プリヤに元白熊少女を放り込んでみた   作:『ユタカ』

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遅くなってしまい申し訳ありません。
それとオリ技(?)注意です。


シロクロ激突

 

 

「はあっ!!」

 

 

そう気合いと共に先に仕掛けたのはクロエであった。

確かにシロエの両腕の変貌は気になる。

しかしその腕の変貌と共に既に剣を手にしてはいない。

ならば自身の斬撃を受け止めることはできない。

そう考えクロエはその双剣をシロエに対し振るったが

 

ガキンッ!!

 

そんな音と共にクロエの双剣はシロエの白熊の左腕にて受け止められる。

 

 

「なっ!?(硬っ!?)」

 

 

クロエが驚きの声をあげる。

それもそのはず

刃は完全にその腕へと当たっているにも関わらず、まるで刃が通らない。

それこそ硬度の高い岩へと剣を振るった感触がクロエには伝わったのだから

 

しかしこの結果は当然である。

シロエの白熊の姿は女神フレイヤと魔女ロウヒの魔術により極限まで強化された姿であり

そしてそれはシトナイの使い魔であると同時に宝具そのものである。

よって生半可な攻撃では傷一つ付けることすらできないのである。

 

 

「…」

 

 

ぶんっ!!

 

シロエは無言のまま攻撃を仕掛けたクロエに対し右腕を横薙ぎに振るう。

驚愕していたクロエであったが、その攻撃を身を屈ませ回避。

右手の黒剣を突き出す。

シロエはその黒剣を身を翻し回避した後

そのままの勢いで左腕を横より叩きつける。

クロエはその左腕を右手の黒剣で防御した後、左手の白剣で反撃

 

 

「…っ!」

 

 

しようと考えたが

瞬間凄まじく嫌な予感がした。

双剣にて全力で防御を行う。

そしてその直感は正しく

 

 

「ぐうっ!?」

 

 

シロエの左腕が当たった瞬間

その豪腕により双剣は粉々に砕け

クロエは吹き飛ばされる。

しかし全力で防御を行ったためか

肝心のクロエに負傷はなく

空中で体勢を整えそのまま着地する。

 

ふーっ。

 

なんとか凌げたお陰か

一息吐くクロエ。

そして

 

 

「…」

 

 

そんなクロエを無表情で見るシロエ。

その目にはなんの感慨もない。

 

 

「……その力、その姿。

まるで人間じゃないみたいね」

 

「…」

 

「それにその姿になってからの戦い方が凄く馴染んでいるように見えるわ。

剣を振るっていた時とは大違い。

パワーアップ…とは違うわね。

………まるで()()()()()()()姿()、とでも言うようにね」

 

 

完全に図星を突かれているシロエであったが

それをおくびにも出さない。

ただ冷ややかな視線をクロエへと向けている。

なんのリアクションも示さないシロエに対しクロエは溜め息を一つ吐き

 

 

「…わたしねカンニングが得意なの」

 

「…?」

 

「んー。例えばね。

『手元にヘンなカードがあります』

『目の前に敵がいます』

『さて、どうしましょう?』」

 

「…」

 

「そういう問題に対して

即『カードを夢幻召喚(インストール)する』って答えを出せるのがわたしなの」

 

 

黙っているシロエを尻目に

クロエは一人語り続けるが

 

 

「過程を省いて答えを…望みを叶える。

まさに()()()()()ってわけね」

 

 

シロエのその言葉にクロエの表情も一瞬消える。

先のお返しとばかりにクロエの内面へと踏み込むシロエ。

 

 

「…そう。やっぱり…そうなのね…。

……………やっぱりあんたは殺さなきゃいけないみたいねシロ」

 

 

クロエは顔を険しくさせると

 

 

「ええそうよ。

わたしはカードの目的も理論も設計思想も知らない。

それでも答えを導ける。

過程を省いて望んだ結果を得る…。

そういうふうにわたしは…聖杯は造られた。

だから」

 

 

クロエの姿がシロエの前からかき消える。

そして

 

 

「あんたが疑問に思った転移(これ)も、その一端」

 

 

シロエの背後へと姿を現し

双剣を振るう。

しかし

 

 

「…ちっ!」

 

 

今度はシロエが身を屈ませクロエの双剣を回避。

そのままその巨腕をクロエへと振るう。

先の経験からクロエはそれを受け止めるということはせず

極力かわしつつ双剣を振るう。

双剣と巨腕。

手数ではクロエが勝るがパワーは圧倒的にシロエが上。

よってシロエの攻撃を掻い潜りクロエが連撃を叩き込み

それをシロエが片腕で防御し、もう片腕を再びクロエへと振るう。

そういった攻防が繰り広げられる。

しかし戦闘経験もまたシロエが圧倒的に上である。

故に

 

 

「っ!」

 

 

どうしてもかわしきれない攻撃がクロエを襲う。

その度に双剣で受けるも

双剣は砕け、結果投影を何回も行なってしまうこととなる。

 

 

「受ける度に砕いてくれちゃって!

まるでバーサーカーみたいなパワーしてるわね!」

 

 

このままでは先に魔力が尽きてしまう。

クロエはそう判断するとシロエから距離を取ろうとするが

 

 

「不利になるとわかってるのに距離を取らせるわけないでしょ!」

 

 

距離を取らせたらアーチャーの独壇場である。

シロエはそれを理解しているため、すぐに後を追おうとする。

しかし

 

 

「!?ちっ!!」

 

 

そんなシロエの眼前に無数の刀剣が迫る。

言うまでもなく全てクロエが投影魔術で生成したものである。

 

 

(金ピカみたいなことして!むかつく!!)

 

 

ある朝の夢で見た金色の英霊を思い出し

シロエはイラつきながらも腕を思いっきり一振りする。

その一振りでシロエに迫っていた刀剣は全て吹き飛ばされる。

しかしそこにクロエの矢が襲来する。

 

 

「!!(くそっ。距離を取られた…!)」

 

 

腕を振るった直後の襲来であったため

腕による防御は間に合わない。

シロエは身を捻りギリギリで回避する。

背後にて矢が地面に刺さり爆発する。

 

 

「…っ」

 

「無から剣を創り出(投影)

矢に変換し魔力を乗せて放つ。

『アーチャー』。文字通りの力よね」

 

 

クロエは淡々と語りながら左手の黒弓に矢をつがえ次々に放つ。

シロエはそれをひたすらに腕で弾き、回避を行う。

 

 

「こっ、の…!調子、に…乗らない!!!」

 

 

防戦一方になったシロエは更に苛々しながら地面を思いっきり右足で踏みつける。

すると

 

 

「おわっ!?」

 

 

巨大な氷柱が地面から生えた。

捕縛した時とは違い先端は鋭く尖り

その大きさは周囲の木々の二倍はあった。

周囲を巻き込みつつ放った一撃であったが

瞬間クロエは後ろへと跳びギリギリで回避に成功していた。

しかし

 

 

「今っ!」

 

 

氷柱の回避によりクロエから断続的に飛んで来ていた矢が一瞬ではあるが止んだ。

その一瞬の間にシロエはクロエへと肉薄し

 

 

「はあっ!!!」

 

 

右腕を横薙ぎに振るう。

しかし

 

 

ガッ!ギギギギギギギギン!!

 

 

(剣の…壁!?)

 

 

クロエを守るように無数の剣が出現し

シロエの右腕による攻撃は勢いを殺され止まってしまう。

 

 

「残念」

 

 

クロエは攻撃が止まった瞬間を見計らい新たに投影を

 

 

「ふんっ!!!」

 

「なっ!!?」

 

 

しようとした瞬間シロエが更に右腕に力を込め

止まったはずの攻撃が動き出す。

結果、クロエを守っていた無数の剣は全て破壊されそのまま右腕はクロエへとぶつかった。

 

 

「ぐうっ!!」

 

 

弾き飛ばされるクロエであったが

途中、無数の剣により攻撃を寸断したお陰かそこまで大きなダメージはない。

 

 

「ぐっ…この…脳筋…っ!」

 

「…」

 

 

クロエは悪態を吐きながら立ち上がる。

その様子を冷たい目で見ながらシロエは無表情で悠然と近付いていく。

 

 

「はあっ…はあっ…。

…やっぱりイリヤ達の中であんたが一番厄介だわシロ。

性能(スペック)はもちろんのこと、敵の行動に対する対応の速さも段違い。

イリヤは論外として、リンとルヴィア。

そしてミユよりも…ね」

 

「…」

 

「でも…いいえ。だからこそ誰の援護もない今のうちにあんたを殺しておかないといけない。

そして…あんたの次はイリヤを殺す。

邪魔をするようならミユもね」

 

 

その宣言を聞いたシロエは言葉を荒げるでもなく

静かにクロエの腹部の紋様を見る。

 

 

「…痛覚共有(のろい)。まだ解けてないみたいだけど?」

 

「そう。痛覚共有(のろい)でわたしも死ぬわ。

みんな仲よく死んでおしまい。

それもいいと思わない?」

 

「……………これが最後通告よ」

 

 

シロエは歩みを止める。

お互いに攻撃が可能な間合いである。

 

 

「退く気はないの?」

 

「…ここまで来て何を言うかと思えば。

そんなものあるわけないでしょ」

 

「…そう。残念」

 

 

シロエが右腕を振りかぶり

クロエがそれに呼応し双剣を投影した。

次の瞬間

 

 

ザンッ!!

 

 

上空より魔力の刃がシロエとクロエの間へと降り注いだ。

 

 

「!」

 

「これは…」

 

 

突然の出来事を前に驚く二人。

そして

 

 

ダダン!

 

 

上空より二人の魔法少女…イリヤと美遊がシロエとクロエの間に降り立つ。

まるで戦いを止めるかのように

 

 

「ま…間に合った?」

 

「うん…。おそらくギリギリだったけど多分…」

 

「どうしてここに…。お姉ちゃん、ミユ」

 

「シロの様子がおかしかったから…。

学校に戻ってもいなくて、飛んで捜してたらこの氷柱が生えてくるのが見えて…」

 

「………ふうん。

まあ、そういう意味じゃないんだけどね」

 

 

美遊の説明を聞いたシロエが氷柱を一瞥すると

氷柱は跡形もなく消える。

 

 

「二人ともやめて。戦わないで」

 

 

イリヤはクロエとシロエの二人をそれぞれ見回しながら言う。

 

 

「ってあれっ。シロのその腕なに!?

わっ、すっごいモフモフしてる!!」

 

「うっ。えっと…これは、その…。

っていうかお姉ちゃん。空気読んで」

 

 

先まで殺伐とした空気が満ちていたにも関わらず

シロエの白熊の腕をモフリ始めるイリヤ。

美遊もモフリたそうな顔をしているがどうするか逡巡している。

 

 

「…………」

 

 

その様子を白い目で見ているクロエ。

そして

 

 

「イリヤさん!!」

 

「えっ」

 

 

イリヤに対して黒剣を振るう。

 

 

「やっ!?」

 

 

寸前でルビーの警告があったお陰でなんとか防御するイリヤであったが少し吹き飛ばされ尻餅をつく。

 

 

「イリヤ!!」

 

「お姉ちゃん!!」

 

「……っ!」

 

「いい加減にして。

勝手過ぎるわあなた」

 

 

緩み始めていた空気を再び締め直しながら

クロエは言い募る。

 

 

「シロの言う通りよ。どうしてここに来たの?

どうやってじゃない。()()()()、よ。

ミユはともかくあなた…。今さらどの面下げてここに来たのよ」

 

「…ミユ。お姉ちゃんを連れてここから離れて」

 

 

シロエは二人より一歩前に進み出ながら指示を出す。

 

 

「シロ!」

 

「…それは」

 

「大丈夫。───すぐに終わるから」

 

 

シロエは笑顔で言ったが

二人にはその笑顔から薄ら寒いものを感じた。

即ち

 

 

「それって殺すってこと!?」

 

「へえ、言ってくれるじゃない…!」

 

「シロ待って。…クロ、共存する気は」

 

「…戦う前にシロにも聞かれたけどね。

そんなものはない」

 

 

美遊がなんとかこの場を収めようとするも

クロエにより一刀両断される。

 

 

「…聞いた通りよ。クロに止まる意思はない」

 

「けど…だからってそんな」

 

「関係ない。関係ないことよイリヤには」

 

 

イリヤが美遊に同調しようとした時

クロエが険しい顔でイリヤを睨み付ける。

 

 

「あなたの望みはもう聞いたわ。

『元の生活に戻りたい』

だったらもう…わたしたちに関わらないで!

目を閉じて、耳をふさいで自室に閉じこもっていればいい!

それがあなたの望みでしょう?」

 

「…………っ!」

 

「…ミユもミユだよ」

 

「え?」

 

「ここでクロを殺しておかなくちゃ、クロはお姉ちゃんを絶対に殺すよ?

それでいいの?」

 

「っ!…それは」

 

 

クロエはイリヤを、シロエが美遊を

それぞれ揺さぶる。

これ以上邪魔しないで、と

それに対して美遊は何も言えなくなる。

しかし

 

 

「……二人とも、嘘つきだ…!」

 

 

イリヤがそれに待ったをかける。

 

 

「……………は?」

 

「……………なんですって?」

 

「知ってるくせに…。

私だって認めたくない…。

でももうわかってるの!

クロ(あなた)はわたしだって!」

 

「「………!!」」

 

 

イリヤの発言に対し

二人は目を見開く。

 

 

「だからシロの言葉は嘘だよ。

シロがわたしを殺すなんて……ありえない。

何があっても絶対に、そんなことするはずない」

 

「それは……」

 

 

姉からの絶対的な信頼にシロエの殺意が緩み始め

何も言えなくなる。

 

 

「…確かにわたしは以前、自分の力が怖くて逃げ出した。

何もかも投げ出して閉じこもっちゃった。

でも」

 

 

イリヤが手を握り締め

 

 

「目をつぶったって、逃げ出したって

何も解決しなかった」

 

 

自らの覚悟を口にする。

 

 

「わたしがシロやミユ…みんなとの出会いを否定したと思った?

また、目の前の問題から逃げようとしてると思った?

知ってるくせに……。あなたは知ってる!」

 

 

一言一言、イリヤが言葉を紡ぐ度に

シロエは自身の心が軽くなっていくのを感じた。

 

 

「わたしはもう逃げない!

出会った人も、起こってしまったことも

なかったことになんて絶対しない!」

 

「………」

 

「お姉ちゃん…」

 

 

いつの間にか

胸の痛みが無くなっていた。

 

確かに…本当は全部お姉ちゃんの言う通りだった。

わたしはクロを…。

 

お姉ちゃん…。

カード回収の戦いを終えて

本当に強くなった。

 

最初の頃は魔術の世界に対して完全に履き違えて

戦いをゲームみたいに思っていたのに…。

セイバー戦、アサシン戦と正真正銘命懸けの戦いを経験して

正直あのまま見なかったことにするのだと思っていた。

それでもお姉ちゃんはバーサーカー戦でわたしとミユを助けるために戻ってきてくれて…。

あの時言ってくれた想いは本物だったんだね。

 

心がとても暖かい。

もしかしたら今のお姉ちゃんだったら、わたしのことを話しても───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────。

 

イマ

 

ワタシハナニヲカンガエタ?

 

 

 

 

 

「………ご高説ありがとう。

それで?どうするの?」

 

「!」

 

「これで仲直りしておうちに帰ればいいのかしら?

その後は?

ずっとわたしの正体を隠したまま生活していこうっていうの?

そんな生活続くはずがないわ。

今だってかなり無理が出てる」

 

 

 

 

 

クロはわたしの秘密を…マスターのことを知りたがっている。

マスターの身を危険に晒すことになる明確な敵。

それを見逃そうとした挙げ句、お姉ちゃんにわたしの秘密を話そうと思った?

 

 

ソレハマスターニタイスルウラギリジャナイノ?

 

 

 

 

 

「……ねぇイリヤ。

日常ってなんなのかしらね。

家族がいて、家があって、友達がいる。

わたしにはそんな当たり前のモノさえ与えられなかったわ。

わたしは『無かったことにされたイリヤ』だから」

 

 

クロエは本心を語り

そしてイリヤと美遊の二人はそのクロエの本心からの言葉に耳を傾ける。

そのすぐ傍にいる大切な存在の異変には気づかずに

 

 

「でも、何の奇跡かわたしは今ここにいる。

考える意思がある。

動かせる身体がある。

だから」

 

 

クロエが右手の白剣をイリヤへと向ける。

 

 

「この手で自分の日常を取り返したいと思うの」

 

 

……シロエは俯いていてその表情は見えない。

 

 

「わたしたちは二人。

でも、与えられた日常はひとつよ」

 

 

そしてクロエが双剣を構え

 

 

暫定(いつわり)の日常はもうおしまい!

もう逃げないって言うならわたしと」

 

「──ろす」

 

 

イリヤへと向かおうとしたが

シロエから俯きながら小さく呟かれた言葉に足を止める。

 

 

「え?」

 

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすころすコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロ」

 

「シ、シロ………?」

 

 

俯いているシロエから発せられる

壊れた人形のような

もしくは呪詛のような言葉に

美遊が躊躇いつつも

声をかけながら顔を覗き込む。

 

 

「!?」

 

 

美遊がズザッとシロエから距離を取る。

 

いったい何を見たのか?

 

イリヤとクロエの疑問は

シロエがその俯いていた顔を上げることで氷解する。

その顔は

 

 

()()()()()()()()()()()()()死んで?クロ」

 

 

いつものふざけた様子でもなければ

戦闘中の無表情でもない。

笑みだ。

三人が今まで見たことのない程の狂気的な笑みを浮かべ

その目は瞳孔が開き、相手を殺すことしか考えていない。

まるで野生の獣のような。そんな目をしていた。

 

妹の、友達の

突然のそして見たことのない表情に凍りつく三人。

それを尻目に

シロエはその言葉とは裏腹に腕を元に戻し

大剣を取り出し眼前へと構える。

 

その行動に美遊とクロエの二人は訝しむ。

何故なら二人はあの白熊の腕による攻撃の威力を知っているからだ。

確かに大剣の威力は高い。

だがそれは普通の剣と比べた場合の話である。

白熊の腕に比べれば威力は落ちる上に手数も負ける。

 

 

(いったい…)

 

(…何をする気?)

 

 

しかしそんな二人の疑問はすぐに吹き飛ぶこととなる。

 

そこには異常があった。

シロエの周囲より凍てつくような冷気がわきあがり

それらは渦となり、そして小さな嵐となり

シロエの構える大剣へと集まっていく。

極限まで圧縮され集まっていく冷気の嵐

それらが形となり

一本の巨大な剣となる。

 

見覚えがあった。

極光と冷気の嵐という違いはあったが

その在り方、その威圧感に

忘れもしないそれは──

 

 

「聖、剣…!!??」

 

「…バーサーカー戦。

お姉ちゃんとミユの力を借りてだけど聖剣を振るう機会があった。

その時の経験を元にして聖剣の機構(システム)をわたしなりに魔術で模倣した」

 

「そんなこと…出来るはずが…!!」

 

「『人が空想できること全ては起こり得る魔法事象』

魔術は過程よりも結果が全て。

…イメージが出来る限り、魔術に不可能なんて言葉はないんだよミユ」

 

 

そのシロエの言葉にそして目の前の光景に美遊は否定の言葉が出なくなる。

 

 

「…偉そうなこと言ったけど完全な模倣は出来なかった。

だけど無理な所は妥協して代わりにわたしなりのオリジナルを加えた。

それがこれ」

 

 

確かにシロのキャスター戦の際の

その魔術による模倣、習得の速さに舌を巻いた。

でも宝具を…それも聖剣を

妥協があったとはいえ模倣するなんて…!

 

 

「これで痛みも苦しみもなく

イッシュンデコロシテアゲルネクロ」

 

「……本気、みたいね。でも…。

投影(トレース)開始(オン)

 

 

クロエが双剣を消し

意識を集中させ

新たに投影を行う。

そして

 

 

「悪いけどお断り、よ!!!」

 

 

その手に現れたのは───聖剣。

クロエはそれを上段へと構える。

聖剣の刀身がキラリと輝く。

 

まずい。

この衝突を許したら必ずどちらかが…最悪両方死ぬ。

 

セイバーのクラスカードを夢幻召喚(インストール)したことのある美遊がそう結論付けるも

その威圧感に尻込みしてしまう。

しかし

 

 

「…なんのつもり?………お姉ちゃん」

 

 

その衝突を止めるべくイリヤがシロエの目の前に立ちふさがる。

 

 

「オネエチャンドイテ?クロコロセナイ」

 

「イリヤ…!今のシロに近づいちゃ…」

 

「…」

 

 

しかしイリヤは動かない。

そして

 

 

「いったい何をそんなに怖がってるの?シロ」

 

 

その場にいる誰にとっても予想だにしていない言葉が飛び出す。

 

 

「…え?」

 

「…怖がってる?…誰が?……わたしが?

チョットナニイッテルカワカラナイ」

 

「ううん。シロは怖がってるよ。

ライダー戦後の時と同じように…ううんそれ以上に」

 

 

本当にマスターの事を最優先にして考えるなら

シトナイの使い魔として動くのなら

ここで邪魔するお姉ちゃんごとクロを殺すのが正解。

簡単である。

この剣を振り下ろす。

それだけでいい。

 

 

(ヤレ。ヤルノ!!イマスグニ!!!)

 

 

……………。

動かない。

手が

ピクリとも動かない。

 

 

「怖いからそうやって力を振り回そうとする。

恐怖を狂気で覆い隠して。

まるで威嚇している子犬みたい」

 

「…さい」

 

「ねえ。何をそんなに怖がってるの?

わたしに…お姉ちゃんに聞かせ」

 

「うるさい五月蝿いウルサーイッ!!!」

 

 

図星をつかれたのか

いや見ないようにしていたことを表に出されたのか

シロエはイリヤの優しく諭すような言葉を大声でかき消す。

またシロエの感情の高ぶりに呼応し

冷気が吹き荒れ、剣もさらに強大化するが

イリヤは意にも介さず、ただまっすぐと妹を見つめる。

シロは絶対に剣を振らない。

完全にそう信じているようであった。

 

一方でクロエもまた動けない。

シロエに対抗するにはこれしか手段がない、と

聖剣を投影こそしたものの

 

 

(…っ!あの時よりもランクが落ちてる!!

やっぱり分離した影響で…!!)

 

 

分離した影響により

クロエの能力もまた低下しており

セイバー戦の際の完全な再現には至れなかった。

これでは真名の解放など、とてもできない。

しかし、だからといって

いつシロエの攻撃が飛んでくるかわからないこの状況で投影を解除するわけにはいかない。

たとえそれがハッタリであったとしても

故にクロエは動けないでいた。

 

シロエは荒く息を吐き

 

 

「…そこを退いてお姉ちゃん」

 

「退かない。剣を降ろしてシロ」

 

「退いて…。退いてよ…。退かないとわたしは…」

 

「それは出来ない」

 

「退いてって!!言ってるでしょ!!!」

 

「退かないって!!剣を降ろしてって言ってるのがわからな」

 

 

シロエの叫びにイリヤが叫び返そうとしたその時

 

ブオン!!

 

一台の車が茂みより跳び跳ね、出てきた。

 

 

「い…、の…?」

 

 

四人の頭の中に一瞬空白ができる。

そして

 

 

「いひゃあぁぁぁぁッ!?」

 

 

突然の出来事にクロエとシロエの二人も聖剣を同時に解除し

子供達は必死に跳び跳ねて来た車を避ける。

 

車は着地した後

スピンしそのまま木々に激突し

停車した。

 

 

「なっ…。どっ…なにこれ!?」

 

 

車は壊れたのかプスプスと煙を吐き出している。

 

 

「もー、久々に帰ってきたっていうのに二人共家にいないんだから。

勘で捜してみたけど意外と見つかるものね。

んっ…あれ?ドアが開かないわね」

 

 

中から声と共にドアを開けようとガチャガチャという音が聞こえる。

しかしドアは開かない。

 

 

「よっ、しょっと」

 

 

開かないドアを蹴破り

中にいた人物が外に出てくる。

それは

 

 

「まっ……、まままま…。ママ!?」

 

 

イリヤとクロエとシロエの母親アイリであった。

 

 

「やほー。ただいまイリヤちゃんシロちゃん。

もうすぐ夕飯だから迎えにきたわよー」

 

 

その場の空気などお構い無しに

笑顔で手を振るアイリ

 

 

「んん?あれれ…?」

 

 

愛娘が三人に増えているのと子供達の服装を見て頭に?マークが浮かぶアイリと

唐突に空気を読まずに現れたアイリにポカンと口を半開きにする子供達と

見られてしまった…とガクガクと震えるイリヤであった。

 

 




オリ技注意(打つとは言っていない)。
ビーム系の技が欲しかったんや……。
設定的に無理があるのではとは思ったのですが
言い訳をさせてもらえれば
モルガンは聖剣と同格の聖槍を魔術として修得。
士郎も投影魔術で聖剣を投影。
そういった例があったため完全じゃない妥協したものであれば不可能ではないのではないかと思った次第です。はい。
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