プリヤに元白熊少女を放り込んでみた   作:『ユタカ』

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明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。


2wei!
前触れ


 

 

「これで11!

いよいよ後がなくなったな、ヘラクレス!!」

 

 

およそ戦闘用とは思えない黒を基調とした服を身に纏った金髪赤眼の男が口元を吊り上げる。

 

 

「■■■■■■■■■──ッ!!!」

 

 

11回目の蘇生を終えたわたしのサーヴァントである大男

バーサーカーが咆哮を上げながら立ち上がり

斧剣を片手に金髪の男に襲いかかる。

 

バーサーカーは誰にも負けない。

世界で一番強いんだから。

 

例え戦況が絶望的であっても

わたしはバーサーカーを信じる。

しかし

バーサーカーに降り注ぐ無数の武具

それらがバーサーカーの背中に突き刺さり

バーサーカーは土煙を上げながらうつ伏せに倒れ伏す。

 

 

「早々に主を見捨てておけば勝ち目はあったものを…。

所詮は犬畜生。戦うだけの者であったか。

同じ半神として期待していたが…。

よもやそこまで阿呆とはな」

 

 

金髪の男は悠然とバーサーカーへと歩み寄りながら

わたしのバーサーカーを罵倒する。

土煙が晴れると斧剣を杖にし片膝をつくバーサーカーの姿

 

…まだ、まだよ!

 

 

「■■■■■──ッ!」

 

 

金髪の男が近づいた瞬間

バーサーカーが咆哮を上げ立ち上がり

慢心している金髪の男に右手の斧剣を上から振り下ろそうとする。

完全に虚をついた一撃

しかし

金髪の男は変わらずつまらなそうな冷たい目でバーサーカーを見ている。

次の瞬間

金色の鎖がバーサーカーを襲う。

バーサーカーはそれを上へ跳び回避する。

 

 

「バーサーカー!?」

 

 

しかし金色の鎖はそのままバーサーカーを追う。

空中にいるバーサーカーは身動きが取れない。

まずは斧剣を持つ右腕、次に首にと鎖が巻き付き

バーサーカーは斧剣を手離してしまう。

そしてバーサーカーは地面へと叩き落とされる。

落とされた後も鎖は止まらない。

土煙が晴れる頃には

バーサーカーの全身に鎖は巻き付き締め上げる。

バーサーカーは完全に身動きを封じられる。

 

 

「戻りなさい!バーサーカー!」

 

 

わたしは令呪を使用して鎖からバーサーカーを逃がそうとする。

全身に赤い紋様、令呪が浮かぶ。

しかし

 

 

「なんで!?わたしの中に帰れって言ったのに、どうして…!?」

 

「無駄だ人形」

 

 

動揺するわたしを冷笑しながら金髪の男が理由を語る。

 

 

「天の鎖。

この鎖に繋がれた者は神であろうと逃れることは出来ん。

いや、この男の様に神性が高い程餌食となる。

令呪による空間転移など、この(オレ)が許すものか」

 

 

そして金髪の男が右手を軽く上げる。

すると頭上の波紋から金色の槍が現れ打ち出される。

拘束されているバーサーカーに避ける術はない。

槍がバーサーカーの胸を貫く。

 

 

「あっ…!?…やだ。やだよ…。バーサーカー」

 

 

わたしの悲痛な声に応えることなく

バーサーカーの目から光が消え

その巨体から力が完全に失われる。

 

 

「あ、あぁぁ…」

 

 

わたしの目はバーサーカーに釘付けになっていた。

だから

金髪の男が剣を片手に近づいて来ていることに気づかなかった。

気づいた時には

 

ザシュッ

 

そんな軽い音共に両目に激痛が走り

辺りは真っ暗になる。

両目を切られた。

 

 

「いっ、ああぁぁ…。

バーサーカー…、バーサーカー…、バーサーカー…」

 

 

手探りで必死にバーサーカーを探す。

そこに

 

 

「ぐうっ…」

 

 

胸に鋭い痛み

それと同時にわたしは床へ倒れこむ。

 

 

「…あれ?…痛い、…痛いよ」

 

 

私は床を這いずり手探りで探す。

 

 

「バーサーカー…。どこ…?

わかんない…。真っ暗で何もわかんないよ」

 

 

そして指先に硬い感触

バーサーカーだ。

 

 

「あ…うん。…よかった。

ずっとそこにいてね。バーサーカー…」

 

 

もう痛みも、感覚も、音も、何もない。

ただただ真っ暗で、冷たい。

だけど

暗くても、怖くないよ。

バーサーカーは強いんだもん。

こうしてくれていればわたしは安心できるから

だって、いつも守ってくれたから

怖かったけど…本当に優しかった。

おっきな身体はお父さんみたいで

本当は一度くらい抱き上げてほしかった。

…うん

 

 

「ちょっと…寒いね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

………

 

 

「っ!?」

 

 

自室のベッドにて

銀髪青眼の少女、シロエ・フォン・アインツベルンが飛び起きる。

 

 

「はあ…、はあ…」

 

 

シロエは荒い息をつく。

無理もない。

夢というにはあまりにもリアルで

それでいて絶望的な死の瞬間であったのだから

 

 

「今のは、わたしの中に…ある『イリヤ』の…」

 

 

シロエは使い魔として製造された際、シトナイから『イリヤ』の一部を混ぜ込まれている。

そしてその『イリヤ』の最期が今の絶望的な光景であった。

 

 

「でもなんで今になって…。

この間、バーサーカーと戦ったから…?」

 

 

それとも…

 

 

「…汗、かいた。…着替えよ」

 

 

自身がすごい汗をかいていることに気づいたシロエは

着替えるべくベッドから出る。

その時

 

 

「ホびゃあああーーーッ!!!?」

 

 

凄まじい奇声が隣の部屋から響き

シロエの身体はびくっと跳ね上がりかつ汗で滑り

床へと顔面から突っ込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

時は少し巻き戻り

シロエの隣の部屋

シロエと瓜二つの銀髪赤眼の少女

姉であるイリヤスフィール・フォン・アインツベルンが微睡んでいる。

 

 

「………。

……リヤ。

───イリヤ。

起きろよ。学校遅刻するぞ」

 

 

そんなイリヤスフィール…イリヤを起こそうとする優しい声がイリヤの耳に届く。

この優しい声は…

 

 

「ん───…。お兄ちゃん…?」

 

 

起こしに来てくれた兄に対し

折角だからと少し悪戯をしようとイリヤに魔が差す。

 

 

「えへへー…」

 

 

イリヤは士郎の首へと両手を回し

自身の顔へと近づける。

 

 

「おいおい寝ぼけてるのか?」

 

「おはようの……ちゅー……」

 

 

そして

 

 

ちゅっ

 

 

唇と唇が触れ合う。

 

 

「~~~ッ!!」

 

「ん………?」

 

 

そこでイリヤの意識は覚醒する。

そこにいたのは

 

 

「あ……う…あ……。

イ…、イリ…」

 

 

汗をかきながら顔を真っ赤にした

涙目になっている

友達である美遊・エーデルフェルトの姿

 

 

「ホびゃあああーーーッ!!!?」

 

 

これがシロエの聞いた奇声の正体である。

 

 

「ごごごごごめんミユ!

お兄ちゃんと間違え…っていや違くて!

そーじゃなくて!

夢で!ドリームで!」

 

「お、落ち着いてイリヤ!

大丈夫、大丈夫だから!」

 

 

自身が寝ぼけてキスした相手が兄はなく友達であったと知りテンパるイリヤと

それを落ち着かせようとする美遊

と、そこに

 

 

「へぶっ!?冷たっ!?」

 

 

季節外れの雪玉がイリヤの顔面に直撃

飛んできた方向を見てみると

 

 

「…お姉ちゃん。朝からうっさい」

 

 

何故か鼻を赤くした不機嫌そうなシロが部屋のドアの前にいた。

 

言うまでもなく鼻が赤いのは床へ突っ込んだ時にぶったためであり

不機嫌なのは突っ込んだ原因となったお姉ちゃんの奇声のせいである。

決してお姉ちゃんと違い夢見が最悪だったから八つ当たりしているわけでは断じてない。

 

しかしそんなシロエの心情を知るわけがないイリヤは

 

 

「冷たいし、痛いし…もうっ!!

何すんのよシロ!!」

 

「何すんのよはこっちの台詞!!」

 

 

雪玉を投げつけたシロエに襲いかかる。

それに対しシロエも応戦する。

取っ組み合いになる二人

そして

イリヤの頬を両側からつねるシロエと

シロエのこめかみを同じく両側から拳で挟むイリヤ

 

 

「お姉ちゃん。謝るなら今のうちだよ?」

 

「はんへわはひは!?(なんでわたしが!?)はやまるほはほっちれひょ!?(謝るのはそっちでしょ!?)」

 

「この柔らかいほっぺをお餅のように伸ばして真っ赤にしてあげる!」

 

「ほのへひのひいあはまをひめあへへははにひへやう!(この出来の良い頭を締め上げて馬鹿にしてやる!)」

 

「ふ、二人共落ち着いて…」

 

 

姉妹は二人揃って痛みで涙目になりながらも強がりとやせ我慢で力をどんどん上げていく。

そんな友達二人の様子を見ながらアワアワしている美遊

シロエの夢見は最悪であったが今日も平和である。

 

 

……

………

 

 

「はぁはぁ…。ご、ごめんねミユ。起きた時といい、さっきの喧嘩も…」

 

「ぜぇぜぇ…。ミ、ミユごめん。ついヒートアップしちゃって…」

 

 

そろそろ痛みも限界に達し

美遊の必死の呼び掛けの甲斐もあって

なんとか喧嘩をやめた二人

イリヤの頬は赤くなり、シロエはこめかみを抑えている。

そしていつもはセラに止めてもらっている喧嘩を

美遊に止めてもらったことで二人揃って謝罪している。

イリヤに至っては起きた時のアクシデントも含めて頭が上がらない。

 

 

「ううん。喧嘩も…キ、キスもいきなりでびっくりしただけ……。でも」

 

 

美遊がキスした時のことを思い出し顔を赤らめ唇を左手で触れながら続ける。

 

 

「イリヤが求めるならできる限り努力するから次する時はちゃんと…」

 

「ストーーップ!!違うから!その方向性は違うからーッ!!」

 

「ルビー、ルビー。これがルビーが言ってた百合とかレズっていうやつ?」

 

「おお、さすがシロさん。物覚えが早いですねー」

 

「そこぉ!!わたしの妹に変なこと教えないで!?」

 

 

友達が変な方向に行きそうになるのを防いだり

妹が順調に汚れていっている事実に嘆くイリヤであった。

 

 

……

………

 

 

「「いってきまーす!」」

 

 

家を元気よく飛び出す三人

その理由は

 

 

「はー。うっかりしてた今日ってわたしとミユ、日直だったんだよね」

 

「うん。だから一緒に登校しようって約束して…」

 

 

そのために寝ているイリヤを起こすために美遊は家に上がったのだ。

ちなみにシロエも走っているのはこのままでは普通に遅刻してしまいそうだからである。

 

 

「遅れたらシロの所為だからね!」

 

「はあ!?なんでわたしの所為に」

 

「シロが部屋に入ってくるなり雪玉なんか投げてくるから喧嘩になったんでしょ!

っていうかどこから出したのよ!?あの雪玉!」

 

「あれは簡易的な魔術で空気中の水蒸気を…、ってそうじゃなくて!元を正せばお姉ちゃんがミユに寝ぼけてキ」

 

「わーッ!?こ、こんな住宅地の往来で何を叫ぼうとしてるの!?」

 

「二人共!喧嘩はやめて、今は急いで!」

 

「「はい。ごめんなさい」」

 

 

またしても喧嘩になりそうな雰囲気を察した美遊は二人を諌め走るように促す。

しかし

 

 

「…まずい。このままじゃ間に合わないね」

 

「うーん…よーし。ルビー!」

 

「はいはーい。いっちょいきますかー?」

 

「仕方がありません。美遊様、私達も……」

 

「周りに人は…いない。今のうちだね」

 

「……え?あの、まさか…?」

 

 

カレイドステッキのルビーとサファイアが

イリヤの帽子と美遊のカバンの中から飛び出し

シロエは周りに人がいないとはいえこんな住宅地で太陽が上りきっている朝からまさかアレになる気では…?

とおっかなびっくり見ている。

そんなシロエを尻目に

 

 

「「コンパクトフルオープン!!

鏡界回廊最大展開!!」」

 

 

二本のステッキの言葉と共に

イリヤと美遊の二人は光に包まれる。

 

 

「「Die spiegelform wind fertig zum!(鏡像転送準備完了)」」

 

 

光に包まれた二人の服装が

小学校の制服から変わっていく。

 

 

「「Offnunug des Kaleidskopsgatter!(万華鏡回路開放)」」

 

「走っても間に合わないなら──」

 

 

そして

 

 

「空から行こう!」

 

 

魔法少女プリズマイリヤ&ミユ

二期バージョン 推参!

 

 

シロエの目の前には

ピンクのフリフリの魔法少女服を身に纏ったイリヤと

青のレオタードの様な魔法少女服を身に纏った美遊

その二人が空へと浮いている。

尚二人共に魔法少女の衣装が二期(?)ということでカード集めしていた時と少し変わっている。

 

………本当にやった。

最初の頃は夜でも誰かに見られるんじゃないかって

お姉ちゃんびくびくしてたのに…。

もはや羞恥心とかなくなっているんじゃ…?

それはいいことなのだろうか…?

いやでも…。

っていうか魔術の秘匿的には大丈夫なの、これ?

え?わたしの雪玉?

あれは自宅だったからノーカン

 

そうシロエが悩んでいると

 

 

「何やってるの?ほら、シロも早く」

 

「え"」

 

 

わたしも変身しろと

どうしよう…?

確かにこのままじゃ遅刻は確定だけど

っていうかわたしのは別に変身というわけじゃ

本気で魔術を行使したり戦おうとしたらあの服になるだけで

魔法少女じゃないし

あ、でも他者から見たらコスプレで大差ない?

いやいや!魔法少女と民族衣装じゃ全然違うし!

話が逸れた。

どちらにしても飛行なんて魔術を使うにはあの服になる必要があるわけで

 

シロエが頭の中で凄まじい葛藤をしていると

 

 

「…シロ、大丈夫。今は誰も見てない」

 

「早くしないと置いてっちゃうよー?」

 

 

……………。

もーどうにでもなーれ☆

 

そしてシロエは考えるのをやめた。

 

シロエの服装が光と共に変わる。

カレイドステッキの様な複雑な文言はない。

着ていた小学校の制服は消え

白を基調とした民族衣装

その上からマントを身に纏い、帽子を被る。

そして腰には剣を差す。

シトナイの第三再臨の姿である。

 

そして三人はさらに上空へと翔け上がる。

 

 

「ところで二期ってなに?」

 

「まぁまぁお気になさらずー」

 

「っていうか服装変わってるよね二人共」

 

「むしろ二期なのに変わってないシロさんがおかしいかと」

 

「だから二期ってなに……」

 

 

二期とは一体…?

ルビーの発言の意味がわからない三人

 

それはそれとして

 

 

「…お姉ちゃん、変わったよね」

 

「あはは、それを言うならミユの服も変わってるよ」

 

「いやそうじゃなくて」

 

「…うん。わたしにもなんとなくわかる。

積極的になったって言うのかな」

 

「え。そ、そう…かな?」

 

 

変わったって言うならミユもかなり変わったけどね。

最初の頃の他者を拒絶していた雰囲気がかなり柔らかくなってる。

でもそれは当たり前の話だよね。

二人は現代(いま)を生きる人間なのだから

成長し、変わっていく。

………わたしとは、違う。

 

わたしは使い魔。

使い魔とは魔術を行使する者が自身の代わりを勤めさせるために用意する存在。

それは人形やゴーレムなどで作られたり

または契約により主従関係になることで得ることができる。

いずれにしても主人の命令には絶対服従であり

そして有事の際には真っ先に主人を守るために切り捨てられるべき存在

基本的には使い潰し。

消えてもすぐに代わりが利く。

それが使い魔というもの。

自我や自己はある。

でも()()()()()とは言えない。

 

わたしはそれに不満はない。

ライダー戦後にわたしが言ったことは本心だし

事実そう信じているからこそ、わたしは身を張ってお姉ちゃんやミユを守る行動が取れた。

それに使い魔の都合でマスターを危険にさらすことはあってはならないことだと思ってる。

それに、なにより

マスターの命令には嫌々ではなくわたしの意思で従っている。

だから不満なんてない。

ずっと、ずっとその考えの下マスターと共に戦ってきた。

それなのに…。

なんでだろう。そう考えると最近

少し、心がざわつく。

 

 

「まー以前のイリヤさんは振り回されっぱなしでしたしねー。

主体性がないというか、総受けというかー」

 

「ちょっ…!振り回してる本人が言わないでよねー!」

 

「イリヤ様、予鈴まであと370秒です。

お急ぎになられた方が…」

 

「わ、わかってるよもー!」

 

「…やっぱりあまり変わってないかも…」

 

「……………あはは。お姉ちゃんはやっぱり振り回されてる方が似合ってるよねー」

 

「何それー!?」

 

 

三人は騒がしく空から一直線に学校へと向かう。

途中シロエの顔が曇ったことに二人は気づかないまま

 

 




新年早々少し暗い話になってしまい申し訳ありません。

使い魔が生きていると言えるか否か。
色々な意見があるかと思いますが
シロエは生きていないと考えています。
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