プリヤに元白熊少女を放り込んでみた   作:『ユタカ』

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分裂

 

 

「海行こうぜ。うみーー!!」

 

 

三人が学校へと遅刻せずにたどり着き

イリヤと美遊が朝の日直の仕事を大急ぎで終わらせ席へと戻ると

クラスの友達である嶽間沢龍子が持ち前の元気でそう叫んでいた。

 

 

「ん?何の話?」

 

 

当然、席に戻ったばかりのイリヤは

何の話かわからずに聞く。

 

 

「夏休みに何やるかだって。気が早すぎだよね」

 

「まだ6月だってのにこいつテンション上がっちゃってさー」

 

 

イリヤの疑問にシロエと

同じく友達である栗原雀花が答える。

 

 

「海?海に行って何をするの?」

 

「何って泳ぐに決まってんだろが!

あ、スク水は禁止な!各自最高にエロい水着持参で!

うっひゃあああ!!」

 

「おちつけ」

 

「おぐほ」

 

 

浮き輪を身につけ荒ぶる龍子を

三人目の友達の森山那奈亀が右のボディブローで大人しくさせる。

そんな中、美遊の質問に疑問を持ったイリヤが

 

 

「ミユ…。もしかして海行ったことないとか?」

 

 

と問う。

 

 

「………」

 

 

美遊は無言のままコクリと頷く。

 

 

「じゃあ一緒に行こうよ美遊さん!」

 

「あんたのことだから泳ぎも速いんだろ?

せっかく海が近いんだし行かなきゃ損だよ!」

 

「え、あ」

 

 

普段からなかなか美遊に接する機会がなかったからか

四人目の友達の桂美々と雀花がこの機会に親密になろうと美遊にずいっと詰め寄る。

 

 

「イッ…イリヤとシロが行くなら…」

 

「うん!みんなで行こうね」

 

「…わたしスク水しか持ってないんだけど。

スク水じゃダメ?」

 

「なぬ!?ダメに決まってんだるぉ!!」

 

「シロちゃん水着ないの?」

 

「シロってばそういうの気にしなくて、毎回スク水なんだよね。

普段着ている服だって効率がどうとか言って二着をずっと着回してるし。

ずぼらというかずれてるというか…」

 

「まじか…。そういえばシロって美的感覚が壊滅的だったっけ」

 

「酷くない?」

 

「まあスク水はスク水で一部の人には需要があるけどな」

 

「需要…?」

 

「シロ、今のは聞かなかったことにしなさい」

 

「え、でも」

 

「いいね?」

 

「アッハイ」

 

 

雀花の言葉の意味がわからず

聞き返そうとしたシロエであったが

イリヤの妙な圧力に屈し頷く。

 

小学生らしい(?)平和な会話を繰り広げながらイリヤは思う。

 

変わったって言うならミユの方がずいぶん変わったよね。

まだちょっとぎこちないけど

初めの頃は会話すらまともにできなかったんだし

…そういえば

あれからちょうど一ヶ月か──…

 

そして一ヶ月前に自身に起きた濃密な出来事を振り返る。

 

あの日

空からヘンテコステッキのルビーにのせられて

魔法少女(笑)になっちゃったんだよねー。

でもそのあとステッキ本来の持ち主のリンさんが現われて…

成り行きで主従契約

カード回収の任務を代行することになって…

最初の戦いの最中

一緒に来ていた妹のシロにわたしの知らない一面があることがわかって

そこで同じく魔法少女になったらしいミユと出会った。

それからは……結構ハードだったなぁ。

カードを回収するには黒い英霊(?)を倒さなきゃいけなくて…

全員倒せたのは今考えても本当に奇跡だったと思う。

いろいろと危ない場面も多かったし…

危ない───

 

そこでイリヤはセイバーと戦った際に自身に起きた力の放出について思いを馳せる。

 

──あれは結局

なんだったのかなぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……

………

 

 

授業が終わり放課後

イリヤ、美遊、シロエは

クラスと友達である龍子、那奈亀、雀花、美々と一緒に下校していた。

 

 

「あ、そうそう朝話した海のことだけど」

 

「なに?」

 

「ミユは水着持ってる?」

 

「シロと同じで学校指定のなら…」

 

「それじゃダメだってばー」

 

「え、結局ダメなの?よくない?スク水で」

 

「ダーメ。海でスク水とか浮くから」

 

「………水着だけに?」

 

 

…………………………。

 

シロエの発言により場の温度が二、三度下がった気がした。

風が冷たい。

さすがはシロエ。

寒いことに関してはエキスパートである。

 

 

「…ごめん。わたしが悪かった」

 

「あー、うん。話を戻すと

街寄って見ていこうよ。

今日買わなくてもどんなのがあるか見てみたいし」

 

 

場の空気に耐えきれず謝るシロエ

そんな妹が作ってしまった空気を元に戻すべく

イリヤが話を続ける。

 

 

「ミユならきっとかっこいいのが、シロならかわいいのが…」

 

 

その時

凄まじいブレーキ音と共に

黒塗りのリムジンが子供達の目の前に急停車する。

ドアが開かれるや否や車内から伸びてくる三本の腕

その三本の腕がイリヤ、美遊、シロエの三人を掴む。

 

 

「へ」

 

「あっ」

 

「えっ」

 

 

そしてそのまま車内へと引きずり込む。

閉まるドア

 

 

「ちょっ…」

 

 

そしてそのままリムジンは去って行った。

呆気に取られたまま残される美々、雀花、龍子、那奈亀の四人

 

 

「……………。ゆっ…」

 

 

そして漸く思考を取り戻す。

 

 

「誘拐だーーーッ!!?

おまわりさーん!!」

 

 

慌てて涙目で叫ぶ龍子と

防犯用のホイッスルを吹く美々

 

 

「いや待て、あのリムジンは確か…」

 

 

那奈亀は冷静に二人は宥める。

それもそのはず

先のリムジンは…

 

 

一方その頃、拐われた(?)三人の方では

 

 

「あ…、リ…リンさん!ルヴィアさん!」

 

 

時計塔の魔術師である

遠坂凛とルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトが車内にはいた。

そう。この車はルヴィアの私物である。

驚く子供達を尻目に凛は話し始める。

 

 

「急で悪いけど…、任務(しごと)よ」

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

時間は巻き戻り

高校の屋上にて

 

 

「───────ええ…。

はい…………え?

地脈の正常化…ですか?」

 

 

凛が携帯にて大師父と連絡を取っている。

隣にはルヴィアがいて電話に耳を傾けている。

しかしその表情は優れず難しい顔をしている。

 

 

「そうじゃ。

地脈を乱しておった原因のカードはお前たちによって回収されたが

あれから既に二週間あまり…。

いまだに回復には至ってはおらんのじゃろう?」

 

「はい…。虚数域への穿孔は閉じたので自然回復するはずですが…」

 

 

凛達も疑問に思っていた。

本来であれば原因となっているカードを回収した時点で

地脈の狂いはなくなり、徐々に流れは元に戻るはずなのである。

しかし時間を置いても全く元に戻る様子はない。

それが意味することは

 

 

「そうならんということは狭窄しているか栓ができたか…。あるいはその両方じゃ」

 

 

そして大師父は状況を改善するべく

新たな任務を二人に言い渡す。

 

 

「龍穴から高圧縮魔力を注入し地脈を拡張しろ」

 

 

しかしそれには大きな問題があった。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください!

そんなの数十人規模で編成する大儀式じゃないですか!

二人でどうしろって…」

 

 

そう。たった二人分の魔力では

仮に体内の全魔力を使い果たしても

まるで足りないのである。

しかし

 

 

「なにを寝ぼけておる。

お前たちにはステッキを貸しておるじゃろう」

 

 

その大師父の言葉に

二人の身体はビクンと震え

顔色が青くなり、冷や汗が流れる。

当然である。

ステッキは二人の手元には既に無く

一般人の、それも

小学生の子供達が所持しているのだから

 

 

「え?えー?

あー…………、ハイ…」

 

「アレにはろくでもない精霊がついとるが

無限の魔力供給が可能な特殊魔術礼装じゃ。

とにかくそれで魔力を地脈にブチ込めばよい。

できるな?」

 

「えっ!?

え…ええー!できますとも!」

 

 

凛の震える返事に

念のためにと大師父は釘を刺す。

 

 

「念を押しておくが……。

ステッキは使い方を誤れば極めて危険な兵器と化す…。

厳重に管理し誰の目にも触れさせぬのが好ましい。

ましてや…。

一般人を巻き込むなど言語道断じゃぞ」

 

 

大師父に釘を刺された二人

これで出来ないとは

ましてや既に巻き込んでしまっているとは口が裂けても言えない。

結果

 

 

「なっ…。

なーーに言ってるんですか大師父ー!!

あああ当たり前じゃないですか!

わかっていますよー!

どーんとお任せくださいあははははー!!」

 

 

口をひきつらせながら笑う凛と

頭痛がすると言わんばかりに頭を抑えるルヴィアであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

そして時間は戻り

イリヤ達は冬木市深山町の外れにある山…円蔵山へと足を踏み入れていた。

子供達三人は任務だと聞いていたため既に魔法少女服と民族衣装に身を包んでいた。

が、実際話を聞いてみればただ魔力を注入するだけであったが

とにかく目指すは山の地下にある大空洞である。

そこに龍穴がある。

 

 

「うーん…、結局のところ」

 

 

凛から任務について聞いたイリヤが若干遠い目をしながら言葉を発す。

 

 

「こーゆー権力関係は変わってないわけね」

 

 

イリヤの言うところの権力関係とは以下の図の通りである。

 

 

      凛

     ↙ ↖

  使役↙   ↖おもちゃ

   ↙     ↖

イリヤ → → → ルビー

      使役

 

 

「…三権分立かな?」

 

「シロ、それは違う。

三権分立は立法、行政、司法の三つで成り立っていて…」

 

 

シロエのボケに美遊が真面目に訂正を行う。

違う。そうじゃない。

と、言い出せずシロエは困った顔をしている。

いつもシロエのボケに突っ込むイリヤはというと

 

 

「三、けん…?」

 

 

まだ授業で習っていない話のため

頭に?マークが浮かんで突っ込めないでいた。

 

 

「イリヤさんも凛さんの言うことなんて聞かなくてもいいんですよー?」

 

ルビー(あんた)が私の言うこと聞けば全部解決するのよ!」

 

「あはは…」

 

 

とりあえずシロエの方は放っておくという結論に達し

ルビーと凛のやり取りに苦笑いを浮かべるイリヤ

 

騒動の元凶がルビーなら…

その騒動を持ち込んだのがリンさんとルヴィアさんなんだよねー…

いつもケンカばかり(シロが言うには仲良しの証拠)だけど実はすごい実力の魔術師

なんだかんだ言って頼りになる二人…

 

と、イリヤが尊敬の眼差しを二人に向けていた時だった。

二人の姿が下へと落ちる。

その理由は

 

 

「「底なし沼だーーー!!!」」

 

「えーーーッ!!?」

 

「なんでこんなところに致死性のトラップがーー!?

沈むっ!しずむーっ!!」

 

「だっ、大丈夫ですかルヴィアさん!」

 

「あだだだだだだ!?

なんで髪を引っ張るんですの美遊ーーッ!!?」

 

(やっぱダメかもこの二人…)

 

 

とりあえず飛んで上から手を掴んで助けよう…。

イリヤがそう考えた時

 

 

「…」

 

(…あれ?)

 

 

何故か神妙な顔して考え込んでいるシロエの姿が目に入る。

 

 

「シロ?どうかした?」

 

「…ううん。なんでも、ない」

 

「?」

 

「イリヤーッ!シローッ!

どっちでもいいからヘルプ!!早く!!」

 

「あっ!はーい!」

 

 

そしてイリヤは凛を

美遊はルヴィアを空から浮遊することで助けに入る。

 

………罠?

罠があるということは人の手が

それも魔術師の手が入ったということ。

大空洞に魔術師が?

あり得ない話ではない。

円蔵山の大空洞は別世界では聖杯戦争において心臓とも呼べる場所

魔力を大量にかつ効率よく使うことができる。

よって魔術師が出入り若しくは

監視しててもおかしくはない。

問題はその魔術師が敵か否か。

リンさんとルヴィアさんが罠にかかっている以上

時計塔とは別の陣営?

いやそう決めつけるのは早計か。

内部抗争という線もあるし。

二人が罠を忘れていた可能性…。

さすがにそれはない…。

ないよねリンさん?信じるよ?

うっかリンしてないよね?

まあ、なんでとか言ってたしそれはないでしょ。

…話が逸れたけどダメね。

肝心の敵かどうかすらもわからない。

そして今この瞬間も近くにいるのかも

…龍穴に魔力を注ぐだけで戦闘はないと思っていたから気を緩めていたけど

警戒しておいた方がいいかもしれない。

 

凛とルヴィアがイリヤと美遊に助けられているのを眺めながら

シロエはそう結論付けた。

尚、この後シロエは凛から助けに入らなかったことに関して怒られるのであった。

 

 

 

……

………

 

 

一同は山間にあった洞窟の中を進み

下へ、下へと降りていく。

そして目的地である大空洞へとたどり着く。

 

 

「うわー…。

すごい大空洞…。

こんなところがあったんだ」

 

「道中危うく死にかけたけどね…」

 

「開始早々最高におマヌケなデッドエンドでしたねー」

 

「うう…。(ワタクシ)の縦ロールがゆるふわカールに……」

 

「愛され系ですね」

 

「すみません…」

 

 

初めて知った場所に感嘆の声を上げるイリヤと

底なし沼にはまりくたびれている凛とルヴィア

ルヴィアに至っては美遊が助ける際に髪を引っ張ってしまったため自慢のロールが伸びてしまい腰へと届いてしまっている。

そんな二人の様子を煽るルビーとサファイア

美遊は申し訳なさそうにルヴィアに謝罪する。

 

そんな中シロエは辺りを見回す。

 

 

(…構造は他の世界の大空洞と変わらない。

それよりも罠を仕掛けた魔術師がいるかと思ったけど…

誰もいない?

やっぱり外に…?)

 

 

シロエは隠れている可能性もあるかと辺りを探す。

が、やはり誰もいない。

 

 

「…シロ?」

 

「あっ!ううん、珍しくてつい。

ごめんお姉ちゃん」

 

 

さっきから妹の様子がおかしいためイリヤが心配そうに声をかける。

 

……とりあえず本当に誰もいないみたいだから、気にしなくてもいい…かな?

 

シロエはそう考えイリヤ達の下に戻る。

 

 

「やれやれ…。

ちゃっちゃと終わらせて帰るわよ」

 

 

シロエが戻ると

凛は肩にかけていたバッグを降ろし

バッグの中から身の丈程の大きさを持つ棒状の礼装を取り出す。

 

 

「わっ」

 

「よい…、しょっと」

 

 

イリヤが驚いた声を上げるのを尻目に

凛は軽い声と共にその礼装を地面へと突き立てる。

そしてその礼装を中心とし魔法陣を描いていく。

 

 

「地礼針設置完了」

 

 

準備完了である。

そして

 

 

「魔力注入開始!

最大出力よ!」

 

 

イリヤと美遊でステッキから地礼針へと魔力を注いでいく。

同時に地礼針に光が宿っていく。

 

 

「充填率20……、40……」

 

「いけるわ…。出力そのまま維持!」

 

(………特に周りに動きなし…。

考えすぎだったかな…?)

 

 

これほどの大儀式を行っていて

罠を仕掛けた魔術師が気づかないはずがない。

それでも動きがないことからシロエはこの近辺には既にいないのでは?と思い始める。

そう考えている最中にも魔力の注入は続く。

 

 

「60……、75……、90……

100……!110……!115……!」

 

 

そして

 

 

「120!!Offnen(開放)!!」

 

 

地礼針に溜められた魔力が龍穴へと一気に開放される。

凄まじい轟音と共に地礼針の光が下へと解き放たれ

魔法陣を光が十字に裂く。

洞窟の外では地面が揺れると同時に木々がさざめく。

しかしそれだけで轟音と光が収まると特に変わらない光景が広がる。

 

 

「………これで終わり?」

 

「ふぅ…。一応はね」

 

「お疲れ。お姉ちゃん、ミユ」

 

「うん。お疲れ」

 

「全然疲れてないけどね」

 

 

呆気なく任務が終わったためイリヤは困惑している。

今回わたし何もしてないな。と思いながらもシロエは二人を労う。

 

 

「効果のほどはまた改めて観測しなきゃいけないけど…」

 

「作業は終了。

早く帰りますわよ。こんな地の底長居するところでは…」

 

 

その時だった。

最初は小さな揺れであった。

しかしその揺れは徐々に大きくなる。

 

 

「…まずい」

 

「え?一体」

 

「───!!これは…!」

 

 

シロエの呟いた言葉にイリヤが反応しようとするも

凛の焦燥の声がそれを押し流す。

 

次の瞬間

地礼針を中心に轟音と共に地面が割れる。

 

 

「ノックバック!?

うそ…。出力は十分だったはずよ!?」

 

「まずい…来ますわ!!」

 

 

そして割れた地面から大量の魔力が噴き出す。

 

 

「逆流………ッ!!」

 

 

噴き出した魔力は天井へと衝突。

結果

天井が崩れ大量のそして巨大な岩が一同へと降り注ぐ。

 

目の前の危機にイリヤの様子が変わる。

 

 

美遊が魔力砲を放射して岩を迎撃する。

しかしそれでも止めるには至らない。

シロエも弓矢を放つものの砕かれるだけで止まることはない。

 

 

巨大な岩が降り注ぐ中、わたしはまたあの感覚を覚えていた。

 

イリヤは走る。走る先にいるのは凛

 

これでもう四度目

どうしようもない危機に面した時

それはスイッチみたいに切り替わる。

今のわたしには……

どうすればいいかがわかってしまう。

 

イリヤの右手が凛の左ポケット

もっと言えばその中にある『Archer(アーチャー)』のクラスカードに触れる。

 

 

「え…?」

 

 

凛が驚きの声を上げる。

とほぼ同時にシロエが空中へと飛び出す。

 

 

「シロ!?」

 

 

美遊の呼び止める声に振り向かず

右手に冷気を溜め、巨大な氷の障壁を生成し

岩を受け止めにかかる。

しかし

 

 

「ぐううぅぅぅッ!!!」

 

 

当然の如く上からの超重量により押し負けそうになる。

しかしシロエは身体強化の魔術を併用し必死に支えようとする。

 

せめて皆を逃がすための時間稼ぎくらい…!

 

シロエがそう覚悟した時

 

 

「クラスカード『アーチャー』夢幻召喚(インストール)!!!」

 

 

イリヤの姿が光と共に

魔法少女から黒の胸当てと短パンそして赤い外套とアーチャーへと姿を変える。

そして必死に耐えているシロエの隣へ移動し

 

 

「!?おね」

 

熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!!」

 

 

シロエの張った氷の障壁を支えるように

イリヤの右手より四枚の花弁の形状をした光の盾が展開される。

 

 

(それはアーチャーの…)

 

「光の盾……!?」

 

「イリヤ…!シロ…!」

 

 

…でも

今回は

何かが違っていて───

 

 

(あれ…?

な…なにこれ…!

目がかすむ…!?)

 

 

そんな姉の変化は隣にいるシロエの目に一番よく写った。

 

 

(え…?お姉ちゃんがダブって)

 

(あっ…)

 

 

……

………

 

 

落石が収まり

大空洞は大小様々な岩が辺り一面に転がっている。

 

 

「大丈夫ですか、みなさーん」

 

「げほっげほっ…!

な…何だったの今のは…!?」

 

「美遊!無事ですの!?」

 

「はい大丈夫で…、いやダメそうです!ルヴィアさんが!」

 

「───────」

 

ルビーの生存確認に

凛が真っ先に答え

ルヴィアが美遊の無事を確かめ

美遊は無事と答えようとしたが

当の聞いた本人が頭に岩を載せ血をだらだらと流していたため突っ込む。

シロエは答えられなかった。

それどころではない()()が隣にいる姉に起こっており唖然としてしまったからだ。

 

 

ポケットのカードがなくなってる…。

さっきのイリヤ…

あの姿はいったい…

 

凛がそう疑問を抱く。

無理もない。

カード本来の使い方である夢幻召喚(インストール)を初めて目にしたのだから

 

 

「イリヤ!シロ!どこ!?」

 

「う~、ここだよー。

なんかあたまいったー…。打ったかも。

シロは大丈夫?」

 

 

イリヤとシロエの返事がなかったことから

凛は二人の名前を再度呼ぶ。

それにイリヤは答え、隣の口を半開きにしこちらを見ているシロエを気遣う。

 

 

「シロ?」

 

「………大丈夫、だけど…。

お姉ちゃん、それ…」

 

「ん?」

 

「よかったイリヤ、シ…。

………ッ!!?」

 

 

妹の反応が妙で首を傾げるイリヤの下に美遊が近寄ってくるが

シロエと同じく驚愕し、目を見開く。

 

 

「はあ…!?何それ!?」

 

「これは…どういう…」

 

 

()()に気づいた凛とルヴィアもまた驚愕する。

 

 

そう

今日は何かが違っていた。

なにせ───

 

 

「「え………………………?」」

 

 

困惑の声が上がる。

声の主は

イリヤと───イリヤであった。

魔法少女の姿をしたイリヤと

アーチャーの姿をした褐色の肌のイリヤ。

二人のイリヤが互いの顔を見合せ困惑の声を上げていた。

 

 

───なにせ

その日を境に

イリヤ(わたし)は二人になってしまったんだから……

 

 

「いやー…、ないでしょ…」

 

 

イリヤはそう遠い目をしながら呟くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(フィールド)にお姉ちゃんが二人…。

来るよ!お姉ちゃん!!」

 

「なにが!?」

 

「ん?わたしも含めて三人の方がいい?」

 

「いや、そうじゃなくて!?」

 

「…そっか。そうだよね。わたしが間違ってたよお姉ちゃん」

 

「ああ、うん。やっとわかって…」

 

「そうだよね…!ミユも入れてあげなきゃ可哀想だよね!」

 

「全然わかってなかった!?」

 

「次回!お姉ちゃん二人とミユとわたしでオーバーレイ!!」(※嘘です)

 

「しないから!?後次回って!?」

 

 




Q:最後の茶番いる?

A:いります(鋼の意志)
  すみません。
  思いついてしまった以上
  どうしても筆が止まりませんでした。
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