「──11位はさそり座のあなた!
人違いに会ってしまい全く関係ないはずなのに巻き込まれてしまうかも?
良く話し合い誤解を解くようにしましょう。
ラッキーカラーはカーマインレッド!
ラッキーアイテムは蝶々──」
朝
イリヤとシロエは自宅にて
一緒に歯磨きをしながらテレビの星座占いを見ていた。
「うぇー…」
さそり座であるシロエが不服そうな声を出す。
それを見たイリヤが妹を慰める。
「まあまあ、ただの占いだしそんなに気にしなくても」
「そして今日の運勢最下位は……
ごめんなさい。かに座のあなた!
何をやってもうまくいかないかも?
用事がなければなるべく家から出ない方が吉!
ラッキーカラーはスカイブルー!
ラッキーアイテムは赤いステッキ…」
「………うむむむ」
…
……
………
「なんて言うかさー…。
聞いてもないのに朝から「あなたは最下位です」とか失礼すぎない?」
学校へと向かう通学路を
いつもの様に姉妹で歩きながら
イリヤは愚痴を溢す。
「いやお姉ちゃん。自分で気にするなって言っておいて…」
「そうだけどー…。いざ自分が最下位って言われるとなんか」
「そもそも運勢に順位着けてる時点でアレなんですがー」
妹の11位の発表の時点では占い自体には特になんとも思わず妹を慰めようと思ったのだが
自分の方が悪いと知ると途端に気になり出したのである。
「まぁ、あんな占い信じる必要はありません。
イリヤさんとシロさんにはもっといい信託を授けましょう」
そうルビーが言うや否や
ルビーの頭から二本のアンテナが生え
その根元から紙垂が垂れる。
「シークレットデバイス#18!
簡易未来事象予報!」
「うわぁ…。またなんか胡散臭そうな機能が…」
「胡散臭いとは失敬ですねシロさん!
事象のゆらぎをパターン化して
統計情報から近未来を予報します!
テレビの占いなんか
比較にならない精度ですよ」
「ねぇ…あなた本当に魔法のステッキなの…?」
(製作者はなにを思ってこんなにいろいろな胡散臭い機能をつけたんだろ…?)
「今回はイリヤさんを対象に予報してみましょう」
若干白い目を姉妹揃ってルビーに向けるも
ルビーはそれを無視し妙な電波をアンテナから発する。
「おっ、来ました来ました。最初の予報ですよー」
そして例の如く
ルビーの下部から一枚の紙が出力される。
(ありがたみないなぁ…)
(毎度思うんだけどあの紙ってどこから用意してるんだろう…)
「えーっとこれは…」
「「頭上注意」」
イリヤとシロエが紙に書かれた文言を読み上げた瞬間
上より植木鉢が二つ分50㎝先に落下し砕ける。
「「………」」
暫し無言のまま砕けた植木鉢を見つめる二人
「え……。な、なにこの植木鉢!?
どこから落ちてきたの!?」
イリヤがそう驚くのも無理はない。
上にはせりだしたベランダも窓も何もないのだから
ただただ青空が広がっている。
「むむむ…?
これはいわゆるファフロッキーズ現象?」
「でも竜巻も飛行機も見当たらないよ?」
「ファ、フ…?と、とにかく!やめてよルビー!なんか怖い!
またイタズラ仕込んでたんじゃないのー!?」
「ちょっ、待ってよお姉ちゃん!」
不可思議現象に怖くなったのか自然と早歩きになるイリヤとそれについていくシロエ
「いえいえまさかー。
あ、次の予報がでましたよー。
えーと…」
二枚目の紙がルビーの中から出力され
それをルビーが読み上げる。
「飛び出し注意」
ゴッ!!!
凄まじい衝突音がし
大型トラックが目の前を横切り塀に衝突した。
「「…………ッ!!」」
「あらまぁ無人ダンプ」
「なになになに!?
なんなのこれ!?
呪い!?」
「お姉ちゃん待って!?
本気で走られると追いつけない!!」
「シロ速く!!このままじゃ、わたしたち」
「あ、また次の予報です」
「ちょっとやめてよもー!!」
妹がギリギリでついていける速さを保ちながらも
ルビーが次の紙を読み上げる。
「猛犬注意」
「わんッ!!わわんッ!!!」
イリヤとシロエの後ろから涎を垂らした大型犬四頭が
「…」
「わん!!わわん!!!」
襲いかか…
「……」
「わん!…わん!」
…襲い
「………」
「わ…」
…………襲
「…………」
「………くぅーん」
「犬が負けた!?後シロ、目怖いッ!!!」
犬は本能的に狩られると思ったのか
降参と言わんばかりに
その場で仰向けに寝転んで腹を見せている。
その目は気のせいか若干涙目になっている。
「っていうかさっきから注意報ばっかりじゃん!!」
「まあコレそういうもんですしー」
犬をなんとかやり過ごしたが
またしても紙が出力される。
「えーと次は火気注意」
「ぎゃーーー!!」
「シロー!?」
「水濡れ注意」
「にゃーーー!!」
「お姉ちゃーん!?」
「感電注意」
「「びゃーーー!!」」
イリヤとシロエが火・水・電気の三コンボを必死に回避する。
「むぅ……」
そんな姉妹を不満気に屋根の上から見ている小さな影が一つあった。
…
……
………
小学校の校門前
一台のリムジンから美遊が降りて
運転手に一礼していた。
そして去っていくリムジン
「ミ……」
「……ミユ」
そこに自身を呼ぶ大好きな二人の声
美遊は振り返る。
するとそこには
ボロボロのぐしょ濡れとなり杖をついている姉妹の姿
「イ、イリヤ!?シロ!?
何があったの!?」
「ミ、ユ…。ごめんわたし、限…界」
「お…、おはよう…そして…グッバイ」
そして倒れる二人
「イリヤーーー!?シローーー!?」
…
……
………
場所は変わり保健室
「──二人共たいした怪我はないわ。
すり傷程度」
保健室の先生である
二人というのは無論イリヤとシロエのことである。
美遊は倒れた二人を保健室へと移動させたのだ。
そして二人はベッドに横になっている。
「つまらないわね…。次来る時は半死半生の怪我をしてきなさい」
「ははぁ…」
「保健の先生としてどうなのそれ…?」
「まぁ、気分が悪いようならしばらく横になるといいわ」
「「はーい」」
イリヤとシロエが返事をする前に
華憐…カレン先生はベッドのカーテンを閉める。
本当に興味がないといった感じである。
「イリヤ、シロ…身体は大丈夫なの?」
「平気ー。傷はどってことない」
「わたしもー」
「うん…あ、そっちじゃなくて…」
「?」
「…昨日のこと。
二人共あれから体調に変化はない?」
「あー…」
そう。美遊が心配していたのは昨日起きた異変から体調を崩していたかどうかであった。
尚、シロエにも聞いたのはシロエの方に異変が起こった可能性もあるのではと判断したからである。
「なんだったのかねぇ。あれ…。
幻覚とかじゃないよね?」
「世の中には似た人間が三人はいるって言うけど…」
イリヤに瓜二つのシロエが口にすることで妙な説得力が生まれる。
しかし
「いやでも…。現時点ではちょっと判断できない。
姿はイリヤとシロそのものだったけど…。
中身が何なのか…」
中身。
美遊の悪気がないその言葉にシロエの表情は少し曇る。
「…シロ?」
「あっ、うん。結局呆然(?)としてるうちにダッシュで逃げちゃったしね」
「逃げ足の速さはイリヤさんそっくりでしたね」
「ちょっと!」
「うん。やっぱりわたしというよりお姉ちゃんに似てるよね」
「シロまで!?」
そして……
アーチャーのカードがなくなっていた…。
「何か…心当たりはない?あの黒い…イリヤ?の」
「ないない。あるわけないよー」
「…」
心当たりは…あるにはある。
思い返すのはセイバー戦
お姉ちゃんから放出された圧倒的な魔力量
あれが聖杯のものと仮定したら…。
そしてアーチャーのクラスカード。
七枚という数といいクラス名といい聖杯戦争に関係があるのは明らか。
つまりお姉ちゃんの中の小聖杯と
聖杯戦争の道具であろうアーチャーのカードが
何らかの反応を示した結果だとしたら…。
とはいえあくまで全て仮定の話
確証となるものは何もなく
予想の域を出ない。
よって
「………わたしもない、かな」
「そう…」
(………?)
美遊とシロエの深刻そうな顔に一人訝しむイリヤ
「まーなんにせよ早くなんとかすべきですねー。
正体がどうあれイリヤさんとシロさんにまったく同じ顔のコスプレ少女が野に解き放たれたわけですから」
「ほんとだよ!
誰かに見られたらぜったい誤解されるー!」
「…魔法少女もコスプレみたいなものだから
あながち誤解ってわけじゃ」
「シロ。何か言った?」
「…イエ、ナンデモアリマセン」
プレッシャーがえぐいよ。お姉ちゃん
「ねぇいっそ捜索願いとか…」
イリヤが勢いよく起き上がると同時
サッカーボールが窓ガラスを割り飛来する。
そのサッカーボールはイリヤの先まで寝ていた枕に命中しバウンド
その後天井に当たり二バウンド
そして
「ぶっ!?」
「「あっ…」」
シロエの頬に直撃。
「「………………」」
パァン!
そんな音と共にサッカーボールが破裂。
その際吹き飛んだ革が更にイリヤの顔面へ直撃。
「イ…イリヤ…、シロ…」
「「…………」」
そして
「「モブバボーボンバーイエ!(今日はもう早退します!)」」
「!!」
…
……
………
午前中
人気のない通学路を歩く三人
「ミユまで早退することないのに」
「うん。そうだよね」
「ううん。やっぱり何か心配だから…。
普通教育の義務なんかよりイリヤとシロの方が大事」
「う、うん…。たまにミユの気持ちが重いわ…」
「愛が…重い。っていうやつ?」
「…その愛って友達として、だよね?」
某ギリシャの狩人がよく口にする言葉に
イリヤは友達の部分を強調する。
そんな三人の背後の電柱の上に立つ小さな影
その影は弓に矢を二本つがえ
「ッ!!」
「避けて!!」
「きゃっ!?」
イリヤとシロエに向けて放ったが
シロエはかわし、イリヤの方は美遊が抱えることで回避する。
「なっ…なになに!?」
「攻撃です!!電柱の上…」
一人状況についていけてないイリヤが慌てる。
影は電柱の上を跳ねて、矢を四本つがえイリヤに向けて放つが
「いや~~~~ッッ!!?」
イリヤお得意の逃げ足により四本の矢は全て外される。
「ほんと…、逃げ足だけは速いわね」
そして三人の前にその襲撃者が着地する。
「イリヤ!」
その襲撃者は昨日のアーチャーの服を着た褐色の肌をしたイリヤであった。
「でっ…でたーーー!!」
「しゃべりましたよこの黒いの!!」
「なんかその反応ゴ◯ブリみた…どわッ!?」
「誰がゴキ◯リか!?」
「その反応したのわたしじゃないのに!?」
でた!とか黒いのとか
反応が自宅に表れた黒光りするアレに似ていたため
シロエは突っ込んだが黒イリヤは当然怒り再び矢がシロエに向かったが回避を行う。
(人格がある…!?黒化英霊とは違う…)
「言葉は通じそうですよ!
さっそくコンタクトを!」
「ワ…ワタシナカマ!テキジャナイ!」
「ちょっ…落ち着いてイリヤ!」
「危ないって!お姉ちゃん!」
キャンディ片手に餌付けするが如く
片言で話しかけるイリヤ
シロエに続きイリヤのその行動で黒イリヤの神経は更に逆撫でされる。
「ひゃっ!?」
返事は白い陰剣「莫耶」
イリヤに向かっての投擲であった。
イリヤはそれをしゃがむことでかわす。
被っていた帽子と共に莫耶が背後の電柱突き刺さる。
「むぅ…。また避けた」
「なっ…、なななな…」
「シロもだけどやっぱり直感と幸運ランク高いわねー。
なるべく自然にやっちゃおうと思ったんだけど全部ギリギリ回避されちゃったし
その上イリヤとシロって遠目から見たらどっちがどっちだかほんとわからないんだもん。
まあしょうがないから──」
黒イリヤはそう愚痴りながら両手に黒白の双剣を投影する。
「直接殺すわね」
「ッ!!」
黒イリヤが双剣を両手に
イリヤに襲いかかろうとするも
シロエが変身しながら間に入り
腰の剣を抜き双剣を受け止める。
「へぇ…。やっぱり邪魔するのね?シロ」
「…まあ、ね」
「ル…ルビー!!」
「サファイア!」
「「
黒イリヤをシロエが受け止めてる間に
イリヤと美遊も転身を行う。
そしてイリヤと美遊の転身が終わったのを確認すると
三人で空へと離脱する。
「ぜんっぜんワケわかんない!!なんで命狙われてるの私!?」
「なんか恨まれることしたんですかねー」
「っていうかあの言い方からして、わたしお姉ちゃんかどうかわからないから狙われたってこと!?」
「とにかく郊外まで退避!
「う、うん!」
「わかった!」
そして三人は街から離れる。
「こらー!逃げるな卑怯者ー!」
黒イリヤは飛べないのか屋根から屋根へ跳ねて
三人を追いかける。
「うわぁぁピコピコ追ってくる!」
「◯キブリじゃなくてコオロギだったか…」
「シロォ!聞こえてんのよ、ゴルァ!後で絶対に締める!!」
「ヒェッ…、言い方が完全にヤンキーのそれじゃん!どうしようお姉ちゃん」
「いやどうしようってわたしに言われても…。
あっ!も、もしかして朝のダンプとかもアレの仕業!?」
「まぁそういうことでしょうね。
目的はよくわかりませんがー」
「何にせよ殺意をもった敵…。
このまま放置はできない」
そして三人は郊外の森へとたどり着き着地する。
「黙ってやられるわけにはいかないから…。
ちょっと痛い目みても恨まないでよね!」
イリヤはルビーを構え
「
電柱の上にいる黒イリヤに向け
ポンッ
そんなとても軽い音と共に魔力弾が放たれるが
べんっ
当然黒イリヤは片手で払い除ける。
「…………」
「……あれ?」
黒イリヤが強いわけではない。
魔力弾の威力が明らかに低いのである。
そしてお返しと言わんばかりに矢が上から降ってくる。
「あわわわわわわ!!」
「ちょっと手加減しすぎですよイリヤさん!
もっと本気で撃ってください!」
黒イリヤが地面へと降り立ち
僅かではあるが余裕が出来たイリヤは
「もっ…、もう一度…!
ボンッ
先より大きくはなったが
まるでどんぐりの背比べ
大した差はない。
ばしんっ
同じように片手の白剣で弾き飛ばす。
「………なっ
なんでーー!?」
「なんかイリヤさんの出力が激減してます!!
めっちゃ弱くなってますよー!!」
「ど、どういうこと…!?」
(………単純に考えて昨日の異変時に力の大半をあっちの黒いのに持ってかれた?)
「ぷっ……。あはははははは!
そう…弱くなってるんだイリヤ。
当然よね。だって
「………!?(何を言ってるの……?)」
黒イリヤの言ってる意味がわからず困惑するイリヤ
しかしイリヤが落ち着くまで待つはずもなく
「だから安心して……、さくっと死んじゃってね♪」
黒イリヤは双剣を再び投影し
イリヤに襲いかかろうとする。
「簡単に死ねとか言っちゃダメなのにー!」
「親の顔がみたいですねー」
「イリヤ!!」
「下がってて」
「ミユ!シロ!」
とにかく今のイリヤに戦闘は難しいと判断した
美遊とシロエが間に割って入る。
魔力砲を黒イリヤに向け放つも
黒イリヤは姿勢を低くすることで掻い潜り更に前へと進む。
そこに剣を構えたシロエが立ち塞がる。
またしても黒イリヤの双剣とつばぜり合いになる。
「…そういえばゴキブ◯だのコオロギだのヤンキーだのと、散々宣ってくれた生意気な妹へのお仕置きがまだだったわね!!」
「ぐっ…む」
黒イリヤのお仕置き宣言から
黒イリヤはシロエに更に肉薄する。
「シロ!!」
美遊が魔力の刃を展開し
サファイアを振りかぶる。
しかしそうしている間にも黒イリヤは
暗い笑みを浮かべながらどんどん肉薄し
チュッ
「う……ッ!!!???」
「………へ?」
「………んん?」
シロエの顔が一気に真っ赤へと染まり
美遊とイリヤが驚愕と困惑の入り交じった声を上げる。
美遊に至ってはサファイアを振りかぶった体勢のまま止まっている。
というより目の前の突然の光景が信じられないのである。
黒イリヤとシロエがつばぜり合いをしていた。
そこまではいい。
黒イリヤが肉薄…もっと言えば顔と顔がどんどん近くなっていき
そして
黒イリヤとシロエの唇が触れ合ったのだ。
「うううっ…!?!?
は、はな…ん"っ…。あっ…。ヴっ!」
もはや二人共に剣など持っていない。
シロエは必死に引き剥がそうとするも
黒イリヤは両腕をシロエの首に回し、ガッチリホールドしていて剥がれる気配はまるでない。
そうこうしているうちにシロエから抵抗の力が徐々になくなっていく。
「……………はっ!?
なっ、何やってるの!?シロから離れ」
イリヤよりいち速く我に返った美遊が
シロエを助けようとするも
黒イリヤはカッと目を見開き
「えっ…?ちょっ!?ん"……ッッ!?」
左腕はそのままシロエの首に回したまま
右腕を美遊の首に回す。
そうしてシロエの左頬と美遊の右頬をぴったりくっつけ
黒イリヤは二人と唇を重ねる。
所謂ミイラ取りがミイラである。
美遊の顔も真っ赤に染まる。
「ん"ん"ん"っ…!?やめ…んっ…くむ…。あふ…。
いい加減に…んっ。あっ。んっ…。ん"ん"ーーーっ!!」
「はぁっ…!舌ベロ入れちゃ…んぐっ!むぐっ…。
お願いもう…ヴっ。んっ。あふっ。うううーーーっ!!」
黒イリヤは舌を二人交互に入れてるせいか
濃厚な水気の音と共に二人の声が時々漏れる。
「………!?………………ッッ!!?」
「あらまー」
そんな友達と妹の様子をただ見ていることしかできないイリヤとルビー
完全にフリーズしている。
そして
「ふぅ……お仕置き完了。
ごちそうさま。ミユも協力ありがと♪」
全身から汗をかき
顔は真っ赤になりながらも
目は涙目かつ虚ろで
口からは涎を垂らして
仰向けに地面へと倒れている
美遊とシロエの姿がそこにはあった。
完全にアレな現場である。
「いっ…、いやぁーー!!
ミユーーー!?シローーー!?」
「………なんでしょうこの展開」
ホントになんなんでしょうねこれ。
とにもかくにもイリヤが倒れている美遊とシロエに駆け寄る。
「ミユ!シロ!しっかりして!!」
「イ…イリヤ…」
「お姉…ちゃん…」
二人はその虚ろとなった目でイリヤを見る。
「ごめん…ね…」
「ミユーーー!!」
「なんか…変、なの。無理矢理されて嫌な…はずなのに、なんだか…気持」
「シローーー!?それ以上はいけない!!」
二人はそれぞれ最後の言葉を
シロに至っては何かに目覚めそうなことを
呟くとガクリと目を閉じる。
「……………ッ。よくも……」
「ん?」
「よくも…、わたしと同じ顔で
(え……)
イリヤの涙目と顔を赤らめながら放った言葉に
美遊が何を期待したのか意識を浮上させる。
「そんなことしたら…
ミユから余計に誤解されるし
シロももっと汚れちゃうでしょーーー!!!」
(そういう怒りー!?)ガクリ
「…わたし…汚れて、な……」ガクリ
求めていた答えと違い再び気を失う美遊と
最後の力を振り絞り否定しようとするも無駄に終わるシロエ
そんな二人を尻目にイリヤは怒りを込めまたしても魔力弾を放つ。
しかし
「ヘーイ」カキーン
「だぶっ!?」
まるでバッティングのような気楽さで
黒イリヤは魔力弾を白剣でイリヤに打ち返し
イリヤの下で魔力弾は炸裂する。
「無理ですよイリヤさん!
出力は以前の3分の1以下にまで低下してます!
超弱いです!」
「ううっ…。あの剣、なんか腹立つわ!」
悲しいかな自身の魔力弾の威力の低さのお陰で助かるイリヤ
「!」
しかし黒イリヤがその双剣を
イリヤに向け斬りかかる。
「やっ……!!」
イリヤはルビーの柄で双剣をなんとか受け止める。
(こ…こわっ!!
今まではシロが毎回前線を張ってくれてたからわからなかったけど
剣って間近で見るとすっごい怖い!
シロは毎回こんな光景を…!
刃が目の前に……!!
………刃…?)
イリヤは双剣を受け止めながら魔力砲を放つ。
「おっと」
またしても弾かれるが
反動により両者の間に少し距離が産まれる。
「
「むっ…」
何度目かわからない魔力砲に
黒イリヤは鬱陶しそうな表情をする。
(違う、こうじゃない…!
えーと、えーと…)
「抵抗しても苦しくなるだけよ?
大人しくしてればやさしく殺してあげるのに!」
(そうだ……。砲撃じゃダメなんだ。
魔力の塊を飛ばすんじゃなくて…)
イメージするのはセイバー戦
漆黒のセイバーが放った魔力の刃
もっと
薄く
もっと───
鋭く
(刃のように……!!)
イリヤがルビーを横に振り抜く。
放たれるはいつもの魔力弾ではない。
まさにセイバーが放ったが如く
薄く鋭い魔力の刃が黒イリヤに向け放たれた。
「わっ…!(これは……!)」
突如として変わった攻撃方法に黒イリヤは驚く。
そして
ザザン…
切り裂く音が周囲に鳴り響く。
「くっ…」
魔力の刃は黒イリヤに命中した。
黒イリヤの周囲の木々が切り裂かれたことで音を立てて倒れる。
「いったぁー……。
やるじゃないイリヤ。
ちょっと予想外だわ」
命中こそしたが黒イリヤに目立った負傷はない。
負傷はない、が
「裸ッ!?
っていうか斬れたの服だけ!?」
「でもなんか効いてますよ!!」
「あーあ…。
これじゃちょっと戦えないわね残念。
今日はあなたの頑張りに免じて見逃してあげるわ」
「なにを…」
「でも気を抜いちゃだめよ?
油断してたら殺しちゃうからね。
お姉ちゃん」
「おねっ…!?」
「じゃーねー」
シロエから呼ばれ慣れているそのフレーズを
別人から呼ばれイリヤは少し戸惑う。
その間に黒イリヤは去っていく。
「っていうかその顔で裸で街に出るなーー!!」
「コスプレ少女からストリーキングに進化しましたねぇ」
…
……
………
美遊とシロエの回復を待った後
三人は郊外から街中へと戻ってきていた。
「はぁ…。なんかもーすんごい疲れた…」
イリヤが本当に疲れたといった具合で肩を落としながら呟く。
「あの黒いヤツ意味わかんないし
なんにも解決してないし…」
「うん…」
「そう…だね」
「あーあ。かに座は運勢最悪って本当だったわー」
「それを言ったらわたしだって…」
「え……。イリヤとシロ、かに座なの?」
「ん?うん。シロは違うけど」
「私もかに座…。ってシロが違う?
イリヤとシロって双子じゃ」
美遊が自身もかに座であることを伝えようとしたが
予想外な情報に訝しむ。
「あー…。よく間違えられるんだけどね。
わたしとシロは双子じゃないよ」
「え……。でも同い年…なんだよね?」
「えーと…。それは…」
同い年なのに双子ではない。
確かにそういった事例はあるにはあるが
滅多なことではない。
よって当然美遊は疑問に思い尋ねたのだが
イリヤはシロエの方を見る。
本人を前に言っていいか迷っているようであった。
「……いいよお姉ちゃん。
わたしから説明するから」
「…うん」
「?」
「簡潔に言うとわたしとお姉ちゃんは血は繋がってないの」
「……………え」
暫しの沈黙の後
美遊が驚愕の声を上げる。
こんなに似てるのに、血が繋がってない…?
「わたしはね
それでお姉ちゃんと容姿がそっくりだったわたしをママが気にいって…。
引き取ってくれて今に至るの」
産まれてすぐに…?
それならあの魔術はいったいいつ?
それにあの腕は…
美遊の中で疑問がいくつも生まれたが
お互いに詮索はしないとシロエと約束していたため
それを呑み込む。
「そう…なんだ」
「うん。…ごめんね、隠していたわけじゃないんだけど…。
あまり気持ちのいい話でもないから、ね」
「ううん。わたしこそ…ごめん」
「…」
「…」
それ以降二人は沈黙する。
空気が重くなったのを感じたイリヤは
「あー、えーと。ミ、ミユもかに座なんだよね!」
「あ、うん」
話題転換を試みる。
「そっかー。じゃあミユも今日は最悪だったよね…」
「ううん、意外と悪くは…」
「意外とッ!?」
「そうだよね…。わたしも初めてだったけど意外と…」
「シロまで!?二人共戻ってきて!!
その方向はダメだからーッ!!」
話題逸らしには成功したが
友達と妹があらぬ方向に行きそうになっているのを感じたイリヤは
こうなった元凶である黒イリヤに対し憤慨するのであった。
イリヤ:幸運ランクA
シロエ(シトナイ):幸運ランクA
シロエはシトナイの使い魔…分身とも呼べる存在なので幸運ランクを同じとしました。
するとイリヤとランクが並ぶので被害も同じくらいということにしました。