【募】こんな小説を書けこの野郎【リクエスト】 作:hasegawa&friends
フィア!(よっつぅ!)
※これはコメディじゃないヨ! 気を付けてネ!
「俺がッ……! 好きで桃から産まれたとでもッ! 思っているのかよッッ……!!」
鬼が島へ赴いたのは、必然だった。
だって彼には、もうこの世界のどこにも、
育ての親である男は、過去に“川から流れて来た桃”を拾い、包丁で割った事があるのだと言う。
だが、その中から出てきた、人の形をしたモノを、『化け物』と呼んだ。
名前など、付けられなかった。とても“桃太郎”なんて風には。
老人たちは、いつも彼のことを、「アレ」とか「ソレ」と呼んだ。
まるで、名前で呼ぶ事は、彼を“人間扱い”してしまう事だとでも、言うようにして。
食事は、与えられなかった。彼はミルクなんて物、一度も口にした事は無い。
服は、与えられなかった。そもそも服なんて物は、人間さまの為にあるんだから。
自由は、与えられなかった。いつも彼は土間の一角にて、紐で繋がれていた。
光は、与えられなかった。もし外に出て、誰かに「アレ」の存在が知られたら、とても困るから。
けれど、彼はすくすく育った。アサガオが成長するが如く、瞬く間に大きくなった。
その事が、余計にあの老人たちを、怯えさせたのかもしれない。
身体が成長し、自らを縛っていた縄を、力ずくで引きちぎれるようになった頃。
今度は一転し、老人たちは彼に怯えるようになった。
未知の存在。理解の及ばぬモノ。そしてもう“管理”する事も能わず。
やつらは手の平を返すように、低姿勢で彼に接するようになった。ヘコヘコと頭を下げ、こびへつらう笑みを浮かべた。
たとえ愛情が与えられなくとも、彼にとっては、
親と呼べるのも、頼るべきも、そして彼の世界にあるのも。
この怯えた瞳をする老人達こそが、唯一の存在なのだ。彼には他に、誰も居ないんだから。
ゆえに、去ることにした。
この人たちを怖がらせては、いけないと思った。
それだけが、彼に出来る唯一の“恩返し”であり、愛情の表し方だった。
鬼が島に赴き、悪い鬼どもを退治して来ます――――
まるであつらえたかの如く、そんな
老人たちは、とても喜んだ。その安堵を隠そうともしなかった。
かの島に赴くという事は、すなわち“死”を意味する。これでようやく「コレ」から解放されると、抱き合って喜んだ。
色の無い表情で、じっとそちらを見つめる彼になど、もう見向きもせずに。
準備は、させて貰えなかった。
装備も、食料も、
何故なら彼は、泣きながら喜ぶ老人たちの姿に、もう居たたまれなかったから。
それから逃げるようにして、家を飛び出すしか無かった。
かの地獄と伝え聞く場所、鬼が島とやらに、旅立つしか無かったのだ。
◆ ◆ ◆
「兄さん、いけねぇなぁ。……アンタそりゃあ“犬の目”だぜ?
腹を空かせたまま、路地裏で一人死んでいく――――そんなヤツの目だ」
この出会いも、必然だったのかもしれない。
「そこをどけよッ! なんで……なんで邪魔するんだよッ!
どかないって言うんならっ……!! おっ……俺はッ! 俺はぁぁああーーッ!!」
「あっしを殺す、ってか?
……よござんす、これも何かの縁だ。
かかって来なせぇ、坊主――――」
その命を削るようにして、ひたすら道を急いでいた少年を、ある男が呼び止めた。
彼は闇社会において、用心棒を生業とするガンマンだった。これまでありとあらゆる要人を殺して来た、伝説的な男であった。
時に、自らを欺いた雇い主を殺した。時に、標的の家族までも殺した。
そんな事をしている内、やがて一人になった。もう誰も、彼と関わろうとはしなくなった。
かの牙がこちらに向くことを恐れ、みんな男の前から去って行った。
守ったハズの弱者たちは、狂犬を“孤独”という檻に入れたのだ。
「なっ……なんでッ!? なんでワザと受けたんだよッ……!
いま躱せたのにッ!! 俺を殺せてたのにッッ!!!! ……お前はッ……!!」
見かけたのは、ただの偶然だった。
同類の匂いを感じ取り、野良犬同士で遊ぶのも悪くない、殺し合うのも一興だと思った。
自分達のような者など、ここで野垂れ死んだとしても、大した事ではないから。
けれど、この少年と対峙している内……胸の中に“ある感情”が湧いた。
国に残して来た家族。そしてもう二度と会う事のない、自分の息子のことを思い出した。
その途端、身体が動かなくなった。
この少年を殺したくないと思った。
自分が本当にしたかった事……、本当に願っていた事を、思い出した。
自分は――――“誰かの傍”でありかったんだ。
「へへっ。“犬”と呼ばれたあっしが、随分と丸くなっちまったもんだぁ。
でも負けは負け。……兄さん、
七生を以って、御身にお仕えしやす」
◆ ◆ ◆
「悲しみで、いったい何が救えるというの?
ここは通さないわ、桃の人――――」
この出会いは、運命なのか。それとも彼女の“神”が導いたのか。
「……うるさいッ!! ……うるさいうるさいうるさいッッ!!!!
どけッ! どけよッ……!! 俺は進まなきゃ! なんないんだよッッ……!!
そうしなきゃ駄目だッ! でないと何にもならないんだッッ……!!!!
だからッ……だから俺ッ! 行かないとッ……!!」
「それは、
本当に貴方が望んだこと?
……いいわ、見せてあげる。この“汚れた翼”をごらんなさい――――」
森に入った途端、まるで天から神が舞い降りるように、ひとりの少女が姿を表した。
彼女は、巫女を生業としている人物。正確には、
“
これは主に、シャーマンの素質を持つ者が、幼児期に体験するとされる現象のことを指す。
物心が付く幼き頃より、神の声を聞いた。
夢の中、瞼の奥、日常生活の中でも、神が現れた。
彼女を
神の姿や、心霊、まだ訪れていない未来の事。
そんなありえない物を見ては、親に報告をした。その度に「この子は頭がおかしい」と言われ、育児を放棄されるようになった。
頻繁にポルターガイスト現象に見舞われた。
いつも彼女が居る場所では、突然なんの前触れもなく地震が起き、窓ガラスや家具が粉砕した。車が不自然にスリップを起こし、歩道に突っ込んで来た。
それによって、家族や友人たちが重傷を負い、やがて誰もが彼女から離れていった。
やがて彼女に話しかける者は、神だけとなった。
神だけが彼女のことを気に掛け、縋ることが出来た。
家族、友人、家、学校、将来の夢。……そんな彼女が持つ全ての物を、神は奪った。
下らない現世へのしがらみを壊し、
彼女を、自分の巫女にせんが為に。
――――やめて、やめて、やめて。
耳を塞いでも、目を瞑っても、声は止まなかった。
四六時中、どこに居ても、夢の中でも、神の声が聴こえた。
――――従え。従え。従え。
神はただひたすらに、そう語り掛けた。
どれほど彼女が拒否しようとも、この娘を己の巫女にすべく、その
13の時、はじめて手首を切った。
神の声に耐えられず、追い立てられるようにして、剃刀を走らせた。
だが決して、彼女が死ぬことは無い。
14の時、ビルから飛び降りた。
神の声から逃げるように、泣きながら空へと飛んだ。
だが決して、彼女が死ぬことは無い。
いつも死ぬのは、彼女の
ビルから飛び降りた彼女を生かす為、クッションとして下敷きとなった、見知らぬ他人だった。
幼いころは、学校の先生になりたかった。
少女になった頃、恋をしてお嫁さんになることが夢になった。
けれど、決してそれは叶わない事を、彼女は知っていた。
――――従え。神に従え。こちらへ来い。
いつもそんな声が、頭の中で鳴っていたんだから。
「俺にはッ……出来ないッ!! ……お前みたいには出来ないよッッ……!!!!
……逃げたんだ俺はッ! 見たくなかったッ!! 全部ぜんぶ嫌だったッ!!
だから! 何も無かったから……此処に来たッ!! ……ただそれだけだったッ……!」
「飛べない翼に、意味はあるのかな?
けれど……、せめて自由でいたい。
私の心は、
やがて、戦いを終えた少女が、自らの翼で少年を包み込む。
汚れた羽。飛べない翼。自由を奪われ、“鳥”になれなかった少女。
……けれどせめて、貴方の為にあると。
「さぁ、私をお抱きなさい。
貴方に必要なのは、温もりだと思うから。
傍にいるわ、桃の人――――」
◆ ◆ ◆
「失せよ坊主。死にたいのか?」
導かれるように、ここへ来た。
多くの人間が
「どれだけ……どれだけ殺せば気が済むんだよッッ……!!
みんな生きてたッ!! 人生があったッッ!! 大切な物だったッッ!!
それを……それをお前はぁぁぁあああーーーッッ!!!!」
「下らぬ。
所詮、
焼けた村。積みあがった死体の上で、ひとり佇む男。
彼は侍だった。主の命になによりも忠実で、忠義に厚い男だった。
主を守りたかった。お家を栄えさせたかった。それこそが自分の生きる道だと、信じて疑わなかった。
その為にこそ、腕を鍛え上げ、強くあろうとした。
けれど……、いつも彼が斬っていたのは、名も知らぬ力なき人々だった。
村を襲った。街を破壊した。そこに住む全ての人々を斬った。
泣いている女、助けをこう老人、まだ何も分からない年頃の子供。その悉くを斬って捨てた。
歯向かう者など、滅多にいなかった。だって武器を持っているのは、いつもこちらの方だけだったから。
昨日まで幸せに暮らし、まさかその日々が今日突然終わるだなんて、思っても見なかった無防備な人々を、主の命により襲撃していったのだ。
逆らった者の、一族であったから。
そこに反逆者が逃げ込んだ可能性があるから。
城から戦場へと向かう道、その途中にある村だったから。
もし敗残兵が逃げ込むと、後で厄介だから。
そんな理由だけで、そこに住む者達を殺した。
恨みも無く、罪もなく、死ななければならない理由など欠片もなかった者達を、殺した。
目もくらむような人数を斬り、すぐに刀は駄目になった。
それでも弓で、鈍器で、縄で、火で殺した。
この場に動く物がなくなるまで、ひたすらに動き続けた。……自らの頭で、何を考えることも無く。
「沢山殺した。それこそ猿回しの“猿”のように。言われるがまま。
――――だが某はッ! これまで殺してきた者達をこそッ! 守りたかったのだッ!!」
忠義? お役目? 信念? 生きる道?
そんな目に見えない、霞が如き物の為に、
ようやくその間違いに気が付いた時には、もう手遅れだった。
自分はとても主に重用され、無くてはならない戦力の要として、働かされるようになっていた。
かっこいい侍になる――――親父のように強い男になり、大事な人達を守る。
子供の頃、そう自らが描いていた夢は、いまは遥か遠く。
それどころか、道を進めば進むほどに、かけ離れていった。
「ここが……某の終わりか。
首を獲れ、坊主。
どこぞの大名にでも差し出せば、いくらか褒美は出よう」
「ふざけッ……ふざけんなよお前ッッ!!!」
少年の拳が、頬に刺さった。
その痛みはどこか、男にとって“救い”のように思えた。
「――――終わるなんて許さないッッ……!!!!
何もせずッ! ひとりだけ逃げようって言うのかよ! そうはいくものかッッ……!!!!
生きなきゃ駄目だッ! お前は生きているべきなんだッッ!! ぜったいにッ……!!!!」
「ッッ!!!!」
「……そして叶えろッ! 償えッッ!! 何度でもやり直せッッ……!!!!
赦されなくても生きろッ!! 奪った命に見合うだけの、
それまで俺はッ……! 俺はッッ……!! 俺はぁぁあああーーッッ!!!!
――――ぜったいにお前を逃がさないぞッ!! 決して逃がすものかよッッ!!!!」
ボロボロ泣きながら、支離滅裂に叫ぶ、少年の声。
「名は捨てた。某のことは“猿”と呼べ。
生きている内は、お前と共にいよう――――」
◆ ◆ ◆
「帰って下さい。ここに鬼はおりませぬ――――どうか」
辿り着いた先は、“地獄”だった。
「私達は、ただ寄り添って生きているだけ。
此処なるは、人の世から
少年達を出迎えたのは、顔や腕といった見える場所すべてに、汚れた包帯を巻いている乙女。
わずかに見える包帯の隙間から、まるで火傷のように爛れ、悍ましく腐った皮膚が見えた。
小柄な身体、ボロのような服装。その頭のどこにも、角などありはしなかった。
そして、いま少年の立つこの場には、見える限りの地面を埋めつくす程、夥しい数の病人たちの姿。
その誰もが、苦し気に息を吐き、生きている事すら信じられないような、弱々しい姿を見せている。
「鬼が島――――そう呼ばれております。
此処は、決して治らぬ病にかかった者達を、隔離しておく為の場所。
伝染せぬよう、人の世に害を成さぬよう、死ぬまで閉じ込めておく為の島です。
あってはならぬ、生きていてはならぬ者達が、辿り着く所。
決して人が近づかぬよう、“鬼が住む”と言い伝えられる、哀れな者達の家です」
静かな声で、乙女が語る。
彼女はここの管理者であり、看護師であり、またこの者達と同じ病を患い、ここで死を待つだけの存在だった。
「水を……下さい……。喉が焼け付くようです……」
「足を、知りませんか……? 私の足が、腐れ落ちてしまったのです……」
「子供が動かないんです。……この子に薬を下さい。まだ3つなんです……」
「……今日は、日が出ていますか?
もう長い事、太陽を見ていない……。私の目は、どうなったんですか?」
――――声がする。自分のまわりから。
少年に対し、助けを求める人々の声が。
倒すべきは、何だ?
必要なのは、何だ?
力か。
暴力か。
それとも薬か。
どうやったら、この者達を救える?
どうすれば、これを解決できる?
成すべきは何だ? 思うべきは何だ? 斬るべきは誰だ?
この俺が生まれて来た、この俺がやって来た意味を、どうすれば知ることが出来る?
どうすれば、「お前がいて良かった」と、そう言って貰える??????
「……兄さん、あっしは従いますぜ?
この命、好きなように使いなせぇ」
「自分の思うように、行動なさい。
だいじょうぶ……。私はいつも、貴方の味方でいる」
「お前が決めろ。それが“生きること”だ。
某が斬ろう。某が成そう。某が殺そう。
だがそれは、
ハーメルン名作劇場 桃太郎 ~おしまい~
◆スペシャルサンクス◆
砂原石像さま♪