 

「正直、少し迷っているんだ。

 やってみたい事が、ふたつあるのだが……そのどちらでいこうかな、と」

 

 セイバーが作成していた、これまでの注文を全て記録したフリップ。

 それを指さしながら、彼は皆の顔を見渡す。

 

「まず一つ目は、ここいらで“ラーメン”を注文してみる案だ。

 泰山には数多くのラーメンがあるが、これまであまり注文していなかっただろう?」

 

 たまたま機会が無かったのか、それともあの滅殺☆酸辣湯麺(スーラータンメン)があまりにも赤黒かったので、それがトラウマになっているのか、みんな妙にラーメン系を避けていたように思う。

 だが日本の中華飯店において、やはりラーメンというのは鉄板だ。

 どこの店にも必ずあるし、誰もが一度は頼んでみる品である筈。

 

「醤油、味噌、塩、チャーシュー麺、もやしラーメンetc.

 どれも有名所だし、ランクインしている可能性は、充分にある。

 ここら辺を重点的に攻めてみるのも、悪くないと思ってね」

 

 サーヴァント達は「ふむふむ」と頷く。

 みんなラーメンは好きだし、実はけっこう気になっていたりもしたから。

 まがりなりにも中華屋さんに来たのに、ラーメンを食べておかないのは、おかしい気もするし。

 老舗の喫茶店に入ったというのに、コーラやクリームソーダばかりを頼むようなものだ。コーヒー飲めこの野郎! って話である。

 

「そして、もうひとつの案としては、これは茨の道になるやもしれんのだが……。

 とにかく“麻婆”と名の付く料理を、片っ端から注文してみてはどうか、と」

 

「「「 !?!? 」」」

 

 空気が張り詰めるのが分かった。

 みんな身を固くし、じっとアーチャーの方を見ている。

 

「なんだかんだ言っても、泰山といえば“麻婆”だよ。

 先の石焼き麻婆炒飯は、ここではご法度となるご飯系だから、例外だとしても……。

 しかしながら、やはり麻婆というブランドは、泰山において特別な意味を持つだろう」

 

「実際に私は、この店にやって来た時、まず最初に『何品くらい麻婆系の品があるのか』と、ひと通りメニュー表を探したからね。

 麻婆麺、麻婆茄子、麻婆春雨、麻婆定食etc……未だ多くの品が存在している。

 素人考えで恐縮だが、やはりこれらの料理には、みんな特に目を惹かれると思うんだ」

 

「まぁ言うまでもなく、この店の麻婆は()()()()()()

 ゆえに正直、私もあまり気乗りはせんのだが……。

 現在の行き詰った状況を打破したいのならば、この“麻婆ローラー作戦”ともいうべき物を、あえて実行してみるのも手かもしれんぞ?」

 

 流石に全部いっぺんに頼もうなどとは思わんが、順番に一皿づつ注文していかないか?

 そう麻婆という恐怖の前に葛藤しつつも、アーチャーは提案。みんなの意見を仰ぐ。

 

 前述の通り、ただいま11連敗中――――まったく光が見えない状況だ。

 この期に及んでは、致し方なし。そろそろ腹を括るしかないか……。みんなの表情にも覚悟の色が宿る。

 

「それも良いのですが、()()()()()()()()()()

 まだ注文出来ていませんが」

 

「――――まだ言ってんのかよライダー!? いい加減にしろってッ!!」

 

 そんな皆の決意を余所に、ライダーがのほほんとした声で発言。「エビマヨ食べたいです」と。

 

「だって……みんな『駄目だ』って言うんですもの。

 さっきもエビマヨ頼もうとしたのに、止められてしまいました……。

 ここら辺でそろそろ、と思うのですが……」

 

「■■■」(そりゃあ止めるさ。無いよエビマヨは)

 

「何故にお主は、マヨに固執する?

 泰山は唐辛子の店ぞ。分かっておるか?」

 

 実は、あの第一巡目の手番以降、ライダーは事ある毎に「エビマヨエビマヨ」言っていた。

 どれだけ皆に言われようとも、頑なに意見を曲げようとしない。

 ぜったい美味しいハズだ、入っているハズだと、逆にみんなを説得する始末。

 いったい何が彼女をそうさせるのだろう? それは誰にも分からない。

 

「でも、代わりに注文した野菜炒め(カレー味)も、結局ランクインしてませんでしたし……。

 きっと泰山には、私達には推し量ることの出来ない、何かがあるのですよ。

 だから、ここはもう思い切って、エビマヨや冷やし中華を頼んでみては……」

 

「ああもうっ! テメェってヤツは! 本当によォッ!」

 

「その純粋さは、どうか大切にして欲しい。……でも今はこらえて貰えんかね?」

 

 正直、みんな呆れ顔。

 なにを言ってるんだこいつはと、怒りすら滲ませている者もいる。

 TOP10を全て当てなきゃいけないのに、まだ4つしか正解しておらず、しかもこの企画を開始してから、既に6時間も経過しているのだ。

 そう苛立ってしまうのも、無理はない事かもしれない。

 

「ライダー……」

 

 セイバーがどこか悲し気な表情で、じっとライダーの方を見つめる。

 ただ食べたい物を、素直に言っているだけ。なんにも悪い事してないハズなのに、みんなに怒られている。

 そんな彼女の姿に、思う所があるのだろう。

 

「と、とにかく今は、私の手番だからね。

 この話は、また後で構わないか? 決して君を無碍にはせんから」

 

「……はい、分かりましたアーチャー」

 

 優しく窘められるも、彼女は「しゅん……」とした顔。

 何故みんな分かってくれないんだろう、信じてくれないのだろう。そう悲しんでいるのが見て取れた。

 

 思わずセイバーが駆け寄り、ギュッと彼女の手を握る。

 なにも言う事が出来ず、なんと言って良いのかも分からないままで、じっとライダーを見つめる。

 すると彼女は「大丈夫ですよ♪」と伝えるかのように、ニコッと微笑んでくれた。

 それは薄い笑みで、いつもとは違う力のない物ではあったが、なんとか友達(セイバー)に感謝の気持ちを示した。

 

「それじゃ、ラーメンか麻婆かの二択ね。どっちにするの?」

 

「俺ぁ……どうだろなァ?

 どっちもアリそうな気がするし、ムズイよ」

 

「■■■」(両方とも、理があるように思う。やってみる価値はあるだろう)

 

「もうスパッと決めて構わぬぞ? お主の直感を信じてみてはどうだ。

 なぁに、既に11連敗もしておるのだ。この期に及んで、文句などつけぬよ」

 

「ふむ……」

 

 果たして、どちらが良いのだろうか。

 そう顎に手を当て、暫しのあいだ悩んでいたアーチャーが、ようやく顔を上げる。

 

 

「ならば、一度“ラーメン系”を頼もうか。

 醤油という一番オーソドックスな物で、是非を探ってみるよ」

 

 

 

 

 

 ……

 …………

 ……………………

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

「――――クライ! フォーザ! ムゥゥゥーーーーンッッ!!!!!!」

 

 

 ビクゥ!? とアーチャーが身を起こす。

 いきなり耳に飛び込んできた大声に、思わず意識が覚醒。

 

「地 獄 へ ヨ ウ コ ソ !

 二択を間違えて即死した君にお送りする、出張版タイガー道場よ☆

 ショーーーック!! 嘘でかーたーめた~♪」*3

 

「久しぶりねシロウ!

 生前だけじゃなく、英霊になってもここに来るなんて、そんなに私に会いたかったの?

 筋金入りの死に急ぎ野郎だね! ヒーハー!」

 

 なんか剣道着を来たお姉さんと、ブルマ姿のロリっ子がワーキャー言っているが、アーチャーは茫然とする他ない。

 あまりに突然の出来事に、頭が真っ白だった。

 

「ひたすら画面をスクロールしてりゃあ、ハッピーエンドに辿り着けるとでも?

 そんな甘ったれた考えは捨てろッ! 人生は戦いなのよっ!」

 

「うんっ! 中華料理を食べただけで、あの世行きになる事だってあるんだからーっ!

 いくら英霊だからって、油断しちゃダメだよシロウ?

 じーごくーの、ナイフがー♪ 君を狙っているぅ~♪」*4

 

 アーチャーを前にし、楽しそうにはしゃぐ二人。

 彼女らが何を言っているのかは、皆目見当が付かないが……でもなんか()()()()()()()()感じがする。

 特に、背の高い方の女性が持っている、虎のストラップが付いた竹刀とか。

 

 ――――あの、ひとつ訊いても構わんかね? 君達はいったい……。

 そう彼女らに言おうと思ったアーチャーだが、なぜか微塵も口を動かすことが出来ず、それどころか身じろぎする事すら出来ない。

 まるで、金縛りにあっているような、夢の中にいるような感覚。

 

「ん、何かな弓の英霊くん? その呆れ顔は。

 そ ん な 腐 っ た 目 で 人 間 を 見 る の は や め ろ ッ !!(カッ)

 もっと深くッ……深く愛してやれぇぇーーッ!! 人間を舐めるなァァーーッッ!!」

 

「あはは! 師匠ったらジョウチョフアンテーイ☆

 べつに気にしなくていーよシロウ♪ 瓦せんべい食べる? 龍角散のど飴もあるよ?」ニッコリ

 

 長渕剛みたく〈ドゴーン!〉と壁を蹴り飛ばしながら、剣道着の女性が暴れまわっている。

 そして「いつもの事だわ」とばかりに、それをまったく気にしていない様子のちびっ子が、アーチャーの口によいしょと喉飴をねじ込む。なんか物凄くマズい。

 

 とりあえず、なんだろうこの状況は?

 確か自分は、泰山の客席で醤油ラーメンを食べていた筈。

 みんなの声援を受けながら注文し、それをズズッと啜った所までは憶えているが……そこからの記憶が途絶えてしまっている。

 ここが何なのか、自分はどうしてこんな剣道場みたいな場所にいるのか。アーチャーには全く身に覚えが無かった。

 

「さてさて、訊く所によると貴官は、醤油ラーメンを食べて即死という、大変めずらしい死に方をしたらしいな?

 せこせこ身体を鍛え、死に物狂いで投影魔術を磨いても、辛いものには勝てなかったと。

 アンタの二十年ちょいの人生、()()()()()()()!!」

 

「なにがアイアーム、ザボーン、オブマイ、ソゥ~~ドよぉー!

 アラヤの抑止力さんは、ずいぶんザコ舌なのねっ。おにいちゃんダッサー☆」

 

「ということで、こちらに醤油ラーメンを用意しました(キリッ)

 今から私が、見事これを食べきり、姉貴分の威厳を示してあげるわっ!

 勝手にサーヴァント縛りで、帰れま10なんぞやりおってからに!

 Fateのメインヒロインがいったい誰なのか、そろそろ示しとかなきゃって思ってたのよ♪」

 

 謎の力によって、この場に泰山の醤油ラーメンが召喚される。

 だがそれは、決して皆が知っているようなブツでは無く、醤油ラーメンとは名ばかりの赤黒い邪悪な見た目をしていた。

 確かに醤油も入っているんだろうが、きっとその何十倍もの比率で、デスソースやらキャロライナ・リーパー*5やらが入っているのだろう。

 

「見さらせぇぇーーッ!!

 私は大河! 油風呂の藤村大河じゃーーい!

 それでは、いっただっきまーーす☆」

 

 大河がニッコニコしながら、どんぶりを手に持ち、お箸で持ち上げた麺をフーフー。

 そして躊躇うことなく、〈ちゅるるん♪〉と啜って見せた。

 

 

「――――毒 眼 鉄 ッ ッ !!!!」ブフゥ

 

「ししょーーお!?!?」

 

 

 そのままバターンとひっくり返り、ラーメン撒き散らしながら昏倒。

 辛いとか痛いとか言う前に、速攻で意識を持っていかれた。

 

「そ……そんな!? なか卯の牛丼に七味をかける師匠がっ!

 ボンカレーの中辛だって食べられるのに、まさか敗れるなんてっ!

 えいせいへーーい! えいせいへぇぇーーーい!!」

 

 ブルマの悲痛な声が辺りに木霊する中、大河は泡を吹いて倒れ伏している。

 その姿はどこか、【サイバイマンにやられたヤムチャ】を彷彿とさせた。もうピクリともしていない。

 

「えっとぉ……そういうワケでございましてぇ(司会進行)

 とりあえず、今回のシロウの敗因は、『ヒヨッちゃった事』だよ?

 確かにラーメンにも心を惹かれるだろうけど、ここは思い切っていくところ!

 せっかく泰山にいるんだから、そろそろ“麻婆”ってヤツと、決着をつけなきゃね☆」

 

 アホのように呆け、その場に立ちすくむアーチャーに対し、イリy……いや弟子1号が何事もなかったかように告げる。

 

 

「ではでは、今回のタイガー道場は以上ですっ!

 ちゃんとセーブはしてるよね、おにいちゃん?

 ()()()()()()()()()()()()()()()()!!」ババーン

 

 

 大河が血文字で書いた「まったねー☆」というダイイングメッセージと、元気にブンブン手を振るブルマに見送られつつ、アーチャーの意識がこの世界から遠ざかっていった。

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

『第ッ! ――――――4位ィィ!!!!!』

 

『第ッ! ――――――3位ィィ!!!!!』

 

『第ッ! ――――――5位ィィ!!!!!』

 

『第ッ! ――――――10位ィィ!!!!!』

 

 

 

 彼があのふざけた【ファッキン・ファンタズム】より帰還して、暫くした後……。

 言峰のハツラツとした声のナレーションが、矢次にこの場に響いた。

 

「すげェ! ドンピシャじゃねぇかお前!!」

 

「■■■!」(4連勝ッ! まさに破竹の勢い!)

 

「やっぱり麻婆だったのね!

 小難しいこと考えず、最初からこれを注文しとけば良かったのよっ!」 

 

「見事也、双剣使い! 天晴ぞっ!!」

 

 みんなの喜びの声、そして四つの料理の空き皿。

 それを前にし、アーチャーはなんとも言えない表情をしていた。

 

 あれから、彼女らの提案通り、アーチャーは醤油ラーメンを止めて、麻婆麺を注文。

 そして仲間達も次々に追従し、麻婆茄子、麻婆春雨、麻婆定食といった、ここ泰山にある全ての麻婆系料理をコンプリート。

 その結果、5番手のキャスターの手番には、怒涛の4連勝を達成。

 一体これまでの苦労は何だったのかと思っちゃうほど、あっさり正解出来たのである。

 

 思えば一番最初の、爆裂ゴッド麻婆での非常に手痛い失敗や、あの石焼き麻婆炒飯なる物がくっそマズかった事で、麻婆系に対する忌避感が出ていたのかもしれない。

 いつもその文字は目に入っていたし、きっと人気なんだろうな~とは思いつつも、どこか注文するのは気が進まずに、ここまでズルズルと避けて通っていた。

 

 しかしながら、何を頼もうかと思考の中に沈んでいたアーチャーが、突然「ハッ!?」と顔を上げたかと思えば、これまでとは打って変わって、迷うことなく麻婆麺にすると宣言。

 ハッキリした声で、魃さんへ注文して見せたのだのだった。

 

 その男らしさ……いや()()()()()()()()()()()

 仲間達は少し戸惑ったものの、その有無を言わせぬ勢いに押されるように、黙して彼の意思を受け入れた。

 

 その結果が、今のこの状況。

 もう泰山の客席は、あたかもディズニーのパレードのような様相だ。

 これまで散々味わって来た苦渋がカタルシスとなり、みんな万馬券でも当てたかのような喜びようである。ヒィィィーーハァァーーー!!!!

 

「いや、確かに嬉しいよ。助けて貰った。

 だが私は、どこか腑に落ちない気持ちでいてね……」

 

「アーチャー?」

 

 ライダーが、キョトンと不思議そうに彼の方を見る。

 エビマヨを頼みたいという気持ちを抑えて、お利口に麻婆春雨を注文し、この4連勝に大きく貢献した彼女だったが……。

 その立役者である筈のアーチャーは、なんかとても難しそうな顔で「うむむ……」と腕組みをしているから。

 

「あれは一体、何だったのだ?

 なにやら、どこか懐かしいような気が……」

 

 この世界とは違う、別時空の存在――――

 いち英霊である自分には分からない、なにか大いなる者の意思によって、あのタイガー道場とかいう場所は運営されているのだろう。

 迷える子羊を助け、ユーザーフレンドリーを大切にしながら。

 

 

「とりあえず、『直前の選択肢からやり直せ』は無いだろう……。

 見てはいけない物を、垣間見た気分だ」

 

「?」

 

 

 

 

 

 とにもかくにも、あと2つ。

 いよいよ英霊達の帰れま10も、佳境に差し掛かるのだった。

 

 

 

 

(つづきフォォーーン!)

 

 

 

 

 

*1
【holy shit】 直訳すれば“聖なる糞”。なんてこった! まじかよクソが! みたいな意味で使われるスラング

*2
辛さを表す単位のような物。タバスコのスコヴィル値は約2千5百、鷹の爪で4万ほど。

*3
アニメ“X-MEN”のOPである

*4
アニメ【悪魔くん】のOPである

*5
唐辛子の品種のひとつ。ハバネロの10倍の辛さと言われており、スコヴィル値は脅威の300万SHU。口に入れた瞬間、気絶してしまう者もいて、もし目に入れば失明する恐れがあるほど。そのあまりの危険性により、調理の際には防護服を着用するそうな

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