プリヤに元白熊少女を放り込んでみた   作:『ユタカ』

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決別

 

 

「──というわけでお風呂をお借りしたく参上仕ったわけなのですが」

 

「…なにそのどこまでもへりくだってる頼み方は」

 

「いいから!ほら、シロも頭下げて…」

 

「えー…」

 

 

日は既に落ち時間は夜

エーデルフェルト邸の門前にて

向かいの住人である衛宮家の五人が頭を下げている。(約一名は姉に下げさせられているが)

 

 

「……………………ははぁ」

 

 

下げられているメイド服の美遊は状況がわからず

困った顔で曖昧な返事をした。

 

 

……

………

 

 

「もちろん構いません。

シェ…イリヤとシロの家族なら(ワタクシ)の家族も同然。

(ワタクシ)の方からご招待したいと思っていたところですわ」

 

 

お世話になっている自分の一存では決められないと美遊は

イリヤ達をロビーへと通しルヴィアを呼んだのだが

そのルヴィアはとても良い笑顔でお風呂の使用を許可した。

尚、理由は言うまでもなく士郎である。

 

 

「すみません。突然大勢で押し掛けてしまって…」

 

「うわっ遠坂!?その格好は…!?」

 

「ぎゃーーーっ!?

なんで衛宮くんがここに!?」

 

 

メイド服にて業務中だった凛が士郎にその姿を見られ顔を赤くする。

 

 

「笑うがいいわ。みじめなこの姿をーー!!」

 

「遠坂ー!?」

 

 

意中の男子に見られてしまった凛は脱兎の如く走り出す。

 

背後でそんなやり取りをしているにも関わらずセラは全く気にも止めず訳を語り出す。

 

 

「給湯器が何者かに破壊されたとしか思えない壊れ方をしてしまいまして……」

 

「あはは…」

 

「尚、犯人はここにしれっとムグッ」

 

「……イリヤ?」

 

「えーと…」

 

 

イリヤはセラ達に聞こえないように急いで妹の口を塞ぐが美遊はすぐに察しイリヤとシロエに何があったか聞く。

 

 

「家の裏で新技の開発をしてたら手元が狂ってしまいまして…」

 

「なんであんな狭い所でしかもわたしに何も言わずにするかなー」

 

「イリヤ…。シロの言うとおり訓練ならもっと広いところで…」

 

 

妹と友達の二人から注意され実際その通りだと思ったのかイリヤはぐうの音も出ない。

 

 

「美遊、浴場まで案内して差し上げなさい。

ついでに貴女も一緒に入るといいわ」

 

「あ、はい」

 

「じゃあ俺はみんなのあとで…」

 

「シロウ様」

 

 

みんなのあとで入る。

士郎のその台詞を遮り老執事が士郎の背後へと現れる。

 

 

「おわっ!?え、忍者!?」

 

「お初にお目にかかります。

執事のオーギュストと申します」

 

 

突然現れたオーギュストにびびった士郎をスルーしてオーギュストは自己紹介を行う。

 

 

「ふむ…」

 

「なんで…しょうか…」

 

「シロウ様はこちらに。

使用人用で恐縮ですが小浴場がございます」

 

 

オーギュストは士郎の肩を凄まじい力で掴むと

そのまま引き摺り出す。

 

 

「えっあ…って痛!肩超痛い!」

 

「ついでにオーギュストも一緒に入るといいわ」

 

「無論そのつもりです」

 

「えええっ!?なんでさーー!?」

 

 

……

………

 

 

場所は少し変わり大浴場

 

 

「わーーーっ。広っ!」

 

 

イリヤの驚きの声が浴場に木霊する。

しかしそれも無理はない。

大浴場は下手をすれば銭湯より広く

それでいて高級なホテルよりも豪華な造りとなっている。

 

 

「これだけ広かったら泳げそうだね」

 

「シロさん。本当に泳いだりしたらいけませんよ」

 

「しかし不必要にでかい」

 

「わたしとか凛さんとか住み込みが増えたから増築したそうです」

 

「はぁ…。本当にセレブなんだねぇ…」

 

「イリヤさんご安心を!アインツベルン本家の浴場も負けてませんでしたよ!」

 

(あー…、確かにこれくらいはあったかも…)

 

「いや、わたし本家なんて知らないし…」

 

「リーゼリットさんはルヴィアさんに負けてないと思います…」

 

 

美遊は若干顔を赤らめながらリズの身体のある一部分を見ながら言う。

 

 

「何の話!?」

 

「?」

 

 

当のリズ本人はわからず訝しむ。

またその一方で

 

 

「……」

 

 

シロエはリズのその一部分を見た後セラの方を見る。

 

 

「……………」

 

「………シロさん?言いたいことがあるならはっきり言ったらどうです?」

 

「いや別に。ただ…」

 

「ただ?」

 

「残酷だなぁ。と」

 

 

養子とはいえアインツベルン家のお嬢様とその使用人という立場から手こそ出なかったが、家に帰った後の説教が確定したのは言うまでもない。

 

 

「あれ?誰か入ってる」

 

 

セラからシロエへの説教が確定したその一方で

イリヤは既にお風呂に入っている人を発見する。

 

 

「リンさん……?」

 

 

その人物はお風呂の広さを利用して泳いでいるため顔が見えない。

しかし息継ぎの為にその顔を上げる。

 

 

「ん?」

 

 

褐色肌に自分やシロと同じ顔

クロエであった。

そう判別した後のイリヤの行動は速かった。

浴槽にいるクロエ目掛けてダイブする。

 

 

「なバぶっ!?イリッ…。

ごばぼべばばばば」

 

「イッイリヤさん!?」

 

「あっ!お姉ちゃんズルーい!わたしも」

 

「やっちゃいけません!!

イリヤさん!お風呂に飛び込むとは何事ですか!!」

 

「ごっごめんなさい!

なんかテンション上がっちゃって……!」

 

 

イリヤは急いでセラに謝る。

しかしそのお尻の下にはゴボボボボ…と息が出来ないクロエの姿があった。

 

 

「ちょっとイリヤ…。あなたねぇ…」

 

「ううう…。コイツの存在を忘れてたわ…」

 

 

突然の奇襲に会いクロエは額に青筋を立てるも

イリヤはそれを無視し頭を抱える。

 

 

「んん?ふーん…?」

 

 

クロエは洗い場にて身体を洗ってるセラやリズを見て状況を察する。

 

 

「家族総出でお風呂借りにきたの?

ちょうどいいわ。セラとリズにあいさつでもしちゃおっかなー」

 

「あっだめ…」

 

「だから泳いだりしたらいけませんってばイリヤさん」

 

「はーい」

 

 

クロエはイリヤを浴槽中心の給湯口となっている像の影へと足で追いやる。

 

 

「………!!」

 

 

セラとリズに二人でいる所を見つかる訳にはいかないイリヤは反撃出来ずにそのまま追いやられてしまう。

 

 

「クッ…クロ!?」

 

「えっ」

 

「やほー」

 

 

イリヤがクロエに入れ替わっていることに気づいた美遊

そしてその美遊と一緒にいたシロエもまた気づく。

しかし当のクロエはそんな二人に対し軽い様子であいさつを行う。

 

 

(ミユー!シロー!そいつを止めてー!

ぶん殴ってでもこっちに持ってきてー!)

 

「えぇ…」

 

「そ…そう言っても…」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

一方その頃小浴場

 

 

「…」

 

 

オーギュストが士郎の背中を洗っている。

 

 

「………」

 

 

ゴシゴシゴシゴシ

 

 

「……………」

 

 

ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ

 

 

「…………………」

 

 

ゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシゴシ

 

 

(痛い…)

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

特に意味のなかった小浴場から場面は戻り大浴場

 

 

「あら?」

 

 

セラがイリヤに対して違和感を覚える。

 

 

「イリヤさん日に焼けました?なんとなく黒くなったような…」

 

「あははセラってばお約束だなぁ」

 

(あわわわわ…)

 

 

クロエは特に動揺せずにすっとぼけるが隠れて見ているイリヤは気が気ではない。

事情を知っている美遊とシロエも

セラとリズの目の前で

イリヤの言うとおりにぶん殴るわけにもいかず

どうしたものかと思案している。

 

 

「ねーーっ。リズお姉ちゃんっ」

 

「おっと」

 

 

美遊とシロエが止めに入らなかったのを確認したからか

クロエの行動は悪化しリズに後ろから抱きつく。

そして

 

 

「相変わらずおっきーねー。サイズいくつだっけ?」

 

「92」

 

「いいなー。わたしも欲しいー」

 

 

背後からリズのどことは言わないがふくよかな部分を揉みながらクロエは言う。

尚、美遊は92という数字を聞き呆然とし

シロエにおいては度々アイリからセクハラ…もとい成長確認のために揉まれたりしているものの、やはりこういった事柄には疎いせいか刺激の強い場面を目撃し顔を赤らめる。

 

 

(んに"ゃーーーッ!!

コイツ本当にそっちの趣味があるんじゃないのー!?

それとシロ見ちゃダメーーーッ!!)

 

 

このまま放っておくと自身の風評だけでなく妹の教育上にもよくない。

 

 

(これ以上放置できないわ!こうなったら…)

 

 

イリヤは潜水すると水中からクロエへと向かう。

 

 

(直接排除する!!)

 

「あっ…」

 

「んお?」

 

 

イリヤは水中からクロエの足首を掴み水中へと引きずり込む。

 

 

(ルビー!)

 

(はいはーい)

 

 

左手でクロエの足首を掴み右手にルビーを出現させる。

 

 

(むっ…。ルビーもいたのね。

やる気?)

 

(おとなしく引っ込んでなさいよこのーっ!!)

 

(あなたって意外と力ずくが好きよね)

 

 

水中にてイリヤはルビーを思いっきり振り抜く。

次の瞬間

 

 

「どりゃーーーーーー!!!」

 

「キャアアアアッ!?」

 

「おおお?」

 

 

大きな水柱が上がった。

突然のことに驚くセラとリズ

 

 

「なっ…なんですか!?爆発!?」

 

(やり過ぎでしょ…。お姉ちゃん…)

 

(さ、最近のイリヤ手加減ない…!)

 

 

事情を知っているシロエと美遊もイリヤの所業に口をポカンと開ける。

そして

 

 

サバァ

 

「あっ…」

 

 

クロエ…ではなくイリヤが湯の中から立ち上がる。

 

 

「イリヤ…さん?」

 

「…………」

 

 

セラが呼び掛けるもイリヤはしばらく無言のまま。

そして

 

 

「セラとリズは先に上がってて。

わたしはもう少し入ってるから」

 

 

ニコリ…と笑顔でセラとリズに命ずるイリヤ

 

 

「…………………………はい……」

 

 

その笑顔には何か有無を言わせぬ迫力がありました…。

 

美遊達が戦慄する中

 

 

(…………なんか今までで一番マスターの表情のそれに近い気が…)

 

 

シロエだけは場違いに主であるシトナイを思い浮かべるのであった。

 

 

……

………

 

 

「もーーーーっ」

 

 

時間は少し進みセラとリズが大浴場から上がり

大浴場にはイリヤと美遊それにクロエとシロエの子供達だけが残り湯船に浸かっている。

 

 

「いい加減にしてよね!

これ以上引っかき回されたらたまらないわ!」

 

「不覚……。まさかあの状況で全力砲とは…」

 

 

イリヤはクロエに対し怒りながら言い

それに対しクロエは頭にたんこぶを付け浴槽の縁に突っ伏す。

そしてその様子を美遊とシロエは若干の苦笑いと共に見ている。

と、そこに

 

 

「あら?貴女たちだけ?ミス・セラたちとは入れ違いになったようね」

 

「げっ、クロ!?ここにいたの!?」

 

 

ルヴィアと凛の二人が大浴場に入ってくる。

 

 

「危なかったけどなんとかごまかしたよ…。

ごまかせたと…思う…。……たぶん」

 

「ギリギリだったようね」

 

(あそこまでやって勘づかないっていうのもおかしな気も…。

それともアイリが家から出ていく前にセラたちに何か言ったのかな…?)

 

 

イリヤと凛が遠い目をしながら話しているのを余所に

シロエはひとり訝しむ。

 

 

「でもちょうどいいわ。

せっかく集まったんだし

棚上げにしてたことを話し合ういい機会ね」

 

 

事情を知る人間がちょうど集まっているのを確認すると

凛は空気を引き締め話を始める。

 

 

「…」

 

「話…?」

 

「ねぇクロ。そろそろ話してくれる気にはならない?」

 

「ん。わたしのこと?」

 

 

凛が話したい事柄とは無論クロエのことである。

しかし当のクロエは

 

 

「うーん…。そうやってすぐ答えを得ようとするのは、先生好きじゃないなー。

ちゃんと自分で考えてたどり着かないとー…」

 

「…先生がキス魔っていうのもどうかと思うけど」

 

「うっさいシロ」

 

「あーはいはい。まだ話す気はないのね!」

 

(ワタクシ)たちにとって焦点はクロではないですわ。

問題は…クラスカード『アーチャー』が消えたこと」

 

 

クロエに話す気がないことを確認した保護者組が

別の観点から話を進める。

 

 

(………クロの戦闘装束を見ればどこにあるのか大体の予想はつくけど。それを言ったら下手したら…)

 

「そうカードよ!

クロのことばかりですっかり聞きそびれてたんだけど。

イリヤ、あの時カードで変身してたわよね?」

 

 

あの時、というのは大空洞にてイリヤとシロエが落石を防いだ時のことである。

 

 

「あー……。そういえば」

 

「あんなカードの使い方。私も…協会ですら把握してないわ。

いったいどうやって…」

 

「えうー…。そう言われても。

えっとね。実はあれが初めてじゃなくてセイバー戦の時も一度変身してたの」

 

「え!?」

 

(…ミユ大丈夫なの?カードの使用方法は秘密にしたいってバーサーカー戦の時言ってたけど)

 

 

このまま話が進めば凛たちがカード本来の使い方に気づいてしまうのでは?

 

そんなシロエの視線に気づいた美遊は

問題ないとばかりに凛たちに気づかれないように僅かに首を縦に振る。

 

 

「うーん…。うまく説明できないんだけど

どうしようもなくなった時、どうにかしたいと思ったら

どうすればいいのかが何となく浮かんできて

気がついたらどうにかなってる…みたい…な…」

 

「「……………………」」

 

 

イリヤがセイバー戦の時の感覚を思い出しながら

なんとか説明しようとするも

 

 

「説明になってませんわー!!」

 

「だ、だって自分でもよくわからないんだもんー!!」

 

 

ルヴィアがイリヤの頭部へと掴みかかる。

そんな中凛は

 

 

「…………今は?」

 

 

先のイリヤの言葉足らずの説明から

現在の状況を推測しようとする。

 

 

「へ?」

 

「クロが出現して以降もそういうことがあった?」

 

「え…な…ないけど?」

 

「………」

 

 

その様子を浴槽を泳ぎながら横目で黙って見ているクロエ

 

 

(………クロが現れてからお姉ちゃんのカードを使用した際のそういった感覚がなくなったと仮定するなら…。

セイバー戦の時アーチャーのカードを使用したのは…)

 

「…前にも話した通りクラスカードは一種の召喚器と考えられてるわ。

高位の武装・礼装を媒体にして英霊の力の一端たる宝具を具現化させる…。

協会が解析できたのはそこまでよ。

なのに…」

 

 

そして

シロエの危惧した通り

 

 

「貴女は自分の身体を媒体に英霊の能力を召喚した」

 

 

凛はカードの使用方法に辿り着く。

 

 

「はぁ…。そうなんですか…」

 

「とんでもないことをしたって自覚がないわね。この子は…」

 

 

イリヤのあっけらかんとした返事に内心頭を抱えたくなる凛

一方のシロエは

予想通り辿り着いちゃったけど…。

と美遊を見るも

当の美遊は普段通りでそこまで気にした様子はない。

 

 

(そこまで秘密にする必要はないってこと…?

それとも…)

 

 

シロエが美遊に気を遣ってる間に

凛は更に思考を重ねる。

 

 

(パズルのピースはそろい始めてるわ。

まだ絵は見えてこないけど中心(コア)となるのは恐らく…)

 

 

そしてイリヤに問いかける。

 

 

「イリヤ。貴女はどうしたい?」

 

「へっ…わたし?」

 

 

突然の問いに困惑するイリヤ

 

 

「わたしたちの目的は全カードを協会に持ち帰ること。

…正直なところそれさえ果たせるなら他のことは構わないってわけ。

だから収拾の形はイリヤの意志に従う」

 

 

凛がイリヤに問う理由を語りその上で再度

 

 

「聞かせて。貴女の望みを」

 

 

イリヤに問う。

 

 

「………」

 

「………」

 

 

それを見てイリヤの答えを同じく待つ美遊とシロエ

 

 

「望み……。えー…?

うーん…」

 

 

突然問われたイリヤは望みを考える。

 

 

「そうだね。

そんな大した望みなんてないけど…」

 

 

そしてその答えを口にする。

そこまで深く考えずに出した答えを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただ。

元の生活に戻りたい…。かな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────。

静寂。

そのイリヤの答えを聞いた四人は黙る。

ただ一人を覗いて

 

 

「……そうね。

そうでしょうね。

了解し───」

 

 

凛がイリヤの答えを聞き入れようとした時だった。

 

パァン!!

 

何かを叩いたかのような音が浴場に鳴り響いたのは

五人が音をした方向を見ると

 

 

「了解しないわ。

勝手に結論を出さないでもらえるかしら」

 

 

タオルを給湯口の像へと叩きつけていたクロエの姿があった。

魔術で強化したのかタオルがめり込んでいる。

しかしそんなことは知らないイリヤは

 

 

(タッ…タオルで大理石を…!?

馬鹿力!?)

 

「イリヤ。自分の言ってる意味、わかってる?」

 

 

場違いな動揺をしているイリヤを無視してクロエは続ける。

 

 

「『元の生活』って何を指してるの?

『元の生活』に…わたしはいた?」

 

「早まらないでクロ!!

まだ貴女をどうするか決まったわけじゃ…」

 

「嘘」

 

 

事態が悪化しそうと感じた凛が慌てて止めに入ろうとするも

クロエは嘘だと一刀両断する。

 

 

「リンたちの望みは何?カードでしょ?」

 

 

そしてシロエの危惧した通りに

 

 

「カードは、ここにあるのよ」

 

 

そう自身の胸に手を当て冷たく言い放つ。

 

 

「………っ!」

 

「…潮時かな」

 

 

その言葉に押し黙ってしまった凛を尻目にクロエは続ける。

 

 

「茶番はおしまい。

どのみちわたしに先はないみたいだし。

それなら最初の状態からやり直しましょうか」

 

 

クロエの身体の周りに魔力が渦巻き

湯がさざ波を立てる。

 

 

「イリヤさん構えて!!」

 

「えっえっ…!?」

 

「つまり」

 

 

そして

魔力が形作り

 

 

「わたしとあなたは、敵同士よ」

 

 

赤の外套を身に纏い

黒弓に螺旋状のねじれた矢をつがえるクロエ

危険を感じ取ったイリヤは咄嗟の行動で魔法少女へと転身する。

そして

 

 

ゴッドオオオ!!!

 

 

矢がイリヤに向かって放たれた。

しかし

 

 

「………やっぱり。

あなたが立ち塞がるのね。

……シロ」

 

 

イリヤの前にはいつの間に変身したのか民族衣装を身に纏ったシロエがいた。

突き出した右手からは氷の障壁が生成されている。

その氷の障壁によりクロエの矢を逸らしたのだ。

しかし逸らした矢により壁が破壊され外が見えている。

 

 

「シ、シロ…」

 

「…クロ止まって。…お願い」

 

「………」

 

 

しかしクロエはシロエの言葉を無視し

破壊した壁から外へと出ていってしまった。

 

 

「に………逃げられた…?」

 

「なんちゅー威力よ…。それを逸らしたシロもシロだけど」

 

 

クロエがいなくなり空気が弛緩し始める。

 

 

「あーもー!!

なんかほんとにふりだしに戻っちゃったよー!?」

 

「もう一回アレ捕まえろっての…?

勘弁してよ…」

 

「せめて家を破壊しないで出ていってほしいですわ…!」

 

 

イリヤが頭を抱え

凛とルヴィアが溜め息混じりに言う中で

 

 

「………」

 

「………」

 

 

美遊とシロエはクロエが出ていった壁の大穴を無言で見つめているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

一方その頃小浴場

 

 

「……シロウ様はお嬢様のことをどうお思いですか?」

 

「えっ…ど…どうとは…?」

 

「覚悟はおありですかな?」

 

「なんの…話で…。

ってかそろそろ上がっていいですか…」

 

 

浴槽の中で若干のぼせながら士郎はオーギュストに問いつめられるのであった。

 

 

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