【募】こんな小説を書けこの野郎【リクエスト】 作:hasegawa&friends
ヒュンフ!(いつつぅ!)
「筋肉だと思うんだ……」
かの怨霊めいた敵、スピラを牛耳るユウナレスカ様をボコボコにした後……。
「いろいろ考えたけど、筋肉があれば、
みんな大好き飛空艇の一室で、ユウナが仲間達と向かい合っていた。
「は?」
「ん?」
「お?」
「ぬ?」
「えっ」
「……」
ティーダを始めとするガード達は、みんな絵に描いたような〈キョトン〉とした顔。
それでもユウナは止まらない。静かな表情ながら、固い決意の籠った声で告げていく。
「じゃあ……これから鍛えていくね?
きっと、辛い日々になると思うけど、みんなよろしくね……?」
「ちょっと待てユウナ。説明してもらえるか」
年長者の威厳を持って、アーロンが待ったをかける。
この場において、とても頼もしい存在であった。
先ほどのボス戦でみんな疲れているし、ティーダに至っては、早く自室に帰って考え事でもしたい心境だ。なんせ先ほど聞かされた“祈り子”の話があり、しっかり決意を固めなきゃいけない状況なのだから。
わざわざ招集をかけられ、そんなワケの分からない事を言われても困る。
「えっ。説明しないとダメかな?
言ったよねアーロンさん? 『偽りの希望なんていらない』って……」
「あぁ、確かに言っていた。
ユウナレスカに啖呵を切ったお前は、勇ましかったぞ」
「あぁ! ユウナかっこよかったよ! 俺スカッとしたもんッ!」
「ええ、あれを聞いて、私も覚悟が決まったわ。運命に抗おうってね」
「おうよ! ここにいる皆がそうだぜ! お前と同じ気持ちだっ!」
順番にアーロン、ティーダ、ルールー、ワッカが賛同する。
リュックも笑顔でうんうん頷いているし、キマリも力強く胸を張って同意していた。
「うん、みんなありがとう。……だからね?
偽りの希望に縋るよりも、
「それが分かんないんだよ。説明してくれよ」
結論を急ぐな、ぶっちぎるんじゃない。みんなで一緒に走って行こうじゃないかと、ティーダは訴える。
「えっ。筋肉を鍛えるのに、理由が必要なの……?」
「いやあるだろ。俺で言えば、ブリッツボールがしてぇ~とか。
キマリで言えば、ユウナを守りてぇ~とか。あるだろ」
「そんな物なくったって、普通鍛えるよね……?
だって筋肉だよ? 筋肉なんだよ……?」
「だってとか言われても困るよ。
あたし筋トレとかした事ないよ? しようと思った事ないもん」
出来る限り冷静に、ユウナを問い詰めていく。
さも当たり前のように語る彼女に、ワッカもリュックも困り顔である。意味が分からない。
「あぁ……そうだね。鍛えてなかったんだ。
なにやら「沈痛な面持ちです」と言わんばかりに、ユウナが固い表情で俯く。
それはどこか、皆を責めているかのようだ。
「スピラが災害に見舞われるのも、シンを止められないのも、ぜんぶ
筋肉を鍛えてたら、そんな事なかったハズだよ……」
「お前は何を言っているんだ?」
「ユウナ、疲れてるの? ちょっと横になる?」
座れ座れ。いったん休もう。
そう仲間達に気遣われるも、ユウナは聞く耳を持たない。
大召喚士の娘らしく、強固な意志力を発揮。
「なので、明日からみんなの筋肉を鍛えるね……?
みんなよろしくね? 朝5時に集合ね……?」
「眠い眠い眠いっ! 5時は無理だってユウナ! 勘弁してくれよっ!」
あたかも「じゃ!」という感じで、右手を上げて去って行く。話は終わったとばかりに。
そんなユウナをティーダが引き止めるが、なんか彼女の様子がおかしい事に気が付く。
よく分からないけれど、ティーダの顔を見て「ぷくぅ~!」っと頬を膨らませているのだ。風船みたいに。
「……消えるんだ?」
「えっ」
「私を置いて……、君は消えちゃうんだ? ひとりで……」
――――聞かれてたッ! 俺と祈り子との会話を!
あの時ユウナはじぃ~っと物陰に隠れ、ティーダが「僕らは夢を見るのをやめる」と聞かされていたのを、しっかりコッソリ見ていたのだ。
「勝手に消えちゃうんだ……? 人の結婚式をぶち壊しておいて……。
エッチだってしたのに、無責任に居なくなるんだ? ふ~ん……」
「ちょ……! アレはシーモアに無理やりのヤツ!
それと内緒だろユウナ! なんでエッチとか言っちゃうんだよ! ダメだってぇ!」
「子供さんが見ても大丈夫なように、わざわざ『二人で寄り添いながら泳いでます~』って感じに、比喩表現してたけど……あれはエッチなんだよ。
深夜のロマンチックな湖で、若い男女二人がやる事なんて、エッチに決まってるよ……。
エッチしたのに居なくなるとか、ありえないよ……。
どういう事ですか……エース・オブ・ブリッツさん……」
なんかネチネチと責められ、彼はタジタジになる。
しかもウジウジと床に“の”の字を書き始めるもんだから、もう手に負えない。
「だから、君が消えない努力をしようって、言ってるんだよ……?
なんで分からないのかな……?」
「いやでも筋肉は分かんないよ。なんで筋肉なんだよ」
「消えない努力もせず、筋肉も鍛えたくないだなんて……。
君は無茶苦茶だよ……ひどいよ……女の子の敵だよ……」
「聞いてくれよユウナ。話し合おうぜ? この決意と恋が冷める前に」
悪いとは思う。悲しい想いをさせてしまうのは、すまないと思う。でもこれはユウナを救う為なのだ。
そして何故、筋肉の話になるのかが、未だに理解出来ない。
「ようはね? このスピラの人々には、
筋肉あったら、シンも倒せるし……。筋肉あったら、君も消えないんだよ……」
「――――おし分かった。みんな一回黙ろう。
ユウナの好きなように喋らせてみようぜ。
どう落とし前を着けんのか見てやる」
ルールーやワッカは、「ユウナいま疲れてる説」を推すし、キマリやリュックは「ユウナついにおかしくなった説」を提唱する。早くベッドに押し込むべきだと。
だがとりあえず、最後まで聞いてみる事とした。そうでないと終わらない雰囲気なのだ。
「例えばだけど……うちのブリッツボールチームって、前は弱かったよね……?
とても良いチームなんだけど、今まで一回も勝てなかったよね……?」
「あぁ~そうだな。それに関しちゃあ、選手兼コーチだった俺の責任だ」
「でもちょーっと旅をしたら……。
具体的には、たくさん魔物と戦って身体を鍛えたら、すぐ勝てちゃったよね……?」
「おう。確かにコイツの助っ人があったとはいえ、俺も結構暴れてやったよ。
ゴールだって決めたし、今じゃ押しも押されぬトップチームだぜ?」
「キマリだってそう。昔は“角無し”ってイジメられて、村を追い出されたけど……。
でもロンゾの腰抜け共なんか、今じゃ片腕一本で、束にしてボコれるよね……?」
「腰抜け、分からなイ……。でもキマリ、大兄たち倒しタ、本当」
二人とも腑に落ちない顔だが、一応は納得して聞いている。
最後まで聞く、というルールに従い、“腰抜け”呼ばわりも今はスルーだ。
「それは……
戦って、強くなって、筋肉が付いたから勝てたんでしょう?
なんにも難しくなんか無いよ……」
あ、そうだな。じゃあ筋肉を鍛えよっか!
……となるワケが無い。
「同じように、もしスピラ中のみんなが筋肉鍛えてたら、シン来ても撃退できたし、町を滅ぼされたりなんかしないし、究極召喚もいらないし、“死の螺旋”みたいのも無いんだよ……」
「話が飛躍しすぎていると思うんだが……。
いや、すまない。とりあえず続けてくれユウナ」
あのアーロンさんが、冷や汗をかく――――
これはそれほどの状況なのだと、みんな改めて理解した。これはあかんヤツだと。
「でもさぁ? さっきユウナも言ったけど、俺達けっこう鍛えてるんじゃないのか?
ワッカなんて身体でかいし、キマリなんかムキムキだぜ?」
「そーだよ! 筋肉あるじゃーん! ほら見なよぉユウナぁ~!」
リュックがピョーンと飛びつき、ワッカの逞しい右腕にぶら下がる。
流石はガードを生業とする戦士といった所、女の子ひとりの体重くらいではビクともしない。とても逞しい腕だ。
「うん、たしかに太い腕だよね。
これほどの上腕三頭筋をもってる人は、なかなか居ないと思う……」
「おっ、俺ほめられたな! こりゃ鍛えてる甲斐があるってもんだぁ!」
「うん。今まで頑張ってきて良かったわねワッカ。
貴方の努力は、みんなが見ていたわ。私も見直したしね」
珍しくルール―に褒められ、もう彼はでれっでれ。とても嬉しそうな様子だ。
けれど……。
「――――でもねワッカ?
ちゃんと意識して、鍛えた事ある……?」
ピシャリと言い放つ、ユウナの鋭い声。
ワイワイと弛緩していた空気が、一気に引き締まる。
「ブリッツの選手は、物を投げたり押したりする筋力が、とても強いよね?
でもね……逆に“引く力”は、そんなに使わないの……。
だから、ぜんぜん鍛えてないんだよ……
凍り付く。さっきまでのホンワカが嘘のようだ。
これほどユウナの冷たくて悲し気な声を、一同ははじめて聞いた。
「キマリだって、アーロンさんだって、君だってそう……。
みんな自分の好きな部位しか鍛えてないっ!
好きな筋肉しか見てない! 見向きもしてない!
――――そんなの筋肉が可哀想だよっ!
なんか今日は、いままで聞いた事なかった言葉が、たくさん聞ける日だなぁ~。
頭のおかしくなった召喚士さまを、みんなは呆けたように見つめる。
どうです? この子をね? 僕らいつも命懸けで守ってるんですよ。どう思います?
「同じ大胸筋であっても、行う運動によって、使う部位が違うのっ……!
キマリはディップスが得意だから、大胸筋の下部が発達してるよね?
でもそれじゃあ
「ッ!?!?」
「そもそも【速筋】と【遅筋】は違うのっ……!
腕立て伏せを沢山する為の筋肉と、高重量のバーベルを上げる筋肉は別なのっ……!
同じ筋肉でも種類があって、それぞれ鍛え方や発達の仕方が違うよっ……?!
ちゃんと目的に合った正しいトレーニングをしなきゃ、いけないんだよっ……!?」
「ッッ?!?!?!」
「筋肉を考えようよっ……! 筋肉を真剣に見つめていこうよっ……!
……なんで考えないのかなっ?! 私はいつも考えてるのにっ!
毎日毎日、筋肉の事
「――――ユウナ、ドクターストップよ。貴方をベッドに連行するわ」
ルール―がユウナを抱え上げ、寝室に運ぼうとするが、もう「むきゃー!」っと暴れられる。火が着いて止まらない様子だ。
「筋肉だよっ……?! 筋肉があれば何でもできるよっ……?! なんで鍛えないの……?!
筋肉を鍛えない理由を教えてほしいよっ……! 筋肉の事どう思ってるのっ……?!」
ルール―に小脇に抱えられたまま、ビッタンビッタン暴れ狂う。魚みたいに。
ごめんなユウナ……今まで辛かったよな。召喚士の使命を一人で背負わせてゴメンな……。
もう皆、そんな風に同情の目で見ている。なんて不憫な子なんだ。
「筋肉を信じてっ……! 筋肉を愛そうよっ……! 筋肉を鍛えようよっ……!
そうすればきっと、君は消えないよっ……! 筋肉があれば消えないんだよっ……!
筋肉の可能性を見てよっ……! しっかり見つめてよっ……! 曇りなき
なんて残酷な世界なんだ――――ひとりの少女をこんな風にしちまうなんて。
ティーダは必ずやシンを打倒することを誓う。それこそ命を懸けてやろう。この身に代えても。無駄に。
「筋肉に出来ない事はないよっ……! 筋肉は素晴らしいんだよっ……!
みんな筋肉を知らないんだよっ……! 筋肉のこと知らな過ぎるよっ……!
みんなくそったれだよっ……! ガリガリ君チンカス味だよっ……!」
「ユウナ、おい、ユウナ」
「だからシンに好き勝手されるんだよっ……! 10年しかナギ節が無いんだよっ……!
君が消えちゃうのも、お父さんが死んだのも、キマリがいらない子扱いされるのも、ワッカいなくても意外と魔法でなんとかなるのも、ルール―のおっぱいの中身が食塩水なのも、私にあんまり友達いないのも、みんなみんな筋肉が
「――――オッケ。分かったよユウナ、筋肉鍛えよう」
ついに発狂しかけたユウナ。その肩をティーダが優しく抱いてやる。
もう見てらんない。
「オイオイッ! 正気かよお前!? なに言ってんだよっ!」
「ちょっと君ぃー! あたし筋トレなんてヤだよぅ! なんで勝手にぃー!」
「しゃーないだろ! そうしなきゃユウナ納得しないよっ!
みんなで筋トレするしか無いじゃんかっ!」
えーんえーんと泣いていたユウナが、顔を覆っている手の隙間から〈ちらっ!〉とこっちを見る。
あたかも「もう一押しかな~」とばかりに。嘘泣きである。
「俺だってホントは消えたくないしっ、このまま消えちゃうのも悪いなと思ってるっ!
じゃあせめて、ユウナが納得出来るように、してやりたいんだよっ!
なぁ頼むよみんな! 協力してくれって! ガードの仲間だろっ!?」
「ひ、一人増えちまったよ、筋トレ推進派が……」
「どうするのワッカ? こうなったユウナは、経験上もう言うこと聞かないわよ?
あの坊やだってそうよ」
「あ……あたしはぁ~、出来たら遠慮したいんだけどぉ~。
でもあんな風に言われちゃったらさぁ~? にんじょーって物がぁ~」
グムムとばかりに、仲間達は考え込む。
ワッカもルール―もリュックも、額に汗を浮かべている。なんで筋トレ? みたく。
「キマリ良イ。ユウナの言うこと従ウ」
「ま、俺も構わんぞ? ようは身体を鍛えるんだろう。断る理由もないさ」
「「「キマリっ!? アーロンさん!?!?」」」
ここで武闘派の二人が賛同。ユウナ&ティーダ側に加わる。
予期していなかった裏切り(?)に、たんだんこの場の雰囲気が“あちら側”に傾いていくのが分かる。
「いやっ……! アーロンさんに言われたら、俺だってやりますよっ!
ガードの先輩にさせといて、俺だけしねぇみたいな事、ありえねぇですからっ!」
「ま、まぁダイエット? の代りにはなるかもね。
私も若いってワケじゃないし、運動してみるのも悪くない、かな?」
「あたしメカニックが専門なんだけどぉ~。
まぁ体力つけとけば、何かの役には立つかなぁ~?」
そして、めでたく全員陥落。
一同は仕方なしといった風に横並びとなり、嘘泣き中のユウナに向き直った。
「じゃあ明日から、私がみんなを鍛えていくね……?
みんな、がんばって筋肉道を極めようね……? ドゥ ザ マッソーだよ……?」
「ま、まぁよく分かんないけど、よろしくっス」
「お、おう……」
「うむ……」
という事で、ユウナのガード一同は、なぜか彼女の指示の下で朝五時に起きる、という生活を送る事となったのであった。
◆ ◆ ◆
「はいキマリ! もう1セットだよっ!
インターバルは10秒っ! もう一回ベンチプレスだよっ!」
「……ッ!! ……ッ!!! ……ッ!!!!」
「はい上げて~! はい上げるぅ~! はいもういっか~い!
……意識してっ! もっと筋肉を意識してっ! 筋肉に語り掛けるのっ!
大胸筋さん効いてますかーって! キマリの大胸筋さん効いてますかーっ!」
◆ ◆ ◆
「ルール―の僧帽筋、チョモランマみたい!
そのカットを出す為には、眠れない夜もあったでしょうにっ!
これもキャベツ、鶏むね肉、ブロッコリー生活の賜物だねっ!
エボンなんかクソくらえだよっ、筋肉を信仰しようよっ!」
「お……おねがいユウナ。たまには別の物をっ!
もうササミとか卵白とかは見たくないのよっ。
油っこい物が恋しいっ!!」
◆ ◆ ◆
「常にフォーム意識してねっ! 漠然とやっても意味ないよっ!
ほらっ! キツイ時ががんばり時っ! 筋肉を追い込むチャンスだよっ!
一緒に言おうリュック! ほらチャンス!」
「ちゃ……チャンスぅ~!」
「チャンスっ!」
「ちゃあっ!? チャンスぅぅ~!!」
「ほらチャンス! チャンス! チャンス☆
……はいおっけぇー☆ ナイスバルクだよリュック! 次はデッドリフトねっ♪」
◆ ◆ ◆
「上半身ばっかり鍛えても、バランスが悪いよっ!
いくら腕や胸ばかりムキムキでも、足がガリガリだとカッコ悪いものだよっ!」
「大腿四頭筋が破裂しそうだッ……!! 俺の足が爆発しちまうッ……!!
死んじまうッ……!!!!」
「そういうのを“チキンレッグ”って言うの! 蔑称だよっ!
ニワトリみたいにコケコッコー! まぁなんて細い足なんだろうって!
私の目の黒い内は、そんな鍛え方はさせないからねワッカ!
はい次300㎏上げながらスクワットぉー!」
◆ ◆ ◆
「どうなんだい君っ!? やるのかい、やらないのかいっ、どっちなんだいっ!?」
「やぁぁぁあああ~~~~るッッ!!!!(キリッ)」
「よーし来いっ! 君の広背筋よぉ~し来いっ! 大円筋よぉ~し来いっ!
いいよ! きてるよ君っ! 背中に鬼が宿ってる☆ 降臨してるよっ☆」
◆ ◆ ◆
「お前の腹斜筋、だいぶカットが出て来たのではないか? どうやって鍛えた?」
「いやぁ~、アーロンさんの板チョコみたいな腹筋には、まだまだ遠いですよぉ~」
「――――そうっ! 褒め合って! お互いに褒め合いながら高め合っていくのっ!
筋肉を褒めてっ! 筋肉をあがめてっ! 筋肉を愛してっ!
筋肉は君の友達だよ♪ いつも傍に筋肉っ♪」
◆ ◆ ◆
そして、ユウナの「別に時間制限があるワケじゃないよね……?」という言葉によって、あれから2年後。
いまユウナ達一行は、見事“シン”の体内に潜り込む事に成功し、エボン=ジュと対峙していた。
「……っ」
「――――」
「――――」
「――――」
既にジェクトは倒した。実の父との熱い戦いだった。
その後、彼の身体から分離した“エボン=ジュ”は、即座にユウナが呼び出した召喚獣に乗り移ろうとしたのだが……。
「……っ!?」(えっ、何この召喚獣!?
そう、マッスルだ――――
ユウナのヴァルファーレや、イフリート、バハムートなどの召喚獣たちは、エボン=ジュがこれまでの長い人生で対峙した事のない程、ムキムキの者達であったのだ!
これもエボンの賜物……ではなく、筋トレの賜物であった。
「……ッ!! ……ッ!!!!」(無理無理ッ!
これまでのたゆまぬ筋トレのおかげで、ユウナの召喚中たちは皆、その身体が【テストステロン】という物質に満ち満ちていた。
これは筋トレをする事によって多く分泌される、いわゆる“やる気ホルモン”と言われる物質。
活き活きと若々しく活動できるようになり、 怒りや不安などネガティヴな気分を落ち着かせたりと、精神状態の安定させる効果がある。 また快楽・多幸感、やる気の元となるドーパミンの産生を促す作用もあり、 生殖機能に直結し精子の生成や性欲のコントロールをしている物だ。
まぁ色々と説明したが……ようは
テストステロンが多く分泌され、正に鋼のような筋肉の鎧をまとい、心身ともに充実した状態の召喚獣たちは、エボン=ジュの憑依など簡単に弾き返してしまう。
日々努力し、食事制限をし、知識を学び、そうして鍛え上げた筋肉に守られた肉体を、努力もロクにしていないヤツが乗っとる事など出来はしないのだ!
今ユウナの召喚獣たちは、円になってエボン=ジュを取り囲んでおり、そのまま「じぃ~!」っとヤツを見つめている。
異常なまでに筋肉が肥大したシヴァや、アニマや、メーガス三姉妹が、その見下ろすような巨体を持って、さっきから冷や汗をかきまくっているエボン=ジュを取り囲んでいるのだ。
「……っ!」
「――――」
「――――」
「――――」
ユウナの召喚獣たちは思う。
――――なんだこのチビ? ぜんぜん筋肉なくね? ブヨブヨじゃん。……と。
「うん、勝ったね……。
これも全部、筋肉のおかげだよね……」
そして、その光景を満足気に見守る、彼らの召喚主。平和を勝ち取った偉大なる召喚士。
彼女の名はユウナ――――そのあどけなく愛らしい顔とはうらはら、首から下はまごう事無くボディビルダーの肉体である。
はち切れそうな大胸筋! ぶっといタイヤみたいな腕! 岩のように隆起した大腿四頭筋!
分かりやすく言うと、まさに“女オリバ”となったユウナが、同じくオリバみたいな身体となった仲間たちの方へ、嬉しそうに笑顔を向ける。
まぁボディビルダー独特の、「にぃや~!」みたいな怪しいスマイルであるが。
――――ティーダは消えない。彼が失われる事は無い。
何故なら、彼の創造主である祈り子たちも、
ユウナいわく――――「夢の中でも筋トレは出来る」
そして筋トレとは“生涯スポーツ”であり、これにはゴールや終着点は無い。ずっと続けていく物なのだ。
彼らは以前、ティーダに対して「夢を見るのを止める」などと、とても情けない事をのたまっていたが……。
疲れたとか、もういいとか、休みたいとか、そんな事を言っていては
祈り子たちは、これからも夢の中で筋トレをする……すなわち“筋肉を夢見ていく”。
純粋な少年のような憧れと、真っすぐな向上心を胸に、筋肉と共に眠るのだ。
よってティーダが、彼女の前から失われる事は無いのだ。まさに筋肉のおかげである!
関係ないが、かのFF10ー2において、ヒロインであるユウナはとてもセクシーではっちゃけた衣装に変わったと言うが……。
きっとこの首から下だけがムキムキで、冷蔵庫みたいにでっかくなったユウナであれば、さぞセクシーな衣装も映える事だろう。余すところなく筋肉を見せつける事が出来る。
再びスピラに巨悪が現れ、また冒険の旅に出る時が、今から楽しみであるッッ!!!!
「筋肉って……素敵だね」
「やかましいよ」
ユウナが腕組みし、ヒンズースクワットしながら言った。
◆スペシャルサンクス◆
甲乙さま♪