プリヤに元白熊少女を放り込んでみた   作:『ユタカ』

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無印エピローグ

 

 

「ハッ…!」

 

 

イリヤが自身の寝ていたベッドから勢いよく飛び起きる。

 

 

「…」

 

 

窓から聞こえてくる小鳥の鳴き声以外何も聞こえない。

静かな朝である。

 

 

「なんか…、いろいろとすごーく恥ずかしいことがあった気がしたけど…」

 

 

昨夜のバーサーカー戦を思い出すイリヤ

いろいろと恥ずかしいことを友達と妹に言い

その後三人の連携技で敵を打倒した記憶

そしてそれを思い出した結果

 

 

「ふぅ…、夢か…」

 

「おはようございますイリヤさん!

昨晩はすごい友情パワーと姉妹パワーでしたね!」

 

 

夢、ということにしたかったイリヤであったが

ルビーにその選択肢を一瞬で潰される。

夢ではなく現実であったことに

イリヤは恥ずかしさで枕に顔を埋める。

 

 

「あら?どうしたんですかイリヤさん。

昨晩はあんなにもリリカルでマジカルだったのに!」

 

 

そんなイリヤの心情を露知らず

いや、おそらく知った上でルビーはさらに畳み掛ける。

 

 

「ちょっと…、気持ちの整理があるからそっとしておいて…」

 

 

イリヤは頬を羞恥に染めながら

ルビーにこれ以上追撃をしないように言う。

 

 

「そんな時間ないですよー。

とっとと起きてください!

あ、ほら目覚まし鳴りましたよー」

 

 

ルビーの言うとおり

イリヤの枕元にある目覚ましが

けたたましい音を鳴り響かせる。

イリヤは仕方なしにノロノロと目覚ましを止める。

 

 

「…イリヤさーん。目覚ましを止めても起きなきゃ何の意味もないですよー」

 

 

目覚ましを止めたまではいいが

なかなかベッドから這い出て来ないイリヤ

と、そこに

 

 

「お姉ちゃん。朝だよ、早く起きて」

 

 

なかなか降りてこないイリヤを呼びに

シロエが部屋に入ってくる。

しかし

 

 

「気持ちの…整理がつく………までちょっと待……………ぐう」

 

「いや思いっきり二度寝してるよね。っていうか気持ちの整理?」

 

「あー、それはですねー」

 

 

ルビーがシロエに

イリヤが昨夜の戦いにおける自分の言動を恥ずかしがっていると説明

 

 

「…ふーん」

 

(なんだかシロさんがすごい悪い顔をしていますが、面白そうなので黙っていましょう)

 

 

シロエはニヤァと小悪魔の様な笑みを浮かべながら

寝ているイリヤの耳元に口を近づける。

そして

 

 

「わたし──バカだった。

何の覚悟もないまま、ただ言われるままに戦ってた」

 

「!?」

 

 

寝ているはずのイリヤの身体がビクリと震える。

 

 

「その『ウソみたいな力』がシロだけじゃなくて自分にもあるってわかって……

急に…全部が怖くなって…!」

 

「ちょ…!?」

 

 

尚も続けるシロエの言葉に

イリヤがガバッと再び飛び起きる。

 

 

「でも…本当にバカだったのは

逃げ出したことだ!」

 

「起きた!起きたからやめ…」

 

 

しかしシロエは止まらない。

同じ声であることを生かし

同じ抑揚、同じ感情を込めて

無駄に完璧に昨夜と同じ再現を行う。

 

 

「"友達"と"妹"を見捨てたままじゃ

前へは進めないから…ッ!」

 

「やめいっ!!!」

 

 

止まらない妹に

顔を真っ赤にしたイリヤがベッドから飛び出し

妹の口を塞ぐべく襲いかかる。

シロエはその姉の攻撃を受け止め

がっちりと姉妹は互いの両手を組む形となる。

 

 

「あっ。起きたの、お姉ちゃん?気づかなかったなー(棒)」

 

「嘘だよね!?思いっきり棒読みだし!!」

 

「ソンナコトナイヨー」

 

「こっちを見て言いなさい!

大体なんで一言一句全部覚えているのよ!?」

 

「これでも学力は高いからね。記憶力だっていいに決まってるじゃない(マスターの用意した身体のお陰だけど)」

 

「記憶力の無駄遣い!?今すぐ忘れなさい!!」

 

「えー、やだよ。あんなに嬉しいこと言ってくれたのに。

"友達"と"妹"を見捨てたままじゃ…」

 

「や・め・な・さ・い!!!」

 

 

妹の記憶を消す(物理で)ためにイリヤが組んだ両手に更に力を加えていく。

朝から元気な姉妹である。

尚騒ぎを聞きつけたセラから喧嘩両成敗され、騒ぎは鎮火した。

 

 

そんなこんなでいろいろ恥ずかしかった夜は終わり

またいつも通りの朝が来た。

シロもいつも通りの元気な姿。(元気過ぎて困るけど)

 

 

「もー。なんで朝からこんなに疲れなきゃいけないのよ」

 

「お姉ちゃんが二度寝するのが悪いんでしょー」

 

「だからってあの起こし方はないでしょ」

 

 

軽く口喧嘩をしながら二人は一階へと降りる。

 

 

気持ちの整理なんてお構いなしに朝はやってくるし

日常は続いていくみたい。

 

 

「ほら、二人共席について」

 

「「はーい」」

 

 

士郎に促されイリヤとシロエは食卓につく。

 

 

いつも通りの朝

いつも通りの食卓

でも───

 

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

 

五人が手を合わせ挨拶をする。

アイリは昨夜のうちに家を発ったため

この場にはいない。

そして各々が朝食を摂り始める。

 

 

うん

今日はいつもより

心が軽い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

………

 

 

時間は進み

朝、学校の教室

 

 

「──なんていうか。

もうあんたたちの仲がどうなってるのかわからんのだけども…」

 

 

雀花が机に腰掛け

イリヤ、美遊、シロエの三人を訝し気に見る。

その理由は

 

 

「昨日までケンカしてなかったっけ?」

 

 

美遊がイリヤの右腕とシロエの左腕に

ピットリとくっついているからである。

また、シロエも昔の雰囲気から今の元通りの雰囲気に戻っている。

昨日とはうって変わっての姿に困惑しているのである。

 

 

「やー…。気のせいじゃない?

きっとすべてが」

 

「それがお姉ちゃんがねー、わたしとミユに」

 

「シーロー。少し、黙ろうか?」

 

 

美遊がくっついているため暴れはしなかったが

こめかみに青筋を浮かべながら笑顔で

イリヤはシロエに威圧する。

これ以上はヤバそうと判断したシロエは口を閉じる。

 

 

「一夜にしてなんというデレっぷり…!

これは…」

 

「イリ子とシロキチのやろー。俺たちの知らないところで美遊ルート攻略しやがったのか!」

 

 

たった一夜で気難しいと思われた美遊と仲良くなってみせたため

クラスの友達…特に龍子が

 

俺にもさわらせろ!!

 

と迫ろうとするのを美々は宥めながら

 

 

「ま…まぁ仲がいいのはいいことじゃない。

仲直りしたんだよね?」

 

「う、うん…」

 

 

仲直りっていうか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

 

時間は巻き戻り昨夜

 

 

「アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、セイバー、アサシン…そしてバーサーカー」

 

 

戦闘が終わり鏡面界から元の世界へと戻ってきた一同は

ビルの屋上にて集めたクラスカードを並べて確認していた。

 

 

「すべてのカードを回収完了。

これで…コンプリートよ」

 

 

五人全員が疲れたと言わんばかりに溜め息をつく。

 

 

「ちょっとちょっとみなさん。

せっかく勝ったというのになんですかこのだらけムードは。

しょうがないですね。ここは一発ドでかい祝砲を…」

 

「そっ、それはもういいから…」

 

 

キャスター戦後の恥ずかしい祝砲を思い出し

イリヤがルビーを止める。

 

 

「イリヤ、美遊、シロ」

 

 

優しげな表情を浮かべた凛が

子供達三人の名前を呼ぶ。

 

 

「…勝手に巻き込んでおいてなんだけど

あなたたちがいてくれてよかった。

わたしたちだけじゃたぶん勝てなかったと思う。

最後まで戦ってくれて…ありがとう」

 

 

凛の素直なお礼の言葉を

三人は気恥ずかしげに受け取る。

 

 

「それとシロ。

正直気にはなるけど…

約束通りあなたのことは詮索も報告もしないようにする。

これでも交わした契約は守るから安心してくれていい」

 

「…うん」

 

 

『イリヤ』の記憶とそして今回の戦いにより

凛がどういった人物かシロエは理解していたため

特に異論は挟まないでいた。

 

 

「それじゃ、このカードはわたしがロンドンに…。ん?」

 

 

凛がカードを持って立ち上がろうとした時

凛の手からカードが持ち去られる。

 

 

「ホーーーッホッホッホ!!

最後の最後に油断しましたわね!

ご安心なさい!

シロエのことは言いませんし、カードもすべて(ワタクシ)が大師父の元へ届けて差し上げますわーっ!」

 

「んなああああああッ!?」

 

 

いつの間に来たのか

ヘリコプターから降りている梯子を登るルヴィア。

そしてルヴィアの手には凛からくすねたカードが握られている。

 

 

「ちょ、ちょっとあんた手柄独り占めする気かこのー!」

 

「ホーーッホッホッホ!!」

 

 

そしてその様子を口を半開きにして見送る子供達

 

 

「最後まで仲の良い」

 

「ガンドォ!!」

 

「痛ぁ!?」

 

 

ルヴィアを追いかけながら凛の人差し指から放たれた魔術が見事シロエの額に命中

シロエは額を抑えて蹲る。

 

逃走したルヴィアさんとそれを追いかけるリンさんを見送りながら

呟いたシロの言葉はヘリコプターの轟音にも関わらず

リンさんの耳に届いたみたい

すっごい地獄耳

…そのまま朝まで二人は追いかけっこをしていたそーな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

それで今朝になったら突然この状態なんだよね…

何がなんだか…

や、別にいいけど…

 

イリヤが回想している間にも

美遊はイリヤとシロエに変わらずくっついている。

 

 

「まーいいや!

ミユキチもシロキチも丸くなったってことで

今後とも仲よくしていこーぜっ!」

 

 

龍子が笑い美遊とシロエの頭をベシベシと叩きながら言う。

しかし

 

 

「は?

どうしてあなたと仲良くしなくちゃいけないの?」

 

 

と、美遊は龍子の手を払う。

ついでにシロエも龍子の手を払う。

 

 

「わたしの友達はイリヤとシロだけ。

あなたたちには関係ないでしょう。

もうイリヤとシロには近づかないで」

 

 

周りがざわつく中、美遊が言い放つ。

その言葉に龍子は

 

 

「う…、うおおアアアアァァーッ!!」

 

「な…泣かせたぞーッ!!」

 

「ちょ、ちょっと、ミユーッ!?シローッ!?」

 

「?」

 

「い、いや…わたしは痛かったから払っただけなんだけど…」

 

「タイミングを考えて!?」

 

「なにを怒ってるの…?

わたしの友達は生涯イリヤとシロだけ。

二人もいるのだから他の人なんてどうでもいいでしょ?」

 

「何それ重ッ!?

ていうか友達の解釈ヘンじゃない!?」

 

 

わっ…わからない…っ!

イヤ結構前からそうだったけど

この子が何を考えているのかわからない…っ!!

 

とイリヤが頭を抱えていると

 

 

「あ、それがありならわたしもそっちの方がいいかも…」

 

「いや、よくないから!?

友達作りが苦手だからって横着しないで!?」

 

 

妹が美遊に感化されそうになるのを防いだり

また、美遊とシロエの言葉を聞いたせいか

 

 

「オギャアアアアァァァ!!」

 

「いかん!タッツンがマジ泣きだ!」

 

「ちょっとイリヤなんとかしれー!」

 

「ま、またわたしー!?」

 

 

マジ泣きした龍子をなんとかするために呼ばれたりと

過労死するのではなかろうか?

と某王様の如くイリヤの負担が増えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

一方その頃

 

 

「はい…?

どういう…意味ですか。大師父」

 

 

凛が携帯を片手に大師父に連絡を取っていた。

その顔色は青ざめている。

 

 

「言ったままの意味じゃ。

カード回収はご苦労じゃった。

これで冬木市の地脈も安定しよう。

約束通りお前たちを弟子に迎えるのはやぶさかではないが…」

 

 

ここで大師父は言葉を切る。

その区切りに凛は嫌な予感が頭に過る。

そして

 

 

「魔術を学ぶ前にお前らには一般常識が足りておらん」

 

「なっ…」

 

 

その嫌な予感は的中する。

 

 

「幸い日本は『和』を重んじる国じゃ。

留学期間は1年。

喧嘩で講堂をブチ壊すような性格を直してこい。

弟子にするのは…それからじゃな」

 

 

その言葉を最後に通話は切れる。

 

 

「……………………………………………………」

 

 

しばらく無言の凛

そして

 

バキッ

 

という音と共に手に持つ携帯を握り潰す。

 

 

「ふッッッざけんなーーーーーッッ!!!」

 

 

そう天に向かって叫ぶ凛

その背後には

凛が叩き落としたと思われる炎上したヘリコプターと

同じく凛がノックアウトしたルヴィアが顔を地面へと埋めていた。

 

 

なんだかんだで全員日本在留だそうで…

どうやらこのややこしくて騒がしい関係は

まだまだ続いていくようです。

 

 

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