「さて…それじゃあ尋問を始めましょうか」
場所はエーデルフェルト邸
その地下室
「……………。
この扱いはあんまりじゃない?」
薄暗い部屋にて
黒イリヤが磔にされ厳重に拘束されている。
「抗魔布の拘束帯まで持ち出して…。
まったく。
ここまでしなくても危害を加えたりしないわよ」
その扱いの悪さに黒イリヤが苦言を呈している。
「イリヤ以外には」
「それが問題なんでしょーッ!?」
「いや思いっきりわたしにも危害加えてたよね!?」
「シロがイリヤにそっくりなのがいけないんでしょー」
「理不尽!?」
姉妹揃って憤慨する中
凛が椅子に座り、テーブルに肘を着く。
まさに取り調べといった雰囲気である。
「残念だけど貴女には弁護士を呼ぶ権利も黙秘する権利もないわ。
わからないことだらけなの。
……全部答えてもらうわよ」
「…ふーん。全部…ねぇ」
黒イリヤはちらりとシロエの方を見る。
が、それは一瞬でありすぐに視線を凛の方へと戻す。
(……?)
「まずはそうね。
貴女の名前を教えてもらおうかしら?」
「名前?イリヤだけど
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン」
凛の最初の質問に
当たり前の如くイリヤの名前を黒イリヤは語る。
「……ちなみに嘘をつく権利も認めないわよ?」
「心外ね。嘘なんかついてないわ」
「どうだか…。貴女の目的はなんなの?」
「うーん…。まぁ当面はイリヤを殺すことかなー」
「…なら自分の首でも絞めればいいでしょ」
「わたしじゃなくてあっちのイリヤだってば」
(…………)
シロエとは違い
黒イリヤは凛が聞いたことに対して全て答えていくが
凛達が本当に知りたがっている肝心の事は話さない。
その様子をイリヤは半目にしながら黙って見ている。
「ああもう。どっちもイリヤじゃややこしい!
ただでさえシロがいてややこしいっていうのに!」
「ねぇ二人とも。さっきからわたしの扱いも酷くない?」
そんなシロエの苦言を凛は無視すると
「えーと黒…、…クロ!
黒いイリヤだからクロでいいわ」
「わたしは猫か…」
「リンさん…。五歳だった頃のお姉ちゃんとネーミングセンスが大差ないってヤバい気が…」
約六年前に当時五歳だったお姉ちゃんから
シロという呼び名をつけてもらった時の事を思い出す。
あの時は犬の名前かと思ったっけ。
シロ、クロ。
うん。完全に家で飼ってる犬猫の名前だね。
喧嘩しないか心配。
「うっさい!
……で、イリヤを殺そうとする理由はなに?
まさかオリジナルを消してわたしが本物になってやるーとか
そんな陳腐な話じゃないでしょうね」
「あれよくわかったね。
まぁおおむねそんな感じ」
「…………貴女は何者なの?」
「核心部分?
んー…、ネタバレはまだちょっと早いんじゃないかなぁ…」
(話す気はなし……か)
黒イリヤ改めクロが薄く笑みを浮かべながら返した言葉に
凛はクロが話す気がないことを覚る。
「もういいわ」
「あら全部聞き出すんじゃなかったの?」
「聞き出すわよ。いずれね。
でもその前に…。
イリヤに関する抑止力を作っておきましょうか」
「え?」
席を立ちながら凛が言った言葉の意味がわからず
困惑の声を上げるイリヤ
そんなイリヤの背後にルヴィアが近づき
イリヤを羽交い締めにする。
「え?」
身動きが取れなくなるイリヤ
その目の前には注射器を持った凛
「えっ……」
これから何をするか
大方の予想がついたイリヤが顔を青くする。
そして
「いあーーーーーーッッ!!?」
イリヤの悲鳴が外まで木霊した。
…
……
………
「ひ、ひどい…」
注射された箇所を抑えながら
涙目になるイリヤ
「ちょっと血を抜いただけよ大げさね」
そんなイリヤの様子を呆れた表情で見ながら
凛は魔石が散らばっているシャーレに採取した血を移す。
「…何をする気?」
「言ったでしょ。抑止力よ」
凛は人差し指に血をつけると
クロの腹部に紋様を描く。
そして
「
骸骨の紋様が表紙の本を右手に
左手からは血を床へと滴しながら
凛が呪文を詠唱する。
(これは…呪い?)
「え?え?何?なに!?」
シロエが冷静に術式を解読する中
イリヤは何が起こっているかわからず狼狽する。
ルヴィアはそんなイリヤの右腕を掴み
「
「なにーーー!?」
クロの腹部の血の紋様に押し当てる。
眩い光と共に紋様がクロの全身に広がる。
「これは…!」
光が収まると全身に広がっていた紋様はなくなっていたが
腹部の描いた紋様は焼き付いたような音を立てていた。
ちょっとやそっとじゃ取れない。
そんな印象を与える。
「くっ…。人体血印………呪術!?
何をしたの!?」
クロが焦った表情で問い質す。
「イリヤ」
「なに…」
凛はクロの質問に答えずイリヤを近くへと呼び寄せる。
訝しみながらもイリヤは凛の下へ行く。
そんなイリヤの頭に凛は拳骨を落とす。
「あだっ!?」
「あだっ!?」
するとイリヤだけでなくクロも痛がる。
次に凛はイリヤの頬をつねる。
「いやややややや!?」
「いだだだだだだ!?」
またしてもクロも痛がる。
イリヤの腕に関節技を決める。
「ギブギブギブ!!」
「ウーマンリブ!!」
やはりというかクロにもダメージがいく。
「………!?」
「………???」
関節技から解放されたイリヤが荒い息を吐きながら
今起きた現象に困惑する。
クロも同様である。
「ま、体感した通り
痛覚共有
ただし一方的な…ね!」
「…………!
やってくれたわね…」
凛が得意気な表情をし
クロは状況を理解し悔し気な表情をする。
「…」
シロエはそんな二人をよそに
神妙な顔をし無言でイリヤに近づく。
「シロ?」
「…」
イリヤが困惑の声を上げるが
シロエは無言のまま
つん
イリヤの脇腹をつつく。
「ひゃっ!?」
「あひっ!?」
妹の突然の行動にイリヤは驚き変な声を出してしまう。
クロも同様である。
つん、つん
「ひゃっ!ひっ!」
「あひっ!ひんっ!」
しかしシロエはつつくのを止めない。
つつく度にイリヤとクロからくすぐったそうな声が漏れる。
「あははは!おもしろーい!」
まるで新しい玩具を買ってもらったが如く
楽しそうに笑いながらイリヤの脇をくすぐり始める。
「ちょっ!?あはははははははははッ!!シ、シロ止めっあひっはははは!!!」
「あはははははははははははははははッ!!シ、シロ止めなさいッ!止めないとひゃんっはははは!!!」
イリヤの腰が砕け床に倒れ
クロはそのくすぐったさから身を捩ろうとするも拘束具がそれを阻害し拘束具からガチャガチャと音が鳴る。
それでもシロエのくすぐりは止まらない。
イリヤとクロの苦しそうな笑い声が地下室に響く。
二人共に笑いすぎて涙目になっている。
「あはははははこっ、の。
い、いい加減…に、しなさーい!!!」
「あだぁ!!?」
さすがに怒ったイリヤがくすぐってくる妹に対して
残った力を振り絞り拳骨を頭に落とし力ずくで止めさせる。
「ぜぇぜぇ…。な、何すんのよ…シロ」
「あたたた…。だって面白かったからつい…」
「はぁはぁ…シロ。あんた後で覚えときなさいよ…」
イリヤとクロは笑いすぎて怒りながらも元気がない状態で
拳骨を落とされた箇所を抑えながら踞るシロエを睨む。
そんな三人の様子を呆れながら見ていた凛はそのまま説明を続ける。
「えー…。説明を続けるわよ。
シンプルで…それ故に強固な呪いよ」
(…うーん。強固って言うけど時間と知識があれば割と簡単に祓えそうな気がするのがちょっと気になるけど…。
まあリンさんもその辺りはさすがにわかっているだろうし…)
「そう…つまりこれで貴女は──」
凛の説明を聞いたシロエが若干の気掛かりについて考えている中
ルヴィアが得意気な表情で語り出す。
「イリヤスフィールの肉奴隷ということですわ!!」
……………。
ルヴィアの肉奴隷宣告に凛が引き
イリヤと美遊が口をポカンと開ける。
「いや………それ違う………」
「ミユ、お姉ちゃん。肉奴隷って?」
「えっ!?そ、それはえーと」
「聞かないで調べないで興味を持たないで。
お願いだからそのままのシロでいて」
「?」
…
……
………
「──
エーデルフェルト邸の門前にて
凛が家に帰るイリヤとシロエにクロの処遇について説明している。
「とりあえずこれでもうイリヤが襲われることはないと思う。
と言っても絶対ではないから…気を抜かないでね」
そう忠告すると凛はポケットから一枚のカードを取り出す。
『
そのカードをイリヤへと差し出す。
「…」
「念のためカードを一枚預けとく。
もしもの時はそいつで遠慮なく貫いてやりなさい!」
「わーいばいおれんす…」
「…リンさん。あの」
「ん?何シロ?」
「ちょっと相談があるんだけど…」
「?」
「あ、お姉ちゃんは先に家に戻ってて。わたしもすぐに帰れると思うから」
「?うん、わかった」
イリヤは訝しみながらもカードを受け取り自宅へと戻る。
「はぁ……。
結局アイツが何なのかわからないままかぁ…」
「ややこしい存在っぽいのは確かですけどねー。
イリヤさんへの殺意もなにか壮大な目的のためとか…」
「壮大な目的ねぇ…」
衛宮邸はエーデルフェルト邸の正面であり
ルビーと話しているうちにイリヤはあっという間に
自宅へとたどり着く。
そして玄関をくぐる。
「ただーいまー…。ん?」
「~~~」
「~~~」
(話し声…?)
イリヤが玄関をくぐると
リビングから話し声が聞こえてきた。
「お客さん…?」
イリヤは音をたてないように
そっとリビングを覗く。
するとそこには
「ねぇ…。お兄ちゃんはどんな女の子が好きなの?」
「な、なんだよイリヤ。
突然そんなこと…」
エーデルフェルト邸に監禁している筈のクロが
士郎に言い寄っていた。
リビングの隣の玄関にてずっこけるイリヤ
「いいじゃない教えてよー」
「別にお前に話すようなことじゃ…」
(な、な、な、な…、なんだこらーッ!!?)
士郎に密着し頬擦りしているクロを
焦った表情で見ているイリヤ
(どどどどうしてアイツがここに!?
地下倉庫に監禁してたはずなのに…一分で脱走!?警備ゆるすぎ!!
てててていうかなんでお兄ちゃんと一緒にいるのーッ!?
しかもちゃっかりわたしの服着てるし!?)
(ははぁ…。そういうことですか)
全てわかったと言わんばかりのルビーの言葉に
イリヤはルビーの方に視線を向ける。
「恐らくクロさんは段階をひとつ繰り上げたのでしょう」
「どどどういうこと?」
「にゃろうの目的はズバリ
士郎さんです」
ルビーの推測にイリヤの表情が固まる。
「そのために本物のイリヤさんが邪魔だったんですねー。
ついでにシロさんもいなくなれば止める者が誰もいなくなる。
けど手出しできなくなったから今度は直接接触しにいった……と」
(さっ…最悪…!最低最悪の敵だわ…っ!!)
イリヤが嫌な汗をかいている間にも
リビングでクロと士郎のやり取りは続く。
「というかイリヤ…だよな?目の色も赤いし…」
「えー。お兄ちゃん、まだわたしとシロの区別がつかないのー?」
「いやそういう訳じゃないんだが…。
でもなんか日焼けしてないか?こんなに肌黒かったっけ?」
「んー?気になる?」
「まぁ…」
クロは小悪魔のような笑みを浮かべ
「お兄ちゃんてば、妹の肌がそんなに気になるんだ」
と他人が聞けば誤解しそうなことを言う。
「ヘ、ヘンな言い方するなよ。俺はただ…」
「お兄ちゃんの肌フェチー」
「肌フェチ!?」
(やーーーーーめーーーーーてぇぇぇぇ!!)
イリヤはクロの言動に顔を真っ赤にし
両手で顔を覆い床に突っ伏す。
「なんてこと…!テロだわ!!
これは兄妹の仲をヤバい感じに破壊するテロ行為だわ!
こんな時に限って止めてくれるシロはいないし…!」
いまだかつてここまでシロが恋しくなったことなどあっただろうか?
いやない。
速く帰って来てほしい。今すぐに
イリヤがクロを止める方法を思案していると
「いやはや、うーん…。ですがイリヤさん。
これってイリヤさんが望んでたことじゃないですか?」
ルビーが予想だにしてなかった言葉が飛んでくる。
「は!?何を…」
「今さら隠すまでもないでしょう。イリヤさんが士郎さんに対して特別な感情を抱いてるのは存じてます。
本当は兄妹の枠を超えたいのでは?壊したいのでは?」
図星をつかれたのか顔をさらに赤くするイリヤ
「クロさんはそんなイリヤさんの気持ちを直接的に表しているような…。
そんな風にも見えます」
「…それじゃまるで」
アイツの方が本物みたいな言い方…
「イリヤさん?」
「だからって…許せるわけじゃないわ!!」
イリヤの左手の手のひらがうねりを上げる。
狙いは…
「ひぶっ!?」
クロの顔が弾かれる。
その頬はまるでビンタをくらったが如く赤くなっている。
「イリヤ?どうした?」
(こ…この痛みは…!)
一方玄関では
「だ、大丈夫ですかイリヤさん!?
自分で自分にマジビンタを…!」
「くううう…っ!」
そう。シロエがいない今、イリヤが取った方法は
呪いを利用した自分へのビンタであった。
イリヤは自分で自分をビンタしたのであった。
尚凄い面白い絵面になっているが、本人は至って真剣である。
「だっ…大丈夫なんでもないよ。お兄ちゃばあっ!」
「お兄ちゃば!?」
クロがなんでもないように振る舞おうとするが
イリヤはそれを許さない。
追撃のビンタがクロ(とイリヤ)を襲う。
「あっ、ぶっ、らっ」
「イリヤ!?」
連続ビンタの衝撃で床を転がるクロ
しかしながら当然イリヤにもダメージがあるわけで
「いっ……いだいぃぃ…!
で、でもシロがいない以上アイツを止めるにはこれしか…!」
「ああ…、イリヤさんてば
なんて面白健気なんでしょう…!
ウプププププ」
頬を赤く腫れさせかつ目には涙を溜めているイリヤ
そしてそれを見ながらイリヤを労るルビー
少し笑い声が漏れているが
「くっ…最後にせめて…!」
「むむっ、クロさんもしぶとい!」
床に転がっていたクロが立ち上がり
士郎へと飛び掛かる。
「お兄ちゃん!キスを…」
「うわっ!?」
「させるかーーー!!」
その時衛宮邸に
ゴッ
という大きな音と
みぎゃっ
という少女の呻き声が響いた。
「イリヤ無事!?」
「クロが脱走を…!!」
ちょうどその時
玄関が開かれ
凛、ルヴィア、美遊、シロエの四人が入ってきた。
その四人が最初に見た光景は
「……っ!……!…っっっ!!」
左足の小指を押さえながら床に倒れているイリヤの姿であった。
「……何してるの?」
「角にっ……小指をっ…!」
「お姉ちゃん!ふざけてる場合じゃないよ!」
「ふざけてないもん!?」
毎回ふざけている妹に言われたくはないと憤慨するイリヤ
「それよりクロさんを!リビングにいます!
今なら動けないはずですよ!」
「ハッ!そうだわ!」
ルビーの言葉に気を引き締め直した
凛とルヴィアがリビングへと乗り込む。
「クロ!」
「観念なさい!逃しは──」
「えっ、とっ遠坂!?
ルヴィアも…」
しかしその乗り込んだ勢いは
「えっ……。なっ」
「なんで……」
「衛宮くん…?」
「
予想外のそして意中の男子の登場により
空気が急遽桃色に変わる。
(なっ…)
(なにその反応!?)
その空気の変わり様に即座に反応したイリヤとクロ
(………なんだろうこの空気?
いきなり弛んだというか……妙な空気が……)
(───……?
エミヤ……シェロ………?)
玄関にてイリヤの介抱をしていたシロエと美遊
恋愛経験が皆無のシロエは状況がわからずついていけていない。
美遊はというとその聞き覚えのある名前にひとり訝しむ。
「ごめんね衛宮くん!!
イリヤちょっと借りていくわ!!」
「あっ…」
「ごめんあそばせー!」
「な、なんだよそりゃあ!?」
凛はクロを肩に担ぎ上げると
クロと士郎の反論を聞かずに
ルヴィアと共にリビングから出る。
「おい遠坂!?」
士郎からしてみれば妹が連れ去られたため
当然追ってリビングから出る。
しかし
「あ…あれ?イリヤ?それにシロも…」
「どどどど、どうもお兄ちゃん…!」
「えーと…。とりあえずただいまー」
(ぎっ…ぎりぎりセーフ…!)
士郎が来る前にぎりぎりでクロを玄関の外へ出すことに成功したイリヤ達
凛とルヴィアとクロは外に
イリヤと美遊とシロエは中に
玄関ドアを挟みそれぞれいる。
尚、イリヤ達三人は玄関ドアを急いで閉めたため
三人共に玄関ドアに群がっている。
「なんなんだよ、いったい…。
ワケがわからないぞ」
(この声───)
美遊が玄関ドアを前に抑えながら身を固くする。
もの凄く聞き覚えのある声だったからだ。
「…わけがわからないよ?(◕‿‿◕)」
「…シロ。その殴りたくなるような胡散臭い顔を今すぐやめなさい」
「えー。同じ白繋がりでなんとなくシンパシーが…」
「感じちゃダメだから!?同じ白でもあんな詐欺師みたいになっちゃダメだからね!?」
「あ、でもそれなら同じ赤目でお姉ちゃんの方が」
「似てない!!!」
美遊の異変に気づかず
いつも通りふざけ始めるシロエと
それに突っ込みを入れるイリヤ
「おーい…二人共。仲が良いのは結構なことだが話を逸らそうとしてないか?」
((ちぃっ!!バレたか!!))
「遠坂とルヴィアはどこ行ったんだ?
いやその前にイリヤ知り合いだったのか?
というかもしかしてシロも…」
「あははー!いやぁちょっと…。ねっ、シロ?」
「まあ、うん。…勉強とか見てもらったりしてる、かな」
「そうそう!」
優しくて──
「なんだ。勉強なら俺が…ってあれなんかイリヤ肌が白く…」
「え!?ひ、光の加減じゃない!?」
(お姉ちゃん、それは無理があるんじゃ…)
(だって他に言い様がないじゃない!)
でもどこか孤独な声
まさか、そんな───
美遊が意を決して振り返る。
「ん?君は……?」
そして
「お兄ちゃん…?」
美遊の驚愕した表情と共に放たれたその言葉に
周囲の空気が一瞬止まる。
「は……?」
「え?ああ、うん。
イリヤとシロの兄です…けど……?」
「…」
困惑するイリヤと士郎をよそに
無言で神妙な顔をしているシロエ
「───…!」
一方玄関外で一連の流れを聞いていたクロは
(………ふーん?)
目を細め妖しく微笑んでいた。