プリヤに元白熊少女を放り込んでみた   作:『ユタカ』

11 / 66
アサシン

 

 

「どういうことですの?」

 

 

今回接界(ジャンプ)した場所は森の中だった。

辺り一面に草木が生い茂っていて緑豊かな場所である。

しかし

 

 

「敵はいないしカードもない…。もぬけのカラというやつですわね」

 

 

そう。ルヴィアの言う通り視界に入るのは草木だけで敵の姿は影も形も無いのだ。

 

 

「場所を間違えたとか…?」

 

「まさか…、それはないわ。

もともと鏡面界は単なる世界の境界…。空間的には存在しないものなの。

それがこうして存在している以上必ずどこかに原因(カード)があるはずだわ」

 

「そういえば今回はなんだか空間が狭いような…?」

 

 

イリヤが空を見上げ天井が低くなっていることに気づく。

 

 

「カードを回収するごとに歪みが減ってきてる証拠ね。

最初の頃は数キロ四方もあったらしいし」

 

「うへー…。とりあえず歩いて探すしかないのかな…」

 

「んーむ、なんとも地味な…。

もっとこう魔法少女らしく、ド派手に魔力砲ぶっ放しまくって一面焦土に変えるくらいのリリカルな探索法をですね」

 

「それは探索じゃなくて破壊だよ…。

ってシロどうしたの?」

 

 

こういうふざけた会話にはよく入ってくるのに黙ったままだったためイリヤが心配して声をかける。

 

 

「…ルビーもお姉ちゃんも集中して」

 

「えっ」

 

「敵は理性を失っているとはいえ英霊なんだから…。

痕跡や気配を消すことなんて朝飯前なの。

もっと言っちゃうとすぐ近くにいても何も不思議はないんだよ?」

 

「うーん。そうは言われましても、周囲には何の反応もありませんよ?考えすぎでは?」

 

 

ルビーの言う通りシロの心配しすぎだとイリヤは思った。

無論警戒していないわけではない。

しかし辺りを見回しても見えるのは草木のみ

敵の姿なんてどこにもない。

 

 

(前回の戦いの所為で少し過敏になりすぎているのかな?)

 

 

イリヤがそう思い始めた。

次の瞬間

イリヤの首にナイフが突き刺さった。

 

 

「イッ…」

 

「お姉ちゃん!?」

 

「美遊!!」

 

砲射(シュート)!!」

 

 

シロエと凛は刺されたイリヤの下に駆け寄り

美遊はルヴィアの号令でナイフの飛んで来た方向に魔力砲を放つ。

美遊の放った魔力弾は草木を掻き分け突き進むが

 

 

(いない…!)

 

 

敵の姿はなかった。

 

 

「あうッ…!」

 

「イリヤ!」

 

「お姉ちゃん、大丈夫!?」

 

「大丈夫。物理保護が利きました!

薄皮一枚です!」

 

 

ルビーの言葉に安堵する一同

 

 

「敵の位置は不明…。

方陣を組むわ!全方位を警戒!」

 

 

凛の指示で全員で各自別方向を警戒することで死角をなくすようにする。

 

 

「不意打ちとはナメた真似をしてくれますわね!」

 

「攻撃されるまでまったく気配を感じなかったわ!

その上完全な急所狙い…!

気を抜かないで!ヘタすれば即死よ!」

 

(死…)

 

(…イリヤ?)

 

 

気を抜けばやられると叱咤する凛に対し

イリヤは死という言葉に反応し青ざめる。

そんな姉の様子がおかしいことに気づくシロエ

 

死角をなくしてどこから攻撃が来ても対処するための陣形

しかしそれは無意味に終わる。

何故ならば

 

 

「敵を視認!総数…50以上!!」

 

「そんな…!」

 

「嘘でしょう…!?

完全に包囲されてますわ!」

 

「なんてインチキ…!

軍勢だなんて聞いてないわよ!!」

 

 

敵が無数にしかも一同を包囲するように現れたからだ。

そしてその敵が一斉にナイフを取り出す。

 

 

「(まずい…ッ!)立ち止まらないで!的にされる!」

 

 

凛のその言葉に()()は一斉に動き出す。

 

 

「包囲を突破するわ!!

火力を一点集中!!

イリヤ!!シロ!!美遊!!」

 

「はい!」

 

「イリヤ?シロ?」

 

 

美遊しか返事が返って来なかったこと訝しみ凛は後ろを振り返る。

するとそこには

 

 

「イリヤ!?シロ!?」

 

 

うつ伏せに倒れているイリヤと

そのイリヤに対し絶えず飛んでくるナイフを剣で叩き落としているシロエの姿があった。

 

 

 

「お姉ちゃん!なんとか動けない!?」

 

「ご…ごめん…。動かない…っ!」

 

「魔力循環に淀みが…!?

物理保護が維持できません!」

 

(…っ!?それじゃあ一本でも通したら…)

 

「!!まさかさっきの…」(毒…!?)

 

 

ルビーの言葉から

目の前の無数にいる敵に対し一本でも通したらイリヤが死ぬという状況にシロエは歯噛みし

イリヤに刺さったナイフに毒が塗られていたことに凛は気づいた。

 

シロエはナイフを叩き落としながら必死にこの状況を打開する方法を思考する。

障壁を張る………途切れず連続でナイフが飛んできているため張る時間が無い。

リンさん達の助けを待つ………敵は見たところ攻撃しながらも一斉攻撃の準備を進めている。おそらく助けが間に合わない。

 

どうする!?

 

そして一つだけ()()()()助ける方法がシロエの頭に思い浮かんだ。

 

その瞬間ナイフが四方八方全ての敵から放たれた。

 

 

「イリ…」

 

 

シロエの予想通り凛達の助けは間に合わない。

しかし

 

 

「えっ…」

 

 

イリヤの上から覆い被さる影

無論シロエである。

考えといっても実に単純なものである。

障壁を張れないなら()()()()()()()()()()

後はイリヤに貫通しないように硬化の魔術を使用。

自分は死ぬかもしれないがここさえ凌げば凛達の助けが来てイリヤは助かる。

それがシロエの出した結論であった。

 

 

(ダメ!!それじゃあシロが!!!また、あの時と同じ…)

 

 

そんなシロエの考えが伝わりイリヤはセイバー戦でのシロエの行動を思い出す。

そしてもうあんな思いはしたくないと焦る。

 

リンさんの判断は冷静で正確だったし

今回の敵だって前のに比べたら決して強くはない。

ただひとつ、最初の一手で遅れをとった。

たったそれだけのことでシロが死んじゃうの…?

シロの警告を聞いてもっと集中してればこんなことにはならなかったのかな

どうすれば…どうすればいいの。

あれ?そういえばルビーがなんか言ってなかったっけ…?

 

 

『ド派手に魔力砲ぶっ放しまくって一面焦土に…』

 

 

そっか。それなら簡単だ。

 

その時のイリヤの中でまた何かが外れる音がした。

次の瞬間

 

 

「なっ…」

 

 

イリヤを起点に大爆発が起きた。

 

 

……

………

 

 

「なに…これ…」

 

 

爆発は敵を簡単に倒し『Assassin(アサシン)』のカードが地面に落ちている。

 

 

「わたしが…やったの…?」

 

 

爆発の影響でイリヤを中心にクレーターができており、あれだけあった草木も見る影がない。

 

クレーターの外周部には

 

 

「ミユ…リンさん…ルヴィアさん」

 

 

爆発に巻き込まれてボロボロになり腕や顔から出血している美遊達の姿をイリヤを見た。

 

…強い血の臭いを感じる。

美遊達…ではない。

臭いの元はイリヤのすぐ隣

見たくない。

そう直感的に思うも顔はそちらを向く。

 

そこには

 

 

「……………シロ?」

 

 

イリヤの隣には

 

全身血塗れで突っ伏している

 

助けたかった妹がいた。

 

 

「あ…あ…」

 

「シロ!?…サファイア!シロに治癒魔術を…!速く!!」

 

「わかりました!大至急!」

 

「サファイアだけじゃ足りない…!私達もやるわよ!ルヴィア!」

 

「わかってますわ!!」

 

 

美遊達も爆発に巻き込まれ大なり小なり怪我をしていたがそれでもシロエの怪我はその比ではなかった。

イリヤを守るために覆い被さっていたからだ。

このまま放置すれば死んでしまうほどの重傷である。

そのため美遊達は真っ先にシロエの治療を優先した。

そして

 

 

「…うっ」

 

「シロ!大丈夫!?」

 

「…うん。硬化の魔術を使ったから…お姉ちゃんは!?」

 

「あっ…」

 

 

顔を青ざめながらただ見ていることしかできなかったイリヤは呼ばれて身体を震わせる。

 

 

「イリヤは大丈夫だから落ち着きなさい!」

 

「シロ。喋っちゃダメ」

 

「よかった…。お姉ちゃん…」

 

 

よくない。

わたしが…。

わたしのせい…?

違う。違うの。わたしはただ…、シロを…。助け…

 

そして

イリヤはセイバー戦の夜に起こったことを

全て思い出した。

 

 

「お姉ちゃん…?」

 

「イリヤ…?」

 

「…なん…なの?

どうしてわたしがこんなこと…。

敵も…ミユ達まで巻き込んで…。

助けたかったシロも逆に…。

もう…もう…」

 

「お姉ちゃん!」

 

「イリヤ!」

 

「もういや!!」

 

 

その叫びと共にイリヤの座る地面に魔法陣が浮かび上がる。

そして

 

 

離界(ジャンプ)!?」

 

((にっ…逃げやがったーッ!?))

 

「…」

 

「お姉ちゃん…」

 

 

……

………

 

 

鏡面界を抜け出したイリヤはひたすらに走っていた。

 

 

「イリヤさん、落ち着いてください!」

 

「もういや!帰る…帰るの!」

 

 

わたしは普通の人間なのに…!

ステッキに騙されてちょっと魔法少女をやっただけ…!

なのに、そのはずなのに

まるで

わたしがわたしじゃなくなるような感覚

 

 

「帰らなきゃ…。

帰らなきゃ、速く。

家に、帰らなきゃ。

速く、もっと速く!!」

 

 

次の瞬間イリヤの姿は森の中から消え

上空へと一瞬にして移動していた。

 

 

「上空…!?まさか転移を!?

こんな距離を一度に…!!」

 

「あった…!」

 

 

イリヤは上空から自らの日常の象徴である住んでいる家を見つけると一直線に向かう。

 

 

……

………

 

 

ギッ…ガチャッ…バタン

 

(玄関…?)

 

 

深夜、ベッドで本を読んでいたセラは玄関が開く音に気がつきベッドから抜け出す。

 

 

「こんな時間に…誰ですか…?」

 

 

時間が時間なだけあって警戒しながら階段を降り玄関へ向かう。

するとそこには

 

 

「!イリヤさん!?」

 

 

玄関にてうつ伏せに倒れているイリヤの姿があった。

 

 

「これは…一体何が…」

 

 

イリヤを抱き上げながらセラは困惑するのであった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。