【募】こんな小説を書けこの野郎【リクエスト】   作:hasegawa&friends

6 / 50


 ヒュンフ!(いつつぅ!)





【急募】ユウナ「今からエボン=ジュ戦だけど、ここからキミを消さずに済む方法」  (甲乙さま 原案)

 

 

 

 

「筋肉だと思うんだ……」

 

 

 かの怨霊めいた敵、スピラを牛耳るユウナレスカ様をボコボコにした後……。

 

「いろいろ考えたけど、筋肉があれば、なんとかなる(・・・・・・)と思うんだ……」

 

 みんな大好き飛空艇の一室で、ユウナが仲間達と向かい合っていた。

 

「は?」

 

「ん?」

 

「お?」

 

「ぬ?」

 

「えっ」

 

「……」

 

 ティーダを始めとするガード達は、みんな絵に描いたような〈キョトン〉とした顔。

 それでもユウナは止まらない。静かな表情ながら、固い決意の籠った声で告げていく。

 

「じゃあ……これから鍛えていくね?

 きっと、辛い日々になると思うけど、みんなよろしくね……?」

 

「ちょっと待てユウナ。説明してもらえるか」

 

 年長者の威厳を持って、アーロンが待ったをかける。

 この場において、とても頼もしい存在であった。

 

 先ほどのボス戦でみんな疲れているし、ティーダに至っては、早く自室に帰って考え事でもしたい心境だ。なんせ先ほど聞かされた“祈り子”の話があり、しっかり決意を固めなきゃいけない状況なのだから。

 わざわざ招集をかけられ、そんなワケの分からない事を言われても困る。

 

「えっ。説明しないとダメかな?

 言ったよねアーロンさん? 『偽りの希望なんていらない』って……」

 

「あぁ、確かに言っていた。

 ユウナレスカに啖呵を切ったお前は、勇ましかったぞ」

 

「あぁ! ユウナかっこよかったよ! 俺スカッとしたもんッ!」

 

「ええ、あれを聞いて、私も覚悟が決まったわ。運命に抗おうってね」

 

「おうよ! ここにいる皆がそうだぜ! お前と同じ気持ちだっ!」

 

 順番にアーロン、ティーダ、ルールー、ワッカが賛同する。

 リュックも笑顔でうんうん頷いているし、キマリも力強く胸を張って同意していた。

 

「うん、みんなありがとう。……だからね?

 偽りの希望に縋るよりも、筋肉を鍛えよう(・・・・・・・)と思うんだ……」

 

「それが分かんないんだよ。説明してくれよ」

 

 結論を急ぐな、ぶっちぎるんじゃない。みんなで一緒に走って行こうじゃないかと、ティーダは訴える。

 

「えっ。筋肉を鍛えるのに、理由が必要なの……?」

 

「いやあるだろ。俺で言えば、ブリッツボールがしてぇ~とか。

 キマリで言えば、ユウナを守りてぇ~とか。あるだろ」

 

「そんな物なくったって、普通鍛えるよね……?

 だって筋肉だよ? 筋肉なんだよ……?」

 

「だってとか言われても困るよ。

 あたし筋トレとかした事ないよ? しようと思った事ないもん」

 

 出来る限り冷静に、ユウナを問い詰めていく。

 さも当たり前のように語る彼女に、ワッカもリュックも困り顔である。意味が分からない。

 

「あぁ……そうだね。鍛えてなかったんだ。

 だから(・・・)だよ、みんな――――」

 

 なにやら「沈痛な面持ちです」と言わんばかりに、ユウナが固い表情で俯く。

 それはどこか、皆を責めているかのようだ。

 

「スピラが災害に見舞われるのも、シンを止められないのも、ぜんぶ筋肉が無いから(・・・・・・・)だよ。

 筋肉を鍛えてたら、そんな事なかったハズだよ……」

 

「お前は何を言っているんだ?」

 

「ユウナ、疲れてるの? ちょっと横になる?」

 

 座れ座れ。いったん休もう。

 そう仲間達に気遣われるも、ユウナは聞く耳を持たない。

 大召喚士の娘らしく、強固な意志力を発揮。

 

「なので、明日からみんなの筋肉を鍛えるね……?

 みんなよろしくね? 朝5時に集合ね……?」

 

「眠い眠い眠いっ! 5時は無理だってユウナ! 勘弁してくれよっ!」

 

 あたかも「じゃ!」という感じで、右手を上げて去って行く。話は終わったとばかりに。

 そんなユウナをティーダが引き止めるが、なんか彼女の様子がおかしい事に気が付く。

 よく分からないけれど、ティーダの顔を見て「ぷくぅ~!」っと頬を膨らませているのだ。風船みたいに。

 

「……消えるんだ?」

 

「えっ」

 

「私を置いて……、君は消えちゃうんだ? ひとりで……」

 

 ――――聞かれてたッ! 俺と祈り子との会話を!

 あの時ユウナはじぃ~っと物陰に隠れ、ティーダが「僕らは夢を見るのをやめる」と聞かされていたのを、しっかりコッソリ見ていたのだ。

 

「勝手に消えちゃうんだ……? 人の結婚式をぶち壊しておいて……。

 エッチだってしたのに、無責任に居なくなるんだ? ふ~ん……」

 

「ちょ……! アレはシーモアに無理やりのヤツ!

 それと内緒だろユウナ! なんでエッチとか言っちゃうんだよ! ダメだってぇ!」

 

「子供さんが見ても大丈夫なように、わざわざ『二人で寄り添いながら泳いでます~』って感じに、比喩表現してたけど……あれはエッチなんだよ。

 深夜のロマンチックな湖で、若い男女二人がやる事なんて、エッチに決まってるよ……。

 エッチしたのに居なくなるとか、ありえないよ……。

 どういう事ですか……エース・オブ・ブリッツさん……」

 

 なんかネチネチと責められ、彼はタジタジになる。

 しかもウジウジと床に“の”の字を書き始めるもんだから、もう手に負えない。

 

「だから、君が消えない努力をしようって、言ってるんだよ……?

 なんで分からないのかな……?」

 

「いやでも筋肉は分かんないよ。なんで筋肉なんだよ」

 

「消えない努力もせず、筋肉も鍛えたくないだなんて……。

 君は無茶苦茶だよ……ひどいよ……女の子の敵だよ……」

 

「聞いてくれよユウナ。話し合おうぜ? この決意と恋が冷める前に」

 

 悪いとは思う。悲しい想いをさせてしまうのは、すまないと思う。でもこれはユウナを救う為なのだ。

 そして何故、筋肉の話になるのかが、未だに理解出来ない。

 

「ようはね? このスピラの人々には、筋肉が足りない(・・・・・・・)という事なんだよ。

 筋肉あったら、シンも倒せるし……。筋肉あったら、君も消えないんだよ……」

 

「――――おし分かった。みんな一回黙ろう。

 ユウナの好きなように喋らせてみようぜ。

 どう落とし前を着けんのか見てやる」

 

 ルールーやワッカは、「ユウナいま疲れてる説」を推すし、キマリやリュックは「ユウナついにおかしくなった説」を提唱する。早くベッドに押し込むべきだと。

 だがとりあえず、最後まで聞いてみる事とした。そうでないと終わらない雰囲気なのだ。

 

「例えばだけど……うちのブリッツボールチームって、前は弱かったよね……?

 とても良いチームなんだけど、今まで一回も勝てなかったよね……?」

 

「あぁ~そうだな。それに関しちゃあ、選手兼コーチだった俺の責任だ」

 

「でもちょーっと旅をしたら……。

 具体的には、たくさん魔物と戦って身体を鍛えたら、すぐ勝てちゃったよね……?」

 

「おう。確かにコイツの助っ人があったとはいえ、俺も結構暴れてやったよ。

 ゴールだって決めたし、今じゃ押しも押されぬトップチームだぜ?」

 

「キマリだってそう。昔は“角無し”ってイジメられて、村を追い出されたけど……。

 でもロンゾの腰抜け共なんか、今じゃ片腕一本で、束にしてボコれるよね……?」

 

「腰抜け、分からなイ……。でもキマリ、大兄たち倒しタ、本当」

 

 二人とも腑に落ちない顔だが、一応は納得して聞いている。

 最後まで聞く、というルールに従い、“腰抜け”呼ばわりも今はスルーだ。

 

 

「それは……筋肉が付いたから(・・・・・・・・)でしょう?

 戦って、強くなって、筋肉が付いたから勝てたんでしょう?

 なんにも難しくなんか無いよ……」

 

 

 あ、そうだな。じゃあ筋肉を鍛えよっか!

 ……となるワケが無い。

 

「同じように、もしスピラ中のみんなが筋肉鍛えてたら、シン来ても撃退できたし、町を滅ぼされたりなんかしないし、究極召喚もいらないし、“死の螺旋”みたいのも無いんだよ……」

 

「話が飛躍しすぎていると思うんだが……。

 いや、すまない。とりあえず続けてくれユウナ」

 

 あのアーロンさんが、冷や汗をかく――――

 これはそれほどの状況なのだと、みんな改めて理解した。これはあかんヤツだと。

 

「でもさぁ? さっきユウナも言ったけど、俺達けっこう鍛えてるんじゃないのか?

 ワッカなんて身体でかいし、キマリなんかムキムキだぜ?」

 

「そーだよ! 筋肉あるじゃーん! ほら見なよぉユウナぁ~!」

 

 リュックがピョーンと飛びつき、ワッカの逞しい右腕にぶら下がる。

 流石はガードを生業とする戦士といった所、女の子ひとりの体重くらいではビクともしない。とても逞しい腕だ。

 

「うん、たしかに太い腕だよね。

 これほどの上腕三頭筋をもってる人は、なかなか居ないと思う……」

 

「おっ、俺ほめられたな! こりゃ鍛えてる甲斐があるってもんだぁ!」

 

「うん。今まで頑張ってきて良かったわねワッカ。

 貴方の努力は、みんなが見ていたわ。私も見直したしね」

 

 珍しくルール―に褒められ、もう彼はでれっでれ。とても嬉しそうな様子だ。

 けれど……。

 

「――――でもねワッカ? 上腕二頭筋(・・・・・)はどうかな?

 ちゃんと意識して、鍛えた事ある……?」

 

 ピシャリと言い放つ、ユウナの鋭い声。

 ワイワイと弛緩していた空気が、一気に引き締まる。

 

「ブリッツの選手は、物を投げたり押したりする筋力が、とても強いよね?

 でもね……逆に“引く力”は、そんなに使わないの……。

 だから、ぜんぜん鍛えてないんだよ……筋肉(・・)

 

 凍り付く。さっきまでのホンワカが嘘のようだ。

 これほどユウナの冷たくて悲し気な声を、一同ははじめて聞いた。

 

「キマリだって、アーロンさんだって、君だってそう……。

 みんな自分の好きな部位しか鍛えてないっ!

 好きな筋肉しか見てない! 見向きもしてない!

 ――――そんなの筋肉が可哀想だよっ! 筋肉が嫉妬しちゃうよ(・・・・・・・・・・)っ!」

 

 なんか今日は、いままで聞いた事なかった言葉が、たくさん聞ける日だなぁ~。

 頭のおかしくなった召喚士さまを、みんなは呆けたように見つめる。

 どうです? この子をね? 僕らいつも命懸けで守ってるんですよ。どう思います?

 

「同じ大胸筋であっても、行う運動によって、使う部位が違うのっ……!

 キマリはディップスが得意だから、大胸筋の下部が発達してるよね?

 でもそれじゃあ上部(・・)は使えてないから、いつまでたっても貧弱なままだよっ……!」

 

「ッ!?!?」

 

「そもそも【速筋】と【遅筋】は違うのっ……!

 腕立て伏せを沢山する為の筋肉と、高重量のバーベルを上げる筋肉は別なのっ……!

 同じ筋肉でも種類があって、それぞれ鍛え方や発達の仕方が違うよっ……?!

 ちゃんと目的に合った正しいトレーニングをしなきゃ、いけないんだよっ……!?」

 

「ッッ?!?!?!」

 

「筋肉を考えようよっ……! 筋肉を真剣に見つめていこうよっ……!

 ……なんで考えないのかなっ?! 私はいつも考えてるのにっ!

 毎日毎日、筋肉の事しか考えてないのに(・・・・・・・・・)っ……!」

 

「――――ユウナ、ドクターストップよ。貴方をベッドに連行するわ」

 

 ルール―がユウナを抱え上げ、寝室に運ぼうとするが、もう「むきゃー!」っと暴れられる。火が着いて止まらない様子だ。

 

「筋肉だよっ……?! 筋肉があれば何でもできるよっ……?! なんで鍛えないの……?!

 筋肉を鍛えない理由を教えてほしいよっ……! 筋肉の事どう思ってるのっ……?!」

 

 ルール―に小脇に抱えられたまま、ビッタンビッタン暴れ狂う。魚みたいに。

 ごめんなユウナ……今まで辛かったよな。召喚士の使命を一人で背負わせてゴメンな……。

 もう皆、そんな風に同情の目で見ている。なんて不憫な子なんだ。

 

「筋肉を信じてっ……! 筋肉を愛そうよっ……! 筋肉を鍛えようよっ……!

 そうすればきっと、君は消えないよっ……! 筋肉があれば消えないんだよっ……!

 筋肉の可能性を見てよっ……! しっかり見つめてよっ……! 曇りなき(まなこ)でっ……!」

 

 なんて残酷な世界なんだ――――ひとりの少女をこんな風にしちまうなんて。

 ティーダは必ずやシンを打倒することを誓う。それこそ命を懸けてやろう。この身に代えても。無駄に。

 

「筋肉に出来ない事はないよっ……! 筋肉は素晴らしいんだよっ……!

 みんな筋肉を知らないんだよっ……! 筋肉のこと知らな過ぎるよっ……!

 みんなくそったれだよっ……! ガリガリ君チンカス味だよっ……!」

 

「ユウナ、おい、ユウナ」

 

「だからシンに好き勝手されるんだよっ……! 10年しかナギ節が無いんだよっ……!

 君が消えちゃうのも、お父さんが死んだのも、キマリがいらない子扱いされるのも、ワッカいなくても意外と魔法でなんとかなるのも、ルール―のおっぱいの中身が食塩水なのも、私にあんまり友達いないのも、みんなみんな筋肉が

 

「――――オッケ。分かったよユウナ、筋肉鍛えよう」

 

 ついに発狂しかけたユウナ。その肩をティーダが優しく抱いてやる。

 もう見てらんない。

 

「オイオイッ! 正気かよお前!? なに言ってんだよっ!」

 

「ちょっと君ぃー! あたし筋トレなんてヤだよぅ! なんで勝手にぃー!」

 

「しゃーないだろ! そうしなきゃユウナ納得しないよっ!

 みんなで筋トレするしか無いじゃんかっ!」

 

 えーんえーんと泣いていたユウナが、顔を覆っている手の隙間から〈ちらっ!〉とこっちを見る。

 あたかも「もう一押しかな~」とばかりに。嘘泣きである。

 

「俺だってホントは消えたくないしっ、このまま消えちゃうのも悪いなと思ってるっ!

 じゃあせめて、ユウナが納得出来るように、してやりたいんだよっ!

 なぁ頼むよみんな! 協力してくれって! ガードの仲間だろっ!?」

 

「ひ、一人増えちまったよ、筋トレ推進派が……」

 

「どうするのワッカ? こうなったユウナは、経験上もう言うこと聞かないわよ?

 あの坊やだってそうよ」

 

「あ……あたしはぁ~、出来たら遠慮したいんだけどぉ~。

 でもあんな風に言われちゃったらさぁ~? にんじょーって物がぁ~」

 

 グムムとばかりに、仲間達は考え込む。

 ワッカもルール―もリュックも、額に汗を浮かべている。なんで筋トレ? みたく。

 

「キマリ良イ。ユウナの言うこと従ウ」

 

「ま、俺も構わんぞ? ようは身体を鍛えるんだろう。断る理由もないさ」

 

「「「キマリっ!? アーロンさん!?!?」」」

 

 ここで武闘派の二人が賛同。ユウナ&ティーダ側に加わる。

 予期していなかった裏切り(?)に、たんだんこの場の雰囲気が“あちら側”に傾いていくのが分かる。

 

「いやっ……! アーロンさんに言われたら、俺だってやりますよっ!

 ガードの先輩にさせといて、俺だけしねぇみたいな事、ありえねぇですからっ!」

 

「ま、まぁダイエット? の代りにはなるかもね。

 私も若いってワケじゃないし、運動してみるのも悪くない、かな?」

 

「あたしメカニックが専門なんだけどぉ~。

 まぁ体力つけとけば、何かの役には立つかなぁ~?」

 

 そして、めでたく全員陥落。

 一同は仕方なしといった風に横並びとなり、嘘泣き中のユウナに向き直った。

 

「じゃあ明日から、私がみんなを鍛えていくね……?

 みんな、がんばって筋肉道を極めようね……? ドゥ ザ マッソーだよ……?」

 

「ま、まぁよく分かんないけど、よろしくっス」

 

「お、おう……」

 

「うむ……」

 

 

 という事で、ユウナのガード一同は、なぜか彼女の指示の下で朝五時に起きる、という生活を送る事となったのであった。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「はいキマリ! もう1セットだよっ!

 インターバルは10秒っ! もう一回ベンチプレスだよっ!」

 

「……ッ!! ……ッ!!! ……ッ!!!!」

 

「はい上げて~! はい上げるぅ~! はいもういっか~い!

 ……意識してっ! もっと筋肉を意識してっ! 筋肉に語り掛けるのっ!

 大胸筋さん効いてますかーって! キマリの大胸筋さん効いてますかーっ!」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「ルール―の僧帽筋、チョモランマみたい!

 そのカットを出す為には、眠れない夜もあったでしょうにっ!

 これもキャベツ、鶏むね肉、ブロッコリー生活の賜物だねっ!

 エボンなんかクソくらえだよっ、筋肉を信仰しようよっ!」

 

「お……おねがいユウナ。たまには別の物をっ!

 もうササミとか卵白とかは見たくないのよっ。

 油っこい物が恋しいっ!!」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「常にフォーム意識してねっ! 漠然とやっても意味ないよっ!

 ほらっ! キツイ時ががんばり時っ! 筋肉を追い込むチャンスだよっ!

 一緒に言おうリュック! ほらチャンス!」

 

「ちゃ……チャンスぅ~!」

 

「チャンスっ!」

 

「ちゃあっ!? チャンスぅぅ~!!」

 

「ほらチャンス! チャンス! チャンス☆

 ……はいおっけぇー☆ ナイスバルクだよリュック! 次はデッドリフトねっ♪」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「上半身ばっかり鍛えても、バランスが悪いよっ!

 いくら腕や胸ばかりムキムキでも、足がガリガリだとカッコ悪いものだよっ!」

 

「大腿四頭筋が破裂しそうだッ……!! 俺の足が爆発しちまうッ……!!

 死んじまうッ……!!!!」

 

「そういうのを“チキンレッグ”って言うの! 蔑称だよっ!

 ニワトリみたいにコケコッコー! まぁなんて細い足なんだろうって!

 私の目の黒い内は、そんな鍛え方はさせないからねワッカ!

 はい次300㎏上げながらスクワットぉー!」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「どうなんだい君っ!? やるのかい、やらないのかいっ、どっちなんだいっ!?」

 

「やぁぁぁあああ~~~~るッッ!!!!(キリッ)」

 

「よーし来いっ! 君の広背筋よぉ~し来いっ! 大円筋よぉ~し来いっ!

 いいよ! きてるよ君っ! 背中に鬼が宿ってる☆ 降臨してるよっ☆」

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

「お前の腹斜筋、だいぶカットが出て来たのではないか? どうやって鍛えた?」

 

「いやぁ~、アーロンさんの板チョコみたいな腹筋には、まだまだ遠いですよぉ~」

 

「――――そうっ! 褒め合って! お互いに褒め合いながら高め合っていくのっ!

 筋肉を褒めてっ! 筋肉をあがめてっ! 筋肉を愛してっ!

 筋肉は君の友達だよ♪ いつも傍に筋肉っ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 

 そして、ユウナの「別に時間制限があるワケじゃないよね……?」という言葉によって、あれから2年後。

 いまユウナ達一行は、見事“シン”の体内に潜り込む事に成功し、エボン=ジュと対峙していた。

 

「……っ」

 

「――――」

 

「――――」

 

「――――」

 

 既にジェクトは倒した。実の父との熱い戦いだった。

 その後、彼の身体から分離した“エボン=ジュ”は、即座にユウナが呼び出した召喚獣に乗り移ろうとしたのだが……。

 

「……っ!?」(えっ、何この召喚獣!? めっちゃムキムキやん(・・・・・・・・・・)!)

 

 そう、マッスルだ――――

 ユウナのヴァルファーレや、イフリート、バハムートなどの召喚獣たちは、エボン=ジュがこれまでの長い人生で対峙した事のない程、ムキムキの者達であったのだ!

 これもエボンの賜物……ではなく、筋トレの賜物であった。

 

「……ッ!! ……ッ!!!!」(無理無理ッ! 乗り移れないって(・・・・・・・・)! なんか全然できへん!)

 

 これまでのたゆまぬ筋トレのおかげで、ユウナの召喚中たちは皆、その身体が【テストステロン】という物質に満ち満ちていた。

 これは筋トレをする事によって多く分泌される、いわゆる“やる気ホルモン”と言われる物質。

 活き活きと若々しく活動できるようになり、 怒りや不安などネガティヴな気分を落ち着かせたりと、精神状態の安定させる効果がある。 また快楽・多幸感、やる気の元となるドーパミンの産生を促す作用もあり、 生殖機能に直結し精子の生成や性欲のコントロールをしている物だ。

 

 まぁ色々と説明したが……ようはエボン=ジュなんかより強い(・・・・・・・・・・・・・)

 テストステロンが多く分泌され、正に鋼のような筋肉の鎧をまとい、心身ともに充実した状態の召喚獣たちは、エボン=ジュの憑依など簡単に弾き返してしまう。

 日々努力し、食事制限をし、知識を学び、そうして鍛え上げた筋肉に守られた肉体を、努力もロクにしていないヤツが乗っとる事など出来はしないのだ!

 

 今ユウナの召喚獣たちは、円になってエボン=ジュを取り囲んでおり、そのまま「じぃ~!」っとヤツを見つめている。

 異常なまでに筋肉が肥大したシヴァや、アニマや、メーガス三姉妹が、その見下ろすような巨体を持って、さっきから冷や汗をかきまくっているエボン=ジュを取り囲んでいるのだ。

 

 

「……っ!」

 

「――――」

 

「――――」

 

「――――」

 

 

 ユウナの召喚獣たちは思う。

 ――――なんだこのチビ? ぜんぜん筋肉なくね? ブヨブヨじゃん。……と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うん、勝ったね……。

 これも全部、筋肉のおかげだよね……」

 

 そして、その光景を満足気に見守る、彼らの召喚主。平和を勝ち取った偉大なる召喚士。

 彼女の名はユウナ――――そのあどけなく愛らしい顔とはうらはら、首から下はまごう事無くボディビルダーの肉体である。

 

 はち切れそうな大胸筋! ぶっといタイヤみたいな腕! 岩のように隆起した大腿四頭筋!

 分かりやすく言うと、まさに“女オリバ”となったユウナが、同じくオリバみたいな身体となった仲間たちの方へ、嬉しそうに笑顔を向ける。

 まぁボディビルダー独特の、「にぃや~!」みたいな怪しいスマイルであるが。

 

 

 

 ――――ティーダは消えない。彼が失われる事は無い。

 何故なら、彼の創造主である祈り子たちも、いま筋トレをしているからだ(・・・・・・・・・・・・・)

 

 ユウナいわく――――「夢の中でも筋トレは出来る」

 そして筋トレとは“生涯スポーツ”であり、これにはゴールや終着点は無い。ずっと続けていく物なのだ。

 

 彼らは以前、ティーダに対して「夢を見るのを止める」などと、とても情けない事をのたまっていたが……。

 疲れたとか、もういいとか、休みたいとか、そんな事を言っていては筋肉は育たない(・・・・・・・)。そんなのは論外なのである。いったい何を考えているんだ。

 

 祈り子たちは、これからも夢の中で筋トレをする……すなわち“筋肉を夢見ていく”。

 純粋な少年のような憧れと、真っすぐな向上心を胸に、筋肉と共に眠るのだ。

 

 よってティーダが、彼女の前から失われる事は無いのだ。まさに筋肉のおかげである!

 

 

 関係ないが、かのFF10ー2において、ヒロインであるユウナはとてもセクシーではっちゃけた衣装に変わったと言うが……。

 きっとこの首から下だけがムキムキで、冷蔵庫みたいにでっかくなったユウナであれば、さぞセクシーな衣装も映える事だろう。余すところなく筋肉を見せつける事が出来る。

 再びスピラに巨悪が現れ、また冒険の旅に出る時が、今から楽しみであるッッ!!!!

 

 

「筋肉って……素敵だね

 

「やかましいよ」

 

 

 

 

 

 ユウナが腕組みし、ヒンズースクワットしながら言った。

 

 

 

 

 







◆スペシャルサンクス◆

 甲乙さま♪


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。