英霊の座
ここは英霊の座
古今東西ありとあらゆる英雄が死後魂となり記録される。
それは神と呼ばれる存在もまた同じである。
そんな英霊の座に一人の少女と白熊がいた。
「シロウ~」
少女の方は真名をシトナイ。
聖杯に縁ある人物イリヤスフィール・フォン・アインツベルンを核として英雄シトナイ、女神フレイヤ、魔女ロウヒが融合したハイ・サーヴァントである。
「?」
シロウと呼ばれた白熊。
元々はシトナイの猟犬であり、今ではフレイヤとロウヒの魔術で姿は白熊となりシトナイの使い魔として側にいる。
「暇」
「…」
「あーもう!何でスト限なのよ!全然召喚される気配がないじゃない!!」
そんなこと言われても…。
といった目でシトナイを見るシロウ。
一通りそんなことを喚き散らした後
「シロウ。暇だからちょっと別世界に転生してきて」
「ガウッ?」
は?
という困惑を感じたが無視して右手をシロウに向けるシトナイ。
するとシロウの身体が光り、光が収まるとそこには
白熊の姿はなく
青みがかった銀髪の長髪
深い青色の瞳
イリヤと同じ顔
まあつまりはシトナイの第三再臨の姿である。
「な、なに、これ…」
「シロウ反応薄ーい」
「オレ喋れるようになってる…!?」
「そりゃあ擬人化と同時に『私達』の持ってる知識を入れたからね!魔術も使えるよ!」
腰に手をやりドヤァと得意気な表情をするシトナイ。
「というか転生…?擬人化はアインツベルンのホムンクルス技術で百歩譲って分かりますけど転生なんて出来るんですか?」
「神様の使う魔術に聖杯の力を組み合わせれば不可能なんて無い!!」
「……そうですか」
聖杯を使ってまでやることかなぁ、と訝しみながらも
反論が無意味だと覚り、流すシロウ
「あ、それと私の姿でオレって言うのも嫌だから私って言うようにしてね」
「それは…」
「いいわね?パスは繋ぎっぱなしにしとくから常に見てるからね」
「…」
「返事は?」
「…はい」
「うん。よろしい♪」
満足気な表情を浮かべるシトナイ
「でも何でこの姿なんですか?」
「しょうがないじゃない。
あなたの中にも
それにアインツベルンのホムンクルスで最高傑作っていったらどうしてもその身体になっちゃうし」
「…出来るだけ良い身体にしてくれたんですね。その点に関してはありがとうございます」
「当然よ。それよりもその姿でシロウっていうのも変よね。…新しい名前を考えないと」
そう言い考えこむ
「シロウ…、シロ、うーん」
そして
「よし。決めた!シロエ。これからあなたはシロエと名乗りなさい」
「……安直な名前」
「何か言った?」
「いえ。何も」
顔が怖いです。マイマスター
「まあいいわ。それじゃ転生開」
「あ、ちょっと待ってください」
作業を中断させられ少し不機嫌な表情になる。
「…何。一応聞くけど私の決定に逆らう気?」
「…マスターの決定に逆らおうだなんて思いません。
ですが…、一つだけお願いを聞いてもらってもいいでしょうか?」
「…言ってみなさい」
シロウもといシロエはお願いを口にする。
「衛宮士郎の近くに転生させてください」
その願いを聞きポカンとした表情を浮かべるシトナイ
「…それはどうして?」
「…以前から興味はあったんです。『イリヤ』の生前の大切な人、オ…私の名前の由来となった人。どんな人なのか知りたいんです」
「…どんな人かは話してあげたことがあったと思うけど?
それにその気になったら記憶だって見れるはずよね?」
「見ましたけど…見たからこそ実際に会ってみたいと思ったのです。
私は会って衛宮士郎が何故『イリヤ』の心に残ったのか。その理由を知りたいんです」
「…」
「お願いします」
シトナイは少し迷った後
「…わかったわ。出来るだけ士郎と一緒に居られるようにする」
「ありがとうございます」
「それじゃあ、今度こそ転生開始!!」
光に包まれていくシロエ
その光が強くなっていき自分の意識が薄れていくのが分かる。
「あ、そうそう。赤ん坊の状態にして転生させるからね」
「え゛」
そして意識がなくなった。
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「…行っちゃったか」
シロエがいなくなり一人呟く
「どうか幸せな人生を送ってね。シロエ」
そう呟くシトナイの顔は
優しく微笑んでいた。