プリヤに元白熊少女を放り込んでみた   作:『ユタカ』

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万華鏡

 

 

ゴッ! ガンッ! ドガッ!!

 

 

鏡面界の高層ビルの上階

そこで鈍い音が鳴り響く。

岩と岩がぶつかり合うような鈍い音である。

だがぶつかっているのは岩ではない。

 

 

「■■■■■■──ッ!!」

 

「やああぁぁぁぁぁっ!!」

 

 

バーサーカーの拳とシロエの変貌した白熊の腕である。

バーサーカーの拳が振るわれる度にシロエはその白熊の腕を合わせ、バーサーカーと真正面から打ち合っているのである。

その衝撃音がまるで岩の衝突が如く凄まじい音を鳴り響かせているのである。

 

圧倒的な膂力を持つバーサーカー

本来であればその膂力の前には真正面から受け止めることなど不可能である。

事実シロエも最初の方は受け止めることを避け、回避と受け流しに徹していた。

しかし両腕のみとはいえかつての身体を取り戻したシロエは、そのバーサーカーの膂力に対抗できるだけの力を取り戻していた。

 

 

「はあっ!」

 

「■ッ!?」

 

 

バーサーカーの右ストレートを上へと跳ね上げるシロエ

 

 

「シロ!退いて!」

 

 

その美遊の声にシロエは右へとずれる。

そこに美遊が右腕を跳ね上げられたバーサーカーの胸にその手にある聖剣を突き刺した。

バーサーカーの口から血が零れる。

美遊が突き刺し聖剣を引き抜くと同時に

バーサーカーが重い音を立てて膝をつく。

 

 

「「はーっ…はーっ…」」

 

 

二人は荒く息をつく。

 

 

「み…美遊様!シロ様!」

 

 

とりあえず一段落ついたと判断したのか聖剣と化したサファイアが二人に話しかける。

 

 

「サファイア?驚いた、その状態になっても喋れるんだね」

 

「ソ○ディアンみたいだね」

 

「?○ーディアン?何、それ?」

 

「あ、ごめん。何でもないです」

 

「?」

 

 

某運命のRPGゲームが頭に出てきてしまったのでいつものイリヤを相手にする感覚で突っ込んでしまったシロエ

 

ふざけるのが習慣化しちゃってる…。戦闘中なんだから気を引き締めないと…。

 

戦場において気を緩めてしまったとシロエはすぐに気を引き締め直し、感情を凍結させる。

そんなシロエの心情を露知らずサファイアは話を続ける。

 

 

「いったい何が起こっているのですか!?

シロ様のその両腕、その力!

それに美遊様のその格好、その戦闘力…、まるで……」

 

通行証(カード)を介した英霊の座への間接参照(アクセス)

クラスに応じた英霊の"力の一端"を写し取り自身の存在へ"上書き"する疑似召喚」

 

「え…?」

 

「つまり、英霊になる。それがカードの本当の力。

……なんだけど、シロのそれは…」

 

 

ちらりとシロエの方を見る美遊

見なかったことにするという話に乗った手前聞きづらいのだろう。

 

 

「そうです!シロ様のそれは」

 

「…まるで化け物みたい?」

 

 

シロエの無感情に言った言葉に美遊もサファイアは黙ってしまう。

 

 

「ごめんごめん。意地悪な聞き方だったね。

でもカードはおろか特殊な礼装も無しに身体を変貌させることができるなら、それは人じゃないって思うんじゃないかなって」

 

「…」

 

「悪いけどさっきも言ったように説明は出来ないんだよね。

……………もし不安なら友達をやめてもらっても」

 

「ふざけないで」

 

 

若干の沈黙の後にシロエが言った言葉に美遊が噛みつく。

 

 

「シロに隠したいことがあるってことくらい友達になる前からわかっていたこと。

今さらどんな秘密があったとしても友達をやめたりなんてしないし、シロは化け物なんかじゃない」

 

 

美遊が怒ったようにそう言い切る。

 

 

「そう…」

 

「うん」

 

「…」

 

「…」

 

「…ミユ」

 

「…」

 

「ごめんね。それから…ありがとう」

 

「…うん」

 

 

シロエのその言葉で美遊の機嫌は直ったようであった。

そしてシロエの両腕に対する追求もそれっきり無くなった。

 

そうして話終えたと同時にバーサーカーが再起動する。

 

 

「…ちょうど敵が起きるみたい」

 

「2度目の蘇生…!」

 

「シロ。12回っていう数字は確か?」

 

「うん。それは絶対」

 

「なら…」

 

「うん…」

 

「「後10回打倒するまで!!」」

 

 

美遊とシロエが揃って言い放つと同時に二人は左右から挟み込む形でバーサーカーに襲いかかる。

それに対しバーサーカーは自分と打ち合えたシロエの力を脅威と思ったのかシロエの方へと向き直る。

そしてシロエの振るった腕に対し拳を合わせる。

しかしそうなると当然美遊の攻撃に対し無防備となる。

美遊は上段より聖剣を振り下ろす。

 

 

「っ!?」

 

 

しかし刃が通らずバーサーカーの皮膚に当たったところで聖剣は止まってしまう。

 

 

(な…!?耐性がつくことは知ってたけど、あの聖剣でも通らないなんて!?)

 

 

美遊だけでなくシロエまでもが驚愕する。

そしてその隙をバーサーカーが見逃すはずもなく

 

 

「■ッ!!」

 

「うあっ!?」

 

「ぐうっ!?」

 

 

その巨腕を広げ一回転

右腕がシロエを左腕が美遊を

それぞれ襲い二人は別々に吹き飛ばされる。

 

 

「つ…、う。っ!?」

 

 

しかし休んでいる暇は与えられない。

シロエが敵に目を向けると自身へと突進してくるバーサーカーの姿

突進と同時に右拳が振るわれる。

シロエはどうにかそれを同じ巨腕で受け止める。

そのままバーサーカーは連続で拳を振るう。

シロエはその追撃もなんとか受け止めていくが

先のダメージのせいか足元がふらつく。

それを見た美遊は同じくダメージが残る身体でバーサーカーに聖剣を突き立てようとするが

 

 

(また…!?)

 

 

先と変わらず聖剣はその巨体を貫くことはない。

 

 

「こちらの攻撃の耐性をつけている…!?

こんな怪物…倒しようがありません!

美遊様!シロ様!お願いです、撤退してください!

このままではいつか必ず…」

 

 

しかしそんなサファイアの悲壮な叫びに

 

 

「「撤退は…しない!」」

 

 

二人揃ってそう答える。

そしてその言葉と共に気合いが入ったのか

シロエはバーサーカーの攻撃の合間を狙い

鉤爪を使いバーサーカーを縦に引き裂く。

 

 

「これで、3度目…!」

 

 

しかしバーサーカーに付けられた傷はすぐに塞ぎ始める。

 

 

「ミユ!これ、受け取って!」

 

 

そうシロエが叫ぶと美遊の足元にシロエの腰の剣と大剣が突き刺さる。

と、同時にバーサーカーが動き始める。

 

再び打ち合いを始めるシロエとバーサーカーの背後から美遊がシロエの大剣を斜め上から袈裟斬りにする。

4度目

 

打ち合った瞬間を狙いシロエがバーサーカーの拳から全身を凍結する。バーサーカーは凍死した。

5度目

 

頭上から美遊がバーサーカーの脳天目掛けてシロエの腰に差していた剣を突き刺す。

6度目

 

うざったく思ったのかバーサーカーが美遊を狙ったところをシロエが地面から氷柱を生やしバーサーカーを串刺しにする。

7度目

 

 

「切りがありません!!

このままではこちらの手札が先に尽きます!

二人共撤退を!!!」

 

「「しない!!!」」

 

 

美遊は聖剣に魔力を込めその手に握る聖剣を黄金色に輝かせる。

シロエはその右腕をさらに巨大化させる。その大きさはバーサーカーの巨体を片腕で鷲掴みにできるほどである。

 

 

「どうしてそこまで…。どうして───!」

 

 

二人が撤退を頑として拒む理由がわからずサファイアは困惑する。

 

 

「どうして撤退を拒むのですか!!

今日が駄目でもまた次に体勢を整えて…!」

 

「次じゃダメ!」

 

「うん、今ここで終わらせないと…」

 

「わたしたちが終わらせないと…」

 

「次はきっと…」

 

 

二人が互いに言葉を重ねていく毎に

美遊の聖剣の輝きが

シロエの右腕の巨大化が

どんどん増していく。

 

 

「お姉ちゃんが」

 

「イリヤが」

 

「「呼ばれる…!」」

 

「───…!」

 

 

そう。任務が失敗しまだ投入されていない戦力があるのであれば当然の如く投入されることは目に見えている。

たとえ本人がどんなに嫌がったとしても

それがシロエが美遊に話した一つ目の戦う理由。

美遊とシロエの共通の理由である。

 

 

「お姉ちゃんはもう…、戦いたくないって言った。

わたしには、お姉ちゃんの心を癒してあげることはできない。

だから…だからせめて、これ以上傷つかないようにわたしは…!!

だあああぁぁぁぁぁっ!!!

 

 

シロエの咆哮と共にその巨大な右腕がバーサーカーの頭上より天井を壊しながら凄まじい轟音と共に振り下ろされた。

バーサーカーはその一撃を受け止めようとするが

そのあまりの破壊力を前に押し潰され圧死する。

 

しかし無理に巨大化させたせいかそれとも時間制限か

シロエの両腕は次第に縮み

元に戻ってしまった。

さらに

 

 

(…っ!まだ、身体に馴染んで…いないか!)

 

 

まだまだ身体が獣化に慣れていない所為か床へと倒れてしまうシロエ

 

そして蘇生しまたしても立ち上がるバーサーカー

 

 

「初めて……だったんだ…。

わたしを…"友達"って……言ってくれた人…。

だから…!

約束された勝利の剣(エクスカリバー)ッ!!!

 

 

しかしバーサーカーが立ち上がった瞬間

美遊の振り下ろされた聖剣から黄金色の光が放たれ

バーサーカーはその光に呑み込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「マ…、ママ…?今なんて…」

 

 

場所は変わり

イリヤとシロエの自宅

そのお風呂場にて

イリヤはアイリに

 

自分の力が怖い?

 

と問われていた。

まるで自身に起きたことを知っているかのような聞き方にイリヤは表情を固くしていた。

 

 

「鍵が2度開いてるわね。

10年間も溜めてた魔力がほとんど空だわ。

随分盛大に使っちゃったのね。

こんなに早く解けるとは思ってなかった」

 

「なにを…、言ってるの…ママ…?」

 

「きっと驚いたわよね。

今までの自分(常識)が崩れていくようで…」

 

 

アイリのその言葉を聞きイリヤは顔を少し青くし浴槽にてアイリから若干離れる。

状況こそ違うが、まるでライダー戦の夜のシロエのようであるとイリヤは感じていた。

ママもシロと同じように隠された一面があるのでは?

そのように感じていた。

 

 

「ママ…知ってるの…?わたしの力のこと…。

だったら教えて!あの力は何なの!?

なんでわたしがあんな…」

 

 

しかしながら勇気を奮い起こしイリヤはアイリに自身の力について聞き出そうとする。

それに対しアイリは

 

 

「さぁ?」

 

 

両手の手のひらを上に向け

いかにも知っていますが答えません、と

そのような表情と仕草を行うアイリ

 

 

「ちょっ…。

あ、あからさまにすっとぼけないでよママ!」

 

「えーとホラあれよ。

〈それは自分で気付かねば意味がないのだ…〉とか

〈今はまだその時ではない…〉みたいなっ!」

 

「なにそれー!?」

 

 

すっとぼけるアイリに尚も言い募ろうとするイリヤが面倒臭くなったのか

 

 

「あーもー反論禁止!!」

 

「DVッ!?」

 

 

アイリはイリヤの頭にチョップを落とす。

先の近寄り難い雰囲気はすっかり吹き飛んでいた。

そんなところもシロに似ているとイリヤは感じていた。

 

 

「とにかく!私が言えることはひとつ」

 

 

答える気はないが話をシリアスに戻すべくアイリが続けて口を開く。

 

 

「『力』を恐れているのならそれは間違いよ。

力そのものに良いも悪いもないの。

重要なのは使う人…、あなたの意志。

あなたにどんな力があろうと恐れる必要なんてないわ。

それは紛れもなくあなたの一部なんだから」

 

 

力に善悪はなく

それらは全て扱う人次第

アイリはそうイリヤに諭すが

 

 

「そ…そんなこと言われたって…」

 

「まぁ急に理解しろって言っても無理よねー」

 

「…ママは」

 

「ん?」

 

「ママはシロの…あの力のことを知ってるの…?」

 

 

少し聞いていいものか逡巡したイリヤであったが

ここまで来たら気になっていることは全て聞こうと判断しシロエについても尋ねる。

しかし

 

 

「…そう。やっぱりシロにも何か特別な力があるのね」

 

 

その答え方にイリヤは察する。

シロに関してはママも何も知らないということを

 

 

「じゃあ、ママも…」

 

「うん。話してほしくて待っているのだけど…なかなか、ね」

 

 

一番信頼しているはずのアイリにも何も話していないことを知り

いよいよもってシロは絶対に誰にも話したくないということを理解するイリヤ

 

 

「…でもあの子、いつかイリヤには話すかもしれないわね」

 

「え?」

 

 

イリヤにはアイリが言った意味が理解できなかった。

ママにすら話していないのになんでわたしに?

 

 

「気づいていないかもしれないけど、私から見たらシロが一番気を許しているのはイリヤだと思うの」

 

「そう…なの?」

 

「うん、だからね。

あの子のことがわかった時には

拒絶せずにあの子の手を掴んであげてほしいの」

 

「そんなの…!」

 

 

当たり前

そう言おうとしたが

シロの戦闘中の無感情に敵と戦う姿

凍えるような冷たいあの力

それらが自身の持つ力への恐怖とリンクする。

そして、ライダー戦後の話すくらいなら死を選ぶという氷のような覚悟

シロがわたしに話してくれる時なんて本当に来るの⋯?

そう疑問に思ってしまいイリヤは口をつぐむ。

 

 

「…今はまだ、わからなくて答えられなくてもいい。

…あなたはただあなたらしくそのまま進んでほしい」

 

 

そう言い浴槽から上がるアイリ

 

 

「進むって…?」

 

「逃げ出したんでしょ?

三人でやらなきゃいけないことからあなただけ逃げたんでしょ?

ミユちゃん…だったかしら?」

 

 

そしてアイリが尋ねる。

 

 

「あなたにとってミユちゃんとシロは…、

どんな存在なの?」

 

 

イリヤとシロが持つ力は抜きにして

美遊とシロエがイリヤにとって

どういった存在なのか?

そう問い掛ける。

 

 

そんなの…決まってる───

 

 

「ミユと…、シロは…」 

 

 

そして

 

 

「ミユとシロは───"友達"と"妹"!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

鏡面界のビルにて

美遊の放った聖剣の光が収まり

美遊とシロエ、二人が荒い息を整えていた。

 

 

「はあっ…はあっ…、これで9度目…だっけ?」

 

「はあっ…、うん…。残り3回…、んうッ…!」

 

 

美遊が苦悶の声を上げると

美遊の胸からセイバーのクラスカードが飛び出し

セイバーから魔法少女の姿へと戻ってしまう。

そしてシロエと同じように床へと倒れる。

その際にサファイアを手離してしまう。

 

 

「ミユ…!?大丈夫?」

 

「変身が解けた…?美遊様!?」

 

 

自身も倒れているにも関わらず美遊の心配をするシロエと変身が解けたことに困惑しつつも同じく美遊を心配するサファイア

 

 

「…大丈夫。宝具を使って魔力切れになっただけだから。

…戻ってサファイア!すぐに魔力供給を…!」

 

「は…はい…!」

 

 

しかしサファイアが動き出す前に

バーサーカーが現れサファイアを右手で掴んでしまう。

 

 

「………ッ!!」

 

「美遊様ッ…!」

 

「まず…い!!」

 

 

まずい。

シロエの呟いた言葉であったが

美遊の頭の中もその言葉でいっぱいであった。

 

 

(まずい、まずい、まずい───ッ!!)

 

 

美遊が焦る最中にもバーサーカーは倒れている二人へと近づく。

 

 

(うそ…。こんな…、こんなところで…)

 

「■■■■■■■───ッ!!」

 

 

美遊の心が絶望に染まり

バーサーカーが咆哮と共に右拳を振り下ろす。

 

 

「ッ!!!」

 

 

が、ギリギリでシロエが根性で立ち上がり

美遊の前に出て大剣を盾にし受け止める。

美遊の目にはキャスター戦で見たような光景が写っていた。

しかし決定的に違うところがある。

 

 

「■■■■───ッ!!!」

 

「ぐ…う…!!」

 

 

バーサーカーが力を更に込めると

シロエは大剣で受け止めながらも膝をついてしまい更には足が床へとめり込む。

そう。決定的に違うところはシロエが押されているところであった。

既にシロエの両腕は元に戻ってしまっている。

よってバーサーカーの力を受け止めきれるはずがない。

今までのダメージもある。

このままでは…

美遊の脳裏に嫌な想像が浮かぶ。

 

 

「…シロ!!もういい、退いて!!」

 

 

しかしシロエは退かない。

ここで退けば美遊がどうなるかわかっているからだ。

 

 

「シロ!!!」

 

 

美遊の叫びが木霊したその時

バーサーカーの頭上からイリヤが落ちて来て

その手に持ったルビーの魔力の刃で

バーサーカーを切り裂いた。

そして二人の前に降り立つ。

 

 

「イリ…」

 

「おね…」

 

「リンさん!()()()よ!」

 

 

美遊とシロエの呼ぶ声を遮りイリヤが呼び掛ける。

すると凛とルヴィアが現れ、バーサーカーへと近づく。

 

 

Anfang(セット)──!!」

 

Zeichen(サイン)──!!」

 

 

その手には三個ずつそれぞれ宝石が握られている。

そしてその宝石をバーサーカーへと放つと

 

 

獣縛の六枷(グレイプニル)!!!」

 

 

バーサーカーは六個の宝石から生成された帯状の枷に絡めとられ動きを封じられる。

 

 

「通った…!瞬間契約(テンカウント)レベルの魔術なら通用しますわ!」

 

「あはははは!!大赤字だわよコンチクショー!!」

 

 

とはいえそれも長くは持たない。

イリヤはサファイアを拾い美遊へと投げ渡す。

それによりサファイアから魔力供給を受けた美遊が立ち上がる。

 

 

「イ…イリヤ…。どうしてここに…」

 

「…なんで来たの?…お姉ちゃん」

 

 

戦いを拒んだイリヤが何故ここに来たのか

二人はイリヤが戦わなくて済むようにするために戦っていたため

なおのこと疑問に思っていた。

 

 

「ごめんなさい」

 

「え…?」

 

 

突然のイリヤの謝罪に困惑の声を上げる美遊

シロエもまた黙っていたが訝しんだ表情をしている。

 

 

「わたし──バカだった。

何の覚悟もないまま、ただ言われるままに戦ってた。

戦ってても…どこか他人事だったんだ。

こんなウソみたいな戦いは現実じゃないって…。

そんなわたしをシロはいつも守って、助けてくれた。

なのに…」

 

 

イリヤの目から涙が零れる。

 

 

「その『ウソみたいな力』がシロだけじゃなくて自分にもあるってわかって……

急に…全部が怖くなって…!」

 

「イリヤ…」

 

「お姉ちゃん…」

 

 

イリヤは手の甲で涙を拭い

 

 

「でも…本当にバカだったのは

逃げ出したことだ!」

 

 

どんな経緯だったとしても

自分が関わったことを

関わった人を

なかったことになんてできない。

 

イリヤの握るルビーに光が灯る。

 

 

「"友達"と"妹"を見捨てたままじゃ

前へは進めないから…ッ!」

 

「あっ…!?」

 

 

イリヤが振り向くと同時に

美遊の手のサファイアがルビーに反応し引き寄せられる。

ステッキは互いに反応しあい光が生まれ共振する。

そしてその光の中には一枚のカード

 

 

「これは…」

 

「シロ。手を」

 

「え?…うん」

 

 

イリヤに促されシロエは右手を光へと

Saber(セイバー)』のクラスカードへと翳す。

そして悟る。

イリヤが何をしようとしているのか。

そしてそれを行うのに必要な知識を検索する。

 

 

「できるよ。三人なら」

 

 

()()()()()()()()()()()()()

 

 

「終わらせよう…。そして」

 

 

光はどんどん強くなり

 

 

「前に、進もう!!」

 

 

そして

 

 

「「「並列限定展開(パラレル・インクルード)!!!」」」

 

 

──それは

獣を縛る縄が千切られ

敵が拘束を破ると同時のこと

鏡面界に太陽が現われた

燦爛と輝くその黄金の光は

まるで───

 

 

万華鏡(Kaleidoscope)───」

 

 

凛にはそのように見えた。

 

太陽のような眩い黄金の光を中心に

計九本もの聖剣が浮遊している。

そしてその下に三人の少女

イリヤ、美遊、シロエがいる。

 

 

「…不思議」

 

「うん…。今ならなんでもできる気がする」

 

「なんでもできるよ。三人なら」

 

「「「進もう!三人で!!」」」

 

 

そして、三人が聖剣を手に取り

上段へと構えるのと同時に

 

 

「■■■■■■■■■■───ッ!!!」

 

 

バーサーカーが咆哮を上げ三人に向かって真正面から襲いかかろうとする。

 

 

(バーサーカー……)

 

 

そんなバーサーカーの最後になるであろう姿を

目に焼きつけるように、まっすぐに見つめながら

歯を強く食いしばるシロエ

そして

三人は聖剣を振り下ろす。

それと同時に振り下ろされた聖剣だけでなく

周囲に浮かぶ聖剣も含め、計九本もの聖剣から黄金色の光の奔流が放たれる。

 

 

「■■■■■───ッ!」

 

「「「はあああああぁぁぁぁぁっ!!!」」」

 

 

バーサーカーはその光に抗おうとするも

三人の少女の気合いと共に光に呑み込まれる。

九本の聖剣から放たれた光の奔流は

バーサーカーの残りの蘇生回数を根こそぎ奪い去る。

そして光が晴れるとそこには

 

『Berserker』のクラスカードと

感極まり美遊とシロエに笑顔で抱きつくイリヤの姿だった。

 

そうしてイリヤ達の夜は終わりを迎えた。

 

 

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