プリヤに元白熊少女を放り込んでみた   作:『ユタカ』

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捕獲

 

 

「いやぁーーーっ!?

なんでーー!?」

 

「なんではこっちの台詞だよ!?

なんでわたしまでーーー!?」

 

 

森の中にて

姉妹の悲鳴が響きわたる。

言うまでもなくイリヤとシロエである。

その理由は単純で

 

 

「おろしてーー!!」

 

「お姉ちゃん暴れないで!揺れるーー!!」

 

 

拘束用の帯で

姉妹は一緒くたに縛られ

木の上から吊るされているからだ。

尚、シロエの上にイリヤが載っかっている状態である。

 

 

「ふっ…、完璧ね!」

 

「そうでしょうか…」

 

「……」

 

 

そして少し離れた茂みに

凛とルヴィア、そして美遊の三人が隠れている。

凛が勝ち誇ったような笑みを浮かべ

サファイアがそれに疑問を呈し

美遊はこの作戦で本当に大丈夫なのだろうか?と

若干遠い目をしつつ二人を見守っている。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

時は少し巻き戻り

エーデルフェルト邸にて

 

 

「というわけで…対策会議よ!」

 

 

メイド服を着た凛が

ホワイトボードを軽く叩きながら

これから始まる会議の指揮を取ろうとする。

ホワイトボードには「黒イリヤについて」と書かれている。

しかし

 

 

「美遊も紅茶の淹れ方がわかってきたようですわね。

今日のはなかなかですわ」

 

「ありがとうございます」

 

「あ、ちなみになんで凛さんがメイド服なのかは

簡潔に言いますと凛さんが財政難だからです」

 

「誰に言ってるの?」

 

「お姉ちゃん。ミユのメイド服に欲情しないでよ?」

 

「だーかーらー、あの時も別にしてないってば!」

 

「ちゃんと聞けー!」

 

 

各々自由に言動を行っており

凛の言葉を聞く者は誰もいない。

そのため凛はホワイトボード前の教卓をバンバン叩く。

台パンはやめてください。

 

 

「悠長に構えてられないわよルヴィア!

一般人(イリヤたち)を巻き込んだことは協会には報告してないのにさらにこんな異常事態…。

バレたらただじゃ済まないわ!」

 

 

優雅に紅茶を飲んでいたルヴィアを咎めるような凛の口調に

珍しくルヴィアは何も言い返さない。

実際その通りだからである。

 

 

「で、さし当たっての問題だけど

黒イリヤの目的はどうやらイリヤの命…。

でもそんな危機的状況なのに当のイリヤはというと──」

 

 

ホワイトボードに黒イリヤらしき顔が

イリヤらしき顔を襲っているような図を描き

凛が話を続ける。

 

 

「なぜか弱体化してる…と」

 

「う~~~…」

 

「身体的な異常は一切なくて、ただ魔力容量と出力が下がるなんて…」

 

 

凛は何故そんな事態になったのか思考する。

 

黒イリヤの出現と関係ある……と見るのが自然

やっぱりこの子にも何かある?

本人も知らない何かが…

妹のシロにも何かあるのだからあっても不思議ではないけど…

 

じっと手のひらを見ているイリヤを見ながら

イリヤとシロエが血が繋がってないということを知らない凛はそのように思考する。

 

 

「わかった」

 

 

そんな中、件のシロエが手をポンと叩く。

一同がシロエに注目する。

黒イリヤについて何か気づいたのかと

 

 

「シロ、わかったって?」

 

「うん、お姉ちゃん。

両手の人差し指と中指だけ立ててみて」

 

「ん?こう…?」

 

「うん。そしたら右手を縦に左手を横に交差させて」

 

「……こ…う?」

 

「影分身の術!!」

 

「そうか!わたしは忍者だったんだねって馬鹿!!」

 

 

某だってばよが口調の忍者の印をしっかり再現しながら

イリヤはシロエに突っ込む。

所謂ノリツッコミである。

真面目だった空気が一気に霧散する。

 

 

「むう。馬鹿とは何よ。

影分身の術で魔力量が半減したと考えれば説明が」

 

「つかないから!そんな漫画みたいな技が出来るわけないでしょ!?」

 

「それを言ったら魔法少女の格好している時点で説得力がないと」

 

「ま・じ・め・にやりなさい!!!」

 

「あいたぁっ!?」

 

 

完全にふざけきっているシロエを制裁するべく

凛がシロエの頭に拳骨を落とす。

 

 

「痛たたたた…。でも」

 

「あ?まだ何か?」

 

「実際問題、お姉ちゃんの異常について考えようとしてもまだ材料が足りてなくて全部予想の範疇を出ないと思うから

今は黒イリヤの対処についてのみ考えた方がいいと思うよ」

 

「………変な茶番挟まずに最初からそう言いなさいよ」

 

 

凛は頭を軽く抱えながら最初から真面目にやってくれれば、と思う。

そうして溜め息をひとつ吐くと

 

 

「作戦を決めましょう。

シロの言う通り今の状況で考えても答えは出ないわ。

かといって事態の放置・引き延ばしも無意味よ。

イリヤが命を狙われてる以上やることはひとつ…

黒イリヤを捕獲する!」

 

「う、うん…でもどうやって?」

 

「情報が少ないから採れる選択肢も少ないんだけど…」

 

 

凛は不敵な笑みを浮かべ

ホワイトボードの黒イリヤを指す。

 

 

「でも幸いにしてヤツの目的はわかってる。

作戦はあるわ!」

 

「…お姉ちゃん頑張ってね」

 

「へ?」

 

「なに他人事みたいに言ってるの?シロ、あんたもよ?」

 

「は?」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「で……、これが作戦って」

 

「なんで…わたしまで…」

 

 

ぶら下がりながら姉妹は意気消沈する。

その様子を遠目から隠れて見ている凛達

 

 

「あの…本当に効果あるんでしょうかこれ……」

 

「餌で釣るのは単純かつ効率的なやり方よ」

 

 

美遊が凛の立てた作戦に遠回しに異を唱えようとするも

その凛は自信で満ち溢れた表情を浮かべる。

 

 

「ヤツの狙いがイリヤならたとえ罠とわかってても無視できないはずだわ。

さらにシロも一緒にすることによりイリヤじゃなくシロかもしれないという疑念を払拭する。

そしてとどめに豪華な料理も置いておいたし」

 

「フ……貴女の案に乗るのは癪ですけど完璧な作戦ですわ…」

 

「ふっ…」

 

「フフ…」

 

(どうしてこんなに自信あるんだろう…)

 

 

魔術師二人の自信満々な表情に

美遊は困惑する。

 

 

「はー……。リンさんを信じた私達がバカだったのかな…」

 

「っていうかなんでわたしが下なの?

お姉ちゃんが重くて帯が地味にくい込むんだけど」

 

「お、も…!?

な、な、なんですってーッ!!

もう一回言ってみなさい!シロ!!」

 

「ふーんだ。こんな手も足も出ない状態で凄まれても怖くないもん!

お姉ちゃんのポッチャリ!ボリューミー!寸ど」

 

 

拘束されている以上

仕返しは来ないだろうと

シロエは安心しきり悪口を重ねていくが

 

 

「ガブッ!!!」

 

「うっ!?!?ぎゃあああぁぁぁ!!

噛んだ!!?

イン○ックスじゃあるまいし!!」

 

 

頭からガブリと噛まれたシロエはいつもの如く

姉と同じ方法で反撃を試みるが

 

 

「…口がっ!口が届かない!!

下にいるから噛むことができない!!」

 

「ガリガリ」

 

「いだだだだッ!?

かじらないでお姉ちゃん!?

や、やめ…やめてぇーーッ!!!」

 

「おーい」

 

「くっ!縛られて抵抗できない妹を一方的にいたぶるなんて…!

そんなことして人として恥ずかしくないのお姉ちゃん!?」

 

「人聞きの悪いことを言わないでよ!?

元はといえばシロが…」

 

「もしもーし」

 

「「なにっ!?」」

 

 

こんな状況でも姉妹喧嘩を始める二人に

水を差すかの如く呼び掛ける声に二人は振り向く。

そこには

 

 

「………」

 

 

呆れきった顔をした黒イリヤが立っていた。

 

 

((ほっ…))

 

(((ほんとに来たーッ!?)))

 

(こ、この後ってどうすればいいんだっけシロ!?)

 

(お、おち、落ち着いてお姉ちゃん!えっと、えーと…)

 

 

シロエとしても来るわけがないと思っており

かつさっきまで姉と喧嘩していたのもあり

急激かつ予想外の状況変化についていけていない。

 

 

「あんた達ねぇ…。なんつー状態で喧嘩してるのよ。

っていうか何この状況?

あからさまに罠すぎてリアクションとりにくい上に

その罠をかける対象が来たのに気付かず喧嘩って…」

 

((ちいぃっバレたか!!喧嘩さえなければ…!)) 

 

(そういう問題じゃないと思います!)

 

「まぁいいか。

台本忘れて喧嘩をしてたのはあれだけど

二人揃って待っててくれてたみたいだし

乗ってあげるわ」

 

 

そう言うや否や

黒イリヤは右手に白剣を投影し

イリヤとシロエに飛びかかる。

 

 

来たーーー(フィーーッシュ)!!(捕縛対象切替!!)」

 

 

しかし茂みに隠れていた凛が帯を引っ張ると

イリヤとシロエを拘束していた帯が解かれ

そのまま黒イリヤを拘束に掛かる。

 

 

「!!ふん…」

 

 

しかし黒イリヤは左手に黒剣を投影すると

双剣を振るい帯を切り裂き

拘束から逃れる。

 

 

「うわあっさり…」

 

「…まあだよね」

 

 

姉妹はそれぞれ真逆の反応をしながら

普段着から魔法少女と民族衣装へと

それぞれ変身する。

 

 

Zeichen(サイン)──!」

 

 

そしてその間に

 

 

見えざる(ファオストデア)鉛鎖の楔(シュヴェーアクラフト)!!」

 

 

ルヴィアの宝石魔術が発動する。

黒イリヤを中心として地面に魔法陣が浮かび

魔法陣に沿って地面が陥没する。

 

 

「重力系の捕縛陣ね…。

でもバーサーカーの時のに比べたら随分と……」

 

 

黒イリヤはその重力の増加により膝をつくものの

右手に魔力を込め

 

 

(ランク)が落ちるわ!」

 

 

地面へと叩きつける。

轟音と共に魔法陣が浮かんでいた地面が割れ

それと同時に捕縛陣の効果も失われる。

 

 

「地面ごと魔法陣を…!」

 

「イリヤ!」

 

「とりあえず今全力の…散弾!!」

 

 

魔法陣による捕縛が失敗に終わった凛は

空にいるイリヤに呼び掛け

イリヤはそれに応え

散弾を黒イリヤに向けて放つ。

 

 

「うわっと」

 

 

しかしその散弾は黒イリヤに当たらない。

だが散弾が黒イリヤの周囲に炸裂したため

土煙が巻き上がる。

 

 

「散弾?ああ煙幕か。ということは当然──」

 

 

煙幕を切り裂き黒イリヤの正面から

シロエが斬りかかる。

 

 

「不意打ち、それも───」

 

 

黒イリヤは右手の白剣で受け止める。

しかしそれと同時に背後よりキャスターのカードを限定展開(インクルード)した美遊が

歪な形をした短剣を片手に襲いかかる。

しかし

 

 

「二段構えね」

 

 

黒イリヤは美遊の不意打ちを左手のみを使い

美遊の腕を掴み止める。

 

 

破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)か…。

魔力で構成されたモノ・契約すべてを破壊する宝具……。

さすがミユ。

いきなりウィークポイント突いてくるね」

 

 

時間切れかサファイアからキャスターのカードが弾き出される。

 

 

「くっ」

 

「…」

 

 

不意打ちが失敗に終わり

美遊とシロエは黒イリヤから距離を取る。

 

 

「ん?もう終わり?」

 

(つ…強い…!

黒化英霊とは異質の強さ…!

まるでこちらの手をすべて読まれているかのような…)

 

「何なんですのこの対応力は!?」

 

「まずいわね…。まるで予知能力者(ウォッチャー)だわ」

 

(…確かにまずいわね。

相手の技量もそうだけど…

お姉ちゃんはともかくミユまで()()()()()との戦いに慣れてない。

それに…)

 

 

美遊と凛、ルヴィアが敵の強さに驚き

シロエがその強さよりもこちらの欠点について考えていた時

イリヤはというと

 

この感覚…

昨日からずっと続いているこの違和感…。

わたしやシロと同じ顔の敵

こいつの存在ってやっぱり──

 

 

「すっごいキモい!」

 

「キモいとはなんだーー!!」

 

「びゃーーッ!?」

 

(ああ、うん。やっぱり普通はそう思うよね。

会ったばかりの好奇心のみで動いていたお姉ちゃんから随分と成長したなぁ)

 

 

イリヤの罵倒に激怒した黒イリヤが

イリヤに向け白剣をぶん投げるがイリヤはそれを身を屈め回避。

その様子を見ながらシロエは

出会ったばかりの時は好奇心が上回って

普通の感覚であるキモいとか思わなかったのになぁ。

と、しみじみとイリヤの成長を場違いに感じていた。

 

 

「やっぱりあなたむかつくわ!

すごくむかつくわ!

死んでください!」

 

 

しかしながら言われた当人である黒イリヤは当然激怒する。

そしてイリヤに向け走り出す。

 

 

「ちっ、やるしかないわね!」

 

Zeichen(サイン)──!」

 

 

それを受け

凛は短剣を

ルヴィアは宝石を取り出し

迎撃にかかろうとする。

 

 

「おっと

外野はちょっと…」

 

 

黒イリヤは落ちているイリヤとシロエを拘束していた帯を拾い

 

 

「引っ込んでて」

 

 

凛とルヴィアに向け投げる。

 

 

「なっ…」

 

 

すると帯は凛とルヴィアを取り囲み

 

 

「うそっ!?

拘束帯を逆利用されたっ!?」

 

「ああっ…、なんか既視感(デジャブ)が…!」

 

 

二人を背中合わせに拘束する。

尚、ルヴィアの言う既視感(デジャブ)とは

時計塔にて凛とやりあった挙げ句

同じく二人揃って拘束帯で拘束された経験からである。

 

 

「わー!早速やられてるし!」

 

「うっかリンしちゃったかー…」

 

「相変わらず使えない人たちですねぇ」

 

 

シロエとルビーの辛辣な言いようを尻目に

 

 

速射(シュート)!!」

 

 

美遊が魔力弾を放つ。

無数の魔力弾が黒イリヤに向かう。

 

 

「おおっ。

遠距離戦(うちあい)は望むところだけど…

弓じゃ手加減できないからなぁ。

よーし」

 

 

弾幕から逃れながら

黒イリヤは投影を開始する。

そして出したものは

 

 

投影(トレース)

偽・射殺す百頭(フェイク ナインライブス)

 

 

バーサーカーの斧剣であった。

黒イリヤの背丈以上もの大きさがあるそれを

 

 

「とりあえず…ごり押しで♪」

 

「んなっ!?」

 

 

隠れ蓑にし美遊の放った弾幕を力ずくで突破にかかる。

 

 

(接近戦はまずい…!)

 

 

接近してくる黒イリヤから

美遊は距離を取りながら

 

 

砲射(シュート)!!(中距離を保って…)」

 

 

魔力砲を放つ。

しかし

そんな美遊の上に影

言うまでもなく黒イリヤである。

 

 

「しまっ…(上っ…!?狙いは、ステッキ!!)」

 

 

気づいた時には既に遅く

魔力砲を放ち隙だらけとなった美遊の手から

黒イリヤはサファイアを奪い取る。

 

 

「ハロー♪サファイア」

 

「あ、あの…」

 

「そして…」

 

 

黒イリヤは白剣を投影すると

 

 

「ぐっばーーい!!」

 

「打ったーー!?」

 

「ミユさまーーーーー………」

 

 

野球のバッティングが如く

サファイアをフルスイング

サファイアは空の彼方へと消えた。

 

 

「カレイドの弱点そのいち接近戦。

そしてそのに──」

 

「あっ…」

 

 

美遊の姿が魔法少女から普段着へと戻ってしまう。

 

 

「ステッキが手から離れて30秒経つか

もしくはマスターと50m以上離れると転身解除。

…ちゃんと握ってなきゃダメじゃないミユ」

 

「うそ…。ミユまでこんなあっさり…!」

 

「行動が的確すぎます!

あの黒いイリヤさんてばなんか異常ですよ!」

 

「…」

 

「さて、と」

 

 

黒イリヤがイリヤ達の方へと振り向く。

それに対しシロエが前へと出る。

 

 

「いよいよラスボスといったところかしら。

ねぇ…シロ」

 

「………できることなら戦いたくないんだけど…。

大人しく捕まってくれない?」

 

「…シロ?」

 

 

シロエの戦いたくないという発言に

イリヤが困惑の声を上げる。

今までの戦いにおいて一回もそんなことを言ったことなどなかったからだ。

しかしそう言われるとあの黒イリヤと戦っている時はどこか乗り気ではないようにイリヤは思えた。

 

イリヤからしては理由がわからないが

シロエからしてみては当然であった。

まずは言うまでもなく容姿

姉であるイリヤと更にマスターであるシトナイとまったく同じ顔

二重の意味で攻撃したくないのである。

更にはシロエの予想通り聖杯が絡んでいるとしたら

目の前の黒イリヤは…。

どうしても『イリヤ』と実情がダブって見えてしまうのである。

無論それを言うつもりはないが…。

 

しかしそんなことは知ったことではない黒イリヤは

 

 

「うーん。可愛い妹の頼みでもそれは聞けないかな?」

 

「…そう、残念ね。じゃあ」

 

「ええ。戦り合いましょう♪」

 

 

次の瞬間

二人は互いに駆け寄る。

黒イリヤは双剣を投影し

シロエは剣を片手に

 

 

「たあっ!」

 

 

シロエが駆け寄りながら剣を上段から振り下ろす。

黒イリヤは右手の白剣で受け流し

 

 

「ふっ!」

 

 

左手の黒剣で突く。

シロエはそれを下へ潜り抜け回避

そのまま下から剣を振り上げる。

黒イリヤはバク転して回避。

しかし

 

 

「っ!?」

 

 

バク転している最中に

地面から氷柱が発生。

尖っていなかったため殺傷力はないが

黒イリヤは上へと打ち上げられる。

そこに

 

 

「空中じゃ身動き取れないでしょ!」

 

 

シロエが飛行し黒イリヤに追い付き

大剣に持ち替え上から振り下ろす。

 

 

「くっ!?」

 

 

黒イリヤは双剣を交差させ大剣を受け止める。

しかし飛行か体勢の差か

力負けし弾かれる。

 

 

「やってくれるわね…!でもまだ」

 

 

黒イリヤは空中で一回転し

体勢を整え地面へと着地

 

 

ズブッ

 

 

しようとしたが

黒イリヤの足は地面へと着くことはなく

そのまま地面の中へと入り込む。

そして勢いそのままに肩までどっぷりと浸かる。

 

 

「………………………は?」

 

「これで終わり…っと」

 

「「よっしゃあああーッ!!!」」

 

「や…やった……シロ!!」

 

「まさか仕掛けた最終トラップ目掛けて相手を飛ばすとは…」

 

「そっ……、底なし沼ーーッ!!?」

 

 

そう。底なし沼である。

凛とルヴィアが引っ掛かったトラップと全く同じものである。

本来であれば全員やられた後の最後のトラップであったのだが

シロエはそれでは不確実だと考え無理矢理叩き込んだのであった。

トラップに引っ掛かった黒イリヤを見て一同は歓声を上げる。

凛とルヴィアは拘束帯を引きちぎりガッツポーズまで取っている。

 

 

「地面に擬態させてたのね…!

シロ!あんた…!」

 

「ごめんねー。傷付けずに捕まえる方法っていったらこれが一番手っ取り早かったから。

無理にでも引っ掛かってもらっちゃった☆

(・ωく)テヘペロ」

 

「うっわむかつく!その顔、すっごい腹立つーッ!!」

 

 

パッと見はシロエの可愛らしいテヘペロも

引っ掛けられた黒イリヤにとっては煽りでしかない。

黒イリヤの額に青筋が浮かぶ。

 

 

「くっ……、こんなもの…っ」

 

 

黒イリヤは左腕を沼から出し

剣を投影しようとする。

しかし

 

 

「……!?あれっ!?(投影(トレース)……できない!?)」

 

「ふっ…。剣を出現させてたのはやはり魔術の一種だったようね」

 

「何かしようとしても無駄ですわよ」

 

 

黒イリヤが困惑しているのを見た

凛とルヴィアが得意気に語り出す。

 

 

「五大元素すべての性質を不活性状態で練り込んだ完全秩序(コスモス)の沼!

「何物にも成らない」終末の泥の中ではあらゆる魔術は起動しない!!」

 

「間抜けなトラップだと思うでしょうけど…

それに落ちた時点で貴女の負けは確定したのですわ」

 

「間抜け……。ふふ……」

 

「フフフ…」

 

「オーーッホッホッホ!!

間抜け!!間抜けですわー!!」

 

「今時底なし沼に落ちるなんてこっちこそリアクションに困るわーーッ!!」

 

 

先のシロエのテヘペロの方がまだマシと思える程に

煽る…いやもはや貶している凛とルヴィア

 

 

「ほらほらどうするのー?

こうしてる間にもドンドン沈んでいくわよー?」

 

「うぅうぅうぅうぅう…!!」

 

「あらあらこの子ったら泣いてますわかわいそうに…」

 

((こっ…この人たちは…))

 

「…っていうかリンさんもルヴィアさんもこの間全く同じ罠むぎゅぅ」

 

「はーい。黙っててねシロ」

 

 

同じ罠にかかっていたのだからブーメランになるのでは?

というシロエの異議は凛がシロエの口を物理的に塞ぐことでなかったことにする。

 

 

「………ッ!!」

 

 

悔しげな表情で目に涙を溜める黒イリヤ

泣き出す数秒前である。

そして

森の中で子供の泣き声が響き渡ったのであった。

 

その後「イリヤに手出ししない」と約束させた上で沼から救出……

だいぶアレな結末だったけど

とりあえず黒イリヤ捕獲作戦は成功したのでした──。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

外国のとある街の高台にて

 

 

「…………」

 

「?どうしたアイリ」

 

 

高台から無言で海を眺めているアイリを怪訝に思った切嗣が尋ねる。

 

 

「んー……。なんとなくだけど

海の向こうでイリヤと…それにシロもまたややこしい事態に巻き込まれてる気がするわー」

 

「ああ?

二週間くらい前にもそんなこと言って日本へ帰ったな。

キミとイリヤ、シロの感応は距離では減衰しないのか?」

 

「そんな大したものじゃありません。

シロに関してはイリヤほどはっきりとはわかりませんし。

でもそうね距離は関係ないわ。

これは──」

 

 

アイリは海から目を離して

切嗣へと振り返る。

 

 

母親(ママ)のカン」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「それで…どうするんですか?」

 

「とりあえずルヴィアの家に牢屋でも作ってブチ込んでおけば…」

 

「その場合看守役は貴女ですわよ」

 

「くっ…!」

 

「メイドだからね。仕方ないね」

 

「シロ。メイド代わってあげてもいいのよ?」

 

「そしたらお金もわたしの物にするけど?」

 

「ぐぬぬ…」

 

(ややこしいことになってきたなぁ…)

 

 

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