プリヤに元白熊少女を放り込んでみた   作:『ユタカ』

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解約

 

 

「昨夜はどこに行っていたのですか?」

 

 

アサシン戦の翌朝

シロエはセラにそう問い詰められていた。

 

 

「……どこにって?」

 

「とぼけないでください。

昨夜の遅くにイリヤさんが玄関に倒れているのを発見しました。

私服姿で外から帰ってきた様子でした」

 

「…………それで?」

 

「イリヤさんをベッドに運んだ後、もしやと思いあなたの部屋を確認したら、案の定あなたもいませんでした。

…………いったい何があったのです?」

 

 

昨夜…

シロエは昨夜の出来事について思い返す。

あの後シロエは美遊達にある程度まで治療してもらった後、自身でも治癒魔術を発動。

瀕死の重傷であったが持ち前のシトナイの加護と合わせて全快した。

その後はイリヤを探しながら帰路についた。

 

シロエは昨夜のことについては全く気にしていない。

寧ろイリヤが助かり安堵したくらいであった。

 

 

「………お姉ちゃんは?」

 

「既に学校へと向かいました」

 

 

しかしイリヤはそうではないらしい

今までは毎朝二人一緒に登校していたのだ。

イリヤの行動から顔を合わせたくないというのがシロエにはよくわかった。

 

 

「…そう。それでセラには?」

 

「………何も話してはくれませんでした。

夜の出歩きはもうしない、とだけ」

 

「…」

 

 

カード集めにはもう参加しない。

ということかな

昨夜の戦いでわたしがあっさりと死にかけたから?

…それならそれで構わないけど

魔術の世界に関わってもろくなことはないから

 

 

「…それならわたしからも何も言えないかな。

お姉ちゃんが言わなかったことをわたしが言うわけにもいかないから」

 

「シロさん………あなたは………」

 

「…………セラ」

 

「………はぁ、わかりました。これ以上はなにも聞きません。

ですがシロさん、あなたももう夜の出歩きは…」

 

「…」

 

 

シロエは考える。

本当にイリヤがもう事件に関わらないというのであれば当初の目的であったイリヤを護るという目的は達せられている。

よってシロエが参戦する理由はもうないように思うが…。

 

 

「私は───」

 

 

……

………

 

 

学校への通学路

シロエは一人その道を歩く。

 

 

「…こうやって一人でいるのは孤児院にいた頃以来ね」

 

 

孤児院にいた頃以来だから…大体五、六年ぶりくらい?

アイリ達に拾われてからはずっとイリヤと一緒にいたから一人でいた時間は全然なかったんだよね。

だからこうして一人でいるとまるであの頃に戻ったみたい。

一人ぼっちで他の子供達の輪を傍からただ眺めていたあの頃に

…なんでだろう

ただあの頃に戻った。それだけなのに

もうすぐ夏だというのに

 

 

「ちょっと…寒いね」

 

 

……

………

 

 

私立穂群原学園小等部

朝なだけあり沢山の子供達が元気な挨拶と共に校内へと入る。

そして5年1組の教室でも

 

 

「ぅオーッス、イリヤ!!

本日はご機嫌ハウアーユー!!」

 

 

元気が代名詞である龍子がイリヤに挨拶をする。

三人の間に漂う空気など読まずに

 

 

「おはよう、タツコ…。雲が綺麗ね…」

 

(オーウ、ソーバッド?)

 

 

珍しくイリヤにあしらわれた龍子はそれでもめげず

 

 

「なんだよ、元気ねーなぁ!朝からそんなんじゃ放課後までもたねーぞ!

なあ美遊?」

 

 

よせばいいのに美遊の右肩に腕を載せ話しかけるが

 

 

「うるさい、少し静かにして」

 

 

美遊は本を読みながら冷たく言い放つ。

その冷たい反応に龍子はたじろぐ。

 

 

「ぐっおお、ま、まだだ。まだ俺には攻略したシロが…!」

 

 

そして美遊と同じく本を読んでいるシロエの座る席に行き

 

 

「シローッ!グッドモーニンッ!!」

 

 

今までの反応を帳消しにしてほしいが如く

更にハイテンションで挨拶をする。

それに対しシロエは本からゆっくりと顔を上げ

 

 

「……タツコはいつも元気ね」

 

「おうよ!元気こそ俺の」

 

「でもね、それ以上に」

 

 

そして

 

 

「うるさくて」

 

 

絶対零度の

 

 

「無神経で」

 

 

言葉が

 

 

「デリカシーがなくて」

 

 

龍子を

 

 

「空気が読めないよね」

 

 

貫いた。

 

 

「…う、う、うおおぉぉぉぉぉん!!!」

 

 

シロエにトドメを刺された龍子はマジ泣きし那奈亀に泣きつく。

 

 

「ちくしょう、誰か俺にやさしくしてくれ…!」

 

「はっはっはっ、このウジ虫め」

 

 

那奈亀が龍子の頭を撫でながらも罵倒する。

そんな様子を雀花と美々は見ながら思案する。

 

 

「うーむ…。どうにもこれは…」

 

「うん…。なんか空気悪いね…」

 

 

そう。前後の席で座っているイリヤと美遊、それに少し離れた席に座っているシロエ。

この三人の間の空気が非常に悪いのだ。

シロエに限っては二人とは少し離れた席に座っているにも関わらず空気の悪さが伝わってくる。

更にはいつもイリヤと一緒にいたシロエが別々に登校してきたことで事態は深刻であると友人達は判断した。

 

 

「イリヤちゃんとシロちゃんと美遊さん、ケンカでもしたのかな…」

 

「ちょっとずつ美遊さんもうち解けてきた感じだったのに…。

シロも空気が悪いというより、雰囲気が昔に戻ってる感じがするし…。

いったい何が…」

 

「ミユキチとシロキチのやろー。デレ期かと思ったのに二人揃ってまたツンに戻りやがって…!

もつれか!?もつれた痴情がただれてるのか!?」

 

「それ意味わかって言ってる?」

 

「シロに関してはイリヤと一緒にいなくなったのが原因だとは思うけど。

そのイリヤがあれじゃあ…」

 

 

うーん。と悩む友人達

そんな友人達の会話を耳に挟んだイリヤは

 

 

(実際はケンカでも何でもなく

単に二人に合わせる顔がないってだけなんだけど…

…シロには悪いとは思うけど)

 

 

妹が周りから浮いてしまうところは見たくないけど

それ以上に顔を合わせづらい

そう思ってしまいイリヤは一人溜め息をつく。

 

 

(………イリヤ、身体の方は問題ないみたい。

問題なのはメンタルの方だけど

こればっかりは持ってる経験や知識を用いても治し方なんてわからないし…)

 

 

シロエにはシトナイの身を護ったりした経験こそはあるものの、メンタルケアの経験など当然のことだがない。

よって悩むイリヤを見てもなんて声をかければいいかわかるわけもない。

どうすることもできないもどかしさにシロエもまた溜め息をつく。

 

 

(イリヤ様もシロ様も身体に問題はないようですね)

 

(あれだけの魔力を一度に放出して無傷…か。

それにシロもあれだけの怪我を負ったのにあっという間に全快したし…。

シロに関しては以前からわかっていたけどイリヤにも何か特別な力があるみたい…。

でもそれより今は、イリヤの心の方が問題…かな)

 

 

そんなイリヤとシロエの様子を確認して身体の調子は問題なさそうと安堵しつつも、やはり美遊もまたイリヤの心のダメージを問題視していた。

 

 

……

………

 

 

授業が始まり

空気が悪いまま授業は進行していく。

そして体育の時間

授業内容はバドミントンでありその待ち時間

ルビーがイリヤに話しかける。

 

 

「いやー、しかし親バレはまずかったですねー。

完全に非行少女だと思われちゃってますよアレ」

 

「魔法少女のことは秘密なんでしょ?

言ってもどうせ信じられないだろうし…。いいよもう」

 

「もちろん魔法少女は正体不明がスタンダードですから!

今後ともそれは隠し通していただかないとー」

 

「今後とも…って。

わたしもうカード集めはしないつもりなんだけど…」

 

 

案の定というべきか

シロエの思った通りイリヤはカード集めをやめたいと考えていた。

止められるかもと思いつつもイリヤはそれをルビーに切り出した。

しかしそれに対しルビーは

 

 

「いいんじゃないですか別にー。

そもそもカード回収は凛さんとルヴィアさんに課せられた任務ですから」

 

 

あっさりと了承する。

 

 

「ふーん。止めないんだ?」

 

「わたし的にはカードとか別にどうでもいいことですしー。

大体あんな血生臭い泥仕事は魔法少女のやることじゃありません!」

 

「血生臭い…って、まぁそうか…。

どんなに言い繕っても結局は命のやりとりだったんだよね。

それでわたしが危ない時はいつもシロが…」

 

 

本当に命の危機がある場面ではいつもシロエが間に割って入ってくれていたことをイリヤは思い出す。

そして昨夜の血塗れで倒れているシロエを思い出してしまいイリヤは口をつぐむ。

そうして黙ったイリヤを見てルビーは

 

 

「それを怖いと感じるのは、まぁ当然のことと言いますか

むしろ今までよく凛さんたちに付き合ってやったものだと言うべきですねー」

 

「怖い…、か…」

 

 

シロが私を庇って傷つくのは確かに怖い。

でも

 

 

「どっちかって言うとわたしが怖いのは…」

 

「?なんですか?」

 

「ううんえっと…これからどうすればいいのかな…って」

 

「そうですねー。

もともとイリヤさんに責任のあることではないんですけども

とりあえずは──」

 

 

……

………

 

 

「凛さんにぶっちゃけましょうか」

 

 

ルビーにそう言われたイリヤは放課後、凛を公園へと呼び出していた。

 

 

「──昨夜は急に逃げ出したかと思えば、それはなに?」

 

 

イリヤの手には竹竿か握られており

竹竿の先端には退魔法少女願と書かれた封筒がくくりつけてある。

凛は猛獣か何かであろうか。

 

 

「辞表です…」

 

「ま…。こうなるかもとは思ってたけど」

 

 

凛は自分の猛獣?扱いに若干呆れた目をしつつ竹竿から封筒を取る。

 

 

「その、最初は…正直…。

興味本位っていうか…面白半分だったの。

でも…考えが甘かったって思い知った」

 

 

魔法少女なんて言ってもその実やってることは命掛けの戦い。

昨日ようやく思い出した。

わたしはセイバー戦とアサシン戦と…本当なら死にかけていた。

でもそれらは全部シロが肩代わりしてくれて…

今頃になってミユの言葉が突き刺さる。

 

 

『妹が可哀想。…あなた達は戦わなくていい。』

 

 

わたしには…

戦うだけの覚悟も理由も…ありはしなかった。

それなのにシロを巻き込んでしまった。

妹が…シロが可哀想ってミユが言ったわけがよくわかった。

 

 

「もう戦うのも…それでシロが傷つくのも…イヤです」

 

 

イリヤは俯きながらも凛に対し自分の意志を伝える。

 

 

「…一つだけ、確認したいことがあるんだけど

昨夜のアレは自分の意志で起こしたの?」

 

 

アレ、とは無論イリヤを中心にし起きた爆発である。

アレを思い浮かべたイリヤは顔を青ざめながら

 

 

「ち…違うよ!

あれは…あんなのわたしにできるわけない!

あれはきっとルビーが…」

 

「わたし単体には攻撃能力なんてありませんよ。

マスターが振るわない限り魔力砲の一発も撃てません。

昨日の爆発は…間違いなくイリヤさんの力によるものです」

 

 

イリヤは自分がやったことと認めたくなかったが

ルビーがそれを否定する。

 

 

「そんなはず…!

だ、だって…わたしは普通の人間だもん…!

あんな…」(あんなのわたしじゃない…!)

 

(本当の理由はそれか…)

 

 

そう。イリヤはシロが死にかけたこともショックではあったがそれと同時に自分の中の正体不明の力に対し酷く怯えていた。

そんなイリヤの心情を察した凛は

 

 

「わかったわ。辞表を受理する」

 

 

あっさりと辞表を認めた。

 

 

「いいの…?」

 

「協力を強要してたのはこっちだしね。

小学生に戦いの代理をしてもらうなんてこと自体、無理があったのよねー、やっぱ…。

もう十分でしょルビー?お遊びはおしまい。

マスター登録を元に戻しなさい!」

 

 

そう凛はルビーに対しマスター登録を自分に戻すように要求するが

 

 

「やなこってす。わたしのマスターはわたしが決めます!」

 

 

ルビーはこの空気に屈せず要求を突っぱねる。

ルビーの両側の羽を掴み左右に思い切り引っ張る凛

しかしそれでも要求は通らず、凛はルビーを地面に叩きつける。

 

 

「…まぁいいわ。どうせカードは残り一枚よ。

カード回収が済んだらわたしもルビーも倫敦(ロンドン)へ戻るわ。

それで終わり。もうイリヤには関わりのないことよ。

…正式な契約なんてしてないけど、一応言っておくわ」

 

 

それは──

 

 

「イリヤスフィール。

あなたとの奴隷(サーヴァント)契約を

解除する」

 

 

それは契約の(クサリ)を解く言葉

 

 

「…お疲れ様。もうあなたは戦わなくていいし、わたしの命令も聞かなくいいわ。

今日までのことは忘れて生きなさい。

一般人が魔術の世界に首を突っ込んでもいいことはない」

 

 

これでもう他人同士だとリンさんは言う。

 

 

「…全部夢だと思って忘れてくれていい」

 

 

自分で望んだことなのに…どうしてだろう…

 

 

「あなたはあなたの日常に戻りなさい」

 

 

胸が痛い。

 

 

「ま、そういうわけなんだけど。

あなたはそれでいい?美遊」

 

「えっ…」

 

 

突如告げられた名前に驚くイリヤ

すると、いつからいたのか

イリヤの後ろに美遊が立っていた。

 

 

「はい」

 

「ミ…ミユ…」

 

「問題ありません。最後のカードはわたし一人で回収します」

 

「そう…」

 

 

立ち尽くすイリヤを放って話は進んでいく。

そして

 

 

「最初に…言ったとおりになったね」

 

「え…」

 

「あなた達はもう戦わなくていい。

あとは全部…わたしが終わらせるから…」

 

 

そう言い残し凛と美遊は去ろうとした時

 

 

「待った」

 

 

それを止める声が響いた。

イリヤではない。

声の主は

 

 

「シ……シロ…」

 

 

公園の出口にシロエが立っていた。

 

 

……

………

 

 

「…何か用かしら?イリヤが戦わない以上あなたが戦う理由もないと思うのだけど」

 

 

凛がそうシロエに呼び掛ける。

イリヤもその通りだと思った。

最初シロエはイリヤがカード回収を行うことに反対していたのだ。

それでもイリヤがカード回収に参加してしまったためシロエはイリヤを護るという目的で参戦した。

しかし今となってはそれもない。

肝心のイリヤが凛との契約を解約したのだから

しかし

 

 

「…リンさん。最初のカード回収任務の夜に交わしたわたしとの約束、覚えてる?」

 

「…?確か…」

 

「『カードの回収任務に力を貸してもらう。それが黙殺する最低条件』、それがあの夜に言ったリンさんの言葉」

 

「…」

 

「でもそれって逆に言えばわたしが最後までカード回収に力を貸さなければリンさんは時計塔にわたしのことを報告してもいいってことになるよね?

そこにお姉ちゃんの有無は関係ない」

 

「あんた、まさか…」

 

「そういうわけだからわたしも最後まで参加させてもらうね」

 

 

イリヤはガツンと殴られたような衝撃を受けた。

それも無理はない。

辞表を出した半分の理由はこれ以上妹が傷つかないようにと出したのだから

 

 

「シ、シロ。何言って…」

 

「お姉ちゃんは気にしなくていいよ。

完全にわたしの事情だから。これまでの戦いも…これからの戦いも、ね。

だから…お姉ちゃんには関係ない」

 

 

関係ない。

そう言われイリヤは俯いて黙ってしまう。

 

 

「待ちなさい。わたしは別に…」

 

「リンさん」

 

 

シロエの眼差しが凛の言葉を遮る。

そして

 

 

「はあ、わかったわ。確かにそういう契約だったのは間違いないし。

場所と時間について打ち合わせするから一緒に来なさい」

 

「うん。じゃあそういうわけだからお姉ちゃんは先に帰ってて」

 

「あ…」

 

「最後の一枚だから心配しないで、ね?」

 

 

そしてシロエと美遊と凛はイリヤを公園に置いて去って行った。

 

 

……

………

 

 

「…シロ」

 

 

公園から離れて少し経った後

歩きながら美遊がシロエに話しかける。

 

 

「うん?」

 

「最後まで手伝わなくても別に凛さん達なら…」

 

「ああ、あれ?あれは全部建前だよ」

 

「建…前?」

 

「ああでも言わなきゃお姉ちゃん納得しないでしょ?」

 

 

今まで戦ってきた理由がちゃんとイリヤを護るためだったと確認でき美遊は安堵する。

しかしそれなら

 

 

「なら…なんであなたはまだ戦うの?」

 

 

シロエの戦う理由がわからず美遊が問いかける。

 

 

「…お姉ちゃんには黙っててよ?」

 

「…うん」

 

「理由は二つ。

一つ目は…多分だけどミユが一人で戦おうとした理由と同じ」

 

「…もう一つは?」

 

「もう一つは…」

 

 

美遊が二つ目の戦う理由を聞くと

シロエは少し口ごもる。

 

 

「?」

 

「だから、その…友達、でしょ。わたしたち」

 

 

恥ずかしそうに言った言葉に美遊は目を見開く。

 

 

「友達…なんだから、同じように護りたいと思ったの。

ミユのこと。…それだけ」

 

 

その言葉を最後にシロエは黙ってしまう。

しかし美遊にはそれだけで十分であった。

 

 

「…シロ」

 

「うん?」

 

「…ありがとう。わたしもシロのこと護るから」

 

「…うん」

 

 

そしてそんな二人のやり取りを

凛は背中越しに聞き微笑ましく思っていた。

 

 

……

………

 

 

時間は流れ夜となり

シロエは自宅を出る。

セラには朝の段階で自分はまだ外出すると話しておいた。

凄い反対にはあったが

イリヤと友達のためと真剣に話したらなんとか許しをもらえた。

そうして自宅を出て少し歩いた時だった。

 

 

「あら?…やっぱり!シロちゃんじゃない!」

 

「え…。マ…ママ!?」

 

 

母親であるアイリとばったりと会った。

ちなみにママという呼び方はイリヤのお姉ちゃん呼びと同じように矯正された結果である。

そして

 

 

「ちょ!?抱きつかないで!?ママ、ここ外…」

 

 

シロエの下に走り寄り、勢いそのままに抱きついた。

シロエが抗議の声を上げるがアイリには届かない。

それどころか

 

 

「久しぶりね~。背、少し伸びたんじゃない?

…こっちは変わってないみたいだけど」

 

「ちょ、どこを触って何を言って…!?」

 

「うん?愛しい愛娘の成長確認だけど?」

 

「確認方法に問題が、んっ!

揉まないで、変な声出ちゃうから!

ここ外だから!」

 

「さてこっちは…」

 

「ちょっ!?そこは…」

 

 

~しばらくお待ちください~

 

 

「うう。何かが汚された気分…」

 

「母娘なんだからいいじゃない♪」

 

「場所を考えて!場所を!」

 

「そうは言っても周りに人なんていないじゃない」

 

 

そうして一通り娘の成長確認?を行った後

 

 

「そういえばなんでこんな時間に?

もしかして出迎えてくれたの?」

 

「いや、帰ってくること知らないでしょ。

…少し用事というか、やらなくちゃいけないことがあって…」

 

 

止められるかもと思いつつもシロエはアイリに用事で出かけることを伝える。

しかし

 

 

「あら、そうなの。なるべく速く帰ってきなさいね」

 

 

シロエの心配をよそにあっさりと了承を得られる。

 

 

「…止めないんだ?」

 

「ええ。大事なことなんでしょう?

母親なんだもの。それくらい顔を見ればわかるわ」

 

「うん。ありがとうママ。

…それと、お願いがあるんだけど…」

 

「うん?なーに?」

 

「…お姉ちゃんのことなんだけど」

 

 

シロエは申し訳なさそうに少し目を伏せて話す。

 

 

「その…わたしのせいで少し…ううん、かなり落ち込ませちゃったの。

…ごめんなさい。

だからね、その…」

 

「うん、わかった。帰ったら話してみるわ」

 

「…怒らないの?」

 

「シロがイリヤをわざと傷つけるような真似なんてしないってわかってるもの。

だから顔を上げて…ね?」

 

 

アイリはそう言うとシロエの顔を両手で優しく包み上げさせる。

 

 

「…うん」

 

「イリヤのことは私に任せて。

他には?何かある?」

 

「他には…」

 

 

シロエにはこの時、アイリが自分の素性について話してほしいということに気づいていた。

何故なら帰ってくる度に話しておきたいことはあるかとアイリはシロエに尋ねていたからだ。

おそらく信じてほしいという意味合いを込めているのだとシロエは思う。

しかし

 

 

「特には…ない」

 

「…そう」

 

 

アイリは残念そうに言う。

そんなアイリを見かねてシロエは

 

 

「…ママ」

 

「…うん」

 

「ごめん。わたし…」

 

「謝らないで。待つから。シロが話したいと思えるその日まで」

 

 

それを聞いたシロエは

 

 

「うん。…じゃあ、いってきます。ママ」

 

「いってらっしゃい。シロ」

 

 

そしてシロエはその場を後にした。

 

 

……

………

 

 

時間は流れ、ビル街の一角にある高層ビルの屋上

 

 

「さあ…。覚悟はいいわね」

 

 

そこに四人の人影

凛、ルヴィア、美遊、シロエの四人が立っている。

 

 

「ラストバトル…。始めるわよ!!」

 

 

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